【俺様ンち 3】
 

今日もティーダと朝練をしている。
こいつ、どんどん上達していくから楽しいよな。
初めてから・・10日ぐれぇか?ここまで伸びるとは思わなかったな。
さすが俺様の息子ってところか。センスがいい。
さて、俺様も息子に追い越されないようがんばれねぇと・な。

「今日からタックルの練習入れっからな。」
「へぇ〜い!」
「可愛くねぇ返事だな?おい。」
「おやじに可愛く返事してなんか得があんのか?」
「ご褒美をやるぜ、ティーダぼっちゃん。」
「げぇ〜〜おやじの褒美なんかいらねぇ〜!!」

俺はげらげら笑いながらティーダにヘッドロックかける。
ティーダも笑いながら一生懸命逃げようとする。
こんな幸せで楽しい毎日が送れるようになるとはな。
柄にもなく神様ってやつに礼を言いたくなる。

「ほら、遊んでねぇで、おめぇから俺に仕掛けてこいや〜。」
「むぅ〜。おやじが遊んでいたんだろっ!」
「ははははは、いいからこいやっ!」

瞬時にティーダがエースの顔になる。
よしっ!こいっ!!
適度な距離から水を蹴ってティーダが俺様に向かって・・・?

「どうしたよ?」

なんでタックルしてこねぇ?

「い・・いや・・・おやじの見本ってのが見たいなって思って・・さ・・」

どうした?らしくねぇ。

「ほぉ〜おめぇも俺様のすばらしさってやつを、やっと分かったって事かい?」
「おやじのへぼいアタックが俺に通用するッスか?」
「言うじゃねぇか。だったら泣くなよ。痛くて泣いてもなぐさめてやらねぇからなぁ。」
「そっちも、効果がなくてがっかりするなよな、お・や・じ。」

元に戻った?いや、目が違ぇな・・・ティーダ?

「行くぞっ!」
「うッス!」

ティーダに向かって水を蹴る。
・・・!!!
タックルかけようとした瞬間、ティーダの目が恐怖に見開き、体が硬直する。
あわてて、体制を戻しティーダを見ると・・気を失って・・どうしたんだ?

気がつく様子もなく、ティーダを担いで家に帰る。
体を軽く拭いてベッドに転がす。

どうしたんだ?ティーダ。
なんであんな目をする?あれは完全に恐怖だった。俺に?・・・いやあの目は俺も見てなかった。
何を見ていたんだ?ティーダ・・・
気を失う瞬間に動いた口・・『ごめん・・』・・何に?誰に?

ちっ、俺が考えても、こいつの事で知らない事が多すぎる。10年のブランクはきっついな。
アーロンとこに行くか。
こいつを一人で置いとくのは心配だが、まぁあいつん家近いから、うまくいけば寝てる間に帰ってこれるな。
一応、置き手紙でもしておくか。


***

「よぉ!アーロン、いいか?」
「かまわない。どうした?ティーダは?」
「気絶してる。」
「何があった?!!」
「俺が聞きたい。あいつ、あっちでエースをやっていたんだよな?」
「あぁ、それがどうした?!!」
「落ち着け!今はちゃんとベッドに寝かしてきてるから、ちょっとの間なら大丈夫だ。話を聞いてくれ。」

こいつ、本当にティーダの父親してるよな。
まったく、相変わらず世話好きの心配性で・・安心しちまうじゃねぇか。

居間に入り、さっき起こった事を手短にアーロンに説明する。

「ジェクト、コーヒー。」
「お、ありがとうよ。それで、さっきの質問の続きなんだが、あいつ普通に試合してきたんだよな?」
「もちろんだ、じゃなければエースなどなれんだろ?」
「そうだよな・・・じゃぁあの目はなんなんだ?」
「・・・・ふぅ、今まではそんな事は無かったんだな?」
「あぁ、今日初めて、タックルの練習をした時からだ。
 ティーダは・・どうしたんだ?おめぇ分かったみてぇだな。教えてくれアーロン!」
「・・・・ジェクト。これは・・・俺が介入する話ではない。
 どうせ、おまえはその理由がすぐに分かるだろう。いや・・予測してたはずだな?」

アーロンがやけにゆっくり、言葉を区切りながら言う。何かをほのめかして。

「アーロン?」
「お前達は本当の親子なんだから。大丈夫だ。」

あ・・・

「おめぇは・・相変わらず厳しいな。いや・・相変わらず優しいのか。」
「何だ?何も出ないぞ。」
「おめぇ、一緒に住んでくれねぇの?」
「その理由は分かっているだろ?」
「あぁ、でもおめぇも一緒に居たいだろうに。」

ティーダと・・
でも、俺の為にティーダの為に、ここに一人で居るアーロン。

「そうだな、今回の件が落ち着いたら考えてやってもいいぞ。
 いや・・・おまえらに挟まれて面倒な事になりそうだな。ここの方が静かで良さそうだ。」
「どうせ、来月にはティーダも俺も試合生活だから、結構静かに暮らせるって。」
「それはそれで、淋しいだろ。」
「おめぇ・・珍しい事言うようになったな。」
「俺には今何もないからな。意地をはる必要も、頑張る必要もなく楽でいい。」
「アーロン・・・いい感じになったじゃねぇか。」
「当たり前だろ。じゃなければおまえに殴られる。だろ?」
「馬〜鹿・・・・今度はティーダと二人で来るわ。
 そうだ、おまえにもまだ言ってなかったな。ありがとうよ・・・・本当に・・ありがとう。」

片目を失った理由の事、ティーダの事、そして若ぇやつらを導いてくれた事、俺を解放してくれた事。
おめぇには借りばかりが増えていくな。

「何言ってる?雨を降らすのはやめてくれジェクト。」
「雨が降ったとしたら、おめぇが淋しいだなんて言ったせいだぜ。」
「ふっ、なるほど、おまえは帰りを流星で帰りたいのだな。」
「ははは、遠慮しとく。じゃぁな、またくるわ。」
「今度はゆっくりしろよ。ティーダを連れてな。」
「あぁ。」


***

なるほどな、忘れていたぜ。毎日があまりに楽しかったからなぁ〜。ティーダもそのくちか。
ちっ、最初に言っておくべきだった。
今更あいつに・・どうやって言う?どうやって言ったらいい?
はぁ〜〜女口説いているほうが数百倍楽だぜ、ティーダ。
ま、しゃぁねぇよな、俺の我が侭であいつを振り回したんだからな。

・・・・・・・・・・さて・・・行くかね。

「ティーダ起きてるのか?」
「あ・・おやじ・・。」

ティーダは、ベッドの上に座って窓の外を見ていた。
俺に向けた目はひどく沈んで。

「おめぇ体拭いただけだからな、動けるならシャワー浴びろ。」
「あ・・・布団・・濡れてる・・・」
「あぁ〜そんなのいいから、シャワー浴びに行け!その間にメシ作っといてやる。」

無理やりティーダを引きずってバスルームに放り込む。

「ちゃんと暖まってから出てこいよっ!」

急いで、食事を作りリビングに並べる。
ラフな服に着替えたティーダが現われる。

「おやじ・・俺・・いらない。」
「だ・め・だっ!食え!食った後話があるからな。」

言われた言葉に、痛みがあるかのように、体を震わす。
一気に昔に戻ったみてぇだな。いや、戻させやしねぇ!

「おやじ・・・」
「食べねぇと俺に反論も出来ないぞ。」

静かな食卓。しゃべる言葉もなく、食器の音だけが響く。
口に重い食事を終え、食器をそのままにして、ちょっときつめの酒を出す。

「おめぇも飲めや。」
「・・・」

目を伏せたままのティーダ。

「ほら口開けろ!」

無理やり顔を手であげて、口の中に酒を流す。

「ぐっ、けほっ、っつおやじっ!何するんだよっ!」
「ほぉ〜やっと血が回った感じの顔になったじゃねぇか。
 俺の声ちゃんと聞こえてるな?」
「・・・・・・」

再び伏せられる目。
ティーダの前に腰を降ろし目線を合わせる。

「聞こえているな?!」
「う・・うん・・」
「じゃぁちゃんと聞けよ、反論は許さねぇからな。
 おめぇは、俺を助けてくれたんだ。
 シンに捕らえられた俺を解放してくれたんだ。
 そのおかげで今こうしておめぇと一緒に暮らせている。
 俺はおめぇに会ったら一番最初に礼をいわなきゃいけなかったよな。すまなかった。
 ・・ありがとうティーダ。」
「おやじ・・」

あぁ〜あ、これは変わらねぇな。青い目一杯に涙を溜めて。
瞬きした瞬間にぽろぽろこぼれていく。

「でも・・・俺・・・おやじを・・・」
「反論は許さねぇって言ったはずだぞ。」
「反論したいなら食事をしろっておやじが言ったんだ・・。」
「忘れたな。」
「おやじっ!」

そっと抱き寄せて顔を俺の胸に押しつける。

「なぁ〜ティーダ。俺ここでおめぇと暮らしててすっげぇ幸せだぞ。
 それをおめぇが俺にくれたんだ。それじゃぁだめなのか?」
「でも・・でも俺は殺したくなかったんだ!
 おやじを助けたかったけど、おやじに剣を向けるのはっイヤだったんだっ!!」

吐き出すような言葉。傷つく事は分かっていたが・・・ここまで酷く傷つけていたとは思わなかった。
そんな自分の甘さに舌打ちしながら、抜け出す道を探す。
ん〜!めいっぱい方向転換するかぁ。

「・・・おめぇ、それってすげぇ俺様の事愛しているってことか?
 つらくて気絶しちゃうほど愛してるってわけ?」
「なっ?!!!!」

よしっ!食らいついて来たぜぇ。

「そうかぁ〜俺ってすげぇ愛されてるのかぁ〜。なんだ最初に言ってくれればいいのによぉ〜。
 俺だってそれなりに対処したのになぁ〜。」
「なんでそんな話になるんだよっ!!」
「いやだったけど、俺の為に、俺を助ける為にやってくれたんだろ?
 普通イヤと助けるの間に、愛してるからって入るのが定番じゃねぇか?」
「なんだよそれっ?!」
「恋愛小説とかドラマ。」
「はぁ〜?!!」
「いやぁ〜おめぇの事愛してたけどよぉ、俺もそこまで突き抜けられなかったわ。
 別にいいぞ、俺。おめぇの事すっげぇ一番に愛しちゃっているからよぉ〜。
 それに俺様上手いから、任せておけって!」
「おやじ?」

ニヤッとティーダに向けて笑いかけ、頤に手をかける。
うんうん。俺ってこっちのほうが数百倍対処が楽だわ・・・

「お・・・おやじ???」
「おめぇなぁ〜キスって目は閉じるもんだぜ?」
「ちょ・・ちょ・・ちょっと待っ・何?・・え?」
「何を待つんだよ?」
「え?・・う・・・あ??・・・何でこうなるんだ?」
「ん?話は分かったぞ。おめぇが俺をすげぇ愛してるって事だろ?
 悩むのはよくないからな。俺もおめぇの想いを受けるってことになったんだぜ。
 ほら、目ぇ閉じろって。」
「おやじぃ〜〜〜!違うってば!もう、なんなんだよっ!なんでこうなっちゃうんだよっ!
 俺、真剣に悩んでいたの馬鹿みたいじゃないッスかっ!」

よっしゃ!ティーダの目が元に戻って来たぜぇ〜。
もうひと押しだよな。
逃げられないように、じたばた暴れるティーダをおさえつけて顔を固定する。
真っ赤になって叫んでいるティーダを無視して、顔を近づける。

−−−ちゅっ(はぁと)−−−

「あ〜〜〜〜!!!!おやじぃ〜騙したな〜!!」
「何の事ですかね?ティーダおぼっちゃん?」

鼻をおさえて真っ赤になって叫ぶティーダ。
おめぇ、鼻の頭までしょっぺぇぞ。泣きすぎだ。

「だ〜〜〜!!!!もう分かった!分かったよ!!俺は、おやじを助けたっ!
 だから威張っていいんだなっ!!!」

そうそう。

「ティーダ、今の言葉ちゃんと覚えているからな!
 今度あんな顔で俺様の前に出てきたら、まじで犯すぞっ!」
「わかった。おやじに犯されないよう気をつける。」
「ははは、忘れてもいいぜ。おめぇ犯しても面白いかもな。」
「おやじっ!!!」

ティーダが真っ赤になって叫ぶ。でも笑ってくれて。

たぶんまったく元どおりって事はないかもしれねぇけど、
ティーダがこの笑顔で笑いかけてくれるうちは大丈夫だ。
なぁティーダ・・全て俺のせいなんだから、おめぇはおめぇの笑顔を忘れないでいてくれや。
って、これも我が侭だな・・俺の。

ティーダの頭をポンポン叩いて。耳にささやく。
『だいたい俺がおめぇに頼んだ事だろ?親の望みをかなえた子供ってのは親孝行って言われるんだぜ。』


***

「それで、結局どうなったんだ?」
「おやじが、俺を犯すって言ってたッス。」

瞬間空気が凍結した・・・ティーダてっめぇ〜!!

「ジェクト。」

ふらりと立ち上がるアーロン・・・げっ!!!

「アーロン!!その剣はなんだっ!!」
「おまえ見慣れていただろ?俺の剣だ。」

やべえってよ!!俺も無理やりまわりの幻光虫を集めて自分の剣を取り出す。

「家が壊れるのは困るからな、外に出ろジェクト。」
「ティーダ後で覚えてろよっ!」
「ほぉ〜俺が手塩にかけて育てたティーダに何か文句あるのか?」
「へぇ〜言うようになったねぇ〜アーロン。泣き虫同士がタッグを組んだってわけかぁ?」
「誰が泣き虫だ?」
「お・め・ぇ。」

『へぇ〜アーロンも泣き虫だったんだぁ〜』って呑気な感想が聞こえる。
あぁ〜あ。おめぇ、睨まれているぞ。

ひさびさにアーロンと剣を交える事が出来るし。
ティーダもアーロンも楽しそうだし。
まじで、死んでよかったよなぁ〜俺。・・変な話だけどよぉ〜。
こんなに幸せで、楽しくて・・・それをくれたここいつらには感謝しねぇとな。
まぁ〜俺様流の感謝だけどな。


【end】
 


このテーマ・・どうしようかな?と思ったんだよね・・・放っておいてもいいかな・・と・・・(^-^;)
でもやっちまいましたけどねf(^-^;)

一ヶ所気になる所が・・・ティーダに酒を飲ます時に、無理やり口に流し込んだって
やっぱ、口うつしがいいのでしょうか?いや・・親子はやらんよなぁ・・・と
悩んで口うつしやめたんでしが・・親子でもやる?(・_・?)

・・ところで、ジェクトさんはエプロン付けて食事を作っているのでせうか?
アーロンとどっちがエプロン姿が似合うのでせうか?(゚゚*)