心強き者達1  

  「あいつは、まだまだガキなんだよなぁ………」    虎徹は、ほの暗い自分の部屋で、一人椅子に座っている。手には、溶けきって氷が無くなったウィスキーのグラス。  口元からため息が漏れた。    相棒が出来た。  初対面の時から険悪な雰囲気。相棒という言葉のイメージからは、とてもかけ離れた二人。一人は、怒鳴り、一人は冷やかな眼差しで全て無視。  バーナビー・ブルックスJr.  彼は、一つも笑っていない綺麗な笑みを浮かべたまま、自分の周囲に見えない壁を張り巡らし、誰も中へ入れようとしなかった。  だが、それは、彼の生い立ちがそれを必要とし、彼が呼吸する為には、必要な事だった。   「あのまんまだと、思ってたんだけどなぁ」    バーナビーの過去に関わる事件後、その壁が綺麗に拭い去れた。まるで、殻を破って生まれたばかりの雛のように、目の前に居た相棒に両手を伸ばしてきた。   「いつからだったかなぁ……」    虎徹は、グラスをずっと見ていた。少し傾ける。酒が少しはねた。だが、彼は動かない。彼の瞳に映っているのはグラスじゃない、ガラスのような脆い子供。  最初っから、あぶなっかしいイメージがあった。  ヒーローが守るのは、何も一般市民だけじゃない。相手がヒーローだとしても、守ろうと思っている。  何かだけを見つめて、必死になっている姿を見ていたら、手が自然と伸びた。  それが何度めか分からなくなった頃には、気持ちまで育っていた。   「子供に手を出すのは、大人じゃねぇよなぁ…」    彼が十分に大人だといえる歳だと分かっている。だが、子供の頃から敵を追っていた、それだけしかなかった人生。それは、彼の時間を止め、未だ彼を大人にしてなかった。  止まっていた時間がようやく動き初めて、やっと一人で歩き始めたばかりの雛。   「大人のおじさんとしては、あいつの視線に気づかず、自分の気持ちを封印するのが……正解だよなぁ」    虎徹の口元に、苦い笑みが張り付いていた。     ◆心強き者達1     「なぁ、バーナビーしらねぇ?」    トレーニング部屋に入ってきた虎徹が、困った様子で入ってくる。   「今日は、まだ見てないわ」    カリーナが、飲みかけていたペプシをおろして答える。   「どうしたの?電話は?」 「全然通じねぇ。昨日の夜からだ」 「彼だって、普通の男の子なんだからぁ。一晩ぐらい居なくたって、当たり前じゃないのぉ」    ネイサンが、過保護ねぇと言いながら、ほほほと笑う。   「だってよぉ。この所、あいつから毎晩電話があったんだぜ?なければ、おかしいと思うだろ?」 「毎晩?」    カリーナとネイサンの声が重なる。   「キーーーーーーー!!それって、のろけ?のろけなのぉ?」 「や、相棒として、普通だろ?」 「普通じゃないわよっ!もー、タイガーったら、愛されまくっているのねぇ…」    ネイサンは、「分けろよ」とドスの利いた声に突然変換して、言葉を続けた。   「んじゃ、お前が相棒になれよ」 「何、何、その冷たいせ・り・ふ。ハンサム君が聞いたら、泣いちゃうわよっ!」 「今いねぇし。それで、誰も知らないんだな?」    酷い言葉で締めくくって、虎徹は、周囲を見渡す。全員、知らないと、首を横に振った。   「ったく、どこへ消えたんだか……」    虎徹は、ほんの少し前のバーナビーを思い出していた。まだ、彼を一人にするのは、危険だと思っている。   「本当に過保護ねぇ……それなら、斉藤さんに話してみたら?  ほら、前にハンサム君が見つからなくて、困った事があったじゃない?それ用に何か開発したとか聞いたわよ」 「お、そうか。ありがとうな」    膳は急げとばかりに、虎徹は、開けっ放しの扉を出て走って行く。残された面子は、一斉にため息。そして、そのため息の代弁とばかりに、「過保護すぎよ……」とネイサンが呟いた。         「なぁ、斉藤さん。バニーが、今居る場所、分かるか?」 (当然) 「じゃぁさ、教えてくんねぇ?」    返事もせずに斉藤の手が、キーボードを滑らかにすべる。視線はディスプレイに固定されたまま。その視線が、数分後に止まった。眉間に皺がよる。   「どうしたんだ?」 (いい場所じゃないよ) 「ん?」 (ここ、悪どい事で有名な金持ち相手の遊技場、カプリコーン………)    虎徹の顔が真っ青になる。そういう所に疎い自分にさえも、嫌な噂は伝わっていた。          正常な意識が、浮上しては、すぐに沈む。  麻薬と催淫剤を交互に打たれた。  何本打たれたかも、思い出せない。  体の上を這う手が、舌が、煩わしい。  拘束された手を振る。ジャラリと鎖の音がした。          バーバビーは、夜の街を歩いていた。  急ぎで手に入れたいものがあって、慌しく買い物をしていた。帰ったら虎徹に電話をかける。今日は何の話をしようかと思うだけで、笑みが毀れる。  虎徹への思いに気づいてから、油断すると心の中の虎徹に全ての意識を奪われる。当人が目の前に居れば、視線までもだ。それは、傍目から見ても十分に分かるぐらい、大きな隙になっていたのだろう。  今、バーナビーは、一切周囲に気を配っていなかった。  些細な油断。  首筋に小さな痛みを感じた瞬間、バーナビーは、意識を手放した。その短い時間の中、「ヒーローも、この薬には形無しだな」という下卑た笑い声を聞いた。     「……っ?!」    バーナビーは、鎖で両手を拘束され、一糸纏わぬ姿で、まるで鎖が服かのように体中に纏って、暗い部屋に転がっていた。   (捕まった?!)    それを瞬時で悟り、逃げ出そうと能力に意識を向ける。  ジャラリと鎖の音がした。   「っ…あ、あぁっ?!!」 「へぇ〜、あの薬を打たれて、まだ逃げ出そうなんて、考えられるのか。くっくっくっ……足りないようだな。もう一本追加だ」 「どちらに致しましょう?」 「どっちもだ。こいつの意思は強い。流石ヒーローってところだな。  生半可な量じゃ、こっちが危ない。ヒーロー用に特別増やしてやれ」 「分かりました」    バーナビーの前に、白衣を着た男が、近寄る。手に持ったトレイの上には、注射器が二つ。  体が自然と後ずさる。  ジャラリ。   鎖が動き、体に甘美な刺激を与える。それだけで、注射器の中身の正体を悟った。一つは、催淫剤。   「大人しくしなさい。もう貴方には、逃げる術は、ありませんよ」    そのすました声に答えられない。起きた瞬間は気づかなかったが、己の下半身は、既に熱が集まり、だらだらと無様に涎を垂らしていた。  そう、意識した瞬間から、体が、欲望に支配されそうになる。  声は出せない。みっともない声が漏れそうだから。ただひたすら、相手を睨みつけていた。   「こちらは、貴方も既に分かっていらっしゃるでしょうが、催淫剤です。かなり強力な物です。それから、これは麻薬です。あなたを永遠、ここに縛り付ける為の薬ですよ」          バーナビーは、それから、どれだけ時間が経ったのか分からない。  後から後から女が跨ってくる。耳障りな嬌声を響かせて煩い。だが、下半身の熱は一向に冷めない。  そして、今は、その嬌声を自分があげていた。後ろから覆いかぶさってくる大きな影。体の中の他人の熱が動く度に、声が止まらない。   「虎徹さん…」    もうバーナビーの声は、掠れて音にもならない。ただ、自分が受身になってから、ずっと呟いている気がする。自分のヒーローの名前。  白痴のような笑みが浮かんだ。   「おや、随分と楽しそうだね」    虎徹とは全然違う、下卑た声が聞こえた。  嫌だと思った瞬間意識が欲に沈む。口からは、だらしない声だけが漏れた。         「タイガー」 「何だ?」    バーナビーの居所が分かった虎徹は、ヒーロー達を集め、彼を救う為の作戦を話し合った。それが終わったのが、ほんの5分前。これから急いで準備にかかろうとしていた足をネイサンに止められ、自然と舌打ちが出た。   「ちょっと時間をとらせてもらうわよ」 「俺達には、時間はねぇだろっ!」 「いいから!これは、あのハンサム君にとって、とっても大切な事なの。ちょっとぐらい救出が遅れてもいいぐらいに大切なの!」    その真剣な物言いに、虎徹は諦めて足を戻し、ネイサンに向き直る。   「貴方、あのハンサム君の気持ちに気づいているわよね?」    意外な質問に一瞬虎徹の表情が変わる。だが、すぐに、「あいつの気持ち?」と訝しげに返した。   「あんたねぇ…自分の気持ちを誤魔化すのさえダメな不器用者が、嘘をつけるとでも思ってるの?」 「う”……な、何だよ、自分の気持ちって!!」 「どうせ、あんたの事だから、自分は大人で、あの子は、世間知らずの子供でって、自分勝手な線引きをして、気持ちを押さえ込む決意でもしたんでしょう?」 「げっ……」    まさにその通りな虎徹は、お前は、テレパシストかっ!と、心の中でへたれた突っ込みをする。   「あんたの考える事なんて、全てお見通しよ。ったく、底が浅いのよ。底がっ!」 「あのなぁ、底が浅いかもしれねぇけど、お前だって、あいつを、世間知らずの子供って言っただろ」 「そうねぇ、あの子の時計は、ようやく動き出したばかりだわ。でもね、時計が止まっている間でも、見たり聞いたりと色々経験してんのよ!  あんた、あの子を侮りすぎだわ」 「だがなぁ…俺が、あいつにとって、おじさんなのは、間違いない。だろ?」 「そうやって逃げるの?ワイルドタイガーともあろう者が、自分からも、あの子からも逃げるのっ?!」    いつも前を向いていた虎徹の視線が、横に反れる。   「ま、いいわ。貴方がどんな結論を出そうとも、それは貴方の自由。でも、この先…そうね、一ヶ月ぐらいは、貴方の感情を全て抑えなさい」 「抑える?」 「そう、あの子への気持ちを開放して、色々ぐちゃぐちゃ考えた事を抑えるのよ」    ネイサンの言っている意味が分からず、虎徹は訝しげに次の言葉を待つ。   「貴方が、あの場所のどういう噂を聞いているかしらないけどね、あそこにあの子が囚われているのなら、間違いなく、あの子は薬漬けになっているわ」    虎徹の目が見開いた。   「あそこは、暇をもてあました上流社会の馬鹿と金だけは持っている馬鹿の願いを、非合法な手段を山のように使って叶える所なの。  反吐が出るけど、子供を抱きたいとか、有名なだれだれのご主人様になりたいとか、ありとあらゆる汚い欲望を叶えるのよ。  その手段は問わないわ。暴力だったり、脅しだったり。薬だったり………そう、あの子に暴力や脅しは効かないわ。だとしたら残りは薬しかないのよ」 「麻薬……」 「そうね。まず麻薬で彼の力の大半を削ぐ。それに、どうせ、ああいう馬鹿の望みよ、催淫剤も打っているでしょうね」    虎徹の口元から、ギリギリと歯軋りの音が漏れる。   「だから、私達は外から攻撃する事にしたの。中に入るのは貴方だけ。ハンサム君も醜態は、誰にも見せたくないでしょう。当然貴方にも。でも、貴方以外は論外だと思うわ………」    作戦を決める時に、ネイサンは巧妙に女の子を一番外に回し、自分以外の男性ヒーローを的確に配置した。虎徹は、その意味をはじめて知る。   「昨日浚われて、だいたい24時間ぐらいかしらね……どれだけ薬を打たれたか分からないけど、決して少なくないと思うのよ。  あの子は、それを全て体から抜かなくちゃいけないわ。分かるでしょ?」 「あぁ…」 「彼が正気に戻るまで、貴方は、彼と二人っきりで、つきっきりで、彼を抑えなくちゃいけないの。特に、能力を使わせないようにするのよ」 「分かっている…」 「その為には、貴方、貴方が彼をどう思っていようと、あの子を抱きなさい」    逸らされた視線が再び合った。   「どうせ、催淫剤が抜けるまで、あの子は、求め続けるでしょうから丁度いいわ。同じぐらいに麻薬も抜けるといいけど…それは難しいかもしれない……だから、貴方は、あの子の為に、ずっと抱き続けていなさいね」 「お…れ、が」 「そうよ。貴方が。バーナビー・ブルックスJr.が唯一心を許した貴方が・よ!」 「唯一?」 「貴方、まだ気づいてなかったの?未だに私達は、あの似非笑顔で対応されているのよ!心からの笑顔なんか見せてもらった事なんてないわ。ったく、本気で鈍いわね」    ネイサンは、未だ視線を泳がせている虎徹にイライラする。   「大人の責任とか、ぐだぐだ考えているんじゃねぇよ!お前は、あの子をさっさと抱きやがれ!  お前が想像したように、そのうち大人になったら、お前が捨てられるかもしれねぇが、あいつの傷にはならねぇよ!」    ネイサンは、虎徹のへたれさ加減にぶちきれて、吠えた。  その勢いに目を丸くした虎徹は、目を細めようやく笑った。   「そうだな。俺が振られるだけだな。  その時は、奢ってくれんだよな?」 「そうね、私の胸を貸してあげるわよ。お酒つきでね」 「分かった。その時は頼むぜ」    虎徹は笑いながら、ネイサンを後に、走りだした。  大人になった彼に捨てられる事を恐れていると指摘され、ようやく己の本心に気づいた。子供だからは逃げだ。捨てられるのを恐れた自分が作り出した言い訳。  大人のずるい考えに、反吐が出そうだった。  だが、気づいてしまった以上、自分に逃げは許さない。虎徹は、まっすぐ前を向く。相棒を、惚れた相手を助ける準備に向かった。         「皆さん、ターゲットを無事に脱獄させました。今、車に乗って逃走中です」    イワンの生真面目な声から始まった脱獄劇。今、イワンはようやく能力を解いて、己自身の姿に戻っていた。   「ブルーローズ!計画通り、そっちへ逃げたよ!」    適当に悪人をあしらって負けたホァンが、やったねとばかりに、ガッツポーズ。  今、シュテルンビルトでは、刑務所から脱走した大物を捕まえようと、ヒーロー達が戦っていた。そのヒーロー達がわざと逃がした悪人だったが。   「ロックバイソン!あと少しよ!お願いね」    カリーナは、逃走車にはねられ、倒れたふりをしていた。   「よぉスカイハイ、後は頼んだぜ!」    敵の砲弾にわざと当たったアントニオが、楽しそうに後方へすっとび、瓦礫を作った。   「お任せあれ、そして任せたまえ!」    キースの顔に笑みが広がる。   「しかしながら、壊し屋は、彼の異名なのだが……その名を私が取ってしまってもいいものだろうか?」    風を操り、悪人が乗っている車を巻き上げる。   (建物の左側だよ)    眼下にある、豪奢な建物に向けて力を投げつける。車は斉藤の指示通りに、建物の左側を崩壊させながら、突き刺さった。   「タイガー、君の番だ!」 「おう!」    そこには、スーツを纏った虎徹と、斉藤に遠隔操作された、中身からっぽのバーナビースーツが立っていた。  「斉藤さん」 (大丈夫だよ。私の作ったものに不満があるのかね?) 「や、全然ないない」 (絶対に犯人は、車から出られない。そして、中に人がいる様には、絶対に見えないよ) 「分かった」    脱獄犯に与えられた逃走用の車は、短時間で必死になって作った斉藤の手作りの一つだった。  後顧に憂いは、一切無い。  虎徹は、大声で「犯人、どこへ逃げやがった!!」と怒鳴りながら、車があけた建物の穴に入り込み叫ぶ。そして廊下に並ぶ扉を一つ一つ開けていった。   「何をしてるっ?!」    一番奥にある一際豪奢な扉が開き、一目見て高級だと分かるスーツに身を包んだ男が出てきた。   「ここに、脱走犯が逃げ込んだんだ。あんた、危ないから早急に非難しろ!」    そう言われた男は、虎徹の言葉を聞きながら、彼の背後にいるバーナビースーツを凝視している。   「バーナビー…?」 「どうした?」 「なぜ、ここに彼がっ?!」    男の視線が、一瞬だけ、自分の出てきた部屋の近くを見る。  虎徹の口の端があがった。   「あんた、危ないからどいていろよ!」    男を無視して、虎徹と斉藤が操るバーナビースーツが、次々と扉を開ける。   「タイガー!」    音声変換装置が、斉藤の声をバーナビーの声に変える。当然音量拡大機能付き。   「どうした?バニー!」    その部屋には、驚いて微動だに出来ない裸の中年が、まだ年端もいかない裸の子供を組み敷いていた。   「バニー!」    バニーと呼ばれた斉藤は、空っぽのスーツを頷かせ、慌てて部屋に入る。子供確保完了。   「あんた…これは、どういう事だ?」 「あ…あ……」    男は、声にならない声を発していたが、まずいと気づいた瞬間遁走した。だが、虎徹は、彼を逃がすつもりは無い。  能力を発動する。  音声ガイダンスが流れる。  虎徹の手は、男の首ねっこを捕まえ、勢いのまま壁に押し付けた。   「お前、ここの運営者だな?」    男は首を振る。   「なら、何で逃げた?!」    男は、間違いなく、この屋敷の当主だった。   「全て、晒されたぜ。お前の行き先は、牢屋の中だっ!」    虎徹は、今度は壁でなく、男の頭を持って、そのまま硬い床に勢いよく押し付けた。   「………もう警察は呼んだよな?」 (当然だよ!)    斉藤の声も怒りで震えている。   「なら、その子をシーツで包んで、病院に連れていってやってくれ。後は、俺がやる」    その怒り押し殺した声に、バーナビーのスーツが一歩後ずさる。だが、すぐに頷いて、走り去った。   「スカイハイ!こいつを頼んだ!行き先は牢屋だ!」    虎徹は、むんずと気を失った男をつかみ、スカイハイに向かって放り投げた。   「間違いなく、牢屋に入れる!!」    スカイハイの口調が固い。受け取った男を持ち、そのままスカイハイは飛んで行った。   「さて、俺も急がなくちゃな」    さっき男が一瞬視線を泳がせた先に向かい、その勢いのまま扉を開けた。   「っ……!!」    虎徹の目の前に腐敗した光景。   「な、何者だ!」    外の物音は、聞こえていたのだろう。だが、裸の男は、部屋以外に逃れる場所はなく、慌てて服を着たのが見て取れる。  そして、その男の下には、両手を鎖で戒められ、白濁した液体にまみれ、空ろな目をしたバーナビーが、うっすらと笑っていた。  虎徹の背筋に薄ら寒いものが、走る。   「わ、私は、か、帰るからなっ!」 「行き先は刑務所だ。この館に居た連中は、全員捕らえるよう、警察に連絡済みだからな」 「か、金っ、金を、出、出すっ!い、いくらならっ……」 「そんな汚ねぇ金なんかいらねぇ!!さっさと行きやがれっ!」    虎徹の口元から、ギリリと歯軋りの音が漏れる。   「それとも、俺に殺されたいか?」    虎徹の本気を悟った男は、無様な悲鳴をあげて、扉の外に這うように逃げていった。  虎徹の視線は動かない。逃げていった男の後姿さえ見ていない。この部屋に入ってから、彼はバーナビー以外見てなかった。その、あまりにも似合わない笑みが痛々しい。   「さ、バーナビー、帰るぞ」 「…虎徹さん」    淡い笑みのまま、強請るようにバーナビーの両手があがる。鎖の音がジャラリとした。   「まずは、これを外そうな」    叫びだしそうになるのを抑えて、虎徹は、鎖を引き千切る。   「お前、少しの間、大人しくしていられるか?」    バーナビーは、嬉しそうに「虎徹さん」と掠れた声で言い、コクンと頷く。   「…帰ろう」    バーナビーを頭から足先までシーツでぐるぐる巻きにして抱き上げる。   「バーナビー……」    虎徹は、シーツごとバーナビーをきつく抱きしめる。   「迎えに来るのが遅れて……すまねぇっ!!」    今は、後悔している時じゃなかったが、虎徹は、なぜ昨日の晩から探さなかったのかと、自分を責めていた。あの、空ろな笑みが、目に焼きついて離れない。  通信機から、車で待機しているネイサンの声が流る。   「急いで!警察が来たわよ!」 「分かった!」    その日から、二人の姿は、テレビから消えた。     to be continued…     11.08.16 砂海
必死ですよ。何がって? 「これは虎徹であって、バルフレアでも、ゲンマでも、サンジでも、帽子屋さんでもないんだっ!」というお呪いを唱えるのにwww どれも、中の人一緒wしかも二次を書いた事がある。 特にバルフレアは、ついこの間まで書いてましたからw<過去にしやがりましたよwww 口調が、油断すると、かっこよくなっちゃうんですよw 危険危険。これは、基本へたれおぢさんなんだってばよww   私が書く時には、語尾を一番気をつけるんですが、アニメ見たの、一回だけなんです(^p^) しかも、野原ひろしの乱+2話のみw 結局すっごく遅れて買ったYJの漫画見て、直しましたwww でも、斉藤さんが、まだようけ分からんヽ( ´ー`)丿 アニメって見直すの大変だから面倒〜って思った今回でしたw   続きは、ぐちゃぐちゃのエロになりますんで、書き手に腕がない為、遅くなる予感バリバリです。 気長にまって下さいねーm(__)m