ニンマリ笑ったシカマルの笑みが怖かった。 絶対何か企んでいる!オレの勘に間違いは無いっ!   そして告げられた一言…   「明日オレの誕生日だから、何かなんて言わねーお前な」   ………まだ手さえも繋いでないのにないのにないのにないのに(エンドレスないのに)   誕生日プレゼント   エンドレスないのにを終了後、ナルトは現状を改善すべく戦略を練り実行に移した。 情報収集もやった。 いくつかの案を実行すべく動いた。 しかし、考え付いた案は全て失敗。 最後に天からの啓示が歩いているのを見て、なんとかなりそうな予感…いや、希望を手に入れた。 そして、現在ナルトはちまちまちまちま料理を作っている。 一瞬薬を盛ろうかとも思ったが、相手は奈良家の長男、すぐにばれるのは目に見えているので諦めた。           「なーなーおっちゃんおっちゃん、シカマルの好きな料理って何だってば?」   歩いていたシカクの服をむんずと捕まえ、下忍のナルトが聞く。   「おーナルト久しぶりだなぁー」   がしがし頭をこねくり回し楽しそうに笑うシカクは、ナルトにとって木の葉でも珍しい大人の一人。   「クソ餓鬼の好みって、何でだ?」 「おっちゃんだめだってばよ!明日はシカマルの誕生日だろ?  オレってば、お祝いするんだってばよっ!」   どうしてそんな事を聞く?と不思議そうな表情を浮かべた後、再びゲラゲラと笑いながらナルトの背中をバンバン叩く。   「そーいやーそんなもんもあったなぁ。  んじゃ、あいつはナルトに祝ってもらうんだな?  明日はかーちゃんに、夕飯はいらねぇって言わなくちゃなー」 「おおおおっちゃんっ!オレそんなに大したもの作れないってば〜。  食べるの直ぐに終わっちゃうってばよ〜」   長年の一人暮らし、料理の腕に自信はあるが、シカマルに長居してもらう予定は一切無い。 さっさと帰って頂き、実家で暖かな食事とお祝いをしてもらおう作戦だった。 両親を餌に帰ってもらう算段は、豪快な父親によって失敗に進みつつある。   「大丈夫だって!  ん〜クソ餓鬼の好みかぁ……煮魚、きんぴらごぼう、切干大根、卯の花、肉じゃが……まぁ和風メニューを用意すれば何でもいんじゃねぇの?」 「おっちゃん、お父さんだろっ!そんなんでいいってばっ?!」 「だって、オレが料理作るんじゃねぇもん。そんなのかーちゃんに聞けよなぁ〜」   大の大人がもん言うなぁっ!と、瞬間碧に戻りそうになったナルトは、心の中でだけ目の前の大人に暴行を加えた。   「むぅ〜おっちゃん、大人らしくねぇってばよ。  もっとしっかりしないとだめだっ!」   シカクはじたばたしているナルトを見てから、笑いながらさっさと背を向ける。   「オレはかーちゃんとのんびり食事でも行ってくっからよ〜シカマル頼んだぞぉ〜」   掌をひらひら振りながら、去っていく後姿を見ながら、ナルトはブチブチ口の中で文句を言う。 大人なんだから、オレの言葉ぐらいちゃんと聞け〜と、ちょっと情けない口調。   作戦失敗………                 ◇◆◇                 誕生日当日朝の火影執務室。 いつものように変化したナルトは、いつものように窓から侵入した。   「じじぃっ!」   そして、いつものように三代目から怒られる予定だったナルトが、目を見開く…うつ伏した三代目が机から僅かに顔をあげて、ため息をついていた。   「…じじぃ?」 「今夜は休みじゃ」 「休みを取りたくても、仕事が山積みとか言ってたのはじじぃじゃなかったか!?」   半睨みのナルトに、三代目が恨めしそう視線を投げつける。   「な何だよっ!」 「闇が来てのぉ」   シカマルに先を越されたと、ナルトの口から自然に舌打ちが漏れる。 夜の仕事があれば、誕生パーティをさっさと終えて、仕事に出かけられる作戦だった。   「じじぃは闇の言う事は聞くんだぁ〜」   白〜い、冷た〜い、視線。   「ならばお主は、闇に対抗出来るのじゃな?」 「…うっ……………じじじぃっ!今度はオレの言う事聞いてもらうからなっ!  じゃないとストライキだっ!」   悪役レベルのへたれな捨て台詞を三代目に投げつけて、ナルトは窓の外に消えうせた。   作戦失敗………                 ◇◆◇                 「「ナルトー!」」   聞き慣れた同期の声。 瞬時にナルトの頭に神の声が降臨する…これを利用しろっ!心の中のナルトは、降臨した神に跪いて感謝した。   「イノ〜!チョージっ!」   満面の笑みでナルトが二人に手を振る。心から手を振る。   「なななナルト?何か今日あんた変よ」   イノが頬を少し赤らめ、横でチョージが同じく頬を少しピンクに染めて頷く。   「変って何だってばよっ!  オレってばっ!二人が大好きなだけだってばーーーーっ!」   イノとチョージがまとめてナルトから熱い抱擁を受ける。なんとなく笑顔が怖いと思いながらも、二人はちょっと嬉しかったりした。   「ナルト〜、何かあったの?」   ナルトの心の中は、お前らが居てオレの操が救われる予定なんだっ!と叫んでいた。 しかしそんな叫びは一切表に出すことなく、恥じらいながら、上目遣いで、おずおずと二人に話しかける。 自分の外見という武器を──シカマルにだけ効くという訳では無いと最近知った──ナルトは有効に使う。   「あ…あのなー…(ヒナタ風味は、疲れるよなー)…今日シカマルの誕生日だろ?」 「あぁ、それ?ナルトも参加するー?今日10班で祝う予定なのよー」   分身に祝ってどうする?と、ナルトは、速攻心の中で二人に突っ込む。 しかし、ここで負けてはいけない。なにせ自分の最大の危機、ナルトは頑張った。   「そ…それって、オレん家でやらないってば?  オレってば、頑張って用意するってばよっ!それに…オレ…10班って仲が良くて…いいなって…いっつも思ってて……オレ…オレも入りたいな……って……へへっだめ…だめだってば?」   小首を傾げ上目遣いに二人に強請るナルトは、立派な女優さんだった。(決して男優ではない) 可憐で、ちょっと寂しげで、それでも可愛い可愛い女優さん。 姉御肌で、情にもろいイノは既に涙を流しながら、だめって事なんかないわっ!とナルトをきつく抱きしめる。 優しい優しいチョージは、ナルトの頭を撫でながら、一緒にやろうねとほんわか微笑む。 女優ナルトは、心の中で勝ったっ!と大量の風船を空に飛ばしながら、嬉しそうに笑う。 木の葉のこの場所のこの時間は、光と輝きと友情に溢れていた。   神の示唆は成功………?                 ◇◆◇                 「「「シカマル、誕生日おめでとー!!!」」」   ナルトの部屋に入った途端鳴らされるクラッカー。 テーブルの上には、シカマルの好きな和風な料理がてんこ盛り。 ついでに可愛いイチゴのケーキがワンホール。 ナルトがニシシと笑っている。 イノが花束を放って寄こす。 チョージがニコニコ笑って御菓子を差し出している。 シカマルは、仏頂面に磨きがかかった。   『ナルト……これはどーいうこった?』   絶対零度の心話。   『誕生日ってこーいうもんだろ?オレ、誕生会ってやった事無かったから、すっげー楽しいVv』   嬉しさ万倍の笑顔を振りまいて、十五度程度のほんわか小春日和の心話。 シカマルがため息をもらす。   「ありがとうよ」   少し照れながらも、すっかり諦めが入っているシカマルは三人に礼を言い、空いているナルトの横に座った。   「もーすっごいのよー!  全部ナルトが作ったのー!ナルトって料理の才能すっごいあるよー!  あ、ケーキはあたしとチョージからのプレゼントね」   イノの横でチョージがうんうん頷き、ナルトが嬉しそうにへへっと笑う。   「これって?」 「シカマルのとーちゃんに聞いたってばよ!  和食大好きだって?…ちちち違ってたってば?」 「いや…オレの好物ばかりだぜ」   交換日記だけの付き合いで、ナルトが料理出来る事を知らなかったシカマルは、目の前のおいしそうな匂いをのぼらせている料理に目を見張る。 イノがシカマルに箸を渡す。   「食べてみろって」   ナルトの言葉に無言で頷いて、目の前にある煮魚を一口食べた。   「うまい…」 「でしょーーーっ!私味見した時、感動したよー」 「ナルト〜僕も食べていいかな?」 「おう!皆で食べるってばよ〜!」   それから誕生日のお祝いの席とは思えない素敵和食料理と、それにまったく合わない洋風ケーキと、日本茶という組み合わせの宴会は、夜中近くまで続いた。   神の示唆は成功………かも?                 ◇◆◇                 「さて、二人共寝たぜ」 「寝たって言わないっ!無理やり寝かせたんじゃねぇかっ!」   ナルトのベッドに、持ってきたお泊り用寝巻きに着替えたチョージとイノが、シカマルの術によってすやすやと寝ている。   「朝まで起きないよう術をかけたからな、オレはこの状況でも構わねーけど?」 「おおおおおオレは、すっげぇっ構うっ!」   折角お泊りの約束までこじつけたのに、現状はさっぱり変わっていない。 ナルトは真っ赤になって、シカマルを睨みつけていた。 そんなナルトをじっと見ていたシカマルは、一つため息を小さく吐いて、肘を突きナルトを見上げる。   「なー」 「なななな何っ!」 「過剰反応しすぎ」 「なっ…」   真っ赤になって絶句するナルトに、いつもとは違う表情のシカマルが居た。 拗ねているように見える?…でもナルトは絶句しながらも、心の中でブンブン頭を横に振る。 シカマルが拗ねる……ありえない。   「あのさー、オレってお前があんなに料理上手だって知らなかったんだよなー」 「……」 「だいたい交換日記があの内容だろ?知りようがねーよなー」 「…………」 「この家に遊びに来たのだって、今日が初めてで、普段は仕事関係でしかこねーし」 「………………」 「お前が、植物を育てるのが好きだってのは知ってる。部屋ん中見りゃ分かるしな。  アカデミーでの生活も見ていた。  夜の任務の時も知っている。  ……それが全部じゃねーんだよなー」 「…………………ぷっ」   ずっと笑いを堪えていたけど、もう限界だった。 普段斜に構え、やる気の無い、もしくは余裕のある落ち着いた態度しかみせなかった相手が、完璧に拗ねている。 噴出すナルトに顔を少し赤らめながら睨んでいても、全然怖くない。むしろ可愛いとナルトは思ってしまった。   「へへっ…オレも、お前がそんな事言うなんて想像外だった」 「あんな旨い料理食べたら、言いたくもなるだろうが」 「いつでも食べに来いって。一人だとカップメンになっちゃうしなー」   嬉しそうにナルトが笑う。   「ついでにお前も食べてーって所だけど、もう少し眺めててやる。  だから、交換日記に任務以外の事を書きやがれ!」   下唇を突き出し、横を向くシカマル。 ナルトは未だくすくす笑いながら、初めて見るシカマルに近づく。   「あー?」 「HappyBirthday!シカマル!」   シカマルの頬に一瞬暖かいモノが触れ、小さい音をたてた。   なりゆき成功!    




 

  相変わらず据え膳状態です。 色任務より前、交換日記より後と思って下さい。 シカマルが可哀想なんだか? 右往左往したナルトがご苦労様なんだか? この二人は、このままイルカ先生製作恋愛の薦め道?をずーーーと歩んでください。 なにせ、結婚するまでは、手をつなぐまでのはずですから(^-^)b キスしちゃっているけどね。まーーーそれまで無いとシカマル可哀想すぎますから。   ということで、2005年度の鹿誕は、闇と碧の据え膳シリーズでしたー(^-^)/))