激ヘタレの口説き方  

  「ねーねードイツー、ドイツー」    今、イタリアは、ドイツの膝の上。正確に言うと、ベッドで寝ているドイツの膝の上。もっと正確に言うと、イタリアはワイシャツ一枚、ボタン全開のまっぱである。もっともっと正確に言うと、寝室の窓から侵入しました。   「っ、な、な、何なんだっ!」 「ドイツー、起きたぁ〜」    ドイツは、なんとか上半身だけ起こした。そして現状を把握しようとするが、寝ている所を無理やり起こされ混乱中。  だけど、ドイツ。イタリアのタックルに近いハグに、寝ぼけていても微動だにせず。   「イタリア?」 「ドイツー、俺ねー俺ねー」    そう言ったイタリアは、小首を傾げて、ドイツの機嫌を伺うかのように覗き込む。   「あー、どうした?躊躇うなんてお前らしくないだろ。  ほら、早く言え。俺は寝たいんだ!」 「うん、俺もドイツと寝たいんだ〜。一緒だねー」    嬉しそうにイタリアの両腕が広がり、ドイツをガシッと抱きしめる。   「寝にきたのか?わざわざ俺の家まで?  ったく…」    ぶつくさ言いながらも、ドイツはイタリアにハグされたまま、ベッドの隅へ動き、布団をめくる。   「ほら、入れ」 「えー?ドイツ、寝巻きはぁ?あ、そっかぁ〜、脱がして欲しいんだねー。やったー!」    イタリアの手が、ドイツの寝巻きのボタンを器用に外していく。どうして、これが普段に活用されないんだと思っている間に、すっかり上半身は裸にされていた。   「イタリアーっ!」 「ん?」 「なぜ、脱がすっ!」 「えー、着たまんまがいいの〜?ドイツって、マニアックぅ〜」 「はぁ?」    会話不成立。いつも理解不能な事を言ってくるイタリアだが、今日ほど会話が理解不能なのは、なかなか無い。   「ちょっ、ちょっと待てぇっ!」 「何を〜?」 「何で、俺のズボンを引っ張るんだ!」 「だって〜、ズボンはいていたら、ドイツのピーーーーを舐められな、がふっ!!」    イタリアが小首を傾げながら言う言葉の途中で、ドイツの拳がその頬に炸裂した。   「ひ〜ドイツ〜、痛いよ〜痛いよ〜、何すんだよ〜」    勢いでベッドから落ちたイタリアは、頬を押えながら、泣き声で抗議する。   「お前は、ここに何をしに来た!」 「ドイツと寝に来たんだよぉ〜」 「ほぉ〜、お前の寝るという言葉の定義を聞かせてもらおうか」 「えー、それって、羞恥プレイ?ドイツって、やっぱりマニアックぅ〜」 「何だそれはっ!いいから、言ってみろ!」 「えっとぉ〜、ドイツとぉ〜キスしてぇ、舌を絡めて〜、それからぁ、乳首も舐めたいよね〜、そんでもってぇピーーーをピーーーして、ん〜次は、ピーーーーに指を入れてぇ〜、そうだ、そうだ、舐めるのも忘れちゃいけないよねぇ?最後にぃ俺のピーーーーをドイツのピーーーーに入れっ、んぐっ」    ドイツの手がイタリアの頭をむんずと掴んで、床に顔を押し付けた。顔は真っ赤。少し涙目。そして、大量の怒りで、反対の拳を握った手が震えていた。   「こんな真夜中に、青少年が聞けないような内容を声高にしゃべるなっ!」    それに対し、返事をしようと思っても、思いっきり床とキスをしているイタリアは、「む〜」とか「ぃ"〜」とかしか音声にならず。   「もしかしてお前は、俺とセックスをしたいのか?」    床でうごめいていたイタリアは、必死になって、動かない頭を振る。頷いているらしい。  その姿があまりに情けなくて、ドイツは手の力を抜いた。   「ぷはーーーーっ。ドイツ酷いよぉ〜。も〜!」    そんなイタリアの声を、据わりきった視線が攻撃。声は粉々になって、床に散らばった。   「何で、俺とセックスをしたい?」    重低音の声。   「えっと〜、俺ぇ、ドイツが大好きだから〜。ドイツだって、俺の事、好きって言ってくれたでしょ〜」 「いや…あ、まぁ…その、だな、確かに言ったが……」 「えーーー、俺の事嫌いになっちゃったの?」 「ち、違っ…そうじゃなく」    ドイツは泣きそうだった。はっきり言って、心の中では泣いていた。イタリアというお国柄は、友人同士でも、セックスをするのか?と、一人で突っ込んでいたりもする。   「ドイツ〜、俺の事、まだ好き?」 「あ、あぁ……」 「じゃぁ、セックスしよう!」    両手を広げ、飛び掛ってきたイタリアを、ドイツは反射で片手を出し、イタリアの顔面を掌で押えた。   「ひぃ〜っ、なんでだよ〜」 「そ、そういうのは、て、手順が大切だと、に、日本がい、言っていたっ!」    好きだと言ってくる相手をむげに出来ないドイツは、時間を稼ぐ方向へ必死になって模索中。   「えーー、日本のは奥手すぎるよ〜、そんなのドイツらしくない〜」    だが、そんな時に限って、イタリアの口がかなり立派にまわっている。  なぜならば、愛の国イタリア。軟派な国イタリア。口説くのはDNA。脳みそは必要ナッシング。   「ドイツ〜……」 「あ、あのだな……俺は、お前の事が、す、す、好きだが……そ、そういう好きじゃないんだっ!」 「えーー、大丈夫だよ。俺、上手いから。安心して」    会話の歯車、一向にかみ合わず。   「だ、だからっ!」 「セックスしようよ〜」 「やらん!」    「えーーーー」と滝涙を流しながら、イタリアは、以前日本に教わった正座をする。   「な、何だ?!」 「ひょねがいしますぅ〜」    涙の土下座。   「俺とぉ、セックスしてくらしゃぁい」    涙の上に鼻水付き。流石ヘタレ!   「っ……」 「ドイツぅ〜」    そして、エンドレス土下座。「お願いします」といいながら、頭がヒョイピョイ上がったり下がったり。  その勢いに、そのあまりにもヘタレっぷりに、ドイツは微妙に圧されていく。   「させてくださぁい〜」    世界中のどこを探しても、これ以上のヘタレは見つけられないだろうレベルのヘタレさ。  ドイツ、なんだか、悲しくなってくる。   「お、俺、絶対、絶対、絶対、ドイツを、ものすっごい天国へ連れて行くからさぁ〜」    必死になって見つめてくる涙と鼻水の顔を見ているうちに、力が抜けた。  ドイツは、その辺に転がっていたタオルを拾い、イタリアの顔をごしごし擦った。   「ったく…………お前の言い分は、良く分かった。分かったから、とりあえず明日、話し合おう」   「話合ぃ〜?」 「そうだ。まずは、会話からだ!」 「えーーーーー」 「煩い!じゃなければ、一切却下だ!」 「う"う"〜〜……、分かったよぉ〜」    ドイツの手が止まり。イタリアの顔から、とりあえず水気が無くなったのを確認する。   「ほら、もう夜は遅い。寝るぞ」 「一緒に寝てもいいの?」 「たまに、寝ているだろう。ほら、さっさとベッドに入れ!」 「は、はい!分かりました!」    イタリアは、ドイツの気合入った勢いに、とっさに左手を額に添えて、敬礼をする。   「右手だと、いつも言ってるだろうがっ!」 「うおっはい!間違えました!」    慌てて、右手に直したイタリアは、にっこり笑う。それから、もそもそと四つん這いでベッドの中へ移動した。   「ドイツ〜ドイツ〜、早く寝よう!」    すっかり、寝るモードに入った。  それを見て、ドイツは安心の息を吐き、イタリアの横に入っていく。   「ドイツ〜、明日ね〜」 「あぁ」 「話した後は、セックスだよぉ〜」 「………」    どう返事を返そうかと、ドイツが悩んでいるうちに、横からイタリアの寝息。どっと、疲れと、疑問がこみ上げてきた。   『俺を抱きたいって?』    ドイツは、横になったものの、あまりの衝撃に眠りが訪れない。   『何で、そんな事を思うようになったんだ?』    答えの無い問いが、頭の中をぐるぐる回る。   『俺を抱いても面白くないだろ?だいたい、いつもは、むきむき〜だとか、怖いだとか言ってたじゃないか』    イタリアが寝返りをうって、ドイツにしがみ付いた。   『っ…?!』    ドイツは、顔から首まで、余す事無く真っ赤に染まる。だが、本人はまったく気づいていない。   『あ、あ、あ、ああいう事は、恋人だとかっ!結婚した夫婦がっ!……な、なぜ、俺なんだ??』    心の中の声は、裏返っている。   『だ、だ、大好きって……い、言ってた……だ、だが……お、俺は……俺は?どうなんだ?』    自分への問いなのに、答えが出ない。  だいたい、真っ裸のイタリアと一緒に寝る事に対し、何も感じないとか、相手が抱きたい事に疑問を持っても、自分が抱かれる事に対し何も思う所が無いとか、色々答えは出ているはずなのだが、冷静という言葉から、かなり遠いところにいるドイツは、微妙な場所で、思考がどうどう巡り。   「ドイツぅ〜」    甘い吐息と共に、寝言がドイツの背中をくすぐる。  ドイツの心臓が、信じられないぐらい大きく跳ねた。   『お、お、俺の心臓……どうしたっ?!』    そして、何一つ結論も出ず、混乱したままのドイツは、白々と明けた窓の光を見ながら、ようやく眠りの中にダイブした。              次の日。二人共、非常ぉ〜に遅い朝を迎えた。  しかも、日本に起こしてもらった。  ベッドの中には、真っ裸のイタリア。そして、動揺したまま寝たドイツは、寝巻きが肌蹴たまま。  「西洋事情は……まだまだ奥が深かったのですね…」という日本の言葉に、ドイツの「違うんだぁぁぁぁぁぁ〜!!」という叫び声が部屋の中を木霊した…らしい。   -終わりですよ-  

 

09.12.19 砂海 せっくす、せっくすと、あまり書きたくない言葉を連呼するのは、止めて下さいイタリア殿(/_;)   ということで、激ヘタレが口説くとこうなりますってお話でした。 あっはっは…、これで相手が激ニブじゃなければ、もう少し話しは違っていたかもしれません。 私的ドイツは、激ニブ属性なもので…。ついでに兄も、その属性を持っています。 頭の中で、どんどん、原作者様とは違った、属性を付けていってます。 ので、イメージが狂ったら……すまんm(__;)m   ちなみに、仏英を書いていた時と違って、頭の中にちゃんとイタちゃんとドイツの声が再生される…。 流石主人公だな。と感心しました。   ところで、どうしても、ドイツはドイツで、イタリアはイタリアでした。国名採用したって事。 聞きなれていたんで。ダメっすかね?