月明かりにぼんやりと浮かび上がる金色の煌き。 蒼い瞳は今閉じられ、規則正しい寝息だけが聞こえる。   「ごめんな・・・ナルト。  でも俺の心は全てお前のものだ。  どんな形であれ。」   静かに唇が重ねられる。 ナルトは動かない。 明日の朝まで起きない術をかけられている。   愛おしそうに少し頬を撫で、静かに見つめる。 そして、背を向ける。 二度と振り返る事無く扉が閉じられた。     【たとえ出会いが変わっても】     「くっそ、結構チャクラを使った。  この先計算違いがどこまで起きるんだか・・・・ま、何とかするっきゃねぇよな。」   シカマルが走る。 景色は先ほどと微妙に違う。 それでも、向かう先は行きなれた場所。 目を閉じていてもたどり着く。   窓枠をくぐる。 これも何時もの事。 ただ、目の前の机に座っている人物が違う。 さっきまで見ていた、眩しいほどの金の髪と蒼い瞳を持つ・・・・・・四代目。   「や、初めまして。  あ・・・・オレは知らねーけど、あんたとは会ってる?」   シカマルは四代目の真正面に立つ。 目の前の人物は興味深げにシカマルを見つめる。 しかも、誰も呼ばない。   「君の名前は?」 「あぁ、奈良シカクの息子のシカマル。  これで分かるか?」 「僕が見たシカマル君は、まだ生まれたばかりの赤ちゃんだったはずだけど?  これは何かの術かな?」   シカマルはなるほどと口元を上げる。 頭脳明晰だと聞いていた。 それは噂だけではなかったようだ。   「話が早くて助かるな。  んでだ、あんたに手伝ってもらう。  あんたはオレに手を貸す義務がある。  っても、理由もなく手を貸す事なんか出来ねーだろうから、これを読みな。  その間に、オレは探し物をしてくる。」   四代目の目の前に放り投げられるレポート。   「君の探す場所は分かってるのかい?」 「あぁ、三代目によく怒られてっからよ、そこら辺は任せておけって。  誰にも見つからねーよ。  それより、速攻それ読め!」   里の火影に対し、いつも通りの命令口調。 それに対し、おおらかな笑みを浮かべて、分かったと律儀に言葉を返す。   しかし、目の前に渡されたレポートの表紙を見て、訝しげな顔になる。 タイトルは、うずまきナルト。 そして、読み進めていくうちに、表情が凍り付いていった。 シカマルの気配を背後に感じた時、四代目は振り向きもせずに問う。   「これは事実なんだね?」 「あぁ、オレが居た時間では、それが事実だ。」   四代目に渡したレポートは、シカマルと三代目が作成したもの。 ナルトが産まれてから、11歳の今に至るまでの経過及び任務結果が綴られているものだった。   「君は?」 「オレは、暗部青藍(せいらん)の相棒紫黒(しこく)。」 「そうか、僕は何を手伝えばいい?  明日起こる事を未然に防ぐために君は来たのだろ?」   真剣な眼差しをシカマルに向ける。 突然やってきた知らない相手。 年齢はというと、アカデミー生ぐらいと思われる子供。 聞き覚えのある名前を名乗られても、普通は納得しない。 目の前の相手が、未来から来たと言っている・・・普通は笑い飛ばす内容だろう。 それでも、真剣に手元に置かれたレポートの内容を受け止める。 さすが、火影様ってところかと、シカマルは関心した。   「オレが探していたのは、明日壊される予定の九尾が納められた祠の位置。  これから行く。」   そう言って、シカマルは既に窓に足をかけている。 四代目は、子供の言葉に素直に頷き、後をついていった。   「オレは自分のチャクラを温存しなくちゃいけねぇ理由がある。  だから、これからやらなくちゃいけねぇ術は全てあんたにやってもらう。」 「方法は?」 「基本は結界に幻術を上乗せするだけ。」   走りながらシカマルが、四代目に巻物を放り投げる。   「これは?」 「オレが作った術だ。  問題点は一年しか保たねー事。  後であんたが、改良して何とかしてくれ。」 「分かった。」   静かな森の中ほどで二人が足を止める。 目の前には小さく、苔むした目立たない祠。   「これが?」 「あぁ、あんたん所にあった文書が間違ってなければ、これが九尾の祠だ。」   四代目が真剣な顔で巻物を見つめる。 表情にこそ出さなかったが、四代目は唖然として巻物を見ていた。 きめ細かい論理式から導びきだされたレベルの高い術。 人は一切寄せ付けず、しかし祠の中に居るモノに対しては自由に行き来の出来る結界。 目の前の子供は今だ11歳のはず。 しかし到底11歳の子供が作ったものには見えなかった。 奈良シカマル。 この子供が自分の明日産まれる子供の相棒で良かったと心から思う。 息子と出会った事を神に感謝した。   「祠からかなり間を空けてくれ。」   シカマルに巻物を放る。   「あぁ。」   シカマルが口の端をあげる。 噂で聞く限りは、評価の高い四代目を値踏みするように見上げた。   複雑な印が切られる。 チャクラが掌から青白い弧を描いて、祠を覆っていく。 祠が全て青白い光に覆われた後、四代目が地面に手を付く。 それが合図だったかのように、突然土中から様々な木々が芽生え育っていく。 早送りにされたフィルムのように、見る見る大きく育つ木々。 そして、小さな祠がまったく見えなくなった時、静かに四代目が立ち上がる。 四代目にとってもチャクラを大量に消費する困難な術だったのだろう。 額には汗が浮かび、肩で息をしていた。 しかし、そんな事にも気づいていないのか嬉しそうに振り向き、シカマルに笑顔を送る。   「これでいいかい?」 「さすが四代目だな。」 「君は、僕の息子と二人で暗部のトップなんだってね。  褒められて、嬉しいな。  これで、息子にも自慢出来る。」   嬉しそうに満面の笑みを送る。 そして、シカマルの手を取る。   「ありがとう。  僕はこれから君に何をすればいい?  それから、君がここに来た術式を見せてくれないだろうか・・・・。」   なるほど人望があるってのはこの事かと、シカマルが目の前の真剣な顔をした人を見る。 金の髪。蒼い瞳。横にいつも居る相棒と同じ姿。 シカマルが苦笑を浮かべる。   嘘を付けない。   黙ったまま、ここに来た術式を記述した紙を渡す。 四代目が不安そうな顔で術式を目で追う。 そして、思ったとおりだと、ため息をつく。   「やっぱり分かるか。」 「あぁ。」 「なぁ、あんた頭がいいんだろ?  オレに教えてくれよ。      オレが、もし戻れたとしたら、あのままの世界が続いてんのかな?  それとも、ここで修正された世界に変わってる?」   年相応の子供の表情をした、困った様子のシカマルが居た。   「もし、そのままの世界だったら、戻るのかい?」 「当然だ。  ナルトを一人にはしておけない。」 「でも・・・戻れないよね?  それとも別の術式がある?」   黙ってシカマルの首が振られる。   「大丈夫。  時間はいくらでもある。  僕も一緒に考えるから。  そして、一緒に君が消えた地点に行ってみよう。  そうすれば、答えは出る。」 「じゃぁ、1年ぐらいはあんたが一人で考えてくれるか?」 「一年?」 「ま、付いてきな。」   そう言って、再びシカマルが走り出す。 慌てて四代目が後に続く。 二人は一言も口にせず、ただひたすら走り続けた。   そして一軒の家の前で立ち止まる。 シカマルにとっては、見慣れた自分の家の前だった。   「すまねぇ、あんまりチャクラ使いたくねぇんだよ。  オレをここに連れてきてくれねぇ?」 「分かった。」   四代目が、真っ暗になった家の中に溶け込んでいく。 シカマルは空を見上げる。 星が綺麗だなと一言呟き、ため息をついた。   「お待たせ。」 「いや      ・・・・・・・・・・・・・・やっぱりオレが消されるか。」   子供の存在を強く感じた時から、体の力が抜けるような嫌な感覚が続いていた。 黙って最後のレポートを四代目に渡す。 これから行う術の説明が記述されている。   流れるように印が切られる。 先ほど、四代目が切った印よりも複雑に、そして長い印。 シカマルの掌に淡い光が漂う。   静かに、四代目が抱く子供の額に触れる。   光が子供に吸収されて・・・・・・・そして、シカマルの気配が希薄になる。   「シカマル君っ!」 「四代目、また1年後にな。」   口の端をあげたシカマルが、四代目の目の前で空気にとけていった。       「あんたなぁ、オレは前の自分と同じ道を歩む予定は無いんだけど?」   ったくメンドくせーと、シカマルがぼやく。   「でもナルト君、入るって言ってるよ。」   シカマルが嫌そうに四代目を見上げる。   「あのさぁ、じじぃの書いた分って時間が無くて見てねぇんだけど、何が書いてあった?」 「君達が恋人だって書いてあった。」 「オレは正確には、あの時のオレとは別人だからな。  関係ねぇよ。」   ふて腐れたシカマルに、四代目のくすくす笑いが答える。   「だったら、何で2歳にも満たない子供が、しっかりと術式構築して、人のチャクラ使ってまで未来に行こうとするかな?」   今シカマルは、4歳。 二年前に、四代目のチャクラを使って、記憶にある自分が居た地点に戻ろうとした。 しかし、そこは何も存在しない空間だけ。 そして、二人は結論付ける。 あの将来はなくなった。 そして、これから将来を歩む予定の自分達には見る事の出来ない未来が、この何も無い空間なのだろうと判断した。   「記憶がヤレって言うから仕方がねーんだよ。」   四代目がくすくす笑う。 そこに、音高く響く足音。 金色の風がシカマルにタックルをかける。   「シカ〜!!」 「ってーな・・・んだよ。」 「オレ、青藍だって。  シカマルにはオレが名前付けてやるなっ!」   嬉しそうに楽しそうに笑う目の前の子供。 シカマルの転がった足の上にちゃっかり居座る。   「あのな・・・・・・紫黒!  シカマルの髪ってすっげぇ〜綺麗な黒なんだけど、日にかざすと少し黒じゃない色が混じるんだ。  すっごく黒に近い紫!  だからっ!」   ナルトがどうだとばかりに、ニッコリと笑う。 シカマルは動けなかった。 目を見開いて、ナルトを見る。 懐かしい言葉。 口調は随分違うけど、頭に残された記憶が同じ内容を綴る。 表情が歪む。 ナルトの肩に顔を埋めた。   「嫌だった?」 「・・・いいや・・・・仕方がねぇ・・・暗部になってやるよ。」     【End】    




 


    すみません、誰か暗部名になりげな適当な?名前一覧下さい。 まじ毎回困っています。 どうにかしてくれぇ〜(T^T)/))ばんばん。   えースレシカ×スレナルです。 スレナルほとんど出てこないけど、CPものには違いない。 前からずっと書きたかった時間移動モノ。 シカマルなら絶対やると思うのですよ。<術で、実現可能かどうかは知らないけどね。 出来たら絶対やってると思うのですよ。 いいや、やってるね。<きっぱりと。 私的シカマルの基本中の基本ってことで(・o・)b