【幸せ追求させろ隊 2】 幸せ追求させろ隊結成してから1週間後。 広い執務室の中に、上忍、特別上忍、中忍、下忍の実動部隊が火影の号令により集結していた。 集められた者は、これから何が始まるのかと、ざわめいている。 自分達の目の前に居るお目付け役までもが落ち付かなげに座しているのを見、よりざわつきが広まる。 「静まれ。」 火影がやっと口を開く。 心なしか楽しげに見える。 「今日集まってもらったのは、これからの木の葉の為、お主達に変わってもらいたいと思っての事じゃ。 木の葉は確かに強いと言えよう。 じゃが、先日の大蛇丸のように襲撃された場合、未だ強さが足りぬと判断した。 これからお主達には指定された訓練を行ってもらう。 午前中は全て訓練に使い。午後から通常任務を行ってもらう。」 「「なっ?!」」 火影の両脇に従えた相談役が、驚いて腰をあげる。 事前の話は一切なかった。 しかし、言葉を発する前に、火影に目線だけで押えられる。 不服だが、火影は絶対の存在。忍達の前では文句も言えなかった。 そして、背後と目の前のざわめいた様子を楽しそうに見つめながら火影は言葉を続ける。 「皆・・・・・今よりも強くなりたいと思わぬか? 半年の訓練の後、ここに居る全員試験を受けてもらう。 その結果によっては、下忍でも中忍を飛ばして上忍になってもらう事もあるじゃろう。 上の者は心しておくがよい。 追いつかれ、追い越される日はそう遠くないかもしれぬぞ。」 目の前から、覇気を感じる。 火影は嬉しそうに笑った。 「では、各担当を紹介する。 不知火ゲンマ。」 「はっ!」 特別上忍達の中からゲンマが進み出、膝を付く。 「これをお主に。 下忍達を頼むぞ。」 「御意。」 ゲンマが大量の資料を受け取る。 「この資料には、個々の短所と長所が細かくのっておる。 半年後には、全ての短所が無くなっているよう。 長所はより伸びているよう。 精進を期待しておるぞ。 うずまきナルト、奈良シカマル、日向ネジ、前に出なさい。」 ナルトが楽しそうに、シカマルがだるそうに、ネジが不思議そうに、それぞれ前に出て膝を付く。 「お主達は訓練をしながらの長期任務に行ってもらう。 うずまきナルト、奈良シカマル両名は本日付けで上忍とする。 日向ネジの担当上官をこの両名とし、任務を完了させるよう。」 ナルトとシカマルは御意と何事も無かったように任務書を受け取る。 ネジだけが、一瞬目を見開いて、それでも一泊遅れるだけで同じく御意と続けた。 場が一瞬ざわめく。 中忍試験の二人の戦いを見た者は、なるほどと頷き。見れなかった者はなぜと二人に視線を向ける。 火影はざわめきを無視し、三人を促した。 「では、行くがよい。」 ナルトがニヤッと笑って、ネジの腕を掴み、行ってきま〜すと窓から飛び出して行った。 続いて、だらだらと歩いて窓枠を掴んだシカマルが、一回頭を下げて、同じく窓から出ていった。 火影は心の中で、窓はドアじゃないっ!と叫んだが、口には出さない。 せっかくの威厳漂う雰囲気を駄目にするのが嫌だった為である。 「さぁて下忍さん達、これから一分後にアカデミー前に集合な。 遅れた者は訓練を倍にするから楽しみにしとけ。 行きな。」 下忍達が慌てて立ち上がり、それぞれに散っていく。 アカデミー前までは、ここから普通に走っても5分はかかる。 当然ナルト達の真似をする者がほとんど。 火影が、再びドアじゃないぞっ!と心の中で叫ぶ事になる。 最後にゲンマが火影に一礼をし、のんびりと書類を担いでドアから出ていった。 「次に、奈良シカク。」 「はっ!」 上忍達の中から、シカクが前に出てくる。 ゲンマと同じように、大量の書類を渡された。 「中忍達を頼む。」 「御意。」 シカクは、大量の書類を一瞥するだけで小脇に抱え、火影に一礼をする。 「海野イルカを残し、全員シカクの指示に従うよう。」 イルカが、嫌そうに顔を歪め、ため息を一つ付く。 この中では唯一のデスクワーカーだった。 先程からなぜイルカが居るのかという視線が、かなり痛い状態。ため息付き放題だった。 「じゃぁ、行くかね。 5分後に木の葉の門の前へ。 遅刻は3倍付けだ。 散れっ!」 ゲンマが2倍ならオレは3倍にしよと、ニヤニヤ笑いながら、洒落にならない事を言う。 中忍達は火影に一礼をし、それぞれに消えていく。 さすがに下忍達のようにざわめく事もなく、静かに消えて行った。 最後にシカクが再び火影に一礼をし、ドアから出ていった。 「さて、海野イルカ前に出るがよい。」 イルカの顔が本日最大に曇る。 これからの事を考えると非常に、とっても、すっごく気が重い。 しかし、了承してしまった以上仕方がない。 両親が死んでから、火影を頼れる者とし、尊敬し、自己を磨いて来た以上、火影からの頼みは断れるわけもなく、今現在の不幸があったりする。 「本日付けで海野イルカは上忍となっておる。」 特別上忍と上忍達からざわめきが広がる。 当然だ。 今まで万年中忍という肩書きで名を馳せていたイルカ。 突然の上忍昇格に納得出来なかった。 「お主達は木の葉のトップスリーに名を連ねる3人をしっておるな? 海野イルカ、暗部名を凛と言う。 但し、この話はここだけのものじゃ。イルカが凛である事を口外する事は禁ずる。」 ざわめきが大きくなる。 ここに残った者全員が凛の名前を知っていた。 木の葉を代表する暗部が三人。 名前だけが囁かれる。 正体も、使用武器も不明。 どんな困難な任務でも100%の達成率。 そのうち二人は日食、新月という名。 この二人はペアで囁かれる。 そして、最後の一人は凛という名。 いつも単独で任務を行うと言われていた。 それが目の前にいるイルカだと火影は言う。 いつも楽しそうにニコニコと子供達と話し、穏やかで優しいと評判の受付け係り。 あるものは驚き、あるものは不敵に笑い、あるものは面白そうだと顔にあらわした。 「海野イルカ、特別上忍及び、上忍達を頼むぞ。」 「御意。」 イルカにも大量の書類が渡される。 イルカは書類をいつも通りに両手で持ち、時計を見た後しぶしぶと口を開く。 「では、死の森入り口に、今から5分後に集合して下さい。」 その瞬間火影に礼を取っていたイルカがかき消える。 残された者達が一瞬目を見開き、それでもイルカに続き消えていった。 火影は楽しそうにそれを見て笑った。
死の森の入り口。 イルカが時計を見ながら、几帳面に一人一人カウントしていく。 凛という名を聞いても実際を知らない者にとっては、いつも通りのイルカに見える。 ある者は、気配を消し木立の中に佇みイルカを見物し、ある者はイルカの目の前にニヤニヤしながら立っていた。 しかし、ここに一番に居たのは、確かに先程まで執務室に居たイルカであり、なるほどなと頷く者も居た。 一癖も二癖もある上忍達は楽しそうに、これからイルカが何をするかを全員が見つめていた。 「はい、貴方が最後ですね。 全員目の前に出てきて下さい。カウントは終了しました。」 今まで通り、イルカの態度は何一つ変わらない。 それなのに、一番早くここに居た。気配を消していた者を全てカウントしたと言う。 「楽しいね・・・アスマ。」 「あぁ、お手並み拝見と、のんびりさせてもらいてーな。」 アスマとカカシ。 「ねぇねぇ、いつものイルカだよねぇ?」 「そうねぇ、あまり雰囲気が変わらないタイプみたいね。」 アンコと紅。 「うぅ〜〜〜イルカにも挑戦せねばぁ〜〜〜!」 「ガ・・・ガイさんっ!」 ガイとエビス。 目の前の受付けで見慣れた人々や、アカデミーで受け持っていた親達の顔を見渡す。 イルカはこれが最後のため息だからと、もう一つため息をついて、やる事を決意した。 「オレが担当と言われても納得されていない方がほとんどだと思います。 今日はオレが全員を相手します。 オレと戦う事で自分の足りないモノを自覚して下さい。 最初は誰が来ますか?」 ここで初めてイルカが楽しそうに笑う。 もし、ここに新月か日食が居たのなら、また爽やかな笑顔で背後のどす黒いオーラを誤魔化しているよと言ったに違いない。 しかし、ここにはそれを気づくものはなく、全員がニヤリと笑った。 「じゃぁ、オレでいいかな?」 カカシが楽しそうに一歩前に出る。 「分かりましたカカシさんですね。」 イルカは手渡されていた書類の中からカカシの分を読んでから、周りを見渡した。 「他の方々は見える範囲で避難していて下さい。 カカシさんは好きなように攻撃して結構です。 術もお好きに使って下さい。 では、始めましょう。」 「ちょ、ちょっと待った。 あんたは何も武器を持たないの?」 「えぇ、得意の武器だと、殺してしまいますから。 それを使わないのであれば、別に無くても不自由はしません。」 カカシにとっては屈辱だった。 確かに凛という名は知っていた。 暗部に在籍していた事もあるから、暗部の強さも肌で感じている。 それでも屈辱だった。 素早く印を切り始めた。 「遅いっ!」 気がついたらカカシは空を見ていた。 しかし、一瞬で立ち上がり真剣に対峙する。 印をきる事が出来ない事を今の事で知った。 それならば体術でと、相手に向かう。 しかしここでも相手は自分の力量の遥か上だと知る。 自分の放つ手が足が、全て躱され、当たらない。 逆に自分は防戦一方となる。 どこから来るか分からない攻撃。早く、正確な手足の動き。 カカシは5分と相手をすることを許されなかった。 「終わりです。」 「・・・・ありがとうございました。」 カカシの目の前に居る相手は、息も乱さず、汗もかいていない。 これがトップレベルの腕かと、自分とこれほど違うのかとカカシは唖然としていた。 「これで私の実力の少しは分かって頂けたと思います。 次の方と戦う前に1つ言いたい事があるのですが、よろしいですね?」 誰も否をあらわさない。 今の戦いが全てを語っていた。 強い指導者に対しての目を全員が向けていた。 「今回の訓練の事ですが、皆さんの目を覚まさせる事も一つの主題だと思われます。 皆さんが怠けていたとは申しませんが、各自の精進が足りなすぎると思います。 私が木の葉のトップであったのは随分と前です。 今は上に二人も居ます。 私が伸びたのは、その二人が現れてからです。 上には上が居ると思い知らされました。 そして、その二人から多くのものを学ばせてもらいました。 その二人は、日食と新月と言います。 現在、木の葉の頂点の二人です。 皆さんは木の葉の最強ではありません。 上忍としても決して強くありません。 それはオレが今証明しました。 上忍という名前にあぐらをかいていませんか? 自分の家柄にあぐらをかいていませんか? 日食と新月は、この中に居ません。 中忍かもしれません。下忍かもしれません。もしくはアカデミー生かもしれません。 皆さんが侮っている人達の中に最強の者が笑っているのです。 はっきり言います。 皆さんでは日食と新月の相手すらなりません。 目を覚ましてください。 そして、腕を磨いてください。 まだ、伸びる余地がいくらでもあります。 二人に笑われない為にも、皆さんは血へどを吐いても頑張らなければいけません。 また皆さんの中で、ここに不知火特別上忍と奈良上忍がおられない事を不思議と思っていらっしゃる方も居るでしょう。 しかし、皆さんと、お二人は決定的に違うのです。 あの、お二人は成長しています。 その為、火影様はここに居る必要がないと判断されたのでしょう。 以前聞いた時に二人共おっしゃってました。 守らなくちゃいけないものがあると。 皆さんは、守るモノの為に努力をしていらっしゃいますか? 肝心な時に役に立たなければ、守るという言葉に失礼だと思いますよ。 以上です。何かありますか?」 イルカが厳しい目を全員に向ける。 誰も発言するものは居ない。 「よろしい。 では続けましょう。 次!」 午前中の時間全てを使ってイルカは、特別上忍から上忍全員を叩きのめした。 それでもイルカは、何事もなかったかのように、周囲を見渡している。 汗はうっすらかいていたが、息の乱れはなかった。 全員一対一で戦った後、手渡された書類を全員に配った。 上忍達が自己を理解するのに良いだろうと判断した。 全員に読むように伝え、その後に五対一の戦いを行った。 それでもイルカは息も乱さず、傷を付けられる事もない。 上忍、特別上忍達は、誰もがこれからの訓練に闘志を燃やし初めていた。 目標が目の前に居た。 「本日はこれで終ります。 明日からは、森の中で行う事にします。 では、解散。」 解散と言われて、すぐに動ける者は少なかった。 それぞれが、もう少しとやっと与えられた休憩を取っていた。 その中離れた所で転がっていたカカシにイルカは近寄る。 「カカシさん、少し話したい事があるのですが、よろしいですか?」 凛とばらしたにも関らず、今だに受付け業務の時のような丁寧な話し方。 カカシは、少し苛つき嫌味だなと思いながらも、顔には出さずにっこりと笑った。 「何でショ?」 「ナルトも上忍になった事ですし、もうナルトには近づかないで下さい。」 「どういう事かな?」 「貴方はナルトが嫌ですよね? 生徒でなくなった以上、近づく理由も無いと思いますが?」 イルカは最初に話した時と一切変わらずに笑顔のまま話し続ける。 カカシは言われた事が納得出来ない上に、今だに受付け業務のイルカで有りつづける目の前の男を軽く睨む。 「気づいていませんでしたか。 でも貴方はナルトの事が嫌いだと、いつも態度に出ていましたよ。 理由は・・・・・貴方が4代目の弟子だからでしょうか? 自分の内面を整理し理解しないと、この先にはいけません。 自分と向き合った方がいいと思いますよ。 では、失礼します。」 カカシは今までの苛つきがどこかにいってしまい、呆然としていた。 自分に渡された書類には、確かに自分の心をしっかり把握しろと書いてあった。 今イルカに言われるまで、何の事か理解出来ず何を把握するんだ?と不思議に思っていた。 カカシは、イルカの後ろ姿に一礼をする。 敵わないなと一言呟く。 色々やる事が増えた。 自分を知って、腕を上げる。 半年は短いなと思いながら立ち上がった。 イルカは午後の任務を確認しなければと、受付け所に向かって歩いていた。 イルカにはカカシへの敵意は一切なかった。 実際、今イルカは、上忍に対しあんな生意気な口をきいて大丈夫だっただろうかと心配している。 今日から自分も上忍なのだが、すっかり忘却。 今のイルカは完璧にアカデミーモードだった。 アカデミーの教師として、個人個人のデータを確認し、気になる所を解消してやり、上を目指させるようにしようとしか考えてなかった。 その結果が全員への言葉や、カカシ個人への言動になっている。 実はハヤテの思惑通りにイルカは動いている。 最初は下忍だけだったはずの訓練が、火影の希望により、全員に。 その時点でそれぞれの教師をどうするのかが問題になった。 上忍、特別上忍達の教師として、最初にあがっていたのはシカクの名前だった。 しかしハヤテはイルカを強くおした。 これから火影になるには、早々に上忍達に本当のイルカを認識させる必要があるだろうという事。 また、イルカの性格なら、一癖も二癖もある上忍達の教師としても適任であると言った。 さすが人の見る目はピカ一のハヤテである。 「お主の言った通りじゃな。」 「当然ですね。あの熱血教師のイルカ先生ですよ。 凛よりも教師としてのが時間が長いのですから。」 水晶を眺めているのは火影とハヤテ。 ハヤテは本当に凛って・・・イルカ先生ですよねと、苦笑をもらし。 火影は、イルカらしいのぉと嬉しそうに笑った。 【続く】
ふふふ。あたしのナルちゃんを(おいおい)、あたしのイルカ先生を(まてまて)、 カカシなんざにやるものけっ!<待てっ! <そう言いながらイルカカを愛読するなってばよっ。 今回の生贄もイルカ先生だったような。 いや、一応主旨としては上忍+特別上忍なんですf(^-^;) あまり細かい描写してませんけど(;。。)_ どうも、木の葉は大なり小なりガイ先生風味な気が。 みんな萌え・・・じゃなくて燃えているなぁo(゚゚*) 【04.09.05】