シカマルの手に細い杖−房の付いた紐が一端を飾り、細かい文様の書かれた飾りが上端を飾る−が現れ、小さく何かを呟いた。 「それは?」 「これはロッド、ニルヴァーナと言う。 オレは未だ小さな赤子だからな。座らせてもらう。」 そう言って目には見えぬ椅子に優雅に腰掛ける。 三代目は空気の動きを微かに感じ、風を操っているのだろうと推測する。 「今は、何も分からぬだろう。 必要な事は全て語ろう。 お前が敵と知れば、その言葉は全て抜け落ちるよう術も紡いだ。 三代目火影、オレが初めて生を受けた話からだ。」 どの時でも…どの宙でも…どの世界でも…変わる事を祈って… 1 「オレが生まれたのは、ザナルカンドと言う名の、魔法と剣の世界だった。」 「魔法とはなんじゃ?」 「魔法は術のようなもの。 チャクラを使わずに言葉であらゆる攻撃や防御が実現できる。 但し、これには才能が必要だ。 チャクラの無いものが術を操れないように、魔法使いの素養の無いものがいくら言葉を紡いでも魔法は具現しない。」 三代目が話を聞きながらも、分かりやすい言葉の選ぶ相手の頭脳に感心する。 未だ話しの行く末は一切見えない。 なぜ、このような話になるのかも分からない。 しかし、三代目は真剣な面持ちで目の前の子供を見、言葉の全てを理解しようとした。 「お主の座っているモノは、空気を魔法によって操っているという事か?」 「そうだ。」 「オレは、魔法使いの家系に生まれ、その中でも群を抜いて魔法の才があった。 ザナルカンドにいて、魔法を操れるという事は、エリートを示している。 将来の地位を約束されたようなものだ。 ただオレは、約束されたような地位に興味は無かった。 魔法を編み出す事だけに興味を持ち、恵まれた生活の中、一人本ばかり読んでいたな。」 シカマルの瞳は何も映さず、言葉を淡々と紡いでいる。 「そんな時、金色の髪と蒼い瞳を持つ、自分と同い年の人間に出会った。 名は、ラトゥノ。 部屋からほとんど出ない自分でも知っていた名前。 殺人人形ラトゥノとの出会いだった。」 ◇◆◇ 「なぁなぁ、お前ってシーマ?すっげぇ魔法使いなんだってば?」 窓枠からひょっこり、金色の頭と蒼い瞳が覗いてきた。 目の前に澄んだ瞳と輝くような笑み。おもちゃを目の前にした子供のような、ワクワクした感情が伝わってきた。 「あー?お前誰?」 「オレ、オレってラトゥノ。」 シーマは、目の前の少年が殺人人形という言葉にあまりに不似合いで、同名の他人だと考える。 「知らないってば?オレって結構有名なんだけどなー。 殺人人形って立派な肩書き貰ってるってばよ。」 侮蔑を持って語られる殺人人形という言葉が、まるで英雄かのように語る。 ザナルカンドで剣士といえば、人殺しを生業とする最下層の人間のする事。 魔法使いも同じ人殺しには違いないのに、方やエリートで、方や人殺しのある意味罪人扱いだった。 「知ってる。で、何か用か?」 「へへっ、あのさーオレって魔法まだ見た事ないんだってば。」 キラキラした目で自分を見上げてくる。 その表情に驚くと共に、語られた内容に愕然とする。 いくら、罪人扱いの剣士とは言えども、当然ザナルカンドを守っている者たちの集団には変わりない。 たとえ、何もしない一般人から蔑まれようとも、戦いには必ず魔法使いが付くと聞いていた。 ケアル系の治癒魔法から、防御用のシェル(魔法防御UP)、プロテス(物理防御UP)、攻撃補助のヘイスト(素早さUP)等、いくらでもやる事はある。 訝しげにラトゥノを見た。 「オレって、すっげぇ〜強いんだってば。 だから魔法使いが付いた事ないんだ。」 「…一人で闘う訳じゃねーだろ?」 「すっげー強いって言ったってばよ。 だから、オレはいつも一人で戦ってる。」 目の前の相手は、あっけらかんと、さも当然だとばかりに、あってはならない事を言う。 シーマはまったく知らない相手の現実を推測する。 罪人扱いの剣士。 道具のように扱われ蔑まされているのを知っている。 いくらケアルをかけられたとしても、体に受けた衝撃まで消せない。 それでも剣士達は闘う事を要求される。 そして彼らはそれに答えなければならない現実がある。 闘う事によって得られる金は、貧困層に取って金を得る少ない手段だったから。 その剣士に魔法使いが付かない。 上のやつらが、殺人人形を恐れて、魔法使いと接触するのを避けている可能性が一番強いと推測する。 普段からエリート意識が強く、大して力の無い魔法使いを馬鹿にしていたシーマは、目の前の剣士の方がよっぽど人間らしく見えた。 シーマがラトゥノの腕に付いたかすり傷に目を向ける。 ケアルと小さく呟いた。 「うわぁ〜すげすげぇっ!! オレって、怪我治るのがやたらめったら早いんだけど、でもこんな一瞬で直った事ってないってば。 うわぁ〜魔法初体験だってばよ。」 「治るのが早い?」 「おう!小さい頃から…何でだか知らないけど、剣でざっくりやられても一日寝てれば治るってばよ。」 胸をはるラトゥノに凄いなと言いながらも、シーマは考える。 人間の治癒能力から外れた言葉に、実験という言葉が浮かんだ。 以前より囁かれる、人間の意志の強さの具現。 召還魔法。 人間の意志を実体化させ、敵を一掃するまで闘わせる。 魔法使いが居るにも関わらず、人間はより楽になることを考える。 人間とも思っていない、同じ人間の体を使おうと考えたのだろう。 対象は貧困層の町の人間。 それは彼らにとって高額な金が入るかもしれない。しかし、それは命を代償にするはず。自分の知識がそう言っていた。 「お前、両親は?」 「いないって。オレが生まれてすぐに、とーちゃんもかーちゃんも戦いで死んだって聞いてる。 その戦いの報酬で、町の連中に育ててもらったってばよ。」 「お前の両親も強かったのか?」 「おう!ザナル一番だったVv」 シーマの瞳が暗くなる。 産まれて間もない赤子を実験に使ったという事だろう。 実験の名は、傷つけられない体を実現する。召還贄の第一歩。 強いと言われた両親の子供ならば、より強い力を得られる……。 「なーなー、また来てもいいってば? オレ、もっと魔法が見たいってばよ。 お前ってば、すっげぇ魔法使いなんだろ?オレと同い年なのにすっげぇなー。」 「同い年?」 「お前って、17だろ?オレも同じー。」 自分より年下だと思っていた少年をまじまじと見直す。 「なななんだってばよ?」 「お前…ちゃんと食べてんのか?」 そう言わずにはいられないほど、細い体だった。 確かに剣士として腕に筋肉があるのは見えるが、とても殺人人形といわれるような体には思えなかった。 そんな物騒な名前は、もっと筋骨逞しい大男が似合うように思えた。 「た食べてるってばよ!」 「……嫌いな食べ物は?」 慌てるラトゥノの言葉に、シーマが冷静につっこむ。 「う……シーマはじーちゃんか?」 ラトゥノが情けない顔をシーマに向ける。 「なるほどな。もう直ぐ昼になる、お前も一緒に食え。 そんなに細い体じゃ剣士とは言えねーだろ?」 ラトゥノの頬が膨らむ。 「残さず食えよ。」 ◇◆◇ 「召還魔法とは何じゃ?」 「まず老化せず傷つけられない贄が、必要となる。 それは、別に魔法使いである必要が無い。 強い心…意思があればいい。 召還する側が贄に対し魔法を持いて働きかける。 魔法使いが贄の意思によって作られた意識を具現化する。 具現化された意思は、魔法使いによって自由に使役する事が可能となる。」 「具現化する?」 意識を具現化する事は術を使っても不可能な事に思えた三代目が、訝しげに聞いてくる。 「あぁ、例えばこの里であるなら、九尾の狐を誰かが強く思い描いたとする。 術者は、魔法によって、それを現実に実体化させる事が出切る。 実体化された九尾は、贄の与えられた能力によって九尾と同等以上の能力を持つだろう。 贄の意思が強ければ強いほど、九尾より更に危険なものを創る事が可能だ。」 三代目はその魔法の発想に驚く。 贄が必要な魔法を考える魔法使いに対し、嫌悪感が湧き上がった。 「贄はどうなるのじゃ?」 「生きた石像となって、歳も取らず、真実の死を与えられるまで、未来永劫使役される。」
はいはい、趣味の最初はザナルカンド…えぇ、FFX、FFX-2の世界でございます。 とは言っても、言葉と大まかな設定だけお借りしただけかなf('';) ザナルカンドがどんな都市でどんな生活が育まれていたかは、設定ありませんからー残念っ!(・o・)b 一瞬、ナルトをシューイン、シカマルをエボンにしようかと思いましたが、話の辻褄を考えそうになって、止めました。そんな事したら説明大変じゃん。 ので、まぁ…名前は聞いた事あるけど、とりあえず違う世界の二人だという事で、堪能してくださると助かります。 FFXを知らない人の方が素直に読めていいと思いますです…はいf(^-^;)