ティーダが嬉しそうに楽しそうに、スピラで出会った仲間の話をする。 そして、寂しそうな表情を浮かべる。   俺とアーロンは、その意味を理解しちまった。 だから、俺は長期休暇を取った。     【俺様ンち 9−2】     「ブラスカよー・・・バハムートの祈り子と会いたいって俺様は事前に連絡入れといたはずだけど?」 「えぇ、頂きました。」   目の前で相変わらずの似非臭い笑みを浮かべる召還士。 ここにアーロンが居たら、どんな態度を取るんかね? 昔だったら間違いなく、頼みごとするのに、その態度は何だっ!と怒鳴られているだろう。 ただ、今回の頼みごとはアーロンの意志も入っている。 あいつもあっちで10年過ごしてる間に、ブラスカに対する意識が随分変わったみてぇだから、今回どんな態度をするか見たかったな。 結構楽しいかもしんねぇ。   「手紙でだいたいの状況は理解しましたが、なぜバハムートの祈り子を呼ぶのですか?」 「・・・・おめぇ、いい加減にしろよ。  俺とティーダがここに存在していられるってのは、お前一人じゃどうにもならねぇはずだ。  じゃぁ、他に誰が手伝うんだ?祈り子達しかいねぇだろっ!」 「随分とスピラに詳しくなったのですね。  あの頃は、まったく右も左も分からない異邦人でしたのに。」   いけしゃぁしゃぁと、ニッコリと微笑みを浮かべてブラスカが会話を続ける。   俺はエボン・ジュと意識を取り合っていた。 取られていたじゃなく、取り合っていた。 お陰で、スピラや昔のザナルカンド・・・そして召還や魔法についての知識を持っている。 たぶん、ある意味目の前の天才と呼ばれていたブラスカよりも俺の知識と力量は上回っているだろう。 しかし、この異界の知識は自分にはねぇ。 仕組みもいまいち分からねぇ。   「おめぇなぁ、分かってて言うのはやめろよな。  俺が、エボン・ジュの中で何やってたかも知ってんだろ?  で、いつまでこんなうざってー話を続けなくちゃいけねぇんだ?」 「当然貴方も動いてもらいます。  でもそれだけじゃ足りない。  そして、本当にティーダ君は帰りたいと思っているのですか?  貴方方の思い違いじゃないのですか?  その思いの強さにも掛かってくる。    ・・・・これは簡単な事ではないのですよ。」   目の前の召還士が珍しく微笑みの中にも真剣な面を返してくる。   「おめぇがそう言うって事は、可能性はあるって事だな?  ティーダの思いは分からねぇ。  ただ、俺とアーロンは、あいつをスピラに戻してぇと思っている。  だいたい、シンに関して言えば、あいつの努力のお陰だったはずだ。  なのに、ここに居るってのは、俺もアーロンも最初から納得してねぇ。  可能性があるなら、俺とアーロンで何とかする。」 「・・・・貴方がた二人だけでは無理です。」   怒ったような声が返ってきた。   「貴方方は、私をのけ者にして何をしようというのですか?  私は、貴方にも、アーロンにも、ティーダ君にも借りがあるのです。  黙って協力しなさい。」   借りがあると言う割りに、協力しろときたもんだ。 相変わらずの高飛車な召還士様だ。   「そこ、ニヤニヤ笑わない。」   そう言いながら、とてつもなくヤ〜な笑いを浮かべる。 背中に何かが流れるのを感じた。 もしかして、自分達だけで模索するべきだったか?   「バハムートの祈り子には、スピラに行ってもらっています。  貴方方、私と妻と娘に感謝しなさい。」   より一層高飛車。   「おめぇなぁ。借りがあんだろ?  そんなのチャラだってーの。」   そこに、耐え切れず噴出したと思われる声が聞こえる。 初めて会う、ブラスカの奥方。 静かに出された飲み物、小さく下げられた頭。 目の前の相手が相手だから、とてつもなく大人しい奥方なのだろうと思っていた。 ・・・・・間違ぇだったみてぇ・・・。 げらげら笑い声が響く。 目の前のブラスカが、居心地悪げに奥方の方を見る。 そんなブラスカなんか初めて見たぞ、俺。   「あはははは・・・すまない。  まぁ、あんたの事だから気づいているとは思うけどさ。  借りなんて、こっちが増えるばっかりで、あんた達には何一つないよ。  あはははは・・・ひさびさに見たよ。  この勝気君のらしい言葉。」   そう言って再びヒーヒー笑う。 ブラスカを勝気君の一言で済ませるのかよ? すっげぇ〜豪快な奥さん。 こりゃぁ〜面白ぇ〜や。   「・・・・・もう動いています。」 「ぶはっ・・・・・。」 「あはははは・・・・・。」   一生懸命軌道修正したと思われる声音。 しかし、我慢していた俺様の口は限界だった。 そして、素直に再び笑い転げる奥さん。 笑い声の二重奏ってかぁ?   「や、悪ぃ悪ぃ・・で、何が動いてんだ?」   今だ顔を修正する事をできずにブラスカに話しかける。 ブラスカは、憮然とした顔つきのまま、とりあえず話を続ける事にしたらしい。   「ユウナにスフィアを一つプレゼントしました。  そこには、テイーダ君に良く似た人物が映っています。  ユウナでも、他の仲間でもいい、そのスフィアの意味を追求する者にティーダ君を託そうと思っています。」 「全然分からねぇ。」   さすがに笑いは収まった。 が、何回ブラスカの言葉を反芻しても、何が何だかさっぱり。   「異界に居る我々だけでは、ティーダ君をスピラに戻すことは出来ないのです。  スピラに居る誰かの強い意志が必要になります。  それが私とバハムートの祈り子が出した結論です。」 「意思・・・ティーダをスピラに戻そうという意思か?」 「そうです。  ユウナに渡したスフィアは、その為の試験と思って下さい。  そして、その答えを得る為には、かなり困難な道のりになるでしょう。  それでも、その困難な道であると分かっても、謎を解き、ティーダ君を望む気持ちが必要なのです。」   そう言葉一旦切って、ブラスカが俺を睨む。 もの凄い勢いで睨む。 洒落にならねぇ気合の入った睨み。 この話で、何で俺が睨まれなくちゃいけねぇんだか分からねぇ。 何だと聞こうとしたら、再びブラスカの背後で爆笑が上がる。   「あはははっはは・・・あんた、まだ怒ってるのかい?  いい加減に諦めろって・・・あははははははははは。」   目の前に、笑い転げる奥さんと、殺気を撒き散らす夫。 そういえばアーロンが・・・・・・怖ぇ事を言っていた・・・・・よな。 ユウナちゃんとティーダが・・・・キスをしたとか・・・・どうとか・・・。 このせいか? さっきの睨んだ目も、この漂う暗黒に染められた殺気も・・・・・・それか?   「まさか、ユウナちゃんが頑張っちゃってのるかなー・・・・?」 「ほぉ・・・・何か心当たりがあるのですか?」   うわっ絶対0度の微笑みっ・・・・アーロン〜俺様すっげぇ〜情け無ぇ事に帰りてぇんだけどぉ〜。 何でおめぇ一緒に来なかったんだよぉぉぉ。   「あんた、いい加減にしな。  ジェクトさんが怯えてるだろ。  まったく、死んで何年経ってると思ってるんだ?  あの子は、いい年頃で、彼氏の一人や二人居なくちゃ困るじだろ?  それが、仲間の子供だったら、変な気使いしなくて楽でいいじゃん。」   素晴らしい説得。 俺様は心の中で拍手。   「ジェクトさん、私達ルカに近々引越ししますから。  ティーダ君に一回引越し祝い持ってこさせて。  何も言ったらだめだよ。  楽しみにしてるからな。」   奥さんの方は大丈夫だろう。 何せあのティーダだ。 俺様が言うのもなんだけど、すこぶる素直で可愛い。 女子供の受けはいいはず。 問題は、今だ黒いオーラを撒き散らしている召還士。 あいつ、リフレクぐらいは覚えたか?   「あぁ、安心しな。  ブラスカには、何もさせやしないよ。」   再び豪快に笑いながら、ブラスカの背中をバシバシ叩く。 とりあえず、安心かね?   「あぁブラスカ、俺やアーロンは何したらいーんだ?」 「何も。  貴方方に用が出来るのは最後の最後です。  それまでは、適当にやってなさい。」 「そんなんでいいのかよ?」 「私でさえ、当面引越し以外何もやることがないのです。」   ブラスカが珍しくイライラしているのが分かる。 今までは、自分の意思で、自分自身が動いてきた。 それなのに、今回はただ待つしかねぇようで、動きたがりの召還士様が、諦めたようにため息をつく。   「なぁ、ブラスカ。  最後っていつの予定だ?」 「一生来ないかもしれませんし、明日かもしれません。」 「わぁーった。  ま、俺様はアーロンと一緒におめぇが来るのを待ってる。」   用事は全て済んだ。 まだ、明らかにされていない事が随分とあるみてぇだが、ブラスカが今言わないという事は、どうやっても聞き出せねぇって事だ。 俺は、背を向ける。 掌をひらひら振って、家を出る。   この世界にも未来があったようだ。 それだけでも、ここに来た価値がある。     【続く】    




 


    ・・・・ブラスカの奥様は、豪快な性格設定にさせていただきましたf(^-^;) さて・・・・名前名前・・・・・誰この人? 名前ぐらい付けてくれたっていいんじゃない?>スクエニ 結局奥さんで誤魔化した(ーー;)く・・・苦しい。   で、すごく楽しい。 こゆ奥さんにしようと息巻いて書いた訳じゃなく、気が付いたらこうなっちゃったんだけど、とっても書きやすい。 いい人である・・・・あるから名前欲しいよなぁ(^-^;)   ところで、まだ続く・・・・あたし的には2つか3つぐらいで終わる予定だったんだが・・・・無理げf(^-^;) はてさて、どうなることやら('';)<おい   【04.11.07】