【俺様ンち−2 1】     「ジェクト、出かけなくていいのか?今日は試合だろ?」 「あー。当分試合出ねぇって届け出した。」 「何でっ!!」   聞かなくても分かってる答え。ティーダが居ないから。 ティーダは昨日スピラに戻った。 ユウナとブラスカ、祈り子、ジェクトの力によって。 最後にティーダが蒼い瞳いっぱいに涙を溜めて、『また・・・・・・・。』と言って消えた。 俺達全員の強い想い。ティーダをスピラに戻してやりたい。そしてその願いは叶えられた。   「なぁアーロン、俺は本当にティーダがスピラに行って良かったって思ってるんだぜ。  なのに・・・どうしてこんな事思っちまうんだろうな。  あいつともっと遊びたい・・・・あいつの成長をもっと見たいって・・・・。」 「ジェクト・・・・。」 「俺・・・だめな親だよな。あいつに嫌われていて正解だったんだな。」 「ジェクト!それは違うだろ!!」   ソファーに俯いて座っていたジェクトがアーロンを見上げる。 いつも陽気に強気にジェクトの周りを飾っていたオーラが見る影もない。   「そうか?  俺はもう一つ思っちまったんだ。  なら、俺もスピラに行けばいいって。でも・・・俺はスピラに戻りてぇなんてかけらも思わなかった。  おめぇもいねぇ。ブラスカもいねぇ。それに知らない街。俺はスピラなんか知らねぇ。  戻りたいのは・・・・おめぇらがいて、ティーダがいて、あの・・・・・俺の・・・・・ザナルカンド。  俺の力でザナルカンドを作って、おめぇら皆全て閉じこめてぇと思っちまった。」 「思っただけだろ?ジェクト、お前にはそんな事出来やしない。  俺達の気持ちを無視するなんてことはな。だから、違う。お前は間違っている。  それに、お前がそんな事言ったら、俺が落ちこめん。迷惑だぞ。」   願った事は二人とも同じ。そして、今思っている事も二人とも同じ。 どちらも子離れが出来なかった男親が二人。   「すまねぇ、アーロン。」 「いつもの事だ。」 「はは・・そうだった。」   ジェクトはそう言ったきり、手元のカップを見つめ黙り込んでしまった。 アーロンはそんなジェクトを見ながら、ジェクトが思い出してるだろう風景とは違った世界を思い出していた。 あのザナルカンド。夢のザナルカンドの10年間。 そしてアーロンは、額に青筋が浮かんだ。   「なぁ、ジェクト、さっきの話だが、ティーダがこっちに帰ってくるまでの暇つぶしにどうだろ?」 「さっきの話?」   訝しげにジェクトがアーロンに視線を向ける。   「ザナルカンドを作るって話だ。  ザナルカンドに行って街を修復して、夢のザナルカンドのような街を作る事ぐらいお前なら簡単だろ?」 「・・・・・なるほど、いい暇つぶしだな。ただよ、おめぇ俺を過信しすぎだ。  さすがの俺様でも一人じゃちぃ〜ときついぜ。」 「すぐに作れと言ってるわけではない。  どうせ時間はいくらでもあるのだから、気長に作ればいい。  手伝える事は俺も手伝うぞ。」   少し泣きそうな、それでも嬉しそうな顔をしてジェクトはアーロンを見る。 ジェクトはまだアーロンの額に気づいていない。   「・・・・・っ!・・・・・ったく、おめぇは俺を甘やかしすぎだ。最初に会った時から・・・・ったく!」 「?・・・俺がか?甘い?  俺はお前に怒鳴る事はあっても、甘やかした覚えは過去に一回もないぞ。  それに、俺の為にぜひ作ってもらいたいものがあるんだ。あの船・・・家だったあの船をぜひ復活させてくれ。」   やけに力入って復活を望むアーロン。 あの家になんか思い入れがあるのか? 確かに10年も暮らしていたら思い入れの一つも出来るだろうけど、 アーロンが、あのザナルカンドを懐かしむ理由がわからねぇ。 つか、何で額に青筋?・・・・・あの家・・・・・何か問題あるのか?   「あの家?」 「あぁ、あの壁の傷・・・・スプリングを壊されたベッド・・・・鋭い傷の入ったテーブル・・・焦げ跡のついたキッチン  ・・・・ティーダが帰ってくる前にぜひ復活させろ。」   アーロンしっかり命令口調。ぐぐっと拳を握り、目を坐らせてジェクトを見下ろす。 ティーダ・・・・おめぇ何した?   「あ・・・アーロン?それの原因って・・・・ティーダ?」 「あぁ。」 「あいつは何をやらかした?」   アーロンが目線を遠くに止め、大量に青筋を育てながら話始めた。   「俺の剣を内緒でおもちゃにしやがった。その結果がテーブルの傷だ。  あの時、ちゃんと叱ったはずなのに、同じ事をして壁にも傷を作った。  おかげで、村正はぼろぼろだ。あそこには、刀を研ぐ所なんか無かったから、俺が研ぐはめになった。  それから、テレビで見た戦隊物の影響を受けて、飛び蹴りをして壁に穴をあけたな。  ベッドも同じく戦隊ごっこをしてジャンプばかりした結果だ。  キッチンの焦げは、俺が食事を作る時にフランベを見せた結果だ。  俺に隠れて同じ事をしようとしやがった。その日冷蔵庫にあった結構いい牛肉の塊を、そのまま  フライパンで焼きやがった。それに酒をふりかけフランベをしたのはよかったが、ついでに天井を焦がした。  ちなみに、その牛肉は炭のようになっていたな。諦めてゴミ箱行きにした。  これ以外にもどれだけあの船に被害が及んだか・・・・・。  俺は、お前が戻れない事を知っていたが、お前が万が一戻れたならと思って、無事な家の姿を 見せたかったのだが・・・・・ティーダのおかげで全てが水の泡だ。  あの船が家として機能してたのが今では不思議なくらいだ・・・。」   淡々と語られた内容を聞くにつれ、ジェクトの顔がひきつる。 ・・・家として機能してたのが不思議?・・・・ティーダ・・・そんなおもろかしい生活してたのか?み・・・・・見たかったぜ。 とかなんとか親馬鹿一直線な感想を抱くジェクト。しかし、さすがに怒りのオーラをまとったアーロンに今の感想を聞かすつもりはない。   その時、扉を叩く音がした。 その後に、返事も聞かず開かれた扉には、昨日お世話になった祈り子と、その後ろに従うように居る二人の男女の姿をあらわした。 その二人を見た瞬間、ジェクトとアーロンが顔を見合わせ、含みをもった笑みと共に頷きあった。    
  「いっつもお願いばっかりで悪いね。当分この二人を預かってもらえないかな?」   唐突に祈り子が話始める。 祈り子の後ろに居たのは、シューインとレン。 当然、カモメ団とシューインの戦いを見守ってた二人は、シューインもレンも二人の事情も知っていた。   ジェクトは、ニヤニヤ笑って、シューインを上から下まで眺める。   「あ・・・あぁっ?!!」   唐突に動いたジェクトがシューインを抱きしめていた。叫んだのは当然のことながらシューイン。   「ジェクトさん、そっちのけあります?」 「全然ねぇって。ティーダ抱いてるのと同じ。」 「ならいいです。」   レンがにっこり笑って、手にもった杖をさげる。 って、レンちゃん・・・・さりげに魔法唱えていた? 外見の可愛さに勘違いしねーようにしないとな。ユウナちゃんみたいな例もあるし・・・な。   「ジェクト、どうだ?」 「おう!ほとんど一緒!いけるぞアーロン!」   アーロンがニヤっと一つ笑ってから、シューインに殺気を飛ばす。   「シューイン・・・お前は、ティーダ達が頑張ってスピラを変革し、新しい世界になろうとしていた矢先に、『変わってない』などと現状をちゃんと把握もせずに、ほざいて俺達の努力を全て無駄にしようとしていたよな。」 「・・・・・・あ・・・・あぁ。」 「すまないと思うなら、俺達の言う事を聞けるよな?」   声を出すことも出来ずに滝汗を流しながらコクコク頷くシューイン。 アーロンさすがだ。おどすを効果的に使ってやがる。 ふふふふふ。俺達は飢えていたんだ。   「レンちゃん、ちょこぉ〜とシューイン借りるからよ。台所にあるもん適当にあさって、  何か飲んでてね。祈り子も待ってな。」 「はいv」 「楽しみにしてるよ。」   祈り子が俺の性格を分かって、これから起る事を期待したキラキラ目をこっちに向ける。   「まー楽しみにしてな。じゃ、借りてくな。」  
  居間のテーブルでレンと祈り子がマグカップをもって、のんびり会話している。   「何か上の方から悲鳴が聞こえるけど、心配じゃない?」 「へへっ。これから楽しい事が起きるんでしょ?たかだか悲鳴でそれを台無しにしたくないよねー。」 「そうだね。」   すっごく無責任な発言を二人でかわして、のほほんとコーヒーを味わう二人。 シューインってレンの恋人だったんだよな〜?   がたがたとものすごい音を響かせながら、階段を降りてくる気配がする。 ん〜何が出てくるのかな?楽しみ〜vvとレンはさりげにシューインに対して冷たい感想を思う。   「よーお待たせ〜!ジェクト様プロデュース、ティーナ第ニバージョン。  シューナちゃんでぇ〜すvv」   そこには、細い蒼いレースのリボンを頭につけ、淡い青色のモヘアをざっくり着て、タイトのロングスカート両脇の浅いスリットと裾から可愛いレースが顔を出している衣装を着たシューインが佇んでいた。 シューインは目尻に涙を浮かべ情けなさ全開。その表情に相応しくない唇だけが、つやつやリップな仕上がり。 レンと祈り子は一瞬、目を見張ったが、たちまち目をキラキラ輝かせ、ぐぐっと握り拳を作る。   「どうだ〜?レンちゃん。」 「ジェクトさんグッジョブ!」   ジェクトとレンがお互い親指を立てて頷きあう。 あの・・・彼氏の女装にそんなに萌えていいのか?   「祈り子はぁ?」 「最〜高!ねージェクトさん、第ニバージョンってことは、ティーダでやった?」 「当然じゃねぇ〜か。最初にティーナにした時のスフィアはとっあるぜ。見るか?」 「ジェクトさん!ぜひっ!!」   ジェクトは嬉々として戸棚から一つのスフィアを取り出し、スイッチを入れた。 そのスフィアからは、ソファーで横になって寝ているティーナと、ジェクトとアーロンの後ろ姿を映し出した。 そして、ティーナがめざめる。 きゃ〜可愛いっ!、うわぁ〜ティーダ君お似合いっ!の声があがる。それぞれ、レンと祈り子。 その後ろで、アーロンとジェクトがニヤニヤ笑って、シューインを見る。   「俺、ティーダ君の代わりはできないけど。」   1オクターブ下がった声と冷ややかな目を付録につけて、シューインが言う。   「はーーー?何言ってんだぁ?おめぇがティーダの代わりになれるわきゃねぇだろ?」 「当然だ。ティーダの方が数億倍可愛い顔をしている。」 「うんうん。それに性格も、信じらんないくらい可愛いしよぉ。」 「そうだな、あいつは、ちゃんと正しい道を見つけられる目をもっているし、素直だしな。」   親馬鹿炸裂である。 慣れてる祈り子は、うんうんそうですよねーとか適当な相槌を打っている。 レンは、シューインを見た時以上に目をキラキラさせて、スフィアに未だ魅入っている。  うんうん、「わくわくシューナちゃん着せ替え大会」とか・・・いいよねぇ。  やばい扉一枚開いちゃった模様。 シューナ・・・じゃなくてシューインは、さりげにニヤついた親馬鹿二人と違う方向にニヤついている恋人を見てしまって、これからの不幸を色々想像してしまった。 ま、自業自得というか自分のまいた種というか、それは分かっているが、それにしても心穏やかに恋人と過ごせると思ってたちょっと前の自分がかなり悲しい。   「ところでよぉ、この二人、俺らが預かってどうすんの?」   ジェクトが祈り子に聞く。   「いやぁ〜レンさんには思うところ一つもないけどねー。  皆で頑張ってきた事を、お釈迦にされそうになった原因さんにすぐ幸せになってもらったら腹が立つでしょ。」   親馬鹿二人以外にもう一人頭が上がらない相手を見いだしてシューイン引きつる、引きつる。   「だからね。お二人に煮たり、焼いたりしてもうらおうかなぁ〜って。」   シューイン冷や汗だらだら。   「なるほどな。まー丁度いいや。この馬鹿には用がねぇけどよ、レンちゃんが居てくれるのは助かるぜ。  レンちゃん、おめぇ腕のいい召喚士だったんだろ?俺らの手伝いをしてくれねぇ?」 「お手伝いですか?何の?」   小首を傾げてレンがジェクトを見る。   「ザナルカンドを創る。」 「ザナルカンドを?」 「おう、今のザナルカンドは只の遺跡。それを俺の知ってる、レンちゃんの知ってるザナルカンドに創りかえる。  俺のザナルカンドとレンちゃんのザナルカンドは微妙に違ぇと思うけどよ、元は同じなはずだから、ま、いい感じになるんじゃねぇ?」   レンは嬉しそうに笑って、ジェクトの言葉に頷く。   「お受けします。もう一度住んでいたあの家に帰れるのなら、お安い御用ですv」 「俺らもよ、自分の住処と、ザナルカンド・エイブスのホームがありゃぁ〜ま、後は適当でいいんだ。」 「ザナルカンド・エイブス?」   ジェクトの言葉を聞いて、シューインが訝しげに言葉を漏らす。   「あー?おめぇ知ってんのか?」 「俺は、ザナルのエースだ。」 「あー?おめぇもかよ。」   そう言ってジェクトがシューインの体を再び上から下まで眺める。   「タックルに弱い、当然タックルも下手。スピードだけでゴールを狙う。他の作業は他人まかせ・・・って所か。」 「なっ!!」   思いっきり図星を刺されて、ジェクトを睨みつけるシューイン。 ジェクトの方は、そんな目線なんてティーダで経験済み。それに、ブリッツに関して今までと違い容赦するつもりは全然ない。 つ〜か今までも容赦していたようには全然見えないけど。   「当たってただろ?俺は長年ザナルのエースをやってきて、神って呼ばれちゃってんの。  おめぇみたいなひよっこがエースって言われてもなぁ。弱点を克服してから来な。」   シューインの顔が真っ赤に染まる。 ジェクトがニヤっと笑う。 だいたいティーダとほぼ同じ体形じゃぁなぁ。今更弱点を言って苛めるのも・・・・今まで大量に言ってきたからつまんねぇ。   「おめぇに根性があって、俺様に付いてこれるんなら、入れてやってもいいぜぇ〜。・・・ザナルにな。」   とことん意地悪い笑みを浮かべジェクトがシューインを見る。   「分かった・・・・年寄りに、最後のザナルのエースが負けるわけにいかないよな。」   シューインがここに来て初めて不敵に笑う。 ジェクトが楽しそうに、シューインの笑みを受ける。 これが、こいつの顔な。おもしれぇ。楽しみが増えたぜ。 しかし、ジェクトは思った事はかけらも出さずに、新しく出来た後輩への、今後の方針考える。   「年寄りなぁ?実際年齢としたら、おめぇの方が俺様より上だぜ。  まぁそんなこたぁいいや、ザナルが出来上がるまで楽しく俺様と朝練しようぜ。  なぁ、アーロンもやるだろ?」 「ふ・・・俺は、剣の相手をしよう。」   アーロンもニンマリと笑う。 ジェクトとアーロンの朝練の意味をある程度知ってる祈り子が、少しシューインが可哀想だなーとか思ったけど、面白そうだから偶に見に行こうと決意してくすくす笑う。 レンは、あまりシューイン苛めが酷かったら、ちょっとだけ助けてあげようと、ちょっとだけ思った。   「ジェクトさん、アーロンさん、この二人お願いするね。  偶に遊びに来るからよろしく。」 「おう、おめぇも時間があったら手伝えよな。おめぇも家が要るだろ。」   ジェクトが、優しい目を祈り子に向ける。   「うん。ジェクトさん達がザナルに着く頃に、僕もそっちに行く。僕の家を創りに行く。」 「おう、待ってるぜ。」   祈り子がそんなジェクトを見て、少し笑って、それから頭をさげて消えた。   「さぁ、夕飯食って夜の軽い運動をしたら寝ようぜ。明日から旅だ。」   そう言ってジェクトは三人に向かって楽しそうに笑った。  





  俺様ンち−2です。ティーダは帰ってしまいました。 その代わりと言ってはなんですが、レンちゃんとシューインがやってきました。 ははは、インターナショナル版が出て何ヶ月? つ〜か、X-2が出てどれくらいたってる?(゚▽゚;)うははははは。 まぁ〜ネタは突然降ってくるもんなんで、仕方がないってことでm(__;)m で、かなり頭が混線してまーす。 基本設定が、ジェクトのLoveStoryだか、俺様ンちだか、短編だったか、はぁ〜さっぱりさっぱり(^-^;)   とりあえずここに書いておこう<おいって 1.ジェクトはエボン・ジュの知識をほとんど吸収して召喚士、魔法使いとして凄腕。 2.ザナルカンド・エイブスを作る事をティーダと約束している。 3.ユウナちゃんとブラスカさんは恐い。 4.アーロンは真面目で厳しくて、優しい。俺様〜の時はジェクトと友人である。 5.ティーダは可愛い。素直でいい子だ。   6.レンちゃんはお茶目で可愛い。 7.シューインは思いこみ激しくて、レンちゃん全てで、行動力あって、ティーダよりは子供っぽくない?  もくもくと目標に向かって一直線周りは振り向かないぞぉ〜。かな?   こんな所か? 頑張ってザナルカンドを創りたいものだ。 ティーダは・・・・帰ってきたら幾つになってんだ?(゚▽゚;) 壊れかけた元の家を見て、どんな感想をもつんだろうか?<じじぃティーダだったら笑えるな。