ご主人様と犬の会話(バッシュとリヒテンシュタイン編)  

  【注意】 いつの時代だとかの突っ込みは一切しないように。そこら辺はスルーで読んで頂けると幸いですm(__)m                   「なぁ、何でスイスまで来てチーズなんか買ってんだ?」 「……まったく、貴方は、そんな質問するから、お馬鹿さんだと言われるのですよ」 「チーズケーキ作るんだよな?だったら、お前ん家には、トプフェンがあるじゃねぇか」    ローデリヒとギルベルトは、今スイスの町並みを歩いていた。ケーキの材料、チーズを物色してきた帰りである。  ギルベルトは、あちこちチーズ屋を物色しすぎて疲れましたという風情を隠しもしない。それを、ローデリヒは面白そうに眺めていた。   「お馬鹿さんは、撤回致しましょう。トプフェンだと、あっさりとした味になってしまうのです。今日、私が頂きたいのは、もっとこってりとしたチーズケーキだったものですから、ここまで買いに来たのですよ」 「へぇ〜。お前が作るのかぁ?」 「……お前ですか…」    空気が一度下がった。  それに気づいたギルベルトは、慌てて「や、ローデリヒの作ったチーズケーキは絶品だからよぉ……お、俺様も食べたいなーなんちってっ……」と、ごにょごにょ言葉を続ける。   「呼び捨て…ね」    空気が、もう一度下がる。ローデリヒの浮かべた表情は、穏やかな笑み。だが、そんな表面で騙される付き合いの長さではないギルベルトは、背中にいやぁんな汗。   「今は外ですから、お前でも許しましょう。  ですが、帰ったら……」    ローデリヒの口元が、楽しげに笑み形作る。その表情の意味する所に気づいたギルベルトは、前に出した足が、ちょーっと硬直する。   「私が食べさせてあげましょう。  ですから、帰ったら入浴して、裸で待っていて下さいね」    赤い舌が、チロリと唇を舐める。ギルベルトを見る視線に艶が増す。  その言葉の意味を、視線の意味を、しっかり体で理解してしまっているギルベルトは、真っ青になって一歩後ずさった。   「数日に分けて作ろうと思っていましたが、そうですね…貴方の体を覆う分となると、足りないかもしれません」    ギルベルトにとって、非常にヤバイ会話。だが、それを絶対に実行するだろうという事を、身を持って何度も何度も何度も体験させられているギルベルトは、その視線にゾクリと甘いものを感じながらも、同時にいやぁんな汗を増量させた。   「あ、あ、あーーーーー、バッシュとリヒちゃんじゃねぇか」    ノンビリ妖しい会話しながら歩いていた二人は、気づくとバッシュの家の前。正確には庭の前に差し掛かっていた。  庭には、可愛らしいテーブルと二脚の椅子。バッシュとリヒテンシュタインは、向かい合って、話をしながらお茶をしている。ギルベルトは、危険な会話を抹消すべく、無理やり話題を変えた。   「い、いい雰囲気でお茶してるよなぁ〜」 「そうですね」    ギルベルト、話題変換に失敗。全然ローデリヒの視線の艶が消えない。  そして、ついでに、リヒテンシュタインとバッシュに気づかれた。   「あら?お兄様、あそこにいらっしゃるのは……」    二人を確認したリヒテンシュタインは、お茶に呼ぼうと立ち上がり、彼らに向かって歩き始める。  バッシュは、リヒテンシュタインを止めるのが一歩遅れ、舌打ちしながら、銃の安全装置を解除。慌ててリヒテンシュタインの後を追う。   そこに、ギルベルトのでかい声。   「な、なぁ、何で、あの二人、結婚しねぇんだ?」    ギルベルトは、ローデリヒからの視線を外すに外せず、二人が近寄っている事に気づかない。   「まったく…貴方は、お馬鹿さんですね……」    ギルベルトは、「だってぇ、あいつら、ものすげぇ仲がいいじゃねぇか」と、言葉を続ける。  ローデリヒが溜息と共にお馬鹿さんと言った部分を、しっかり間違えている。馬鹿を示しているのは、話題を変えたぐらいで、自分の未来の不幸が、ローデリヒにとっての幸福が変わらないという事。  だが、それを教えてやる親切は、微塵も無いローデリヒは、家に帰ったら、十分体に理解させましょうねと、心の中で楽しげに呟いていた。  そして、そんな二人の会話を漏れ聞いてしまったリヒテンシュタインは、真っ赤になって立ち止まり。バッシュは、真っ赤になって硬直していた。   「最近、菊から、非常に分かりやすい説明を頂きましたよ」 「へぇ〜何だって?」 「バッシュの趣向は、妹萌えと言うのだそうです」 「はぁ?何だぁそりゃぁ?イモウトモエ?」 「えぇ、妹萌えと日本では言うそうです。  可愛い妹に、『お兄ちゃん』って呼ばれると、嬉しくなる体質の事を指すらしいですね」    ギルベルトは想像する。可愛い妹……居ないから、小さいルートヴィヒに「お兄ちゃん」と呼ばれる光景を思い浮かべる。だらしない笑みが顔に浮かぶ。肯定の印にコクコクと頷く。  非常にいい感じ。   「おや、どなたを想像したのですか」    一気に気温が氷点下に下がる声音に、ギルベルトは、速攻顔を引き締める。「ヴェ、ヴェストに決まってんだろ!」と、音速回答。ローデリヒの嫉妬は、激しく危険。ルードヴィヒの命が危ない。   「貴方は、ルードヴィヒに欲情するのですか?」 「んな訳あるかぁぁぁぁぁっ!あいつは、可愛い弟だぞっ!お・と・う・と!!……って、妹に欲情すんのかぁ?」 「そのように、ご指導頂きましたね」    げぇぇぇ〜と、そんな危険な関係に、ギルベルトは、嫌そうな表情を浮かべる。無意識に、男同士の恋愛は、棚上げ。まぁ、血が繋がってない分、まっとうだと心の中で主張。   「あー、でもよー、リヒちゃんは、スイスの実の妹じゃねぇだろ?だったら、欲情したっていいじゃねぇか。ってか、正式に結婚して、嫁さんにしちまった方が、人間として、まっとうじゃねぇの?」 「ギルベルト、それは違うのだそうですよ」 「どこが?」 「奥さんからは、『お兄ちゃん』と呼んでもらえませんでしょう?」 「そりゃぁ、『あなた』とか『バッシュ』とかだよなぁ」 「それでは、だめだそうです」 「はぁ?」    意味が分からないとばかりに、ギルベルトは、頭の上にクエッションマークを大量生産している。   「上目遣いで『お兄ちゃん』と呼んで欲しい病気なのですから」 「げーーーーーーーっ、何だそりゃぁ!!」 「あぁ、なるほど……そうですか……私が、貴方に『ご主人様』と呼んで欲しいという感情と同じなのでしょうね」    ギルベルトの肩が、がっくりと落ちて、「言ってるじゃねぇか……」と、溜息交じりの呟きを漏らす。   「ですが、人前では言いませんでしょう?寂しいですね……」 「お、お前は、どこまで鬼畜なんだよっ!!」 「おや、私は、寂しいと言いましたよ」    ギルベルトは、「けっ!」と言ったものの、極、極、極、極小声で「……ご、ご主人様」と付け加える。  ローデリヒは、その真っ赤になった俯いた顔を愛おしげに見るものの、視線があった瞬間には、しっかりご主人様顔に戻っている。躾の為、甘い顔は、一切見せるつもりは無い。   「それで、お分かりになりましたか?」 「あぁ、なんつーか、バッシュもアブノーマルなんだな」 「その『も』は、なんですか?」 「お前なぁ……まさか自分の事をノーマルだなんて言わねぇよな?」 「おや、私は純愛だと信じていますが?」    鮮やかな笑みが、ローデリヒの顔に浮かぶ。万人全てが魅了されるような笑み。だが、ギルベルトだけは、気づいていた。その笑みの中に、鬼畜という言葉が大量にブレンドされている事を。その証拠に自分の背中は粟立っている。調教されている時に感じるそれ。ギルベルトには、ローデリヒの背後に、悪魔が見えていた。   「さぁ、急いで帰りましょう。大量のチーズケーキを作らなくてはいけませんからね」 「げっ、まじでやんのかよ」    そう言いながら、立ち止まっていた二人は、硬直しているバッシュと真っ赤になったままのリヒテンシュタインを残し歩き出した。   「なぁ…」 「なんですか?」 「お前、あの二人が聞いてんの、分かってて、説明してたよなぁ?」 「当然じゃないですか」    艶然と微笑む笑みは、悪魔。   「お前って……誰に対してもドSなのな…」 「おや、私は貴方に殴られていましたよね?」 「あれは……」    ギルベルトが、似合わない溜息をつく。  シュレゼンを奪ったつもりだった。弱いオーストリアをとことん叩き潰したと思っていた。だが、それは、自分を手にいれる為の策略。ローデリヒは、欲しいものを手にいれる為ならば、己の主義や性格をも抑えられる。その後の楽しみの為に、己を押し込める。それを思った時、ギルベルトの顔に笑みが浮かんだ。   「なぁんだ、俺ってすげぇ愛されてんのかぁ?」 「今頃気づいたのですか?」    ギルベルトは、下品な笑いを浮かべる。   「貴方に『ご主人様』と呼ばれる為の努力は報われましたね」 「普通に愛して欲しいよなぁ………」 「おや、これが、私にとっての普通ですよ」    二人は、ご主人様と下僕、もしくはペットだけれども、甘い雰囲気を振りまきながら、帰っていった。  帰宅後、当然ギルベルトは、体中にチーズケーキを塗りたくられ、ご主人様が全て舐め終わるまで、出す事を止められ、それに立派に耐えた……かも。        そして、話は、スイスに戻る。   「菊さんですか?」 『はい』 「リヒテンシュタインです」    リヒテンシュタインは、電話をしていた。   「あの……、妹萌えというのは、どのように振舞ったらよろしいのでしょうか?」        菊から指南を受けたリヒテンシュタインが、バッシュの鼻血を増殖させる数分前。       -終わりますよ-  

 

10.10.05 砂海 トプフェンは、少し前までは日本に輸入されていなかったオーストリアのフレッシュチーズ。 チーズケーキにすると、さっぱりした味わいになるそうです。 ぜひ、食べてみたいものですね(^-^)   ちなみに、私の世界?では、バッシュって言ったら、バッシュ・フォン・ローゼンバーグになります。FF12ですね。 非常に天然で、ほんわかな人だと勝手にイメージつけています。 ……お兄様が、バッシュですか…f(^-^;)非常に似合わない名前かと……orz   最初、お兄様とリヒちゃんがメインだったはずなんですが、あっはっは……主従がメインになっちゃいましたww そして、どんどんロデ殿のドS化が進んで…てへっwww 帰宅後省いたけど……い、いいよね?   あ、最初にも注意書きしていますが、これが、どの時代だとか、チーズケーキが出来たのがいつ頃で、んじゃぁ、これは、どれぐらいの時代だとか、一切チェックしないように。そこら辺は、まったく加味していませんのでm(__;)m<ヨーロッパ史の勉強がまったく進んでいない馬鹿