1247日経っても  

  好きだと気づき、その気持ちをうっかり漏らしてしまうまでに360日。 幸運な事に付き合うようになって、キスをするまでに136日。 修行に出かけてしまって会わなくなってから915日。 まだお互いの気持ちが変わってない事を知って、ほっとしたのが数時間前。 現在シカマルとナルトは、真っ赤になってナルトの部屋で向かい合っていた。   ◆1247日経っても   「あ、あ、あああああのななな、シシシシシカマル…」   真っ赤な顔。   「おおおおおう」   同上。   「おおおおオレってば、いいいいろんな街をまままわったんだってばよ」   同然。   「ああああぁ」   以下同文。   「そそそそんで、ここここれ……おお教えてもらったって……ば…よ…」   おずおずと差し出された巻物。 ナルトはそれをシカマルに渡した後、ダッシュで布団に潜り込んだ。 とてもじゃないけど、それを見ているシカマルを見る事が出来ない。 シカマルは、そんなナルトを呆然と眺めた後、のろのろと手元の巻物に視線を向ける。 紐を解く。 巻物の広げる。 そこには、めくるめく新しい世界が記述されていた。   「ななななナルトぉ〜?!」   声がひっくり返った。   「ななななななんだってばよぉ〜」   布団の中からくぐもった声。   「おおおおお前っ、しゅ、修行って……」   布団が、ふっとんだ(洒落ではない)。 真っ赤な顔がふるふると横に振られている。   「ちちちち違うってばよっ!お、オレ、ちゃんと新技も覚えたし、すっげー強くなったってばよっ!!」 「じゃ、じゃぁ……」 「でも…夜になると、エロ仙人が、とんでもない所にオレを無理やり連れてったってば〜」   へにょぉんと下がった眉。   「ああああの変態っ、そっちのケまでっ?!」 「ち、違うってばっ!ははは花街に連れられて…んで、おおおおオレには、ここここいこい恋人が居るって言って逃げようとしたら……お、おねーさん達が……」 「そそそそれそれって……おおオレでいいんだよな?」   コクコクとナルトが頷く。   「で、ここここい恋人が、男だって…」 「い、言った……ってば……………」   シカマルは手元の巻物を見、ナルトはそれを指差す。   「まま、まずは、これからね〜………って…」   巻物には絵が一つ。 その周囲に事細かい説明付き。 シカマルの手から、巻物がポトリ落ちた。                 ◇◆◇                 二人ともぎくしゃくとした忍から程遠い動作で風呂に入り、今現在真っ裸でベッドの上にいる。 決して寝ている訳ではない。 正座してお互いの正面に座り、それぞれが視界としてなんとか見られる壁とかベッドの枠をみながら、既に無言で数分過ごしていた。   「シ、シカマル……」 「ナ、ナルト…」   声がどっちもひっくり返っている。   「あ…あの……ややややややややややる…ってば?」 「なななななナルトが、い、嫌じゃなければ…」   ナルトは、ぶんぶん上下に頭を振る。 シカマルと会わなかった時間があまりにも長すぎて、帰ってきて早々見たテマリと並んで歩いている姿に傷ついて、彼が自分の事を好きだって事が分かるのなら、何でもやれると思った。   「そ、そうか…」   シカマルは、ナルトを抱きしめる。 とてもじゃないが、彼の裸体を見ていられないし、自分のまずい状況が知られるのも恥ずかしい。 今まで抱きしめた事は数知れず、キスも結構な回数をこなしている。 だがそれは、バードキスレベル。舌を絡めるなんつー事は想像外。 花街のおねーさんは、間違っていた。ナルトのあまりに可愛らしい様子に、体を合わせるのはまだだろうと推測してのご指導。だが、キスも指導しなくちゃならないなんつー事は考えてもいなかった。   「おおおお、オレが上…だってば?」 「そそそ、そうだな」   ナルトは抱きついたまま、膝を伸ばしたシカマルの上に乗っかる。   「うひゃぁっ?!!」   お互い微妙〜に兆していたモノが触れ合う。 ナルトは叫びながらシカマルにしがみ付き、シカマルは覚悟を決めてナルトの手を取り下に導く。   「なななな何っ?!」 「て、手を使うんだろ」   未だシカマルの顔は真っ赤だったが、覚悟と共に言語中枢の九割がようやく戻ってきていた。   「お、お前の手はここな」   もうナルトは、言葉を発する事が出来ない。自分の体が理解不能。 決して自分で自分のを触った事が無いとは言わない。日々トイレに行く度に触ってはいる。 だが、こんな状態は知らない。 酷く熱い。それなのに、体がもっとそこに熱を集めようとしている気がする。 その自分のモノと同じぐらい熱いものが自分の掌の中に一緒に居る。 それが小さく動く度に、自分のモノも勝手に動く。それが気持ちいい。 ナルトの手は無意識のうちに、手の中のものをぎゅっと握り締めていた。   「っ…」 「ひゃはっ」 「ナルト…」 「ひょえぇ〜」   耳元に熱い息と共に自分の名が入り込んだ時、背筋に訳の分からないものが走る。その瞬間、ナルトの両手は万歳。口から出るのは奇声。 嬌声では決して無い。   「本当に…いいのか?」   あまりな反応に再確認。 ナルトは奇声を発しないよう口をぎゅっと結んで、コクコク頷く。   「無理はすんなよ」 「し、してない……ってば」   少し不安そうな瞳が、シカマルを見上げる。   「あ…のさ…オレ…こここ、こい、こい、恋人で…いいんだよな…?」   今の表情が、言葉になって零れてきた。 シカマルは笑う。   「オレも、お前の恋人でいいんだよな?」   ナルトは、満面の笑みを浮かべてぶんぶん頭を縦に振る。   「かなり待ちくたびれた」 「すっげー、寂しかったってば」   こつんとナルトの額が、シカマルの額に当たる。   「オレもだ」   自然と唇が重なる。 いつもと変わらない、唇が重なるだけのキス。 今までの不安を消すように、何度も何度も唇を重ねる。 その度に熱が集まり固くなったものが擦れあう。 重なる唇に甘い息が混じる。 シカマルは、そっとナルトの手を取り、二人分の熱を包み込んだ。   「ふぁ……」   奇声とは違う聞いた事もない自分の声に、ナルトは真っ赤になる。 だが、それを認識している余裕はもう無かった。 今まで経験した事の無い快楽を絶え間なく与えられ、勝手に体が動き声が洩れる。 シカマルは、そんなナルトを見て下半身に一層熱を集めていた。 自然と手の動きが早くなる。 動揺しながらもしっかりと頭に叩き込んだ巻物の内容に従い、シカマルはナルトを追い上げる。 花街のおねーさんが記した巻物は、事細かに快楽のツボを記してあった。   「シ、シ……カっ……な、何か……」   ナルトは、集まりすぎた熱をどうしていいか分からない。 この後、どうなるか知識だけは知っていたが、こんな状態になった事の無いナルトは、片手だけでシカマルにしがみつき、シカマルの肩口に甘い息を漏らすしか出来ない。 手はシカマルに動かされているだけで、力も入らない。   「あ……あ…あ、あ、あ、ああああぁっ!」 「くっ……ぅ……」   二人の閉じた目の前が、真っ白になる。 シカマルとナルトの手と腹に、白く濁った熱が飛び散っていた。         花街のおねーさんの指示により、事前に用意された濡れタオルでお互いを拭きあった二人は、ベッドにくたりと横たわっている。 しばらくの間言葉も無く、ただぴったりとくっついていた。   「あ…のさ…」 「ん?」 「は、花街のお、おねーさんが、……まずはって………」   ナルトにとって、あまりにも衝撃だった「まずは」。 これ以上があったとしても、自分がそれに付いていけるとは今現在到底思えなかった。 それを察したシカマルが、ナルトの頭をぽんぽんと叩く。   「別に急ぐ必要なんてねーだろ?  今までもそうだったじゃねーか」   ナルトは、ほっとして笑みを浮かべシカマルにしがみつく。   「シカマル、好きだってばよ」 「おう」   未だ変わらない合わせるだけの口付けを一つ。 それだけで、二人は十分だった。   キスから一段階アップするのに、1247日。 それでも相変わらずの二人。 次の段階に行くのは、まだまだ当分先。   -End-    


07.12.09 砂海