300years ago … 6  

   あーーーーーー、なんつーか、懐かしい光景だ。ラグエル卿んとこで見た、朝練の光景が目の前に。  うんうん、これなら、あたし達は無事だ。王様、周囲を見る余裕なんか、カケラも無さそう。   「異世界の方々は、凄くお強いのですね」 「うん、赤毛のおっさんが、最強!んでも槍を持ってるおっさんも、もんのすっごく強いんだよ」    身内自慢しました!   「んで、術士さんは、ナディーヌを放置して、参加するつもりなのかなぁ?」 「うっ……」 「本当に、訓練好きだよねー」    ローランさんは、そわそわして、ナディーヌさんをどこかに置けないか吟味している。そんなに訓練がしたいかっ!医者が、患者放置ってダメじゃん!   「仕方が無いなぁ。あそこなら全体が見れるし、王様から近いから、あそこまでナディーヌを運んで。  後は、あたしが、クッションになるヨ」 「いや…それは……」 「サミ、それでは、貴方がお辛いでしょう?」 「大丈夫。あたし、かなり丈夫に出来てるから。  いこっ!」    ローランさんは、あたし示した場所に歩き出し、ギュスターヴさんは、慌ててどっかに走って行った。どこに行ったんだろ??   「この木は、いい感じ。よっかかれるし、日陰になるし、見渡せるし。ちょと待って。  うん、ナディーヌ、頂戴」 「サミ殿〜〜」    ギュスターヴさんが、必死になって、大量の布というか、もふもふを抱いて走ってくる。背後にも、同じような人達を二人ほど従えていた。   「こ、これを……」    既に座っていたあたしを立たせて、とてもじゃないけど、地面に置けないような美術品のような布と大量のクッションが置かれた。………えっと地面に置く事も悪だし、美術品の上に、こんな普段着のあたしが座るのは、もっと悪じゃないでしょうか?   「汚れる……」 「サミ殿が汚れてしまいますし、いくらナディーヌ様が軽くても、やはり、地面は固いですから、体を痛めますよ」 「こ、こんな高そうな、貴重品そうな、立派なものに座れません、です…」 「大丈夫です」    何が?   「こんなものは、また作ればいいのですし、洗濯すればいいのです。その為にあるものを、その為に使わないのでは、この道具達が可哀相ですよ」    説得力が物凄くあるけど……あたし的には、これは、眺めるというか、それこそ美術館に展示しなくちゃいけないもんなんですけどーーー。   「サミ、貴方の体に負担がかかる方が悲しいわ。どうか、気にしないで。早く、見ましょう」    麗しのナディーヌさんに言われてしまったら、断れない。諦めて、もふもふのふわふわの美術品の上に座り、手を広げた。   「サミさん、寒いと感じるようでしたら、直ぐに私を呼んで下さい」 「うん」 「で、ではっ」 「頑張ってねー!」    ローランさんは、あたしにナディーヌさんをそぉっと渡した後、ダッシュで、おっさん達に合流した。本当に訓練好きの人って……。  暫くの間、ナディーヌさんは、王様を一生懸命見て、ギュスターヴさんは、少し離れて立ったまま訓練風景全体を見て、あたしは、おっさん達を見ていた。   「フェルナンが、あんなに必死だなんて…初めて見るわ」    初めて見る必死?  腕の中に居る人は、絶世の美人と言っていいほどの器量良し。加えて、性格も優しくて穏やかな感じの良い人だと思う。こんな最優良物件、ライバルは、はいて捨てるほどいそうだよねぇ?必死になって口説いたんだじゃないのか?あ、王様だから?最高権力者は、嫁を拉致放題?   「ねー、ナディーヌは、この国の人?」 「はい。物凄く田舎の弱小貴族の生まれですわ」 「田舎でも、ナディーヌの事をお嫁さんにって人が、いっぱい居たんじゃないの?」    ナディーヌさんの肩が震える。笑っているらしい。   「居ませんわ」 「え?」 「私は、自分の家から、ほとんど出た事がありません。大抵は、ベッドの中。だから、家に来られる方でも、お会い出来た方は、ほんの少しです。  それにね、サミ。子供を産めそうに無い女に、結婚を申し込む人は居ませんわ」    あ、この世界の女の人は、子供を産む事が仕事なのか…。それも、貴族じゃぁ、長男を産まないとダメそうだなぁ。この話題、失敗した?う…話題変更。   「あれ?そうしたら、王様は?舞踏会とかは、出られないだろうし……どうやって出会ったの?」 「少し長くなりますが、聞きたいですか?」    ものすっごく聞きたいです。「うん!」と元気良く頷きましたともさ!   「あれは、フェルナンが、まだ王になりたての頃でしたわ。その頃、この国は大変貧乏だったのです」 「は?」 「フェルナンのお父様の代まで、浪費に浪費を重ねていて、国は、民の為に一切機能していませんでした。  それを、フェルナンは、必死になって立て直していました。舞踏会は、特別な時以外一切禁止。王の服や食事は、ほとんど民と同じようなものに。そして、今まで贅沢していた分、上がっていた税金を、徐々に下げていくつもりだと発布なされました」    うっわ、そんなゴージャスな生活に慣れていた王様の息子さんが、どうして、そんな発想が出来たんだ??   「何で、そんな事を?」 「フェルナンのお母様は、商家の方なのです」    あー、いわゆる庶子だ。きっと王妃様は別に居る。   「ずっと、お母様に育てられたんですか?」 「そう聞いています」 「だったら、なぜ?」 「フェルナンが、一番強かったからですわ」    なるほど、庶子でも、一番強ければ、王様になれちゃうんだ。そういう意味では、この国って平等?   「でも、今まで王子様を推しておられた貴族の方々とか、贅沢がお好きな方々からの、反発が激しかったそうです」    そりゃぁ、そうだろ。   「父の領地の近隣でも、いくつかの小競り合いがありました。父は、元々、剣を磨く事を第一とし、贅沢を好みませんでしたから、フェルナンの少ない賛同者でした。  ですから、父の近隣に出向く時は、私の家を拠点として、フェルナンは走り回っていました」 「出会ったんですね?」 「はい。一番最初にいらした時、ベッドに寝たままの私に、ご迷惑をかけてすまないと、頭を下げてくださいました」 「…えっと、王様って、頭をさげていいもの?」 「だめですわ」    だよねぇ……。きっと、ナディーヌさんに見蕩れちゃった後、王様だって事忘れて、頭を下げちゃったんだ。絶対間違いないヨ。   「揉め事が収まった後、プロポーズに来たのかな?」 「はい。でも、父と私に反対されましたわ」 「えっと、王様のプロポーズだよねぇ?御父さん、反対したの?あれ?ナディーヌも?」 「はい。父は、私を側室に置くのならば構わないと。私もその意見に賛成でした。王は、子をもうけなくてはいけませんから」    あ……、血筋を残さなくちゃいけないんだ。そんで、ナディーヌさんは、病弱だった。   「王様は、なんて?」 「側室は、金の無駄ですって。それから、即位直後に医者を殺すような法は無くしたから、城には優秀な医者が居る。だから、大丈夫だと、胸をはって言われましたの」    それは…、また…、なんつーか、商人の母親様は、かなり凄腕だったんじゃないかというか、素晴らしい子育てを成し遂げたというか、王様、王様って職業、合わなかったんじゃぁ…。   「ナディーヌは、王様のこと、どう思っていたの?」 「あの方は、家に来る度に、必ず私に色々なお話を聞かせて下さいました。家をほとんど出た事のない私にとって、それは珍しい話ばかりで、とても楽しく大切な時間でした。私は、あの方が来るのを、いつも楽しみに待っていましたわ」 「お城に来てから、たとえベッドの上の時間が多かったとしても、いっぱいの男の人に会ったよね?王様以上の人は居なかった?」 「あの方以上に、真面目で誠実な方は、どこにもいません」    あー、ご馳走様でした。心の中できっちり両手をあわせましたヨ。らぶらぶだぁ〜。   「サミは、どなたですの?」 「は?」 「術士様?赤毛の方?金髪の方?」 「えっと、何が?」 「サミの恋人は、どなたなのかしら?素敵な方々ですから、迷っている最中かしら?」    首を、ぶんぶん横に振った。ナディーヌさんからは、見えないけど。   「どうして?」 「恋……、あれですよねぇ…、ずっと一緒に居たいっ!ってやつ」    くすくす笑われています。   「そんな感情、知りませんです」    確かに、好きな人とか、初恋だとか、そんな時代もあった事はある。でも、あれは、恋って言うんだろうか?確かにフィクションものの小説を教科書としてもしょうがないだろうけど、ずっと傍に居たいとか、一緒に居るだけで幸せとか、そんな感情をあたしは、知らないぞ。   「これからなのですね」    そうか、これからなのか?  う〜ん、苦手な話題だ。   「あ、もしかしてナディーヌは、この国の王様が強くなったっていうお話の原因を知ってる?」    話題無理やり変更。いやいや、聞きたかったんだヨ。   「えぇ、少しだけですけど、フェルナンから聞きましたわ」 「原因を作ったのって、妖精さん?偉大な魔法使いさん?どっち??」    ナディーヌさんは、一生懸命爆笑をするのを堪えている風情。今まで黙って傍に居てくれていた、ギュスターヴさんは、率直に笑ってもらいました。むぅ〜。   「サミ、それをどなたから聞いたのかしら?」 「えっと…、町の居酒屋…………?」    ぐ、ぐるしいっ。も〜、ギュスターヴさんが笑っちゃったら、ダメじゃん。おっさん達から聞いたなんて、言えないし〜。   「サミ殿、魔法使いには、そんな力はありませんよ」    穏やかにフォローをしても、遅いといい……っ?!!   「妖精いるのっ?!」 「はい、居ます。妖精の力無くては、魔法を発動させられませんから」    妖精使役系魔法だったんだ。   「見える?」 「はい、力が強い魔法使いならば、誰にでも見えます。弱い魔法使いだと、うっすらとした影が見える程度ですが…」    はーーー、見えないんだ。あたしには、見えないんだ。あの絵画やら、アニメやらに出てくる、可愛い羽をつけた姿や、女神様のようなお姿…くっ、見たかったよ〜。   「あれ?魔法って、風、水、火、地系のものだけだよね?どうやって、ある一族特定で力を授けられたの??」「サミ、当時の話を聞きましたか?」    ナディーヌさんは、未だ少し笑いながら、話してくれる。   「なんか、豪族同士の戦いが長く続いたとか?」 「そうです。地は荒れ、人の焼かれる匂いは消えず、酷い有様だったと聞いています。それに腹を立てた妖精達が、暴れて、一層酷くなったとか」    だめじゃん妖精。馬鹿な人間と同じ事してどうする。   「妖精達にも、それぞれ取りまとめをする長が、居るそうなのです。その長達が集まり、話し合いをした結果、この地を平定させる事を条件に、フェルナンのご祖先に力を与えたと、聞いています。  ただ、この話も、王家に伝わるお話しであって、それが本当かどうかは、分からないのですけれど」    この時代でも、昔話なんだな。   「そのお話の中に、長妖精達が集まり、呪文を唱えるシーンがあるのです。その結果、家系的に強い人間が生まれたと書いてありましたわ。  ねぇ、ギュスターヴ、貴方なら、何かが分かるのではないかしら?」    ギュスターヴさんの方を見たら、ものすっごい考えている様子。   「それで、私が居るのにも関わらず、お話しされたのですね?」    あ、王家に伝わるお話……内緒の話だったのっ?!!   「えぇ」 「もしかしたら、妖精にも術が使えるのかもしれません。  魔法というのは、先ほどサミ殿が言われたように、妖精の資質を具現化したもの。妖精には、その属性以外の事は出来ません。  そうですか……長……妖精は、我々よりも、この世界に近しい者……だからこそ、世界と話す方法を元から持っていた可能性が……」    最後の方は、独り言に近い。  ギュスターヴさんは、真剣に、考え始め…あれ?ため息つかれちゃったヨ。   「あぁ、今考えても、どうせ消えてしまうのでした」    ギュスターヴさん、苦笑。  あ、そうだ。魔法は、なくなるんだった。   「魔法が無くなったからといっても、妖精さんは、相変わらず居るんでしょう?」 「さぁ、どうでしょう?  それは、その時にならないと分からないですね」 「あそこで剣を振っている術士さんも、見えているんだよねぇ?後で聞いてみよう」 「そうですね」    うん、ローランさんにとっては、当たり前の事だから、妖精の事なんて今まで話題にしなかったのかもしれない。   「サミ?」 「はい」 「なぜ術士様に、お聞きになるのかしら?」    あ………。  目の前には、態々体をまわして、あたしを真っ直ぐ見ているナディーヌさん。うっ……、やばいっ。   「異世界の方が、今見えていたとしても、これからは同じように見えるかは、分からないはずでしょう?」 「あ…そうですねー。き、気がつかなかったです…」    浅はかな意見を言ってしまいました風情を演出。   「なのに、なぜ、ギュスターヴまで、気づかなかったのかしら?」    ナディーヌさん、めちゃめちゃ、鋭いっ!  そこで、剣を振り回して遊んでる三人っ!たぁすけろぉぉぉぉぉっ!!!!!!   「どうした?お嬢ちゃん?」    ………来たヨ………ファビさん。   「サ、ミさ、んっ……」 「サミ」    あー、ファビさんが来たのに気づいて、ローランさんも、ディックさんも来てくれたんだ。   「あ……、あ〜〜」    おっさん達を見たら閃いた!   「ナディーヌ」 「はい」 「あたしとギュスターヴさんの会話は、聞かなかった事にして、忘れて下さい」    必殺、開き直り!   「……サミ」    ナディーヌさんは、気落ちしたような声。うーーー、ごめんなさい、ごめんなさい。歴史改ざんだけはしたくないんですーー!!   「あーーーーっ、人材派遣屋殿ぉぉぉっ!!」    息切れ状態の声で、最高の音量を出したという風情の王様。   「は?」 「ナディーヌをっ!!」    あーーー、あたし男じゃないけど、やっぱりナディーヌさんを抱っこってダメダメだったぁ〜?!   「フェルナン、サミは、私の為にこうして下さっているのですわ」 「ナディーヌ……」 「貴方の訓練は、終わりましたの?」 「い…や、け、剣士殿が、こちらに来てしまって……」 「んじゃ、素振り500な。俺が戻るまでに、ちゃんとやっておけよ」    ファビさんが、ニンマリ笑ってる横で、王様涙目。容赦ないんだよ、おっさん達は。だって、訓練大好きっ子だもの。   「フェルナン、頑張ってね」    ナディーヌさんだけで、一日中素振りが出来るかもしれない。だって、王様ったら、すっげぇ元気になったヨ。王様の動力って、ナディーヌさんなんだねぇ。愛はすっごいな。栄養ドリンクなんかいらないヨ。   「お嬢ちゃん、どうした?」 「あはは…へましましたー。んでも、おっさん達から教わった方法で、なんとか……切り抜けたい…なぁ…」    目の前で、ナディーヌさんが、じぃ〜っとあたしを見ている。   「サミ」 「はい…」 「また、貴方が、ここへ来て下さるのなら忘れます」    あーーー、それも、無理だ。だって、これ以上間違いを犯す訳にはいかない。この世界での、あたしの居場所は、おっさん達の時間だ。   「ダメなのですか?」 「ごめん…ナディーヌ。あたしは、もうここへは来れない……」 「どうしてもですか?」 「ごめん……ごめんなさい………でも、でもね、あたし、絶対、絶対ナディーヌの事を忘れないヨ。絶対だヨ!」    ディックさんが、頭を撫でてくれた。くぅっ…、相変わらず唐突な優しさで、ガツンとくるよぉ〜。   「サミ………、我侭を言いましたわ。ごめんなさい。  えぇ、私も、貴方の事は、絶対忘れませんわ。毎日、ちゃんと話しかけます」    あたしと交換したハンカチを、ぎゅっと握っている。   「ん〜〜、そりゃぁ、不味いんじゃねぇの?」    ファビさんが、ご陽気な声で、しんみりとした空気を破壊した。   「なぜですか?」 「だって、王さんが、拗ねるだろ?」    あーーー、異世界からでも、恨みの波動を飛ばしてきそうだ。   「大丈夫です。フェルナンも、一緒に思ってくれますわ」 「や、あたし、王様から思われても……」 「サミ、毎日、お互いが思っていましたら、お会い出来なくても、いつまでも忘れませんわ 。えぇ、絶対に」 「えっと…、嬉しいですけど…ものっすっごく嬉しいですけど。  ナディーヌ、なぜ?」 「サミが、術士様と剣士様達を連れてきてくださったのですわ。それに、サミは、私の初めてのお友達です」    えっと、実際は、ギュスターヴさんが召還してくれたんだけど。またボロ出しそうだったから、頷いた。それに、友達ってのは、王妃様の友達なんて、すっごい贅沢だけど、うん、出会って、ほんの少ししか時間が経っていないけど、ナディーヌさんは、外見だけじゃなくて、すっごく優しい人で、うんうん、あたし、大好きだヨ。   「だぁかぁら、ほら、王さんが、聞いてっぞ」    あーー、いつの間にか王様が、傍に来ていて、恨めしそうにあたしを見ている。   「ったく、素振り、終わってねぇだろ?」 「だが、ナディーヌがっ」 「しょうがねぇなぁ。あんた、王妃さんを守りたいんだろ?」    王様は、速攻背筋を伸ばし、しっかり頷く。   「もし、俺が、王妃さんを襲ったとしても、あんたにゃ、俺を撃退出来ねぇよな?」 「うっ……」 「最低限、俺と対等に戦えるぐらいにならねぇとなぁ。  術士ぃ〜、魔法をなくすのって、明日あたりかぁ?」 「あぁ、明日の昼頃にでもと思ってる」 「そうしたら、帰るんだよなぁ?」 「そうだろうな」 「んじゃ、俺と、槍んヤツは、明日まで、ここに居るからよ。お前は、もう抜けろ」    ファビさんの言葉に、ローランさんの目が泳ぐ。あーーー、ったく、本当に訓練好きってのはっ!   「お前は、やることが、沢山あんだろ?  ギュスターヴ、こいつを捕まえとけ。絶対、ここに来させるんじゃねぇぞ」    ギュスターヴさんが、笑いながら頷く。   「ほら、ついでに、王妃さんを連れていきな。今夜は、サミと一緒に一晩過しても大丈夫なぐらいの体調にさせておけよ」 「ありがとう!!」    名前をいえないのは、不便だなぁ。   「サミ」 「ん?」    傍で、ずっと頭を撫でてくれていたディックさんが、ナディーヌさんを持ち上げる。正統派、お姫様抱っこだ。  横で、王様が、わたわたしているのは、無視だねぇ。うんうん、王様って、ディックさんにも負けたのか?   「ほら、術士」 「分かった…」 「お前、手抜きをするなよ」 「分かってる」    ナディーヌさんを渡されたローランさんは、もんのすっごく不服そうだけど、しっかりナディーヌさんを抱っこして歩き出した。   「ほら」    目の前にディックさんの手が現れた。   「お前、立てないだろ?」    う、体が固まってる。   「うひゃぁっ?!」    あ、あたしも抱っこですかっ?!お姫様じゃないのに、お姫様抱っこ……あたしには、似合わないよぉ。   「あー、お前、ずっりぃ〜〜」    ファビさん…、何がずるいんだか。ローランさんと王様に、あれだけ言っておいて…。   「気づかないお前が、抜けてるんだ」 「ちぇぇ〜〜」    王様と、城勤めの兵士さん達は、一晩中ファビさんとディックさんにしごかれて、現在天国の門一歩手前。  ローランさんは、ギュスターヴさんと一緒に、魔法を無くす準備をしていた。  あたしと、ナディーヌさんは、消化の良い食べ物と、美味しいジュースを飲みながら、一晩中話をしていた。  朝、おっさん達三人とギュスターヴさんは、変わらない様子で、王様とラキル卿は、ぼろぼろになって、あたしとナディーヌさんは、寝不足で、そんな皆と一緒に朝食を食べた。  あたし達が、ここに居るのは、あと少し。   to be continued…     09.07.02 砂海
魔法を無くす作業で1話。帰ってからの話で1話で、あと二話だと……思う<をいをい   ということで、魔法についてと、王様馴れ初め話でしたー。 もっと細かく書きたかったけど、それは話の中心じゃないぞと、一生懸命はしょりました。なんつーか、王様、面白そうな人だ!かなり気に入っています。 あぁ、王様は、30歳ぐらい、ナディーヌは、20歳ぐらいです。歳の差カップルですねーVv