「ザナルカンドは、魔法の世界だった。  この世界で術が多種多様の研究されているように、ありとあらゆる魔法が研究対象となった。」 「それは、魔法研究の為か?」 「いいや、戦争だ。  どこでも戦争の為に、技術ってのは進化するもんだろ?」   シカマルの黒い瞳が、深く底の無いものに。     どの時でも…どの宙でも…どの世界でも…変わる事を祈って… 2     それから、ラトゥノは毎日シーマの元に来るようになった。 きっかり、シーマが食事を終えた時間に。 あまりの才能ゆえ、周りに同い年の友人が一人も居なかったシーマは、目の前で楽しそうに笑い、ふくれっ面して拗ねる、そして今までの自分では知りようのなかった事を語るラトゥノに惹かれた。   「あ、そうだ。明日は来れないってば。」 「あー?じじぃに、ピーマン食うまで家を出るなって言われたか?」   たちまにラトゥノの頬が膨れる。 シーマは笑いながらも、こんな顔で怒る17歳ってありか?と少し呆れる。   「シーマっ!前から言ってるだろっ!ピーマンなんか食べなくても、これだけ大きくなったってばよっ!」 「でもオレよか小せぇし?」   くっくと笑いながら、ラトゥノの頭をポンポン叩く。   「シーマっ!」 「はいはい…で、明日何があるんだ?」 「おう!明日は仕事だってば。」   誇らしげにラトゥノが笑う。 心からの笑みだって事は分かっているが、この世界が彼に対して思っている事を正確に把握しているシーマは、心の中で眉を顰める。   「んじゃ、オレもついてく。」 「へ?」 「殺人人形ラトゥノの腕は最高なんだろ?見てーな。」   ラトゥノが目を瞬いてから、太陽のように笑う。シーマは目を眇めた。         いくらシーマがエリートコースを歩み、将来の地位を約束されていたとしても、上からの指示が無い限り表立って剣士についていく事は出来ない。 優秀な魔法使いを輩出する名家であればあるほど、世間体は重視された。 自分が一歩でも道を外したら、容赦無く存在を無き者とされるだろう。 今までの自分であれば、本が読めれば良いの一言で済んだ事だったが、ラトゥノが居る。 ラトゥノと一緒に居る穏やかな時間を無くしたくはなかった。   それ故、ラトゥノに会っている間、ありとあらゆる魔法と頭を駆使した。 元々気難しく、人嫌いという体裁のおかげで、自分の部屋に近寄る人間は少ない。 部屋には鍵がかけられ、庭に近づくとテレポ(通常ダンジョンの入り口に戻る)やデジョン(一つ前の部屋に戻る)が自動で発動するようにし、加えてドレイン(MPの吸収)で相手の魔力を吸収する事によって、何が起こっても対処出切るよう体力を温存した。   しかし、今回それでは誤魔化しようが無い。とりあえず仮病という病気になってみた。 食欲が無いと言い、鍵のかかった部屋に篭る。 今現在外を歩いていて、ラトゥノと現場に向かっているけど…。   「なぁ、本当に大丈夫?」   いくら使われる側だとしても、ルールは知っている。 ラトゥノは、心配そうにシーマを見あげていた。   「あー?大丈夫に決まってんだろ?  あらゆる魔法を駆使してきたからな、心配すんなって。」   高く結い上げていた髪は下に降ろされ、フードを深く被ったシーマはメンドくせー事考えんなと、ラトゥノの頭をポンポンと叩く。   「うーーーー、絶対シーマって、オレの事子供扱いしてっだろっ!」 「してねーって。可愛いなーとは思ってるけどな。」   目の前に盛大に膨れてる頬を見ながら、シーマは笑う。 余計悪いってばよーっ!と、ラトゥノはドスドス先に歩いて行った。     ザナルカンドは、機械都市ベベルと戦をしている。 しかし、その状態も膠着しており、現在都市境で小競り合いをする程度だった。   目の前の敵にシーマの目が見開く。 聞いていた状況よりも、生々しい現状。 どうして、たった一人の剣士に対し、一軍と言っていい人間が目の前に居るのか理解出来なかった。   「ラトゥノっ!」   慌てて叫びながらも、プロテスを開放するシーマが、再び驚愕に目が開かれる。 目の前に居る剣士が誰だか分からなかった。 見慣れた金髪は変わらない。 しかし、あれだけ暖かに微笑むコバルトブルーの瞳が、冷たい凍て付くようなアイスブルーに変わっていた。 口の端があがる。 自分に向けて笑っているのが分かった。 凝視続けるシーマに背を向け、ラトゥノが走った。   「殺人人形……。」   ラトゥノの腕が縦横無尽に振るわれる。 その度に、真っ黒なオイルと真っ赤な鮮血が溢れる。 銃が、戦闘ロボットが、人間が、あっという間に動かぬモノに変わっていく。 決して、ラトゥノが怪我をしない訳では無い。 深い怪我を負っては居ないが、それでもいたる所から血は溢れている。 しかし、どの攻撃もラトゥノを止める事は出来ない。 真っ赤に染まっていく人形。   いつの間にかシーマの視界は歪んでいた。 溢れてくる感情とは別に、冷静な判断と回答を頭の中では導き出している自分に眉間の皺が増える。   「ケアルガ……。」   必要があるとは思えなかったが、ラトゥノに対し魔法を放つ。 あの体は、痛みを感じていない。 あの体は、既に修復を必要と感じ勝手に機能を開放している。 人形は、敵以外何も見えていない。 人形の頭の中には、破壊と殺戮の命令だけが響いている。   召還魔法によって贄になったモノは、老いない、死なない、そして召還師の指示によって召還獣を具現化する。   ラトゥノの体は、事前に組み込まれた何かによって、最大の治癒能力と共に敵を排除している。 これは……人間に対しての冒涜だ……握り締められた拳からは、血が滴っていた。 シーマは未だ歪んだ景色を、一つも漏らすこと無く見続けている。     ラトゥノの周りに動くものが一つも無くなった。 それを確認した後、動かないが唯一温度を持っている体の方へ足を向ける。 アイスブルーの瞳がシーマを見た。 驚き見開いたアイスブルーは、一瞬でコバルトブルーの瞳に戻り、ラトゥノはシーマの元へ全速力で走った。   「どどどどどどうしたってば?」 「あー?」 「しししシーマっ!涙…。」   ラトゥノはシーマの頬に流れている雫を袖でごしごし擦る。   「あ?…涙?……あぁ、すっげぇ戦いだったからな埃が入った。」   シーマの言葉に、ラトゥノがへなへなと座り込む。   「怪我したかと思ったってばよ〜…。」   シーマは傷ついた掌を、マントの中に隠す。   「ラトゥノは凄いな…。」   微笑みながら、シーマの掌がラトゥノの髪の毛を撫でる。   「殺人人形は、この世で最高の剣士の肩書きだってことが、良く分かった。」   殺人人形という言葉を、尊敬を持って紡ぐ。 ラトゥノが嬉しそうに笑った。                 ◇◆◇                 「銃とは何じゃ?」 「鉄で作られた攻撃用武器。  筒から高速で飛び出した弾が出てくる。  人が投げる手手裏剣が、100倍もの速さで来るようなもんだ。」   忍具の特性も、人の限界も熟知している三代目が、恐ろしいものじゃなと小さく呟く。 そして、その武器の中で戦い生き残れる才能に、背筋が寒くなった。   「それを…唯の子供が…。」 「あぁ、あいつは勘がいいのか、運動神経が特出していたのか、ほぼ避けていた。」   三代目の掌が顔を覆う。   「ラトゥノはナルトなんじゃな?」 「…そうだ……。」    




 

  はいはい、気づかれたでしょうか?なぜラトゥノって名前か?シーマはそのままだぁやねぇf(^-^;) 名前付けるの大嫌いです。 ので、適当ぶっこきました。   打ちなれた二人、そして世界は違えど打ちなれた世界。 お気楽でございます。 一つ気に入らない事は、設定が暗い(ーー;)まぁシリアスだしね。 笑いが無いから潤いが無くて…やはりお笑い人生でネタ頭でございます。 打ちやすいけど、楽しくはいまいちないかもf('';)   あぁでも安心して下さい。途中は洒落にならないぐらい暗かったり、痛かったりしますが、最後の最後にハッピーエンド予定ですから。 つか、それ以外考えられないし。私がハッピーエンド以外受け付けないよ(・_・)b