最近…いや、おやじが休暇を終えてから二人の様子がおかしい。 たぶんおかしいと思う。 何でおやじは、あんなに気合入れた試合をするんだろう? おやじの力量なら、あそこまで多種多様の攻撃パターンを使わなくても勝てる試合のはず。 それが、オレのチームと戦うとより多彩な技が披露される。 そして、増やされた朝練の量。 何でおやじは、あんな真剣な目をオレに向けるんだろう? そして、何でアーロンも、おやじと同じ目でオレを見るんだろう? 突然体術と剣術の訓練が加わった。 体術はブリッツをやってる自分にとって必要だとは思うけど、何で剣術まであるんだろう? 剣術なんてこの世界でブリッツやっている以上必要ない。 何であんな細かく教えてくれるんだろう? 突然ルカに引越してきた、ブラスカさん。 何か関係あるんだろうか? 【俺様ンち 9−4】 「ティーダ、おめぇ挨拶に行ってこいや。」 「これを持っていくといい。」 アーロンが街で買ったらしい、包みを俺に渡す。 昨日引越してきたブラスカさんの所へ挨拶に行けと、目の前の二人が言うんだけど…おやじは、ケアルガ知ってるよな?という確認付き。そしてアーロンは刀を持っていけと、アルテマウエポンをオレに渡した。 「オレ…ブラスカさん家に行くんだよな?どっかのダンジョンに入るんじゃないよな?」 「バハムートと戦うつもりで行け。」 アーロンが真剣な顔つきで言う。 「ユウナレスカを一人でやっつける気合で行け。」 おやじが明後日の方を見ながら言う。 「……おやじとアーロンは行かないんッスか?」 二人共オレと目をあわさない。 異界でおやじと初めて二人っきりになった時の会話を思い出す。 『迂闊なこと言って、バハムートに新居を壊されたくねぇよなぁ…』 ………ボス戦っ?! 「おめぇご指名なんだよ。 ま、奥さんの側に居れば、とりあえず生きて帰ってこれるんじゃ…ねぇかねぇ…。」 「頑張れよ。」 非常に不安になる言葉と共に、俺は家を追い出される。 自分の家から徒歩5分、新しく出来た青い屋根が既に見える………ラストダンジョン? とりあえず、剣に魔法カウンターは付いている。素早さなら、魔法使いよりはいけるだろう……後は、エース・オブ・ザ・ブリッツで、止めだな。 俺は握り拳にぐっと力を入れて、ブラスカさん家のドアを叩いた。 「お、ティーダかい?入んな。」 目の前には、髪の短い女性。 笑顔がユウナに似ているから、きっとお母さんなんだろう。 俺は、アーロンに持たされた包みを渡し、挨拶をする。 よしっ…とりあえず、友好的に迎えられたみたいだ。 「まだ、引越したばかりで大したもてなしも出来ないけど、のんびりしていくといいよ。」 俺は、居間にある椅子に座らされた。 ……………………………ボスが居た……間違いなく最終ダンジョンの大ボス……気配に鈍い俺にでさえ感じる暗黒のオーラ付きで、椅子に深々と座っている。 表情は限りなく優しい笑顔に見えるのに…これか?これをおやじ達は言ってたんだなと、引きつってるであろう笑顔で頭を下げる。 エース・オブ・ザ・ブリッツは発動できませんと、情けない言葉がオレの体の中で響いていた…。 「あ…あの、お久しぶりです。」 初めて異界に来た時に会ったのは、だいたい2年前? あの時には、こんな黒いオーラは感じなかったよ……な? 「久しぶりだね。 君に聞きたい事があるんだよ。」 「なな何ですか?」 視線が怖くて直視出来ないッス。 「そこの勝気君、ティーダが怯えてるだろ。 本当に親馬鹿なんだから…、そんな曇った目ぇしてたら、ティーダ君の資質が見えないよ。」 うわーーーっ、ユウナのお母さん強っ! あの黒オーラ無視して、ブラスカさんの頭をばふばふ叩いているーーーーーっ! 「どうして君は、いつも僕を子供扱いするの?」 「そりゃぁ〜勝気君が子供だからだろ? ほら、ティー…いや、アーロンだなこの選択は…君の好きな菓子だ。 これでも食べながらゆっくり話しな。」 ユウナのお母さんは、気合入った言葉使いだけど、眼差しがすごく優しい。 ブラスカさんは、黒オーラを霧散させ、照れたような笑みを浮かべている。 なるほどと思った。 この空間が無くなったブラスカさんが、どんな思いで召還士になったか分かったような気がした。 「ティーダ君…。」 「はい。」 「率直に聞こう……君は、スピラに帰りたいかい?」 「ス…ピラ?」 突然の言葉に意味が理解できない。 「そうだ。君はスピラに帰りたいかい?」 ブラスカさんの声が遠くなった。 スピラに戻る?…誰が?…おれ?…仲間が生きている世界に?…ユウナ…ワッカ…ルールー…キマリ…リュック…アーロン?いやアーロンはここに居っ!! あ………あの瞳の意味が分かった…俺はなんて馬鹿だったんだろう。 「あ…あの…おやじやアーロン、ブラスカさんはスピラに戻らないんですか?」 「僕を含めて全員帰ろうとは思わないだろうねぇ。 僕はここで妻との生活を続けたい。 アーロンは、生きている間にあれだけの事をしたんだ、もう悔いは無いだろう。 ジェクトは、ザナルカンドになら帰ると言うかもしれないね。」 ブラスカさんの言う事が正しいのだろう。 おやじがスピラに行きたいと思うのは想像が付かなかった。そしてスピラで見た最後のアーロンが、皆に託したモノを知っている自分は、ブラスカさんの言葉を肯定するしかなかった。 二人がオレに真剣に向けた意思を知った。 父親として、育て親として、オレに渡そうとしているものを理解した。 「どうするティーダくん。」 ブラスカさんを真正面から見る。 さっきまで黒いオーラに邪魔されて見えなかったけど、間違いなくおやじ達と同じ種類の眼差しを見つけた。 「お願いします。 オレ、スピラに帰ります。」 【続く】
うーーーん……どっかで見たような展開だなぁ(ーー;)うぅっ……。 でも、あれ好きなシチュだったからなぁ…一回使ってみたかったんだよぉ〜…と言い訳をしてみる。 同年代の人なら間違いなく、漫画のタイトル言い当てられそうだ…(^-^;) ということで、ティーダ決意しちゃいました。 もうちょっと先まで書こうと思ったんだけど、まー区切りよかったし、いっかf('';)あはは。 【05.04.13】