おやじが一生懸命雑誌やら本やらを読み漁っていた。 また何かにはまったのだろうと放っておいた俺が馬鹿だったッス。 おやじの洒落にならないぐらい愛情深いという属性をすっかり忘れていた自分が呪わしい。   でも言い訳も聞いてくれ。俺はあの時本当に悩んでいたんだ。おやじの習性を忘れるぐらいに。     【俺様ンち 6】   「ティーダ今帰りーか?」 「食事の用意はできている。早く手を洗ってこい。」   おやじとアーロンが次々に声をかけてくる。   「ごめん・・・今日は食事してきたから。  俺疲れてるからもう寝るッス。」   そう言って自分の部屋に行こうとしたら抱き上げられた。 おやじに抱っこされた・・・・・・・。 何で俺はあの時ダッシュで部屋に行かなかったんだ? いや、そんな体力はかけらも残ってなかったけどさ。   さりげにアーロンが俺に哀れみの視線をなげつつ、自分の部屋に避難しやがった。 その時の俺にはその意味がまったく分からず。アーロンの後ろ姿を不思議そうに見送った。   俺はこの時まだ状況をまったく理解してなかった。 疲れていたせいもあって、何気におやじの肩に頭をのせた。 これがおやじの父性愛を助長させたと分かっていればっ!あぁっ俺の馬鹿っ馬鹿っっ!   「ティーダ、ちょと付き合えや。」   そう言っておやじは俺を膝の上に乗せて、俺にグラスを渡した。   「これって?」 「酒だ。軽いもんだからおめぇでも大丈夫だろ?」   飲みたくても滅多に飲ませてもらえない酒が出たこともあって、ついつい迂闊にもそれを飲み干してしまった。 その間おやじは、俺の背中を撫でてくれていた。   「どうしたッスか?」   酒が出てきた理由が全然分からない。   「おめぇ分かりやすすぎ。何悩んでんだ?」   わかりやすいか・・・・でもおやじには言えない。チームの事だから。   「いや、何でもないッスよ。大丈夫ッス。」   とりあえず元気だというようにガッツポーズまでする。   「あのなー。全然笑わなくなるわ、あのアーロンの食事は食べねーわ、いつもぐったりして帰ってくるわで、どうして何でもねぇになるんだ?  ったく、しょうがねーやつだなぁ。」   そう言っておやじは俺の頬にキスをしてきやがった。 しかもその後に唇にまで・・・・っ!!   「お・・・おやじっ!どうしたッス?!」 「あー?何がだ?」 「キ・・・・キスっ!キスっ!・・・・何で俺にキスするんだっ!」   俺は無意識におやじの胸ぐらをつかんで揺すっていた。   「おめぇなぁ何過剰反応してやがんだよ。  こんなの親子の会話の中では基本だろう?」   き・・・基本だぁ〜?お・・・俺が知らないだけなのか?世間はみなそうなのかっ?! 悩みつつも俺はぶんぶん横に顔を振った。   「違うってかぁ?そんな事ねーぞ。本にも書いてあったしな。  それより、悩みってやつはチームの事か?」   俺はこれ以上とんでもない事をおやじがしでかす前に、とりあえずコクコク頷いた。   「ならしょうがねぇか。言えねぇもんなぁ。  ま、あまり一人で悩むなよ。仲間もいるんだろ?」   おやじが超至近距離で俺の顔を覗きこむ。 何?・・・何があったんだ?今まで変なおやじだとは思っていたが、ここまで変じゃなかったはず。 とりあえず、俺は何も言えずに、再びコクコク頷いた。   「よしよし。じゃぁ俺様がベッドに連れていってやるな。」   穏やかに微笑まれて再び抱っこされる。おやじは、俺の背中を撫でながら、軽々と俺の部屋へ俺を運んでいった。 その後、妙〜に優しくベッドに降ろされ、着替えを手伝ってもら・・・・いや俺は何もさせてもらえなかった。 いいからと無理矢理脱がされ、パジャマを着せられる。   俺の頭はパニックを起し、瞳孔は開き、原因がとても分かる冷や汗が大量に流れた。   現在、俺に布団をかけたおやじが、童話を語りながら、布団の上から俺の体をポンポンと叩いていた。 昔子供の頃にお母さんから聞いたような話。 こ・・・これはとにかく、寝たふりだと、目を閉じ、なるべく規則正しい呼吸をするようにした。 かなり無理があったが、一応ブリッツ選手。息が苦しいなんて思うわけもない。   しばらくして、おやじが話を止め、小さな声でおやすみティーダと言いながら額にキスを落し部屋を出ていった。 俺は、そーっと目を開き、呼吸を落ち着かせる。 あれは何だったんだ?たったそれだけの疑問が頭の中をぐるぐる回っていた。   その時、小さい音でノックがされていた。おやじが戻ってきたのかと、息をつめていると、ノックと同じくらい小さい声で起きているのだろうティーダ?とアーロンの声がした。 疑問の解答を唯一与えてくれるであろう人の問いかけに俺は、静かにドアを開けた。   「ほら、コーヒーだ。落ち着くのにはいいだろう。」   俺はコクンと頷いて、コーヒーを一口飲んだ。   「なぁアーロン。おやじって前から変だったけど、今日みたいに変じゃなかっただろ?  何かあったのか?」   アーロンが予想通りの質問だと一回深いため息をついて、疲れたと顔中に文字を表示してベッドの端に坐った。   「ティーダ、悩み事なら家以外でやれ。ここでは顔や態度に一切出すな。」 「え?・・・・・・それ酷くないッスか?」   家で出さなければどこで出せって言うんだ?   「いいや、その結果が今日のあれだぞ。付き合わされる俺の身になってくれ。」 「付き合う?」 「最近ジェクトがやたら雑誌や本を読んでいたのを知っているか?」 「あぁ、また何かにはまってたみたいッスね。」   そうじゃないと、片手で顔を覆い、ふかぶかとため息をつくアーロン。   「ジェクトがな、いつまで経ってもお前が悩み相談に来てくれないと、最初は拗ねていたんだ。」 「はぁ〜?」 「そのうちに、子育てをちゃんと出来なかったからいけなかっただのと変な結論に達しやがって。  大量の育児本を買ってきやがった。」   ・・・・唖然。   「あの・・・・アーロン?・・・・育児書って・・・・・幼稚園ぐらいまでの子供を対象にした本だよな?」 「そうだ。」   今度は俺がため息をつく番だった。 納得・・・・・・抱っこしたのも、背中を撫でたのも、酒はジュース代わりか?そして、キスも、寝間着を代えたのも、ベッドで寝かしつける為に物語を話してくれたのも・・・・・・・育児書の手引きッスかっ?!!   「もしお前が今度悩み事を抱えたのならば、即座に解決しろ。  何だったら早々に俺に相談しろっ!分かったな。」 「う・・・うッス。」 「お前まだ分かってないだろ?」   再びアーロンがため息をつく。   「まだ何かあったッスか?」   恐る恐るアーロンを見上げる。額に青筋が見えた・・・・・・。   「あのなぁ、あいつは、育児書で勉強をしては、俺に一々感想を聞いたり、どうしたらいいかと聞いてきてたんだぞ。  あの小さいお子様用の本を見てだ!  しかも、おんぶがいいとか書いてあったやつがあったらしく、お前をおんぶする為に俺が練習につきあわされたんだっ!!」   血縁関係者のお馬鹿を聞くのがこんなに恥ずかしい事だったのかと、俺は今日初めて知った。   「ご・・・ごめんアーロン。  アーロンの苦労に比べたら、俺の悩みなんてたいしたことがないって分かった・・・・ッス。」 「なら、この家でお前のする事は分かっているな。」 「う・・・うん。」   そうだ、アーロンに降りかかる迷惑と俺に降りかかる迷惑をなくす事。 実験台も本番も勘弁っ!   「それからだ、当分ジェクトに付き合ってやれよ。」 「・・・・・・・・あれをッスか?」   無言でアーロンが頷く。   「アーロ〜〜〜ン!!」 「煩いっ!元はと言えばお前がまいた種だ。  ジェクトが他の楽しみを見つけるまで辛抱しろっ。」   他の楽しみ・・・・・なんかそれはそれで嫌なんですけどっ! アーロンも自分で言ってて気づいたようで、お互い冷や汗を額に浮かべ見つめあってしまった。   「・・・・・アーロン。記憶を消す事が出来る魔法って無いッスか?」 「・・・・・・早々にブラスカに確認しておく。」 「俺、明日のうちにあの本を全部捨てておく・・・・・。」   そして二人して再び深いため息をついた。       あれから一週間、記憶を都合良く消す魔法は無く(ブラスカさん曰く、全部消す事なら出来るよvとにこやかに微笑まれたとか・・・。)、今日も寝かしつけられる俺がいた・・・・・明日殴ってみよう・・・・・・。         【End】    





    うわっ久々の俺様ン家ッスf(^-^;) すっかりNARUTOの萌えをがすがす吐き出していたおかげで、口調を忘れかけとるσ(^-^;)だめじゃん。   でも、俺様ン家はあたしの妄想の中では健在です(^-^) あ〜んなのもいいなぁ〜と結構在中ッス(゚゚*)<だったら書けってことだな。   大丈夫!あたしの一番はアーロンとジェクトだからねっ!o(゚-゚*)<何が大丈夫なんだか・・・。   【16.06.01】