【ぁゃιぃ術】           あれ・・・・もう朝だってば?   自分の意思とは別の所で勝手に目が開く。 目の前に広がる光景はまったく知らない世界。   ここ・・・・どこ・・・だって・・・・ば?   勝手に手足が動き、勝手に部屋を出る。 自分の意思がまったく通用しない体。 これは何?心の中で混乱する。   勝手に動く足は、どうも洗面所を目指していたらしい。 鏡を見る。   誰?これは誰だ?! 金髪の髪。自分と同じ色。 青い瞳。自分と同じ色。 顔に傷。自分と同じ場所。 でも自分はこんな大人びた顔をしていない。こんな落ち着いた雰囲気など持っていない。 どう見ても青年という年代の自分が鏡に映し出されていた。   「ナルにぃ、おはよ。」   聞き慣れた声が聞こえた。   ナルにぃ?それって誰だってばっ!   目の前にいつもの顔がいた。   ・・・・サスケ?   しかし雰囲気がいつもと若干違う。いつもつっかかってくるあの独特の雰囲気はかけらもなく。 眉間の皺も消え、柔らかな視線を自分に向ける。   「おう、今日も早いな。おはようサスケ。」   自分の口が勝手に動く。 そして、勝手に動く体は、サスケの頬にキスをした。 目の前のサスケは嬉しそうに自分と同じように頬にキスを返す。   「ナルにぃ今日は休みだよね?  一緒に遊んでくれる?」 「サスケは幾つになっても甘えん坊だなぁ。」   くすりと自分が笑ってサスケの頭を撫でる。   「いいさ。遊ぼうな。」   自分の顔がにっこり笑うのが分かる。   何?・・・何だってばよっ!オレどうなっちゃった?   「あと・・・・・・夜・・・・一緒に寝てくれる?」   サスケが自分にぎゅっと抱きつきて上目づかいで聞いてくる。   サスケが変だ・・・・・。   「明日も休みだからな。いいよ。」 「絶対だよ。約束だからね。」   そう言って、サスケは嬉しそうにどこかに消えた。   オレが誰?って言うより、サスケが誰だか分からねーってば。 あんなのサスケじゃないっ!     「ナルにぃちゃん・・・・・おはよう。」   今度も聞いた事のある声が聞こえる。 勝手に動く体は目の下に居る小さい子供を見る。   くまのぬいぐるみを抱えた小さい男の子。 でもあの目の隈にも、額の愛の文字にもものすごく覚えがある。   我愛羅・・・・・お前小さくなってるってばよ。   「おはよう我愛羅。ん?恐い夢でも見たのか?」 「ナルにぃちゃん・・・・・今日はずっと一緒に居てくれる?」 「図星かな?いいよ。ずっと一緒にいよう。」   こいつってば変。さっきサスケと約束したよな? なんで、我愛羅にまで同じような約束をするんだ??   そして再び体が動く。 さっきのサスケにしたように、頬にキスをする。 我愛羅も同じように返してきた。   そして我愛羅もどこかに消え、三度同じような会話が始まった。   「ナルト兄さんおはよう。」   目の前に今度は白い瞳、長い黒髪、の少年が立っていた。   ・・・・今度はネジ?でもネジってば少し大きくなってるってば。 オレが知ってるネジよりも年上なのか?   「おはようネジ。どうした?少し疲れているみたいだ。」   そう言って、自分がネジの頭を撫でる。   こんな歳のやつに頭って撫でるもん?   「ううん、兄さん大丈夫。それより兄さん今日は休みでしたよね?  今日こそオレに付き合って下さいよ。」 「あぁ、いいさ。お前が嫌だと言っても無理矢理オレと遊んでもらおう。」   まただ・・・・何でこいつはほいほい約束するんだってばよっ! そーゆのってだめだぞっ!   「ありがとう兄さん。」   ネジは嬉しそうに自分に向かって微笑み、やはり頬にキスをしてきた。 そうして自分もネジに返して・・・・・・ネジもやっぱりどこかに消えてしまった。   何・・・・これ?       「で、そんな夢を昨日も見たんだな?」 「そうなんだってばっ!すっげー変なのっ!」   目の前には大好きなシカマルが居る。 昨日、一昨日と続けて変な夢を見たのが何かひっかかって、遊びに来たシカマルに聞いてもらってる所だった。   そいつら全員ナルトに目を開かせてもらったやつらばかりじゃねーか。しかもどいつもこいつも家柄を威張れるようなやつらばかりで、当然秘術の書物も大量に持っていそうなやからばかりで・・・。 シカマルはため息を一つついてナルトを見る。   「お前最近髪を切ったよな?」 「おう、すっかり伸びてたから自分で切った。」   ニシシとVサインをシカマルを送る。   「で、切った髪は当然普通に捨てたんだよな?」 「うん・・・・だめだった?」   小首を傾げてシカマルを見上げるナルト。 マイハニーは超絶可愛かった。噴き出そうな鼻血を気力で抑え、無理矢理会話を続ける。   「はー、メンドくせー・・・・原因分かったぞ。  で、今日からちゃんと気持ち良く寝れるよう対処してきてやる。」   鼻を手で押さえながらの会話では、あまり格好がつかない。しかしナルトは気にせずシカマルを見つめ続ける。いつもの事なのか? いや、それもこれも愛しいハニーってやつが可愛すぎるから?   「え?・・・・何?これってオレが勝手に見た夢じゃないの?」 「あぁ、大丈夫。今からオレが何とかしてくっから。心配すんなって。」   そう言ってシカマルはナルトの頭を撫でながら、にっこり笑う。(もう一方の手は鼻を押さえたまま。) 大好きな相手に微笑まれて、少し顔を赤らめるナルト。 シカマルが大丈夫って言うなら大丈夫なんだと。ナルトの中ではシカマルに対する信頼度ゲージがいっつも満タン。今まで不安だったものがすっかり無くなる。 ナルト、シカマルの鼻を押さえた手は気にならないのか?   「じゃぁ、待ってる。帰ってくるよね?」 「おう、1時間後にな。」   シカマルが目の前からかききえる。   あーやっぱシカってば格好いいっ! あの夢に出てくるオレみたいだってばよ。 優しくて、頼りになって・・・・・あーオレってばすっげーシカが好きだってばっ!!   枕を抱きながら真っ赤な顔をしたナルトが心の中でシャウトしていた。       さてと・・・・ったく、まじでやってるよこいつ。 目の前には、疲れて寝入っているサスケと、少し溶けた真っ赤な色の蝋燭、ナルトの髪の毛の束、そして床に書かれた術式。   ナルトの夢は術が発動した結果無理矢理見せられた夢だった。 発動した者の希望通りの夢。そして、1週間後には相手の心を手に入れる事が出来るという破格なおまけ付き。 いわゆる、惚れ薬のような術。   ったく、すっげーこいつって迷惑ヤロー。だいたいマイスイートハニーに手を出して無料じゃすまねー事教えこまねーとなと、ちょっとつっこみたいような事をシカマルは思い、印を切った。 目の前の術式が煙と共に消える。しかし、まだシカマルは印を切っていた。   「サスケ・・・・サスケオレの声が聞こえるか?」   目を閉じたままサスケがはいと返事をする。   「お前はナルトを友達として、好意を抱いてるだけだ。これから死ぬまでその気持ちは変わらない。いいな。」 「は・・・い。」   再びサスケは口を閉じ、深い眠りに入ったようだ。 しかし、まだシカマルは印を切っている。1分が経とうかという頃、やっとシカマルは印を終えた。   「それからお前には仕事をしてもらう。ま、仕方がねーよな。オレを動かす金は高いからな。」   そう言って、ニヤリと笑って一言サスケに告げる。 サスケは再びはいと答え、一切なくなった地下室で眠り続けた。       再び同じような光景が目の前に展開される。 サスケと同じようにチャクラを使いすぎて寝入っているネジを目の前にしてぼやく。   「ったく・・・・確かにオレのハニーは超絶可愛い。仕草は愛らしいし、優しいし、元気者で、前向きで・・・いい所だらけだ。  惚れる気持ちは分かるけどよー、こーゆーやり方ってどうよ?」   寝てる人の前で独り言で惚気るってどうよと言いたいが、シカマルは口を動かしながら、印をしっかり切っていた。   「はー同じ事言うのメンドくせー・・・・ってしゃぁねぇか。  お前はナルトを友達として、好意を抱いてるだけだ。これから死ぬまでその気持ちは変わらない。いいな。」 そして再び、サスケに言った仕事内容をネジにも言う。 ネジは目を閉じたまま、サスケと同じように返事をした。   「だーーー、後一人もいるのかよ。  どうせ、この術は範囲が決められているから・・・他国のやつがこの里に入って術を行うなら、死の森しかねーよなー。  メンドくせー。」     三度と書きたかったが、この相手だけは違った。寝ちゃいけないお荷物を背負っていた我愛羅は、大量のコーヒーと共に、今夜の準備を進めていた。 脇に転がっているくまさんのお人形が妙にラブリーで術が記述されてる地面に対しすこぶる浮いていた。   シカマルが今までかけていた術は相手が寝ていないとかかりずらい術だった。 少し思案した後、シカマルは堂々と我愛羅の前に出た。   「よぉ、おひさ。」 「なっ・・・・・っっ?!」 「で、この術やめてくれねー?」   シカマルはナルトと同じように荷物を背負わされた目の前の相手には、前の二人の時とは違い、できれば話し合いでどうにかしたいと思っていた。   「お前はナルトを恋人にしてーの?それとも兄弟のように友人のように接してーの?」 「こ・・・恋人っ?!」   我愛羅は、目の前の相手が突然現れた事も、自分が術をかけていた相手がナルトだとが分かっている事も忘れて驚いた。この術の効果は違うはず。驚いて目の前の相手を見上げる。   「あのなぁ、お前ちゃんと本読んだか?  この術は自分の夢を共有するだけじゃなく、最後には恋人になれるっていうお得な特典付きの術なんだ。」 「・・・・・。」   我愛羅は目を見開いてシカマルを見上げる。   「なぁ、もしお前がナルトと友人になりてーなら、オレが紹介してやる。  あいつもお前を気にしてたみてーだから、すぐに仲良くなれるさ。」 「・・・・気にしてた?」 「あぁ、オレ的には、あんまし好きな話じゃねーけどよ。  あいつもお前と同じだからな。」 「そうか・・・・。」   我愛羅が俯き何か思案しているようだった。 シカマルはその間に、この術陣消すからなと我愛羅に承諾を得て、てきぱきと術を解除していた。   シカマルが全て解除した後に、やっと我愛羅が顔をあげ、口を開いた。   「・・・・お前はあいつの何なんだ?」 「とりあえず彼氏?  で、お前は友人になりに行くか?」 「・・・・。」   口を一文字に引き締め、我愛羅は一つ頷いた。   「なら、約束してくれ。  お前も、あいつも、最悪な子供時代を過ごしているのは分かってる。  だからといって、傷をなめ合うような付き合いが希望ならオレはお前をあいつに会わせねー。」 「・・・・・オレは友達なんかいない。どうすればいい?」   辛そうに我愛羅がシカマルを見上げる。 シカマルはそこにナルトと同じ影を見つけてため息をつく。   「今日あった話をしたり、悪戯をしたり、何かで遊んだり・・・・お前らなら訓練のついでに戦ってもいんじゃねー?」 「それが友達か?」 「そうだな。ま、そのうち分かるさ。  じゃぁ行こうか。あまり長居は出来ねーんだろ?」   我愛羅が一つ頷く。     「たでーま。」 「おかえりっシ・・・・我愛羅?!」   俯きながら片手をあげ、小さな声で久しぶりと言ったのは我愛羅だった。   「お・・・おう、久しぶりだってば。元気だった?」   ナルトは驚きながらも嬉しそうに我愛羅に手を振る。 そんなナルトを見たシカマルは、やっぱオレのハニーっていいヤツだよなとご満悦。   「我愛羅お茶飲む?用意するってばよ。  シカのも用意するからな。待っててってばっ。」   ばたばたと台所に走っていくナルトを呆然としながら我愛羅が見る。 そんな様子の我愛羅にシカマルは苦笑して説明してやった。   「あいつも、お前と同じ辛さを知ってるから、好意を寄せてくれるやつには敏感だ。  もうお前とあいつは友達だよ。」   シカマルの言葉に心底驚いて顔をあげる。 今日は本当に初めての事で驚いてばかりだ。 そして、目の前の最初に驚きをもたらした、自分と同じくらいの子供を見直す。   「お前・・・・もか?」 「あぁ、お前があいつに害をなさない限りオレもだ。」   ニカッと自分に笑いかけてきた。 その時我愛羅は、何となく相手の顔を見ていられなくて、俯いてありがとうと言った。       あれから、我愛羅は暇がとれるとナルトの家に遊びに来るようになった。 ナルトは嬉しそうに新しく出来た友達と訓練をしたり、悪戯をしたりした。   但し、なぜかそこにシカマルが入ると、シカマルを中心に睨みあう二人の姿が見れたとか。   そして、サスケとネジは、カカシを見かけると無条件で技を仕掛けるようになった。 自分達も理由が分からないが、カカシを見ると術をかけたくなるぐらい腹が立つと、サスケはサクラに、ネジはテンテンに言ったらしい。   「ちぃーと駒としては力不足だが、お手軽な変体避けが出来たな。」   シカマルはサスケとネジの行動を見てニヤリと笑った。 前からカカシは愛しのハニーに不躾に近づく変態腐れ野郎だった。 微々たるものであるが、結構役立つとほくそ笑んだ。   そして、少し気が晴れたシカマルは、愛しのマイハニーの元へ掻き消えた。       【End】    




 


    シカマルが馬鹿っぽい・・・じゃなくて馬鹿だf(ーー;) はー、シカマルだけは真っ当でいて欲しかった(゚゚ )トオイメ   あ、それにネジにぃさんも、出来ればお素敵なままで・・・(゚゚;)トオイメ   どっちも誰が悪いんだかσ(^-^;)だね。   えっと、状況としては、サスケ救出?後の話ッスf(^-^;) シカマルは当然スレてます。いや〜スレてないナルトだよf(^-^;)相変わらず書きずれー。   ちなみに、我愛羅って結構いいかも(^-^;)書きやすいな。<それが理由かっ?!