Fantasy with O3 13  

  「い、いつに……ひゃったら……た、たいひょくが……ひゅくのかなぁ……」 「サミ殿」    渡された水を、ゆっくりゆっくり飲む。初日、勢い良く飲んだら、すっごくむせたから。運動直後に水は、勢い良く飲んではいけませんというのが、あたし用の標語となりました。何で、おっさん達は、むせないんだろ?あ……あたし相手は、準備運動以下だったヨ。えぇ、えぇ、そうでした。   「さぁて、お嬢ちゃんは、もう寝とけ」 「う〜、そうしたいんだけど……」    ファビさんの言う通り、訓練の後は、夢も見ずに寝ている昨今。でも、汗みどろで寝るのは嫌なんで、お風呂代わりに水で濡らした布で体を拭いている。まぁ、今、お風呂入ったら完璧溺死コース一直線だけどね。  まぁ、そんな事より、覚えているうちに聞かなくちゃ。  そろそろと手をあげる。   「ローラン……」 「何でしょう?」 「あのさ……十年前って……聞いてもいい?」    やたら会話の中に出てきた十年前。非常に気になる。   「いいですよ」 「あ、俺も、俺も!」 「静かにしてろよ」 「お前……差別しすぎじゃねぇの?」    ローランさんの豹変さに、ファビさんがぶちぶち文句をたれている。うん、まぁ、確かに、あたしもそう思うけどさ。   「ディック、軍関係は、お前が担当だからな」 「分かってる」    術士さんは、文官?   「国は、王が直接治めている領地、城周辺、直轄地と、領主が治めている土地に分かれます。  各領地の構成は、おおまかに城の小型版だと思ってください」    なるほど。   「城に勤める者は、大きく文官と武官に別れます。  文官は、女官長が率いる、食事、掃除、衣服の管理、王妃の世話等をしている者達、デュカス卿率いる、王の執務の手伝いをしている者達、そして、術の開発、病人、怪我人の看護等をしている術士達に別れます」    うわぁ〜、術士さんって、お医者さんなんだぁ。   「武官は、領地に属している者と、城に勤めている者に分かれる。  王直属の軍は、五つに別れ、城に勤めている者は、そのいづれかに属しているな。  俺は、三軍の長。ファビは、二軍の長だ。ちなみに、ナデージュが一軍の長をしている」 「お、お姫様、へ、兵士従えちゃってるのっ?!!」 「ファビさえ居なければ、間違いなく片手剣一位だ。十分だろ」 「ファビさんが、果てしなく強すぎるのかぁ…」    いや、でも、お姫様が二位って……考えてみれば、物凄い事だよねぇ。だって、月の精霊様だよ!華奢って言うのが当然の外見だよ!箸より重たいもの持っちゃいけない細腕だよ!……でも二位。他の男の人抑えて二位。……ものすごぉく、凄い事だった。実感した。   「おーい、お前ら、自国民にとって当たり前すぎて、説明し忘れている事があっだろうが」    ローランさんも、ディックさんも、何だ?という顔。   「お嬢ちゃん、ギュールズはなぁ、一番強いヤツが王様になった国なんだよ」 「は?」 「かれこれ、うん百年前、ここら辺は、豪族が犇いていた場所でよぉ、諍いが多かったんだと。  当然、最終的には、大々的な戦争が起きた訳だ。それに勝ち抜いたのが、初代ギュールズ王だって言われてる。  んで、摩訶不思議な事に、代々、ギュールズ王の子孫は、武芸の達者もん揃いで、まじかよっ?!ってぐらい強い家系なんだと」 「え?そんなのあり?」 「まぁ〜、その辺は、すっげぇ魔法使いが居て、王さんに魔法をかけただの、妖精の祝福だのと、色々逸話はあっから、時間がある時にでも寝物語してやろうか?」    一生懸命頷いた。どうせローランさんが居るから、安全だ。寝物語でもなんでもいい。物凄く聞きたいぞ。それ。   「お嬢ちゃん……たまには、ローラン抜きにし…ってぇっ!」    うん、いつものごとく、ファビさんは、ローランさんに殴られました。どうして、分かってて、言うかなぁ〜。   「あれ?……もしかして、王様もすっごく強いの?」    全員が苦笑。   「人並みに強い程度だ」    ディックさんが、代表して答えてくれた。あの王様、人並みに強いんだぁ〜。なんつーか、とても強そうには……あれ?代々まじかよってぐらい強い、って?   「魔法が切れてきたのか…しかし、そのお子様の姫の強さは、女性としては尋常じゃないのですが…、なぜか王の代だけ、その効き目が薄かったのです」    お姫様が強いって事は、魔法?が効いているはずで……王様の代に、何かあったのかなぁ?   「王と、その兄の代だけは、その力が現れなかった。特に王の兄にはな」 「え?お兄さんが居たの?えっと、普通王様って、お兄さんが継ぐんじゃないの?」 「ギュールズでは、産まれた兄弟の中で一番強い者が王になるのです」    なるほど、最初に一番強い人が王様になったから、それを続けているのか。   「そこで問題が起きた」    うんざりとした様子のディックさん。物言いまでぞんざい。…えっと、十年前だから、ディックさん達は、25歳。兵士だったのかな?それともぶぃぶぃ昇進して、それなりに部下なんか居たのかな?  またまた、そろそろっと、手をあげる。   「何だ?」 「25歳って、地位的に、どこら辺のポジション?」    すみません、すみません、話の腰折って、ごめんなさい。でも、分からない事ほって、後で聞こうなんて思っちゃいけない。あたし、忘れるんだ。   「25って言っても、色々あるだろ?まぁ、軍で言うと、そこそこ部下が持てる年齢じゃねぇの?普通に強ければな。  んで、俺は、そん時傭兵〜」 「俺は、一軍の第三連隊長だ」 「私は、今と変わりません」 「え?」    ローランさんをまじまじと見た。変わらない?25歳で、既に術士長様っ?!!   「こいつは、変態だからな。  簡単に言えば、前術士長が、ローランを指名して、さっさと隠居しただけだ」 「確かに簡単に言えばそうだな…だが、お前もそういう意味では変態だろうがっ!」    ローランさんは、不本意だとばかりに文句を言う。えっと、ファビさんが普通の傭兵さんで、ディックさんとローランさんは、その年齢にしては、異例の出世をなさっていたと。出世頭だよね?すっごいなぁ〜。   「サミ」 「ん?」 「変態から、ファビを外しただろ?」    あ…、まただ。そんなにあたしって、考えている事、顔に出てますかー?   「う、まぁ」 「普通、傭兵は歩兵扱いだ。よっぽど名の通った者や、入隊時に、変態並みの腕みを見せない限りな」 「えっと……ファビさんも、変態?」 「当然だ。こいつが、普通な訳あるか。  通り名『赤い刃』。突然戦場に現れては、功績をあげていく変態中の変態だ」 「あー、ディック、お前、そーゆー事言う?お前の変態さ加減の方が、俺より遥かにすげぇじゃねぇかっ!」    えー、ここから、誰が変態かという醜い争いが続きます。  あたしとしては、全員が変態というか、信じられないぐらい才能のある方々だという事が十分に分かりましたんで、それで十分です。  おっさん達は、変態という言葉を使って、まだ遊んでいる。ほっんと、仲がいいよねー。   「えーっと、続きが、聞きたいなー」    十分におっさん達の会話を楽しんだ後、手をあげて発言。   「あ、すみませんサミ殿」    さっさと遊びを終わらせる、ローランさん。   「王の兄弟は仲が良かった」    しれっと、話の続きをするディックさん。   「んだよ、もう少し遊ばせろよなぁ〜、ちぇぇ〜」    訳分からない発言をしながらも、聞く体制になっているファビさん。  楽しいなぁ、もぉ!   「兄君のジェフロワ様は、元々文官気質でしたので、王の執務を補佐する立場を取りました」 「その息子シモンが、謀反の旗頭に立った。シモンは、ナデージュと同じように武の資質があったが為に、己の父親に反感を抱き、自分の地位に納得しなかったとされているな」    あー、兄のくせに、何で弟に仕えているんだとか、自分より弱い父親見下しとか?かな?   「それを、一部の文官達に目をつけられました。  多くの上位文官は、卿持ちですから、それぞれ自分の領地と兵士を持っています。また、文官ではなくとも、同じように弱い王を快く思っていなかった領主の同士達も居ました」 「結果、対立だ」 「えっと、お題目は、王様対お兄さん?それとも息子さん?」 「ジェフロワ様は、最後まで王の補佐につきました。あの方は、己の分をしっておられた。そして、自分の役割を最後まで貫かれた。その態度こそ、文官というよりは、まるで武人のような立派な態度だったと聞いています」    会話が過去形だよ。   「その…お兄さんは?」 「最後まで王の補佐をし、決着が付いた時点で、国を去られました」    なんて……なんて……馬鹿息子のせいでぇぇぇ!   「サミ、息子に対して怒ってるだろう?」 「うん」 「だがな、ローランの言った事は、表面上の事だ。何の基盤も無しに、他人に唆されただけで、シモンが謀反を起こすかどうかはな……分からん」 「ディック!」 「ローラン、ジェフロワの心中は、家族との会話は、当人と、戦死したシモンしか知らんだろ」 「そ、そうだが…」 「俺は、今でも、不思議に思ってる。  確かに、シモンは、父親の態度に腹をたてていた。だが、どんな点に腹を立てていたかは、俺は知らないんだ。知っているのは、あいつの剣だけ。一緒に戦っていて、決して不愉快じゃなかった。それどころか、俺は結構好きだった」    ディックさんの言葉に、ファビさんが笑う。   「剣は、性格が出るからなぁ」 「あぁ。一本気のある率直な戦い方をするヤツだった」 「一本気ねぇ……だからこそ、じゃねぇの?」    ファビさんの言葉に、ディックさんは口の端をあげるだけで、何も言わない。うーん、ファビさんが、何を思って言ったか、あまりに知らない事が多すぎて推測がつかなぁい。や、知っていても、あたしの頭で推測付くかは分からないけどね。   「その息子さんを旗頭にした人達の中心は、文官さんなんだよね?」 「そうです」 「武力が一番な国で、文官さんが中心に動いちゃうの?」 「彼らは、長い時間をかけて、自分達の手駒を増やしていたようです」 「それで、国が真っ二つだ。微妙に王側が、数で負けていた」    半分以上の駒を、文官さん達が手に入れたと。王様って、結構人気無し?   「それに、文官達には頭がありました。十分に練った、長年にわたる策は、非常に効果的で、一時は王が負けるかという所まできたのです」    ん?何で、ローランさんが、すっごく嫌ぁ〜んな顔しているの?   「だが、こいつが加入したせいで、王が勝ちました」    ローランさんが指差すは、ファビさん。   「ファビさん一人で?」 「はい」 「たった一人で?」 「不本意ながら、そうとしか言えないのです」 「馬ぁ〜鹿、ローラン。んな訳ねーだろうが」 「いくら俺が、前線に居なかったからといって、あの空気の変わりようは、分かる!」    それを皮切りに、ローランさんとファビさんが、空しい会話のやり取りを始めた。その楽しい光景を堪能していると、ディックさんが、あたしの横に座った。   「敵側の旗頭は、シモン。王側の旗頭は、ナデージュだ」    あ、話の続き。   「お姫様?」 「あぁ。ファビはな、小汚い面の旗頭より、物凄い別嬪さんの旗頭を、無条件で選んだ」 「あーーーー、ファビさんだねぇ」 「そうだろ」    呆れてものが言えないヨ。らしすぎ。   「ちなみに、あいつの通り名の上に、『不敗の』というのが付く」 「不敗ですか」 「王側の陣営では、これで勝てると、士気がかなり上がった。  そして、あいつは、速攻で兵士の心を掴み、そのままナデージュの代わりに最前線まで皆を引っ張った」 「す、凄いねー。それって、確かに普通じゃない」    それぐらいは、分かる。単なる傭兵の扱いじゃない。一番の旗頭を無視して、傭兵が全権握るなんて……あり得ない。   「んでも、それって、まずいんじゃないの?」    ディックさんが、珍しく分かりやすい笑みをこぼす。   「美しい貴方に、私が必ず勝利をお持ちしましょう。貴方は、どうか我らの帰還をここでお待ち下さい」 「………もしかして、ファビさんが?」 「そうだ」    うっわぁ〜ど、どこの王子様の台詞ぅ〜?鳥肌モノだぁ。   「確かに、ナデージュは、かなり疲弊して、まだ前線で戦えるような状態じゃなかった。ま、兵士達もそうだったんだがな。  その中で、立てる者が、全員あいつに付いて行った。負けるなんて誰も思わなかったのだろう」 「もしかして、ディックさん…も?」 「あぁ、あんな事を他国の者に言われて、一応肩書きのある俺が、座っている訳にいかないだろ?」 「じゃぁ、もしかして、もしかして、そんな立場の人達…みんな?」    ディックさんは、苦笑して頷いた。   「それで、勝っちゃったんだ」 「ちょっと待てやー!ディック。お前、肝心なとこ、全部はしょっただろっ!」    いつの間にか、ローランさんとファビさんのじゃれ合いが終わっていた。   「そうか?」 「お嬢ちゃぁ〜ん、聞いてくれよぉ〜」 「なになに?聞く、聞くよぉ〜」    すっげ、面白い話のはず。   「こいつらはなぁ〜!参加したばかりの俺に、ありとあらゆる現状と分析した敵の情報を投げつけてなぁ、これしかねぇだろっていう、とんでもねぇ策を投げつけたやがったんだぜぇ〜っ!」 「そうなのか?」    あ、ローランさん、知らないんだ。あー、怪我人の看護で忙しかったのか。   「あのデュカス卿とこのディックの策を、足して二で割ったやつ〜」    「あの」と「この」にやたらめったら、アクセントが付いている………なんか呪い風味?   「あぁ……それは…酷い内容だろうな。俺は、お前が先頭に立って、突っ込んでいったとしか聞いて無いぞ。それが策か?」 「ちぃがぁぁぁぁうっ!こいつら、俺が新参者で何も知らねぇのをいい事に、臨時旗頭にしやがった!」 「お前、不敗の赤い刃だろう?適任じゃないか」    あぁっ、ローランさんの言葉に、ディックさんが、笑いながら頷いてる。その笑み、たちが悪そうなんですけどー。   「だがなぁ、味方はぼろぼろ。敵は、多勢だぜぇ。しかも、突っ込むタイミングは、こっち任せときたもんだ」 「俺が、ちゃんと傍に居ただろ」 「へーへー、確かにちゃんと傍に居たな。だが、それが元々、お前の役目だろうがっ!」    なるほど、ディックさんは、お姫様についていたんだね。うっわぁ〜、十年前でも、そんなに強かったんだぁ。この三人のレベル、どんだけ?生まれ付いた時点で、レベル100?   「お嬢ちゃん、ローランは泣き虫だったし、ディックは実家の手伝いで焼けどと打ち身を何度も経験してっし、俺は、おやじに、ちびすけの頃から、めっためたにされて来たんだよ」 「う、全員、読心術のまで……」    頭をぐりぐりされた。しかも、ディックさんまで加わってる。   「んでもなぁ〜、どんなに頑張っても、おっさん達みたいにはなれないよぉ〜」 「あぁ〜?なる必要なんかねぇだろ」 「サミ殿の世界に、剣も魔法も無いのでしょう?」 「お前は、お前の好きな事に、夢中になっていればいいんだ」    まぁ、一生一般市民その1ですから。いっか。何事にも分があると納得しなくちゃね。それに、今回の事で、絶対一般市民じゃお会い出来そうにない人達と会えた。これがラッキーと言わずして何だというんだ!うん、夢中になって、堪能するヨ!   「あれ……王様は?」    旗頭が姫様だったのは、相手が息子さんだったから。でも、一番の旗頭は、王様だろ?   「城ん中」 「え?」 「しかも、一軍プラス、大将まで抱えてな」 「大将というは、ラグエル卿の事です。当時、城の全軍のまとめ役をしていました」 「えっと……そんな重要な人が城ん中?」 「後でなぁ、ラグエル卿に会った時、第一声が『ずりぃっ!』だったんだぜぇ」 「あぁ………ラグエル卿さん……」    想像がつく。ラグエル卿。たった二日間だったけど……あの性格。自分がバリバリ前線で戦いたかったんだ。なのに、王様のお守りをさせられて、うっぷん溜まりっぱなしだったんだねぇ。   「お姫様が外なのに……」 「あぁ、ナデージュは、自分から外に出た。あれに捕まる前にな」    あれって……腹黒とお噂の王様?だよねぇ……。   「えっと………二人は、仲が悪いで、いいんだよねぇ?」 「あまりよろしくは、……ありませんね」    えっと、ローランさん。そんな遠まわしで言われると、一層悪そうに聞こえますですよ〜。   「あれって、自分の娘に嫉妬しているってやつだよなぁ?」    二人は、ファビさんの言葉に苦笑して答えない。でも、その表情が肯定している。   「んで、正義感と筋を通すのが基本理念と叩き込まれているのも、気にくわねぇんだよなぁ?」 「叩き込んだ?」 「ナデージュの剣も、ラグエル卿仕込みだ」 「あー…」    なるほど、ガラは悪いが、騎士らしい騎士でありましたよ。うんうん、ラグエル卿が師匠じゃぁ、悪者退治一直線コースの勇者様が出来そうだものなぁ。   「んで、王様は、腹黒さんなんだね?」    きっちり三人の首が縦に動く。  ど〜腹黒なのかなぁ?……なんか、聞きたくないんで、そっちは突っ込むのやめよう。自分が、ここに居る経緯を聞いたら、テンション下がりそう…。この旅、嫌いになりたくない。   「それで、もんのすっげぇ策が実行されて、王様は城に居たまま勝っちゃったんだね?  負けた人達は、みんな戦死しちゃった?」 「いや……だが、全員処分された」    うっ………、ディックさんの言い方だと殺されたんだね……。   「あ、でも、それじゃぁ、文官さん激減で、大変じゃなかった?だって、お兄さんも責任取って去ったんでしょ?」 「だから、元々文官よりだったデュカス卿が、まとめる事になった……、剣でな」    あぁ………、頭じゃなくて…、剣なんだ……。   「だが、あの方は、元々の才で、徐々に元のような雰囲気に戻しました。そのおかげで、デュカス卿は、軍を離れる事になりましたが…」 「すっごく強かった?」 「そうだな。あの身のこなし、素早い剣さばきは、かなり見ものだったぞ」 「もったいない…のかな……。なんか、朝練も楽しそうにやっていたもんね」 「だが、今、デュカス卿が居なくなったら、文官への締め付けが一層厳しくなる。卿もそれが分かっているから、離れたくても離れられない」    腹黒さん…物凄い腹黒さんなんだな。うー、どんな締め付けをやっているか聞いたら、ものすごぉく嫌な気分になりそうだ。   「そっか……デュカス卿だけじゃなくて、息子さんまで取られるのは、嫌だったんだね」 「ラグエル卿ですか?」 「うん……げっ、つっファビさんっ!」    でこピンされた。でも、あたしが名前呼ぶ前に、ローランさんに殴られているファビさん。なんて、素早いんだローランさん。   「ってぇなぁ」 「あたしも痛いヨ」 「しけた面ぁしてっからだよ。  あのなぁ、お嬢ちゃん。未来に希望があんだろ」 「未来?」 「そ、ナデージュが、ちゃぁんとした婿を取れば、王様速攻引退だぜ」 「えーー、腹黒いんでしょ?引退なんか、しないでしょ〜」 「ナデージュだぜ。ナデージュ。無理やり引退させっだろ」    あー、ありえそうだ。ものすごぉ〜く、あり得そうだ。   「あ、でも、また戦争?」 「あれは、それほど馬鹿じゃない。頭で切り抜けるだろ」 「その為の人材も居ますし、人望もあります」    あ、珍しく、ひらめいちゃったぞ。   「もしかして、傭兵家業辞めた理由って、お姫様に仕官する為?」 「あ"〜?」    ファビさん、ものすごぉく嫌そうな顔しているけど、ローランさんも、ディックさんも、口元に笑み浮かべてるヨ。   「お姫様が、ものすごぉく気に入ったんだね」 「お嬢ちゃん……俺は、給料の額が気に入っただけだ」 「ふぅ〜ん。じゃぁ、そゆ事にしてあげる」 「じゃぁじゃねぇっ!」 「んじゃ、そゆ事で。さーー寝よう!もー夜は遅いぞー」    さっさと、自分の場所に行って、寝っころがる。  背後から、「明日の朝の目覚まし、ものすげぇのにしてやる」なんつー、怖い声が聞こえるけど、無視、無視。が、頑張って起きる……起きたいぞ……起きれればいいなー……頑張れ、あたしの起きる機能……ううっ無理……かな?………期待……したいけど……。    えぇ、無理でした。無理でしたともさっ!  今、あたしは、耳を押さえて涙目です。ファビさんのモーニングコールは、レベルアップしていました。  『サ〜ミ。俺は、お前が気に入っているんだぜ』…って、ぐはっ!  色んな所から血が吹き出そうになった、朝でした。     to be continued…     09.01.24 砂海
はー、やっとこ書きあがった。 最初書いた時、続編で書けばいいやぁ〜ヽ( ´ー`)丿と、投げていた内容を、ちゃんと最初に書く事にしたら、……まぁ、長くなった。そりゃぁ、根底だから、当然なんですがf(^-^;) 今まで、頭ん中で適当に浮かんでいたものを、ちゃんと筋道通すのは……相変わらず面倒だと思ったり<おい これにより、「昔話」と「十年前の話」も、いつかちゃんと書かなくちゃなぁ〜、め、面倒(ry この会話形式だと、話は飛ぶし、大雑把すぎだなぁ…f(^-^;)