Fantasy with O3 11  

  「まだ、ラグエル卿の領地?」 「いや、もう過ぎました」 「フィノ卿の所だ」 「魔法使いの居る山一帯が、フィノ卿の領地です」    なるほど、ゴールは近いぞ!   「お嬢ちゃん、このフィノ卿ん所は、長いからな、山裾まで、まだまだだぞ」    あ…遠くなった。  ただ今、慣れた野宿の支度も終わり、現在楽しい食事中。   「今度こそ、何事もなければいいな」    あー、言っちゃった。そんな事言ったら、絶対、逆の現実がスキップして近寄ってきちゃう。そんな不幸な予感。きっと、また…ここでも何かあるんだろうなぁ…。   「んで、体は大丈夫かぁ?」    首を横に振ると、体がギシギシ言った。全然ダメダメ。   「あのおっさんは、すっげぇ強ぇだろ?」    初心者は、強さの上下を図れません。朝練についていくのがやっとだった。   「ローランさんも、フレデリクさんも、ラグエル卿に剣を教わったんですよね?」 「はい」    横で、フレデリクさんも頷いている。   「強いはずだぁ」    体育会系の領地には、朝練があった。  にこやかに笑うラグエル卿さんに、引きづられ、あたしも参加するはめに。あれですか?昨日の仕返しですか?あたし、いい事したよね?悪い事してないよね?   「デュカス卿も、凄かったな」 「あれは、日々の鍛錬なくては、出来ない」    ラグエル卿のお弟子さん二人は、しみじみと頷いている。   「うんうん。リゼットさんと、やっているのを見た。カッコ良かった〜」    なぜか、デュカス卿も朝練に来ていた。でも、あれは自主的に来たんだと思う。だって、楽しそうだったもん。文官でも、もんのすごぉ〜く体育会系な人だった。   「お嬢ちゃぁ〜ん、俺はぁ〜?」    ファビオさんを見る。   「叔父様と言うに相応しい優雅な叔父様が、強いってあたりがカッコいいの」 「え〜、俺だって、叔父様じゃん」 「叔父様は、じゃん言わない」    目の前でぶーぶー言ってるあたりが、叔父様から激しく遠のく。   「まさか……デュカス卿の十年前あたりって……」    縋るようにローランさんを見上げる。あたしの指は、震えながらもファビオさんを指しています。   「安心して下さい。デュカス卿は、昔と変わりません」    安心した。ものすごぉく安心した。   「ただ…」    あぁっ…なんか接続詞がっ!   「あの武勇伝は、デュカス卿だったな?」    何それ?   「フレデリクさんっ!」 「何だ?」 「言わないでぇ〜。ものすごぉく、お願いっ!あたしの夢を壊さないでぇ〜〜〜」    ファビオさんが、聞く気満々で、続きを待っている。でも、親切なフレデリクさんは、「分かった」と一言言って、食事の続き。ありがとう、あぁりぃがぁとぉ〜。   「なぁ、お嬢ちゃん」 「ん?」 「そろそろ、ファビでいいんじゃねぇの?」 「ファビ…さん?」 「ついでに『さん』も取っちゃえ」 「あーーーー、それは無理。  うん、ファビさんだね」    横でフレデリクさんが、自分を指差している。   「ディックさん?」    口を動かしながら、頷いてくれた。そして、ローランさんが、期待するような瞳で見ている。えっとぉ…。   「あの〜、ローランさんって、普段どう呼ばれているの?」 「ローラン」 「ローランだ」    今まで聞いていたとおり。   「ローさんだと、変ですよねぇ」 「ラン、でどうだ?」 「ローランでいいだろ」    あーなんか、寂しげだ。捨てられた子犬だ。   「あ、あの、ローランさんって、もっと長い名前があるんですよね?」 「……ローラン・フィノ」 「フィノ…ちゃん?」    あー、あたしの意見は、ダメだったみたい。   「フィンは、どだ?」    少し考えている?!   「可愛いすぎだ」    フレ…じゃない、ディックさんが、ばっさり切っちゃった。  確かに、フィって音が付く様な、雰囲気の体をしていない。なんだろ?フィって、可愛らしい感じがする…から?   「サミ殿、呼び捨てで」    ずいっと、顔が寄って来る。必死だよ。何で?   「えー、それは、最年少者として、絶対ダメだと思うなー」 「言葉使いも、普段のままなのですから、大丈夫です!」    何が、大丈夫なのぉ?!   「ローラン………さん」 「ダメです」    一応ファビさんと、ディックさんに視線だけで助けを求める。即効、無理という表情が返ってきた。役立たず!   「分かりました……ローラン……で、いいですか?」    心の中で『さん』を付ける。   「その間は?」    うわっ、なんか鋭いヨ。何で?   「が、頑張ります…」 「えー、俺も、呼び捨てでいいのになー」 「やっ!」    助けてくれなかったくせにっ!きっとあたしの目は、恨みがましい視線、バリバリ出ているヨ。   「さっさと食べろ。訓練時間がなくなる」    さっきから、要所要所突込みを入れるだけで、黙々と食べていたディックさんは、もう片付け始めている。慌ててお皿とスプーンを持って、食べ始めた。             「ディックさん」    全部食べ終えて、食器を片付けたあたしは、さっさと棒を振り回しているディックさんの背中を叩く。   「何だ?」 「ありがとうって気持ちとか、さようならとか、こんにちわとか、あたしの国だと、こんな風に、お辞儀をするの」    ディックさんに、一礼。   「ここでは、どういう風にしたら、いいの?」    魔のラジオ体操をする前に、前からどうしていいか分からなかった事を、忘れる前に解消!   「左胸に右拳を当て、頭を下げる」 「こんな感じ?」    ディックさんが、目の前でやってくれるのを真似てみる。   「お嬢ちゃん、腰曲げちゃぁダメだろ」    お尻を叩かれた。  その後、ファビさんがローランに殴られた。あたしのやる事は、それを眺めているだけ。まぁ、攻撃しても、どうせ当たらないけどさ。   「これは?」 「いいだろ」 「どれぐらいの間、下げていたらいい?」 「気分だ」    なるほど。   「お嬢ちゃぁん、何で俺に聞かねぇんだ?」 「そりゃぁ、ディックさんなら、ちゃんと教えてくれるもん」 「えーーー、俺だって、手取り足取りちゃんと教えてやるぜぇ〜」    教えるのの、前がいらん。   「サミ殿、私は?」    あ〜……、なんか恨めしい視線が…。   「えーーっと、なんか、すっごいの教えてくれそうだった……から、かなぁ?」    笑って誤魔化せ日本人。   「お前の事だ、正装したナデージュがやりそうな事を教えるだろ?」    ディックさんの言葉に、あたしも頷く。あれは、ドレスじゃないと、格好がつかない気がしますよ〜。   「女性なのだから、あれが正解だろう?」 「この格好でか?」    力強く頷かれても…ローランさん。   「えー、ラジオ体操しましょう。うん、しましょう!」    無理やり話題転換だ!   「なぁ、お嬢ちゃん」 「はい?」 「ラジオタイソウって、他にもねぇの」 「うん、第二、っ、無いからっ!!」    口が滑った。チラリとファビさんを見ると、ニンマリと笑っている。  話題転換失敗。もっと悪くなったヨ!   「もう一つあるんだな。教えやがれぇ〜」 「絶対、嫌ぁぁぁぁっ!!  さぁ〜ラジオ体操だぁ〜、ばんばんやるぞぉ〜」    後半台詞棒読みだけど、気にしない。のびの運動をさっさと始める。  なんつーか、君達は日本人か?と問いたい。何で曲も無いのに、同じ動きを始めるんだ?別に一緒にやらなくてもいいのに。ってか、一緒にやりたくないヨ。  とにかく、ファビさんの方は見ない。一生懸命、体を動かす。  絶対に、第二体操は、教えない!最初のあれ。腕と足を曲げのばす運動を騎士様達がやってるのなんか、絶対、絶対、絶対見たくないよ!!     to be continued…     09.01.22 砂海
えー、ここまでが、元々書いてあったシーン。この続きを書き始めたら、はっきり言って、この量の倍でも収まらなくなり……。まぁ、この小説の根幹を成す話にしちゃったんで、仕方が無いのですが……。 そんで先が、まぁだ、かぁ〜なり、見えないんで、先にこれをアップしちゃいましたm(__)m 続きは、もう少しお待ちをm(__)mm(__;)m^^^^