Fantasy with O3 11  

   前言撤回させて頂きます。誰が立派な叔父様だって?や、言葉使いの乱れも、声を荒げる事も、暴力を振るう事もない分まし?いやいや、あの冷ややかな嫌味の連発は、叔父様と心の中で呼んでいただけに、大人気なさを感じる。倍増だヨ。   「えぇ、確かにうちの騎士団は弱いでしょう。だが、その為に、多くの制度を作ってきました。  後は、山賊より少し強い兵士が居れば十分だと思っています。貴方方のように、領民を蔑ろにしてまで、鍛える事に意識を集中する事は出来ません」 「蔑ろになんかしてねぇよ。騎士だけじゃ食っていけねぇ事も、知ってるぜぇ。だからこそ、俺達が弱いやつらを守らなきゃいけねぇんだろ?守らなくちゃいけねぇもんを守れなくて、どうすんだよ」    えー、たぶんこの一回分の会話で今まで全ての会話の主旨が入っていると思う。  ある意味大人なんだなぁ〜とは、思う。一応、相手の良い点は……認めているんだよね?ね?   「それとも、また十年前の繰り返しを、おめぇがしてぇのかぁ?」 「ほぉ〜、私が、あそこまで馬鹿だと?それとも、計画性が無いとでも?どちらの非難でしょうか?」    うっわぁ〜叔父様の目が、絶対零度。   『十年前って?』 『文官のトップが、反乱を起こした』    少し不機嫌そうなフレデリクさんの声。   『?』    それだけにしては、反応が冷ややかすぎないか?   『あれから、文官に対する締め付けが厳しくなりました』    ローランさんの声も硬い。  さっき、ラグエル卿さんが、エロワさんに言っていた言葉を思い出した。(お前を敵に渡す気はないっ!)…敵っていうのは誰だ?なんか、腹黒って言葉が頭をよぎった。  (私も、それが国の中で重要な職務だとは、思っている。だが、いざという時に、ペンでは何も守れん)重要な職務をやっている人は……敵?  う〜、何も知らないあたしが、口を挟む事じゃないって分かっているけど、でも……とりあえず最初に口出ししちゃったのは、あたしだからという言い訳にすがってみる。思いついた言葉。あってるといいな。   「え〜、もしかして、ラグエル卿さんは、デュカス卿さんを心配しているんですか?」 「そんな訳あるかぁぁぁぁぁぁっ!!」 「ほぉ〜…心配されていたのですか……。まさか、そこまで馬鹿だと思われていたとは……」    二人共、耳が赤かったり、頬が赤かったり。よしっ!結果オーライ!   「仲が良かったんですねぇ〜」 「へぇ〜仲良しさんだったのかよぉ〜」 「照れ屋だな」 「お二人共、それならば、素直にお話して頂けると助かるのですが…」    これは、チャンスだ。ようやく話を聞いてくれそうな雰囲気。   「えー、デュカス卿さん」 「なんですか…」    うっわぁ〜叔父様が、照れ隠しに一生懸命冷ややかな表情を作ろうとしているよ〜Vvこれが噂に聞く、ツンデレってやつ?   「エロワさんを、引き取って下さい」 「は?」 「立派な文官に育てて下さいね」    ドスの効いた声が、「ちょっと待てやぁぁっ!」とか言ってるけど、無視。   「エロワさん」 「あ…は、…え、…あ、はい」 「挨拶!」 「あ、は、はい…み、未熟者ではありますが、今まで以上に勉学に励みます。どうか、よろしくお願い致します!」    言った瞬間、慌てて口に手をあてる。勢いに負けて言っちゃった感。   「お嬢さん、私がローラン殿にさらわれたのは、もしかしてこの為ですか?」 「はい」 「なぜ?」 「えー、私の友達に、両親が学校の先生って子が居るんだけど、自分は、お芝居をやりたいって、ずっと悩んでいて…、当然、ご両親は、学校の先生になれって、それが当然だって、思っているみたいで、その気持ちが凄く重いって。  その子は、両親が嫌いじゃないの。だから、家出も出来なくて、でもなりたいのは、学校の先生じゃなくて……あたし、すっごく心配なんだ。いつか、壊れちゃうんじゃないかって。すっごい優しい子だから、自分を殺しちゃうんじゃないかって」    ラグエル卿とエロワさんの会話は、友達の優子を凄く思い出させた。いつも辛そうに笑う優子。あたしは、彼女の話を聞く事しか出来ない。だって、あたしみたいな子供が、先生っていう肩書きがある大人をどう説得していいか分からなかったから。   「ラグエル卿さんは、エロワさんに悲しい思いさせたくて、言ってるんじゃないですよね?」    うっ…背中を向けちゃったヨ。   「エロワさんの将来は、エロワさんが決めた方がいいと思うんです。壊れてしまうより、ずっとずっといいと思いませんか?」    返答無し。   「お嬢ちゃん、お嬢ちゃん」    ファビオさんの指の先には、真っ赤な耳。未だ真っ赤じゃなくて、一応今赤くなったんだよね?   「エロワ殿」 「は、はい」 「役に立たなければ、即刻こちらへ帰ってもらいますからね」 「はい!」 「ラグエル卿、ご子息をお預かり致します。よろしいですね」 「けっ!」    うわぁ〜凄い返事だよ。でも、剣振り回していたさっきに比べて、すっごい進歩だ。   「あのさ〜、デュカス卿さんの所に、変人さん居た?」 「その変人さんというのは、武器を持つのが好きだという、変態の事でしょうか?」    えー、ローランさんに聞いたんですけど、ちょっと勝ったぞってな雰囲気で、すっごく楽しそうに答えるのは、やめてもらえませんでしょうか?   「サミ殿、数人ほどいましたよ」 「ラグエル卿さん、デュカス卿さんの所から、指導者をお借りして、変人さん達を鍛えて下さい。うん、目標、『山賊になんか負けないぞ!』って、どうでしょう?」    あ〜、眉間に皺が……。でもさぁ、大人になっても喧嘩両成敗だよねぇ?   「俺が行ってやろうかぁ〜?と言いたいところだが、おいっ!出てこいや!」    逆に、ラグエル卿さんが、元気になった。そして、風になった…としか…、気が付いたら、扉の前に立って、それを蹴っ飛ばしていた。   「ちっ…」    蹴っ飛ばされた扉の向こう側には、きちんと整列して立っている男の人が三人。皆さん、慣れてる?   「リィ〜ゼ、どうせお前は、勝手に行くんだろ?」 「ありがとうございます」    声を聞いて分かった。この人、女の人だよ。  なんつーか、三人のうち二人は、絵に描いたような立派な騎士様の格好、腰には剣。エロワさんに満面の笑みを送っている。  そして、このリィーゼさんと呼ばれた女の人は、二人の騎士様に比べてRPGで言うなら、軽装備風味。でも、髪の毛なんか短髪で、腰には細みの剣を下げている。その姿でも、恭しく一礼を見せているもんだから、一見、凛々しい貴公子様が現れたかと思ったヨ。  そのリィーゼさんが、デュカス卿の前に立つ。   「はじめまして、リゼットと申します。ぜひ、私にもご教授願います」    お姫様とは違う、凛々しさだ。   「何をご教授すればよろしいのかな?」 「もちろん、レイピアを」    傍に居たフレデリクさんの服を引っ張る。   『デュカス卿は、十数年前の小剣一位だ』    えーっと…何で命は大切に!になったんだ??   『あの頃は、色々あったみてぇ〜』    ファビオさんって、丁度十年ぐらい前にここに来た人で、詳しくは知らないんだろうけど、何だろう?十年前って?詳しく、聞いてもいいもんなのかな?   「私は、剣を持たなくなって随分と久しい。レイピアであるなら、他の人をあたりなさい」 「デュカス卿のお噂は、常々聞いております。たとえ、執務でお忙しかったとしても、必ず一日一回はレイピアを振るっているはずだと」    誰がそんな事を言ったんだろう?なんて疑問は、一切わかなかった。だって、皆、ラグエル卿を見てるんだもん。   「ラグエル卿…」 「俺は、嘘なんか言ってねぇよ。だろ?」    絶対仲良しさんだよ、この二人。きっと、十年前に何かがあって、未だ喧嘩してるんだ……拗ねてんのかもしれない。これが、仲直りのいい機会になるといいな。   「どうせ、お前の事だから、ガキ達に後を任せてんだろ?今日は、泊まってけ。ついでに…だ、飯の後で、俺の相手をしろ。出来ねぇとは、言わせねぇよ」 「……貴方の相手は、もう務まりませんよ」 「うるせぇっ!」    その一言で会話をぶった切ったラグエル卿は、あたし達の方へ向き直る。   「おめぇらも、泊まってけ。  盗み聞きしていた三人とエロワ、おめぇらが、客間の用意をしろ。いいな」 「はい」    嬉しそうな、四人の返事が返って来る。   「どうぞ、こちらへ。食事の用意が出来ています」    さっきから、エロワさんと小さな声で会話していた騎士様二人が、先導してくれる。  うわぁ〜、なんて贅沢なんだ。騎士様だよ、騎士様。ファビオさんやフレデリクさんも、その肩書きを持っているはずなんだけど……、規格外だからなぁ。うん、ファンタジーな世界に来て、初の?感動!絵に描いたようなお姿が眩しすぎますっ!ぜひ、白馬にっ!   「あの…」 「は、はい?」 「サミ殿、エロワ殿の兄君達、マルク殿とシモン殿ですよ」 「あ、はじめまして、サミです」    ここでも日本式の礼。あぁっ、早急に挨拶の仕方を聞かないと〜。   「ありがとうございます、サミ殿」    目の前に騎士様が二人。跪き、頭をたれている。うわぁ、これこそ、騎士様、基本のポーズ!   「サミ殿のおかげで、エロワの望みが叶いそうです」 「あ…あの…ご、ごめんなさい、他人が余計な口出しをしまして………本当に、事情のカケラも知らないのに…すみません、反省しています」 「お嬢ちゃんが、謝る必要なねぇだろ。こいつらは、エロワの兄ちゃんやってるくせによぉ、今まで、何も出来なかったんだぜ」 「その通りです」 「しかし、父上と口論するしか手立てがなかった私達と違い、リゼットだけは、頑張っていたのです。ファビオ殿」 「えぇ、リゼットは、父上の寝所に忍び込み、闇討ちをしたり」 「一週間、手作りの極悪メニューを披露したりもしていました」 「だから、不甲斐ない我々と違い、彼女は努力していたのです」    えーーっと、闇討ち?女性が男性の寝床に忍び込んだ?極悪メニュー?……リゼットさん、何者?忍者?   「マルク、シモン」    あ〜、リゼットさん、睨んでる。   「私も、同罪だ。何の成果も、あげられなかったのだからな」 「あの……忍び込んだって……」 「あぁ、気配を消して、ベッドの下に潜り込んだ。くそっ、ベッドごと剣を突き刺せば良かった…」 「リゼット!」 「君の腕では、殺してしまうよ!」 「ラグエル卿が、簡単に死んでくれると思うか?」    「そうだな」とか言って、納得しないでっ!実の子供その1、その2っ!   「極悪メニューって…」 「私は、料理は一切出来ない。その腕で、捕獲したトカゲや蛇を使い、スープらしきものを一週間分作ったのだが……くっ、完食された」    あぁっ、一見、凛々しい貴公子様がっ!!リ、リゼットさんっ!歯ぎしりは、やぁめぇてぇぇ〜!   「……あれは、父上を尊敬したな…」 「試しに飲んでみたのだが……私には、天国が見えたものだ…」    ……うっわぁ〜。   「サミ殿、ありがとう。私も、エロワも、望みどおり、ラグエル卿の所へ行ける」 「いえ…私も、頑張ります」    あたしの言葉に小首傾げた姿が、非常に可愛らしい。女の人に、ちゃんと見える。   「あ、聞いてらしたんですよね?友達の話」 「えぇ」 「友達の話を聞くだけじゃなくて、あたしも、何か出来ないか、考えてみます」    毒入り料理も、寝床に忍び込むのも無理だけど、お兄さん達みたいに、話しをするぐらいは、出来る。うん、ご両親に怒られても、優子に嫌われても、彼女が壊れるよりはマシだ。   「なんか、この国の女の人は、皆さん強いんですね」 「いや、リゼットを見て判断するのは、間違っています」 「え…でも、お姫様も…」 「ナデージュ姫とリゼットを比較するなんて、神への冒涜ですっ!」    あー、そんな酷いんだ。   「美しく凛々しく戦いぬく姿と、清楚に微笑まれる姿は、美の極致じゃないですか」 「あのように、儚げで美しく強い方を見た事がありません」 「えーーーっと」    ファビオさんを見た。   「こいつら、城にあんまり来ねぇから」    フレデリクさんを見た。   「知らないだけだ」 「どういう事ですか?」    困惑ぎみの、騎士様達。あたしも困惑中なんだけど。   「あたしが思うに、リゼットさんの方が、普通に見える…気が……ほんの少しだけど…」 「あー、お嬢ちゃん、無駄、無駄。  城勤めをしてねぇ連中の夢を壊すなよ」    ファビオさんが、ニヤニヤ笑っている。   「本性を知って、寝込むのを見るのが楽しくてな」    ローランさん……酷いヨ。   「夢見るのは、勝手だ」    フレデリクさん、そうだけどさ。  なんつーか、お兄さん達、少し怯えているよ。リゼットさんより、うんぬんを検討しちゃっているみたいだよ。もう…夢を壊しちゃったかも……ご、ごめん。     to be continued…     09.01.16 砂海
この話と次の話の間に、話を突っ込みたいんで、これから書きます…f('';) 次回は、少々お待ちをm(__;)m^^^^   現在:叔父様2人、おっさん3人、若者6人(男4人、女2人) 若者が増殖しているなぁ……(^-^;)