Fantasy with O3(Talk in the bed) ナデージュ1  

  「え?」    着地に失敗しないよう身構えていた沙美は、いつものクッションと違う感触に、体を支える強い腕にびっくりしながら周囲を見回した。  自分のお尻の下には、フレデリクの腕。不満げに杖をもって真正面に居るのはローラン。そして、お姫様を羽交い絞めにしているファビオが、「お嬢ちゃ〜ん」と器用に手を振っていた。   「すみませんサミさん。ここに、あの大量のクッションを持ってくるのは、目立ちすぎますので、今日は、ディックの腕で代用致しました」    ローラン、実は自分が受け止めたかったのだが、術を操りながらそんな芸当は、流石に無理だと、渋々諦めた。渋々、仕方が無く、フレデリクにその役目を譲った。激しく渋々。   「ったくよぉ、何で俺が、お姫さんを抑える役なんだよっ!」 「分かってる理由を聞くな!」    いつものローランの台詞に、ファビオがいつものように返答しようとするが、今まで小さく部屋に流れていた歯軋り音のボリュームが上がり、呆れて口を閉じた。音の出所、腕の中のナデージュを伺う。   「お、お姫様……折角の真珠のような歯が………」    沙美は、あまりに的確に捕獲されているナデージュを可哀相に思いながらも、真っ先に思う事を口にする。   「勇者殿っ…」    じたばたと暴れながらも、ナデージュは、満面の笑みを浮かべている。だが、一歩も動けない。相変わらずの酷い姫君対応のファビオに、沙美は変な感心をする。   「あのね、お姫様。サミって呼んでくれるのなら、戒め外してもらいますけど…」    沙美は、自分もかなり酷い扱いしているなーと思いながらも、懐かしい勇者という言葉に毛羽立っていた。速攻お願いである。   「でしたら、勇者殿も、ナデージュとっ!」 「お姫様………大変大変申し訳ないんですが、珍しくあたしにも諸事情がありまして、もう少し修行が終わるまで、お姫様でお願いします」    沙美の言葉に、おっさん達三人は、苦笑を浮かべる。未だ、修行が足りないのかと、ディックは、沙美の頭を小突いた。  その光景を沙美の言葉を訝しく思いながらも、ナデージュは、「では、いつかはナデージュと呼んでもらえますね?」と言葉を続ける。   「はい。修行が終わり次第、ぜひ!なんでしたら……ん〜……ナ〜ジュとか、ナジュとかどうでしょう?可愛い呼び方でっ?!」    沙美は最後まで言えなかった。ナデージュの浮かべた綺麗で嬉しそうな笑みに見惚れる。そして、その表情が沙美の記憶を刺激した。拳をぎゅっと握り締めた。   「分かりました。では、僭越ながら、サミと」    羽交い絞めされながらも、その範囲で優雅な礼をする。素晴らしい騎士道精神だと、再び沙美は感心する。拳が解ける。   「はい。ありがとうございます。  んじゃ、ファビさん、離そうねー」 「大丈夫かぁ?」 「だって、これから二人っきりで、お茶会するんだよ?」    沙美は、楽しそうに笑って、ファビオを覗き込む。間に居る、ナデージュが、激しく嬉しそう。   「そうにゃぁ、見えねぇけどなぁ……」    呆れた声音だが、自然な動作でファビオはナデージュを開放した。「んじゃぁ、俺達は行くか」と、陽気な声で、出口に向かう。同時に、フレデリクも沙美を下ろした。  その、あっさりとした行動に、ナデージュは、訝しげに三人を見るが、当人達は、気にした様子も無い。全員扉に向かってる。   「お嬢ちゃん、後でなー」    ファビオは、手を振った。   「サミさん、後ほど」    ローランは、チラリと虚空を見上げ、その後自然に、沙美に向かって小さく頭を下げる。  フレデリクは、何も言わず、掌だけを振った。  静かに、扉は閉まる。  沙美は、振っていた手を下ろし、ナデージュに向き直った。   「お姫様、あたし、今まで、おっさん達から色々昔話を聞いてたんです」    今まで居た場所とは反対側に、小ぶりのテーブルと二脚の椅子。テーブルの上には、お菓子とお茶、そして軽食。頼んでいた通りの状態。  沙美は、近い椅子にストンと腰をおろし、ナデージュにも座るよう勧める。心の中で、目上の人より先に座って、椅子を勧めるって、だめだよねぇ…と思いながら。   「今日は、我侭言って、お姫様の昔話を聞きにきました。それと、いくつかの質問があるので…もし良かったら、答えて下さい!」 「ロ、ローランから、す、好きな人の話を聞きたいと……」    ナデージュは、沙美と目を合わせず、少し頬を染めて言う。   「はい。……あの、あまりに個人的な話なんで、嫌だったら、無しでもいいです。色々聞きたい事を聞いちゃいます。  でも、女の子同士って、恋の話をするのが好きだから、お姫様もたまには、いいかなぁ〜って思ったんですけど……だめですか?」    覗き込むような沙美の仕草に、「う…」と呻いて、それから片手で顔を覆う。   「サミ……」 「はい」 「先ほどのを、お願いしていいだろうか?ナジュでもナージュでもいい。サミが、そう言ってくれれば……話せると…思う……」 「はい、ナジュ。それともナージュ…う〜ん、その場の雰囲気に合わせて使い分けますね」    沙美の記憶にある名前から、かけ離れた愛称。それならば、安心して言えると、沙美は大盤振る舞い。  ナデージュは、そんな沙美の言葉に、さっきの質問以上に頬を染め、そして微笑んだ。   「10年前のお話を、おっさん達から聞いたんですけど……あの、いつからファビさんが好きなんですか?」    微笑みが、固まった。   「え?…あ……なななななな何で、そこに、ファビオが出てくるっ?!」 「へ?だってナジュの好きな人って、ファビさんですよね?違うんですか?」    今まで旅で、お話で、激しく鈍い沙美にでも十分に分かりすぎるぐらいのローランとフレデリクの表情を見てきた。   「ま………間違ってはいない……」    ものすごーーーい、小さな声。   「だが……なぜ……」 「ナジュの好きな人って話があった時の、ローランとディックさんの表情を見て気づきました」    あれは、ものすっごく分かりやすかったと、沙美はコクコク頷く。  ナデージュは溜息をついて、「フレデリクか…あいつは、目ざといからな……ちっ……だが、あのローランが気づく訳がないだろっ!……くそっ…漏らしたのか………あの野郎っ!後でタタム!……」と、ボソボソと罵倒する。頬が赤い為、迫力は皆無。   「だけど、ファビさん、全然気づいてないみたいなんですけど………ナジュ……どういう態度で……」    沙美は、最後まで言葉が続けられなかった。目の前のナデージュは、真っ赤になって、「あ〜」とか「う"」とか…言葉にならない、音を発しながら、頭を抱えていた。   「とりあえず、好きだなって思った時からのお話を聞かせてもらえますか?」 「う"っ…………わ、分かった」    ナデージュは、一つ咳をして、それから優雅にお茶を一口飲み、ゆっくり深呼吸をしてから、沙美を見た。   「サミは、10年前の話を聞いたのだな?」    言葉遣いが、最初の頃より、ぞんざいになっている。沙美は、激しく動揺しているなぁと、しみじみとナデージュを眺める。   「はい。なんか、切りかかるお国柄だったというお話でした」 「っ………う、まぁ……否定はしないが……」    ナデージュは、困ったように、遠くを見る。   「その…切りかかって剣を弾かれた時に………好きになったのだと思う………」 「一目惚れですかっ?!」 「一目というよりは……一剣惚れが……正しい……」    流石お姫様は、一味違うと、感心しながら、沙美は、続きを待つ。   「私の剣の腕は、精霊からの授かりものだ。小さい頃から叩き上げで修練したものにとっては、ズルとしか言いようの無いものだ」 「でも、才能をもらったからって、鍛錬無しでは、強くなりませんよね?」    沙美の拳が握られる。聞き覚えのある台詞。一番上の姫君が言っていた言葉。   「確かに私は、幼少の頃から、ラグエルに師事し、剣の腕を磨いてきたが、それだけで、普通の女性が、鍛え上げられた体を持つ男性に勝てるものではない。だいたい、必死になって、鍛錬をしても、腕の太ささえも、ほとんど変わらない。私の体は、授かりものが無かったら、剣を持つ事さえ、困難だっただろう」 「でも、あのラグエル卿さんに師事したって事は、生半可な努力じゃ勤まりませんよね?」 「そうだな。あやつは、戦うという事に関しては、まったく妥協の無い者だからな。小さい頃から、痣の絶えない生活をしてきたものだ」    沙美は、流石ラグエル卿、お姫様に対しても手抜きはしないんだと、感心をする。そして、心の底で、やっぱりとも思う。  握った掌は、未だそのまま。   「産まれた時から授かった己の真の才能と、厳しい訓練を潜り抜けた者が、目の前に居たのだ。しかも精霊から力を授かった私よりも、遥かに上の技量を持っていて、だ。  たぶん、私は、相手の顔なんか見ていなかっただろう。ただただ、素晴らしい才能を感じ、それに感動をしていた。そして、妬ましく思った……」 「妬ましいんですか?」 「そうだ、妬ましかった。これが、自分の努力の結果だと誇れる腕前。それがゆえの、自信に満ちた言葉。そんなもの、私には何一つ無い。  ただ、強くあれという王家の勤めの為と、贈られた物を錆付かないようにする為でしかなかった私に、あんな声音は出せない」    聞いた姫君の話から、離れていく新しい話に、少し安堵した沙美は、拳を緩める。   「あの戦いの後、ファビオに試合ってくれるよう頼んだ。妬ましかったが、あの剣にもう一度触れたいという欲望に逆らえなかった。それは、あれの戦いを見た後だったからこそ、一層募っていた。  だが、内乱処理で忙しく、少しの間会う事が出来なかった。それに安堵していたはずなのに、少しの間もあれを忘れる事が出来ない。剣を弾かれた時の手の痺れを、日に何度も感じてしまう。  たぶん、妬ましいという気持ちは嘘ではなかったのだろうが、それ以上に憧れる気持ちが強かったのだろう。  後から後から、わいてくる仕事を必死になって片付けていた。早く国を安定させ、民に安心した生活をおくってもらう義務が私にはあるから……そう、必死になって己自信に言い訳をしていた」 「そして、試合のですよね?」 「あぁ。剣を合わせた瞬間、私は、心から喜んでいた。己の持っているもの全てを出し尽くして戦った。  私にとって、それは初めての経験だ。今まで、少しでも本気を出せば、相手が必ず倒れてしまう。唯一その必ずが、必ずでもなくなる相手は、あの時、ファビオが倒してしまった。  だが、目の前に立っていたファビオは、間違いなく私より強かった。私に対して、手加減をしていた。それを屈辱と思いながらも、嬉しくて堪らなかった。自分の先に立つものが居るという喜びが勝ってしまった。  そして、どうしても欲しいと思ってしまった……」 「未だにファビさんは用兵だって…」 「そうだ。士官させるのは無理だろうというのが、デュカスの言。だが、用兵のままであるのなら、可能かもしれぬと、フレデリクが言っていたと告げてきた。  私は、それでも構わないと思った。あの時ほど、必死になって、言葉を捜し、人に接した事は無かった……奇跡的にファビオは残ってくれたが……本当に、奇跡だったと…思う」    沙美は、なんとなく、ファビオがここに残った理由を推測していた。前に、位の高い者に対し辛らつに評価をしていた。そんな者に仕えるのは、ファビオ自身のプライドが許さないのだろう。なにせ、極太の荒縄理性の持ち主が、その荒縄をぶちきったのだから。  そのファビオが、目の前の姫君という位の高い人の傍に留まっている。それが、答えだと、沙美は知っていた。   「ナジュは、最初、ファビさんの剣が大好きになったんだね。  でも、いくら腕がたっても、あの性格で、あの話し方だよねぇ?その大好きって気持ちが、無くなったりしなかったんですか?」 「サミ!」    ナデージュは、椅子から立ち上がり、沙美の両手を握り締める。   「は、はい?」 「あいつの、白々しい演技に騙されてはだめだ!」    沙美は、くすくす笑う。ここにも気づいている人が居る。   「サミも気づいているのだな?」 「あたしは、ディックさんに、教えてもらったんです。でも、内緒だって言われました」 「内緒だぁ?あんな分かりやすいのにかぁ?ちょっとでも頭があるヤツなら、誰だって気づく!」 「そうなんですか?」    沙美は、ナデージュの荒い言葉使いが、あの時、ローランが、ファビオに対して、言ってはいけない事を言った時と同じ感情だと感じる。少し、水臭いと思っているのだろう。   「子供の頃から躾けられたモノは、消せないものだ。あいつの立ち居振る舞い。特に食事の作法なんか、一般市民が出来るものではないぞ!」    なるほどと思う。自分も親から躾けられたものは、確かに偽装するのは難しいだろう。   「だいたい、あの基本がしっかりとした剣だって、子供の頃から嗜んでなければ、あそこまでのものは出来るはずもないんだ。そんな事をする家庭は、貴族だけだ」 「なるほど…」 「それにな、あいつは二軍の長だ、当然書類仕事も、仕事のうちに入る。その書類の見事な事と言ったら……デュカスが、引き抜きたがって煩いぐらいだ」    ファビさん凄い!と、沙美は、あの頭脳明晰な人に認められるぐらいの才能に尊敬を飛ばす。   「え?でも、ローランも、ディックさんも、書類仕事得意そうですけど…」 「甘い!」 「あ、ローランは、術仕事だけなのかな?」 「そうだ、ローランときたら、術仕事以外は、役立たず!だいたい、術開発にのめりこみすぎて、他の仕事を全て放り投げる。自分の事さえ疎かになる。  確かに、術士長は、忙しい職務なのだが……まったく、融通が利かなさ過ぎる」    沙美は、コクコクと頷く。なにせ、幽霊屋敷の持ち主である。臭いとお姫様に言われちゃうような魔法使いとご同業な上に、同じタイプだと言っていた。  だが、それがローランさんらしいと、沙美はにっこり笑う。   「それから、ファビオだが、あいつは……直感で仕事をするタイプなんだ」 「は?」 「なぜ、この仕事に、こんな調べものをするんだ?という仕事の仕方をする。結果、それが必要な事が多いんだが、過程では、それを説明出来ない……あいつは、最初ラグエルに教育されたのが、失敗だったな。その後、デュカスの下についたんだが、遅すぎた。デュカスも、頼りにはしていたが、困ってもいたな」 「ディックさんは、コツコツ型だと思っていました」 「それは、ファビオへの評価だ。フレデリクには、一切使えない」 「ん〜でも、仕事はきっちりやるんですよねぇ?」 「そのきっちりの線引きが、あいつに関しては、難しい。  例えばだ。  10の仕事を与えたとする。その内容は、色々な方面に富んでいる。  ローランだったら、術に関する事を真っ先に仕上げ、時間が空いた時点で、術以外の仕事を仕上げてくる。だが、書類を見ると、術に関しての書類の完璧さに比べて、他が、少々手抜きになる」    沙美は、楽しそうに聞いている。   「ファビオの場合、一つ一つ丁寧に順番に、こなしていく。どの書類も、きちんと理路整然としたものが、あがってくる」    沙美は、ローランとの違いに、感心する。   「そして、ディックだ。あいつは、野生の勘で、まず書類を仕分けするんだ」 「は?」 「一番急ぎで必要な書類を選び、まず、それからきっちり仕上げていく。書類の仕上がりは、悪くはないんだが、なぜ、こんな事まで?って所も調べてあったりする。そして、さっきも言ったが、それが最終的には必要になる事が多い。だが、それを、あいつは説明出来ないんだ」 「動物?」 「そうだ。あいつは、あの外見に似合わず。非常に野性的なんだ。  そして、必要の無いものと割り振られた書類は、捨てられる」 「え?やらないんですか?」 「あいつは、必要があれば、何でもするが、必要の無い事には、一切手を出さない。それこそ、見事なぐらいに、切り捨てる」 「げ………ファビさんと、ローランには、なんとか拾ってもらえそうだけど、ディックさんに愛想つかされたら、拾ってもらえないんだ」 「その通りだ」    沙美は、どこを気をつけていいか、さっぱり分からないけど、見捨てられないよう頑張ろうと、心にメモする。自分が見てきた、おっさん達とは、随分印象の違うおっさん達評に、沙美は、楽しんでいた。   「んで、そのファビさんなんですけど……貴族出身確定だとしても、今は、この国の傭兵で、将軍様なんですよね?」 「そうだ」 「結婚するんですか?」    ナデージュのようやく消えた頬の赤みが、突然全身に回った。真っ赤になって、硬直した。   「えっと、表面上の性格も、内面に隠された性格も合わせて、好きなんですよね?」    ナデージュは声を発する事が出来ずに、コクコク頷く。   「最初、剣の腕に魅かれて、時間が経つにつれ、ご本人自身も好きになってしまったんですよね?」    ナデージュは、もう一度、コクコクと頷く。   「なのに、女の人を挟んで、決闘されたんですか?」 「う"っ……………」      「なぜ、それを知って……あ、あいつらかっっ!!」と怒鳴った後、ボソボソとナデージュの罵倒は続く。だが、突然覚悟を決めたように、顔をあげ、視線を泳がせながら、声のボリュームをあげた。   「さ、最初は、あいつのマネをしていただけだ……生真面目すぎると評価された剣の腕を変える為だったのだが………いや、好きだったからこそ…その言葉に従ったのかもしれない……ま、まぁいい。そのだな、女の人を口説くのが剣にとって良いと言われたので、あいつの真似をするようになった。真似をするというのは、あいつを観察するのと同義で……その、ずっと、見ていて……う"〜〜〜……………あいつが他の女性と話してるのが、不快だと気づいたんだ………」    それだけ言うのに、体力の全部使い果たしたかのように、ゼィゼィと呼吸を荒げている。  沙美は、可愛らしいなぁ〜と思いながら、暖かい視線でナデージュを見ていた。   「そして、なぜ不快なのか、気づいてしまった………だから、あいつが口説いている女性を片っ端から口説くように…………」    ナデージュは、テーブルにうつ伏せてしまった。   「ナジュ、お茶を飲んで、お菓子を食べるといいですよ」    沙美は、一つ小さなクッキーを取り、口に放り込む。   「甘さ控えめで美味しいですよ」    ナデージュの頭をトントンと叩く。   「恥ずかしいけど、友達とお菓子食べながら、軽いものを食べながら、話をするのって、気が楽じゃありませんか?」    ナデージュの頭が、少しあがる。   「私は、こういう事をした事が無いから……」 「ファビさんが言っていた、剣とはまったく関係ない事の一つにどうですか?」 「……難しいな……本音を漏らしていい立場では……ないからな…」 「では、あたしとは、どうですか?若輩者ではありますが。たまには、いい息抜きになると…いいなぁ……」    ナデージュが、にっこりと笑う。   「サミは、私の女友達になってくれるのか?」 「はい!」 「…………サミが……初めての友達だ…」    幸せそうな声音のまま、再びナデージュは、うつ伏してしまう。だから、沙美の顔が歪んだのに気づかなかった。必死になって、拳を握っているのに気づかなかった。  沙美は、ゆっくりと大きく深呼吸をする。これから自分が考えている事を成す為に、泣いてなんかいられない。無理やり、手の甲をぎゅっと抓った。  物凄い痛かったけど、別の意味で涙が出そうになったけど、大丈夫だと思えた。もう一回深く深呼吸する。小さく頷いた。  沙美は、ナデージュの顔を覗き込む。「ナジュ、聞きたい事があるんですが、いいですか?」と、目の前の淡い金髪を撫でながら聞いた。         10.11.19 砂海
とりあえず1をアップ! 大変遅くなりましたm(__)m 今回ナデージュの話ですが、実は第二部へのつながりの話なので、どちらかと言うと、ナデージュ自身の話は少ないです。 そのうち、何か思いついたら、ゆっくり、短編集その2に書いてみようと思っています。 もしかしたら、今回のタイトル沙美の方が良かったかもwww   まぁ、ということで、始まりました。 頭の中では、既に終了していますが、はてさて書いているうちにどうなることやら。 今回は、少ないかもしれませんが、可愛いナデージュを書きますんで、楽しみにして下さいねーm(__)m