どの時でも…どの宙でも…どの世界でも…変わる事を祈って… 13   「やっと終わったってばね……」   火影就任式も終わり、祝福してくれた仲間とも別れ、ナルトとシカマルは二人っきりで火影執務室に居た。   「だりぃ」 「明日から、もっとだるいってばよ」   既に机の上には、五代目が選別として残した書類が積み重ねてある。   「だな…お前、仕事しろよ」 「むぅ〜〜…と、とりあえず…が、頑張るか……かも……?」 「それが、頑張る姿勢かよ?」 「だって、シカマルがいるってば」 「……お前、俺に全部押し付けた瞬間、俺は抜け忍になるからなっ!」   シカマルのらしい言いように、ナルトはゲラゲラ笑う。 そして、笑いながらシカマルの前に立った。   「シーマ」   シカマルの目が見開かれる。   「ずっと傍に居てくれて、ありがとう」 「ナルト?」   ナルトは微笑ながら、涙をぼたぼた零していた。   「ずっと…遊んでくれて、ありがとう」   ナルトの手が、シカマルの手を握る。   「シーマ……ザナルカンド一の魔法使い。シーマ=ラー…」 「なっ?!!」 「俺の中の魔法の血が…思い出させてくれたってばよ…」   逃げようとするシカマルの手を、ぎゅっと握り締める。   「俺が、ラトゥノの俺が、狐夜の俺が……いっぱいの俺が、シーマに、遠思に……いっぱいのお前に、ありがとうって…幸せだったって…言ってるってばよ」 「……う…嘘だ…」 「嘘じゃないってばっ!  黒髪の黒目の一番の友達が、いつも傍に居たからっ、俺はいつだって、どの世界でだって、幸せだったっ!」   ナルトの手がシカマルの顔を包み、流れている涙を拭う。   「一年前から、不思議な夢を見ていた。  何でこんな夢を見るんだろうって、ずっと思っていた。  何で起きた後、涙が止まらないんだろうって、ずっと思っていた。  きっと、シーマの血と交わったラトゥノの血が教えてくれたんだってばよ。  シーマにちゃんと言わなくちゃだめだって…」 「…何…を?」 「俺は、いつだって幸せだってばよ」   そう言うナルトの笑みは、幸せそのもので、疑う事さえ出来ない。   「だから、これが最後だってばよ」 「そうか…」 「いっぱい、遊んだってばよ。  それに、これからだって、もっと遊べる」 「そうだな…」 「だから、最後まで一緒に…遊ぼう…って…ば…よ」 「あぁ…」   二人共、お互いの頬を両手で覆い、涙を流しながら、涙を拭いながら、お互いを瞳を見つめていた。   「最後まで…だってばよ」 「あ…当たり前だ…」 「ずっと傍に…いて…」 「今までだって…そうだっただろ?今回も…同じだ」 「そうだった」   二人して、くすりと笑う。   「馬鹿なのは、俺だな…。  俺は、お前の事を全然理解していなかった。  俺は幸せなお前に気づかず、短い生で死んでいくお前は不幸だと思い込んでいた…」 「俺は、いつだってシーマと一緒に居る事が、一番嬉しかったんだってばよ」 「気づかなかった…な」 「酷いってばよ」 「悪ぃ」 「うん」   シカマルは、ナルトの手を静かに離し、ニルヴァーナを具現させる。   「それ…持ってきたってば?」 「あぁ、最後の魔法を使うのには、どうしても必要だったからな」   ナルトの前には、シカマルの姿と重なるように、ザナルカンドのシーマが居た。   「改良したから、前よりは短時間で終わる」 「うん」 「これが最後の確認だ。いいんだな」 「うん、だから精一杯シカマルと、シーマと遊ぶってばよ」   満面の笑顔でナルトが言う。   「あぁ、精一杯遊ぼうぜ」   ニルヴァーナが床を叩き、硬質な音が部屋に響く。 木の葉とは違う言葉が、呪文が、シカマルの口から流れ出る。 言葉が光を産み、シカマルの周りを取り巻いていく。 ナルトはそんな姿を、あの時のままのシーマの姿を、見つめ続ける。 昨日の夢で見た、シーマの魔法。 その光が自分をも包んで、自分の魂を変えていく。 自分の中の血が沸騰したかのように、ざわめいている。 それが、またたくまに体の中から消えていった。 傷も無い右手首から赤い塊が分離していく。それは、一時空中に止まった後、何もなかったように霧散していった。 そして、同じようにシカマルの右手首からも赤い塊が現れる。 その塊が霧散した時、シカマルの詠唱も静かに終わった。   「……ナルト」 「これからが始まりだってばよ」 「そうだな…」 「二人で、いっぱい幸せになるってば…」 「あぁ、最後まで一緒にだ」   ファイヤ(炎系の魔法)と一言シカマルが唱え、ニルヴァーナが燃える。   「もう、これも要らねー」 「シカマルの術があれば、十分だってばよ」 「お前ほどじゃねーよ」   二人の足元で灰になったニルヴァーナが、窓からの風にのって散っていく。   「なぁ、ナルト。いくらラトゥノだからといって、あの書類の手伝いはしねーからな」   シカマルが笑って言う。   「う"っ……お願いだってばっシカマルっ!シーマっ!俺、絶体絶命の危機だってばよ〜」 「ほぉ〜絶体絶命なんつー難しい言葉を良く知っていたな」 「シカマルっ!」 「そうだな、お前が幸せだと俺に実感させてくれたら、手伝ってやってもいいぜ」 「そんなの簡単だってばよ」   ナルトは、シカマルにしがみ付く。   「俺は、いっつもすっげー幸せだってばよ」         -End-  




 

  長らくお待たせしました。 ははは……ようやく終わった…orz 達成感? 書き始めた時には、個々の過去、二次の二次を書く事が楽しくて、それ以外になーーーんも考えていませんでした。 こんな最後になるんですねぇ(゚゚;)自分がびっくりです。 FFXから始まったお話。現在の東京、ワンピース、十二国記、そしてNarutoと、ゴージャスでした。 私的に。 今現在、恋愛未満の二人ですが、きっとこの後も、ずっと二人で幸せしているでしょう。   激しく暗い話(当サイト比)でしたが、皆さんが楽しんでいただける事を祈って……  

  07.07.27 未読猫