「おやじっ!決まったッス!」
「おう、おれもだ。で、ちゃんとエース取ったか?」
「当然ッス!」
おやじと俺は、今日入団テストを受けた。
当然エースナンバーもついでにもらうつもりで、朝からそれぞれのチームに出かけた。
任せろって。落ちるわけないッス。俺らザナルのエースだもんな。
「なぁ、おめぇ明日から試合か練習だよな?」
「うん。でも、本格的に参加するのは来月からだけど。」
「あぁ、俺もそうだが・・・・おめぇ、疲れて帰った後、メシどうする?」
「ん〜作る元気ないッス。つぅ〜か家事全般だめになると思う。」
「だよなぁ。俺もやる気ねぇ、かと言って、全部外食だと、栄養が偏るしなぁ。」
「なぁ、おやじ、再婚しないッスか?」
「はぁ?」
「俺、もういい加減この年だしさぁ。反対なんかしないッス。」
「あのなぁ。ここに来てから、おめぇと親子してる間に女見てる暇あったか?」
「・・・・なかった・・・かな。」
って、無かったッス。毎日訓練か家事か遊んでいたか、のどれかだった。
「だろ、だいたい、結婚してすぐに、俺とおめぇの世話係りじゃ、すぐに離婚だぜ。」
「そうだよなぁ。」
「それに、それじゃ相手に失礼ってもんだ。」
「うん。」
「しゃぁねぇなぁ。アーロンに頼むかぁ。でもあいつ・・・隠居生活気にいってるみてぇだからなぁ。」
「おやじさぁ、アーロンにプロポーズってのは?」
あ・・・おやじ固まった。・・・いや・・・・なんか嫌〜な笑いしてるッス。
もしかしてマジ?マジにとった?
「それ、いいな。アーロンは家事万能だし、浮気はしないだろうし。うんうん。いい嫁さんじゃん。」
「あの・・・おやじ・・・・俺は構わないけど・・・・本気?」
「あぁ、本気も本気。大本気だぜ。あんなに上手ぇ料理作る嫁さんいっか?」
「いないッス!」
「だろ〜。それともおめぇ、アーロンがお母さんじゃ嫌か?」
「ん〜。ザナルに居た頃から父親だったり、母親だったりしてたからなぁ。今更ッス。」
(をいってば、あんたら、アーロンには失礼じゃないんかいっ!)
「じゃぁ、問題ねぇな。さて、今から支度すっか。」
「支度って?」
「おめぇ、プロポーズだぜ。こんな格好じゃだめだろ?」
「まぁ、確かに。でも、アーロン受けてくれるかなぁ?」
「ん〜。・・・・・・そだっ!おめぇもしろ。とにかく、家事の手が必要なのは分かってるな?
俺が失敗したらおめぇだ!おめぇがアーロンを落せ!」
「俺?・・・・俺がアーロンにプロポーズすんの?」
まじ?今度こそまじ?俺がアーロンと?・・・・結婚?
「何固まってんだ!あの料理が毎日食べれんだぞ!」
「あ!絶対落さなくちゃだめッスね!」
(ティーダ・・・ユウナはどうしたんだ?ユウナ、食欲に負ける?)
「なら、おめぇはティーナだ。」
「は?」
「アーロン、結構ティーナ気に入ってたからな。あれはいける!食事の為だ!やれ!」
「おやじ〜!いくらでもとっかえひっかえしてたんだろ!あんたが落せばすむって。」
「でも、あのアーロンだ。念には念を入れねぇとな。」
・・・・・う〜ん・・・・食事・・・アーロンの食事・・・仕方がないか。
(ティーダ・・・そんな・・・いいのか?おいってば!)
「じゃぁ、準備が整い次第出かけっぞ!」
「うッス!」
***
あと一週間で異界生活も一ヶ月か・・・。
この生活も捨てがたいが、あの親子はどうせ泣きついてくるんだろうな。
はぁ・・・・・まぁ仕方がないか、あいつらには借りがある。
『トントン』
扉を開けたら見知ら・・・・いや・・・・ジェクトか?
目の前に、見慣れないジェクトが立っていた。
髪の毛は、きれいに後ろにまとめられ、黒のスーツにネクタイ姿。
パーティにでも行くのか?
「アーロン、おめぇに似合うのはやっぱこれだな。ほら、おめぇにだ。」
真紅の薔薇の花。何本あるんだ?
これを俺に?
「?」
「受け取ってくれ。おめぇに似合う花探すのに、苦労したんだぜ。」
「苦労した?」
「あぁ、おめぇのイメージだと、この色以外考えられなくてよ。
ただ、こいつ、この季節に中々無ぇ色なんだそうだ。50本が限界だった。
すまねぇな。100本が基本なのによぉ。」
基本?何だ?・・・・無理矢理花束を渡された・・・あんたこれを俺にどうしろって言うんだ?
花瓶なんて無いから、鍋に全部入れた。今日この鍋でシチューを作る予定だったのに。
「なぁアーロン、俺の話聞いてくんねぇ?」
ジェクト何があったんだ?真剣な顔。少し緊張もしてる?ティーダに何かあったのか?
「あぁ、何だ?早く言え。」
「これを貰ってくれないか?」
?・・・小さい・・奇麗に包装された箱を渡される。
「これは?開けていいか?」
「あぁ、開けてくれ。」
梱包を外すと、中から小さい箱。それをあけたら、銀色の細い輪・・・これはなんだ?何かのアイテムか?
「これは?」
「それを受け取って欲しいんだ。アーロン返事を聞かせて欲しい。」
返事?これを受け取る?
「受け取るのは構わないが、これは何だ?返事?」
「おめぇらしいなぁ。たぶんそう返ってくるとは思ってたけどよ。
それは、結婚指輪だ。俺はおめぇにプロポーズしてっ所。
アーロン、俺と結婚してくんねぇ?」
・・・・結婚?結婚指輪?誰が誰と結婚??・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
ジェクトは、俺と結婚してくれないかと今言ったのか?・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
俺が?・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ジェクトと結婚?
「な・・・・・何の冗談だ?」
「俺は、本気だ。なぁ、アーロン、おめぇ俺の事嫌ぇか?」
は?・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
いや、真剣なのは、目を見ればわかるが・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・なぜ相手が俺なんだ?
・・・・・・俺は男で・・・こいつも男で・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・俺はこいつの事を好きだが、そんな意味ではなく・・・・
頭の中に結婚の二文字がぐるぐる回る。
「それ、おめぇの好みじゃなかったか?違うのに換えてこようか?」
・・・・これ本当にジェクトか?あんた、俺の好みを気にするようなやつじゃないだろ?
「いや・・・別に換える必要は無いが・・・・。」
「なら受け取ってくれっか?」
ジェクトと結婚・・・俺が?・・・・ジェクトと・・・。
いや・・・どう考えてもだめだ。いくら本気でも俺は・・・・俺は・・・・
「す・・・すまない。俺には受け取れない。」
「・・・・そっか。なら、振られた男に最後のプレゼントという事で・・・・・。」
え?
「んんっ!!」
な・・・何が起ってる?・・・・・ジェ・・・・ジェクトっ!!人の口塞ぐなっ!!
(キスですって。キスですってば。口塞ぐって・・・アーロン。)
「ありがとうな。すまねぇ、帰るわ。」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・何が起った?
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・俺が・・・・・ジェクトを振ったのか?
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・寝よう。寝ればなんとかるかもしれん。
『トントン』
ん?誰だ?
扉が開いて、女の子が立って・・・・・・ティーナ?いやティーダ?
先日とは違って、金髪の長い髪。ピンクの小さい花が付いたセータを着て、
白いレースの付いたロングスカート。随分可愛いらしい。
「アーロン・・・・・。」
扉を開けた時点から潤んでいた目から一滴涙が落ちる。
「どうした?何があった?」
「あ・・・あの・・・・アーロン・・・・。」
「なあぁっ?!」
ティーダがしがみついて来た。何があったんだ!言わんと分からんだろうがっ!
「ティーダ!どうしたんだ?言ってみろ。」
「・・・・俺・・・・・俺・・・・・アーロンのお嫁さんに・・・・なりたい。」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・俺の聞き違いか?
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
いや・・・はっきりと聞こえたような・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・確認すればいい。きっと聞き違いだ。
「ティーダ・・・すまない。もう一度言ってくれんか?」
「・・・・・アーロンの・・・・お嫁さんに・・・・なり・・・・たい。」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「おまえ・・・ジェクトと二人して俺をからかっているのか?」
「おやじ?・・・・・・・・・・・・・おやじと何かあったの?」
潤んだ目が再び俺を捉える。・・・・・違うのか?
「何で突然そんな事を言う?」
「アーロンは・・・・俺の事・・・嫌い?」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
き・・・・嫌いではないが・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・っ!!さっきも同じ事を考えた!
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
厄日か?それとも、いじめか?俺はいじめられてるのか?
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・いや・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
きっとこいつらが来る前に、こいつらの事を考えていたのがいけな・・・・・・・・・・・・・・・・・!!
「なぁ、ティーダ。もしおまえが俺の所に嫁として来るなら、家事全般おまえがやってくれるのだな?」
「え?」
「違うのか?俺の女房になるんだろ?」
・・・・・・・ティーダのこの慌てよう。やっぱりこの為か・・・・・この馬鹿親子はぁぁぁぁっぁぁぁぁっぁ!!!!
「ジェクト!ドアの外にいるなっ!入ってこい!!」
案の定、ジェクトが入ってくる。
「アーロン、俺の嫁さんになってくれるんか?」
この馬鹿者は、いけしゃあしゃあと・・・・・・・ぶちっ!
「陣風!」
ふん。すっきりしたな。
少し屋根がなくなったが、明日直せばいい。
俺は寝る!
***
「アーロン〜。」
「アーロンってばぁ〜。」
朝から馬鹿親子に泣きつかれてる。
ふん。そう簡単に許してやるか!俺は真剣に悩んだんだ!
「煩い!静かに出来ないなら、帰れ!」
「俺達、初っぱなから練習サボってここに居るんだぜぇ〜帰ってどうするって。」
「なっ!おまえら!何やってる!!さっさと練習にいかんかっ!」
「アーロンの方が大事ッス!」
「うんうん、そうだな。」
「馬鹿者っ!練習の方が大事だ!!」
何でこの馬鹿親子はっ!
「アーロン分かってねぇなぁ。俺らは真剣だぜ。冗談なんか一つも言ってねぇ。
俺はおめぇがブリッツより大事だし、結婚したいって思ってる。」
「ジェクトっ!」
「なぁアーロン、俺達はおめぇと離れたくねぇんだ。出来ればなんらかの関係をずっと持ちてぇ。
でもなぁ、只の仲間と育て親だけの関係じゃ、ずっと一緒は無理だろ?」
・・・・・・・・・・・只の仲間?・・・・・・・・・・・育て親だけ?
「おっさんがどっかに行っちゃっても文句が言えない・・・・・それじゃヤなんだ。」
「まぁ〜だからと言って、おめぇを束縛してぇのは俺達の我が侭だ。
だから、おめぇが、結婚って形が嫌じゃなければ、お互い様って事でどうかなぁ〜?って・・・・だめか?」
・・・・・・・・・・・只の仲間?・・・・・・・・・・・育て親だけ?
「あれが?・・・・只か?・・・・だけか?・・・・・・・・・・・・・ふざけるなっ!!!」
・・・っ!!この馬鹿親子っ!何でそこで、そんな嬉しそうな顔するっ!俺は怒ってるんだっ!
「ま・・・これでいっか。」
「うッス。」
「お前達、何だその態度は!」
「ん〜その言葉だけで結構十分。なぁ、ティーダ。」
「うん。」
「な・・なんだ?」
「なんか俺達、すっげぇ〜愛されてるって、実感した。」
っ!!・・・・●←×△→◇○▽*↑□
(心の中ぐらい何か言いたい事言ったほうが・・・アーロン、顔真っ赤だし〜。)
「・・・・おまえら、今日はサボりだな?」
「あ?あぁ・・・・。」
「俺は、引っ越す。荷物の梱包から運搬まで全部お前らがやれっ!」
「アーロン、どこに行っちゃうッスか?」
「とにかく手伝えっ!!」
おどすを使った。当然だ。・・・お前ら覚悟しとけよ。俺は、優しくないからなっ!
***
本日無事にアーロンが俺達の家に引っ越して来た。
引っ越し作業は全部俺とおやじがやったけど。とりあえず、アーロンが来たって事が重要ッス。
おやじって本当にアーロンの操作うまいよなぁ。
一緒に居た時間は俺の方が長いのになぁ。
「うまくいったッス。」
「俺様の言った通りだったろ。最初っから二段構えで大正解だったぜ。」
「やっぱ、おっさん優しいよなぁ。」
「あぁ・・・アーロンだな。ん〜・・・・・・結婚ってのもよかった・・・かね。」
「おやじ、まじ?」
「あぁ〜?おめぇ聞いてなかったのかぁ?俺はあいつとずっと一緒してぇんだ。」
「うん・・・俺もあれ本心だったけどさぁ。
でも、大丈夫ッス。絶対おっさんは怒りながらずっと一緒してくれるって。
だって、アーロンだもん。」
「だな。ぷっ・・・・・。」
おやじが肩を震わせて・・・くそっ腹たつ〜げらげら笑ってる。
原因は俺の格好。そろそろ夕食の時間だから着替えてる。ティーナに。
アーロンが同居する代わりに出した条件。
俺は、一ヶ月間夕食時にティーナになる事。
おやじは、一ヶ月間夕食なし。
アーロンの食事が無いのは困る。つぅ〜か、俺生きていけないかも。
でも・・・ティーナ・・・・・くそっ!何か、知らないうちに、ティーナの衣装やら飾りが増えているし〜!
「おやじ〜笑いすぎッス!」
「だってよぉ〜。だめだろ?美少女が股開いて座ってたらよぉ〜。」
げっ!そか、スカートだった・・・・しかも今日は、膝までの・・・ひらひらふりふり。
「まぁ〜おめぇのその姿も堪能した事だし、俺様は食事にでも行ってくっか。
出来れば俺が帰ってきてもその姿だと嬉しいねぇ。」
「こんな姿、夕食が終ったら、もうないって!」
「ま、いっか。毎日一ヶ月は楽しめるもんな。」
そう言って、おやじが部屋から出る。
はぁ〜〜一ヶ月ティーナ・・・・でも、おっさんの食事・・・・・。
だめだ・・・おっさんの食事だけは外せないっ。
俺は諦めて、今日増えた愛する家族の元(食事)へ行く為、部屋のドアをあけた。
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