「お前さぁ、一応戦略部に居るんだからよ。こうならねーようどうにか出来ねーの?」   肘をついたまま、シカマルがぼやく。   「それを言うなら、貴方が長なのですから、このような事態にならないよう采配するのが普通じゃないですか?」   同じく肘をついて、それでも正座は崩さずかなり苛ついたハヤテがぼやく。     【幸せ追求させろ隊 1】     たまたまだった。たまたま昨日の夜大量の任務を抱えていた。 そして、たまたま死ぬほど眠かったから、いつも通り戦略部をサボったシカマル。   たまたまだった。たまたま諜報活動をいくつか抱えていて、昨日一気に片付けようとしていた。 そして、たまたま体調が悪かったから、いつも通り戦略部のサポートにイルカをたてた。   「イルカ先生の采配ですから・・・・・私にはどうしようも出来ません。」 「絶対・・・・・これ仕返しだろ?」   思い当たるフシが有るなんてもんじゃない。 長も居ない、長の代役も居ない、イルカの事だから額に大量の青筋を育てて采配をしたに違いない。 ついでに、ここぞとばかりに仕返しもしてくれて、現在ナルトとゲンマは仕事に出かけていて、シカマルとハヤテは休日状態。 お互いパートナーが居なくてつまらない。おまけに目の前にいるのがこれではムード最悪。お互いのむかつきオーラが渦巻く渦巻く。 それならば、顔をあわせず各自休みの時間をつぶせばいいのに、なぜか奈良家の居間にハヤテが陣取っている。シカマルも帰れとは言わない。 結局、ぼやきとため息とむかつきオーラが居間の空間を漂う事になる。   「まぁ、どうせナルトの事だから、さっさと終らせて帰ってくるけどな。」 「ゲンマも早く帰ってきます。」 「怪我してねーといいな。」 「ゲンマは強いですよ。」   にっこりとハヤテが笑う。 そこで惚気かよと、シカマルが苦笑い。   「確かに強くなったよな。ナルト頑張ってたからなー。」   苦笑いするのはこっちだと、ハヤテがシカマルを見返す。   「貴方方はいい教師ですね。おかげさまで私は、今も生きています。」 「あー?オレは何もしてねーよ。」   たまに誉めるとこれだとハヤテが楽しそうに笑う。 シカマルとは、いつも対長として会話する時間が長く怒鳴る事ばかりだが、ほんの偶に、何かの拍子にお礼や誉めたりすると必ずはぐらかされる。 シカマルはまだ、そんな言葉を素直に受け取るほどは大人ではないのだろう。 いつも無条件で大人扱いをしている為、こんな反応をされると改めて目の前に居るのは、子供からやっと抜け出したばかりの未だ未成熟な大人に成り切れない年齢だと思い出す。   「ま、オレは頭だけしか取り柄がねーからよ。あんまし気にすんな。」 「私は特別上忍で暗部でもありません。貴方がこの里のトップスリーに入っている事は取り柄ではないのですか?」   相変わらず聡いと苦笑まじりにハヤテは返す。   「上忍か暗部にでもなるか?ハヤテなら問題ねーだろ。」   砂の上忍をあしらえるようになったんだからとシカマルが当然の事のように言う。   「これ以上仕事が増えるのは困ります。私は今の生活が気に入っていますから。」 「現場に戻りたくねー?」   楽しげな瞳がハヤテを見上げてくる。 それにハヤテはくすくす笑う。   「戻りたいですよ。ゲンマと一緒に任務をしたいと思っています。」 「そうだよな・・・・・・オレも任務だけにしてーんだけどなー。」   今二人とも同じ事を考える。 とてもじゃないが、自分達の任務を自分達意外の人間の指令書で動きたくない。 辛うじてイルカなら今回のように託せるが、それ以外の誰にも託せない。 自分だけならいいが、自分の大切な人が自分が携わらなかった指令書によって、何かがあったら後悔だけではすまされない。 特にハヤテには苦い経験があるだけに、それだけは譲れなかった。   「戦略部に入る前、痛い目にあいましたから。  仕方がないと言うしかないですね。」 「オレが入った頃、上の馬鹿が間抜けな司令を出して来た事があったからよー。」   指令書のポカミスでゲンマと二人共倒れになりそうになった。 ナルトが日食だとうすうす気づき始めた上層部が、悪意に満ちた司令を出してきた。   「長殿、火影になりませんか?  そうすれば、掃除が出来ますよ。」 「掃除した後すぐ違うやつに代替わりしていいなら、考えてもいいけどよ。  だいたい、オレはあんな管理職の器じゃねーよ。死ぬほどメンドくせーじゃねーか。」 「確かに・・・・・貴方は里よりもナルトくんさえ幸せであるなら他はどうでも良い人でした。  しかも戦略部でさえ、ちゃんと管理していませんし、その結果の今日があったわけで・・・・無理ですね。」 「お前だってそうじゃねーか。里より仲間が大切だろ?」 「えぇ、そうです。  里を愛するなどと奇特な事を言いそうな人は、一人しか思いつきませんね。」   二人が顔を見合わせてニンマリ笑う。 そうかそんな手があったなと。   「ただ、あの方を無理矢理その位置に付けたら、自分達も無料ではすまないと思いますが。」 「無理矢理じゃなければいいだろ?  バレなきゃいいわけだ。」 「あの方はあれでも、結構鋭いです。」 「まぁ、やり方なんていくらでもある。  オレ達ののんびりした幸せな将来の為にも、後輩育成と共に、色々手をまわしてみるか。」   シカマルが楽しそうに口の端をあげる。   「それにな、火影という役職は嫌かもしれねーけどよ。  案外その方が子供達との時間が取れて喜ぶかもしれねー。」 「・・・・・あぁ、なるほど。あの方が任務から外れるのは痛いですが、火影様がアカデミーの先生というのもいいかもしれませんね。」 「別に任務から外す必要もねーだろ?  あの腕だ、任務も問題無いじゃねーか。」 「・・・・・・それでは今より忙しくなるのでは?」 「・・・・・・・・・・・嫌がるか?しゃーねーな、こっちの後輩育成も考えるか。  ちょうど、同期に色々面白そーなやつらがいるからよ、そろそろ叩くとするか。」   本人が居ない所で、火影や相談役が考えるべきはずの事を、悪戯と同等レベルの会話で一般市民?がさくさくと話を進めていく。 ただ問題は、この一般市民には、実力と実行力と人脈があったりする。   「なぁ、5代目に丁度いい人選いねー?  とりあえず、せんせをばらさなくちゃいけねーだろ。  実績を積んでから火影になってもらうとして、その間が欲しいよな。  オレ達の仲間になれそーな、真っ当なやつ。」 「長は自来也様とお知り合いでしたよね?」   シカマルが一瞬で口の両端を下げ、掌を横に振り、だめだと意思表示。   「スケベ以外に問題がありましたか?」 「まぁなぁ・・・・・別にいんだけどよ・・・・・・・相変わらずの人材不足か・・・・。」 「やはり、火影様にお聞きするのが一番だと思いますが・・・・。」 「丁度帰ってきたようだし・・・・・行くか。」   シカマルがニヤリと笑って立ち上がる。 忙しくなりますねとぼやきながらも、ハヤテは目を閉じて口の端をあげる。   「ナルトっ!ゲンマそこに居んだろ?拘束しろ。  疲れてっところ悪ぃけど、火影サマの所に行くぞ。」   玄関先で無条件にゲンマが拘束される。 ナルトは楽しい事が始める予感に顔を綻ばせる。   「ゲンマ諦めろ〜。」 「・・・・おもしれー事あるか?」 「あのシカが火影にサマを付けたんだ。絶対にある!  その場に居なくちゃ損だって。」   ゲンマが千本の先をあげる。 ニヤリと笑って、ナルトに行こうぜと言った。       「はー・・・・・・・・・物騒なメンバーじゃの。  何の用じゃ?」   火影の目の前には微笑みを浮かべた新月(火影にとって、これが一番危険物)、わくわく状態の日食、一見頭を下げて礼儀正しそうに見えるが、口の端が上がっているのが見えるハヤテ、一歩下がって状況を堪能する準備OKのゲンマが千本を揺らしていた。   「安心して下さい。  火影サマにとっても、いい話ですよ。」   新月の言葉は、火影にとって不安になれとしか聞こえない。   「・・・ゲンマ、一番の年長者なのじゃから、こやつらを押さえてはくれぬかの?」 「オレが?こいつらを?  無理に決まってるじゃないですか。  それに、オレは何でここに居るかも分からず、拉致された側ですよ。」   拉致されたというのは建前で、楽しむ為に来ましたと表情が言っていた。   「火影サマ・・・・後継者決めませんか?」   ほら良い話だろ?と新月がニコニコと話しかける。 日食とゲンマは目を見開いて新月を見た。   「後継者のぉ。お前達の中から火影を出すのか?」 「却下。  ここに居る全員の幸せな老後の為の生贄ですよ。」   うわぁ〜全然言葉飾ってねーよと、呆れた顔のゲンマ。 しかし、火影は楽しそうに笑った。   「ほぉ・・・・わしの幸せもかかっておるのか。  それは真剣に話し合わなければならないのぉ。」   自分も一旦はのんびりとした老後を送るはずだった。 しかし、あっという間に管理職に戻され、一癖も二癖もある部下に頭の痛い日々を送っていた。 一切表舞台から遠のきのんびりと術開発をやる老後を思い描く。 火影の妄想は光り輝いていた。   「で、五代目になれそうな良い人選はあるのか?」 「や、違うって。俺達は六代目を推薦しに来ただけ。  んで、六代目として認知されるまでの間を考えて欲しいんだけど、誰かいねー?」   相も変わらず、偉そうな物言い。 しかもこの場、このメンバーで実権を握っているのは火影ではなく、新月だった。 火影は、呆れる反面、子供の成長を嬉しく思ってしまう。 そんな事を思った時点で負けているのも知っている。   「まずは、六代目の名前を聞こうかの。」 「凛。」   日食がなるほどと笑い、ゲンマが可哀想にと凛を哀れむ。   「なるほど。適役ではあるな。  しかし、あやつが今の立場を手放すかのぉ?」 「とりあえず上忍になってもらって、受付け業務からは開放だな。  あの腕ならすぐに周りに認知される。  で、凛がやっていきたい事はアカデミーの教師だろ?  火影様自ら教師ってのもいいんじゃねーかって。  そのぐらいには、色々叩いて、暗部も増やしておく。  まぁ・・・・大丈夫にシマショ。」   どう大丈夫にするかは、とても恐くて聞けない。 木の葉の事務関係を全て手中にしている新月が言うからには、凛の逃げ道はすでに無いと言っていい。   「で、お主達は何をするのじゃ?」 「五代目の間に、大掃除と後輩育成だな。  それでお役御免にしてもらいてーんだけど・・・・ま、長は続けてやるよ。」   少しは手を残しておいてやるという態度、偉そうな新月。   「じゃぁ、オレも掃除と後輩育成!凛の時代になったら、オレは上忍の仕事だけでいいや。」   自分も仕事を減らそうと、しっかり発言の日食。   「私は、今まで通りで。凛さんの時には、特別上忍に戻りたいですね。」   長がしっかり長してくれるなら、自分はゲンマと戦いたいと主張のハヤテ。   「オレが手伝える事は手伝うけどよ。何かあんのか?  ま、オレは変わらずか。」   ニヤニヤ笑いながら、オレは普通の人生歩みますと一応主張のゲンマ。   「という事だから。  オレ達の動きを容認し、凛に引き継ぎをちゃんとしてくれるようなヤツ居る?」 「・・・・・・難しいのぉ。  ワシも五代目は考えていたのじゃが・・・・・今上げられるのは二人、自来也か綱手じゃ。  どちらも六代目の中継ぎなら引き受けてくれるかもしれぬ。  掃除も喜んで応援してくれるじゃろう。  ただのぉ・・・・・・。」   火影が頬をぼりぼりと掻く。   「自来也はとことん逃げるだろうな。  綱手は話でしか知らねーんだけど・・・・・借金持ちの火影ってありか?」 「・・・・・木の葉が肩代わりかのぉ・・・・。  あやつの事だから、木の葉を元に賭けをしかけないのぉ。」   人材不足が著しい木の葉。 頭が痛い事この上もない。   「火影様、綱手様は私達を受け入れますでしょうか?」   ハヤテは、誰が火影でもいいと思っていた。 問題は自分達が自由に活動出来る事。その一点がもっとも重要な事だった。   「昔の綱手なら笑って受け入れたじゃろう。  今の綱手は分からん。  ふむ・・・・・・・・・・・・・・・・新月、日食、お前達に任務じゃ。  綱手を捕獲してもらおう。」 「じじぃ!連れていきたいヤツ居るんだけど、いい?」   火影の司令をにこやかに、口挟む日食。   「ほぉ、お前達と一緒にか・・・・・だれを連れていく?」 「日向ネジ!いいよな?」 「ほぉ・・・・結果を楽しみにしておるぞ。  では、新月、日食、日向ネジを連れて綱手を捕獲するように。」 「「御意。」」   新月がニヤニヤと日食が楽しげに頭を下げる。   「ハヤテ、当分の間お主が長の代わりを勤めるよう。」 「御意。」   いつもの事ですねと一つため息を付くのを忘れないハヤテ。   「ゲンマ、新月が出立する前に、育成するリストを受け取るように。  明日より、新月の指示に従い、割り振りと育成を頼む。」 「御意。」   ゲンマが、それも面白そうだと笑う。   「ハヤテ、下忍の油女シノ、同じく春野サクラ、秋道チョージ、この三人は訓練後にハヤテが叩いてくれ。」   なるほどと、ハヤテが口の端をあげる。   「訓練後に頭が働きますか?」 「させろ。」   うわぁ〜鬼と日食。 ではその通りにとにこやかに微笑むハヤテ。 オレは手ぇ抜かねぇぞとニヤニヤ笑うゲンマ。 子供達を頼んだぞとおおらかに微笑む火影。   任せろと、ここに結成された幸せ追求させろ隊班長こと新月が笑った。           そして、下忍達だけではない、中忍、上忍達まで巻き込んだ、5人の幸せを追求させろ隊の作戦が開始される。     【続く】    




 


    ・・・・実は、これ以前の話を1つ書かなくちゃなーと途中まで書いて挫折。 なげる事を決意(^-^;) つか、そのうち何か思いついたら、日の目を見せる事にしようと決定致しました。 おかげで、こっちに手をつけられた次第です。   極悪メンバーです。 つか、ある意味極悪のトップを行けるはずの凛は生贄です。 ただ、生贄のまま黙って居るタイプではないので、これからどうなるか楽しみです。   そして、幸せ追求させろ隊の5人とも自分達の幸せの為ならば、生贄の一つや二つ悪魔に軽く差し出す輩ばかりです。危険です。1の生贄はとりあえず凛でした。   シカマルは、ナルトとのんびりとした余生の為ならメンドくせーを返上致します。ついでに悪知恵大量に持っています。 ナルトは、シカマルとのんびりとした余生の為なら何でもやっちゃいます。ついでに実力トップです。 ハヤテは、ゲンマと戦える場をもらえるのなら、極悪人に軽くなっちゃいます。こちらもシカマルほどではありませんが、悪知恵大量に持っています。 ゲンマは、ハヤテと戦える場をもらえるのなら、何でも軽くこなしちゃいます。凛には劣りますが、ナルトとの訓練により、カカシの上を歩けるぐらいにはなっているようです。 火影様は、ナルトとシカマルの幸せと、自分のお気楽な余生の為ならば、権力の行使も厭いません。つか、とんでもない事を言いそうでちょっと恐いです。   とりあえず幸せ追求させろレンジャーは、始動しました。 あぁ、レッドはナルトだなとか思っている場合ではないですf(^-^;) どこら辺で話を切ろうか、現在悩み中。 とにかく各話完結に書けば、どこでも切れるなと悪どい事を考えている未読猫でした。     【04.09.01】