窓の外、振り続ける雨をずっと見ていた。 雨は嫌いだ。 見たくない記憶が雨をぬって亡霊のように目の前に現れる。 雨は嫌いだ。 なのに、自分は、その雨から目を離せない…… −雨の記憶− 「よぉ〜」 アーサーの背後から、雨の日に似合わないほどの陽気な声がした。 自分の背後。 誰が立っているのかも知っている。 でも、アーサーは、振り返らない。 「んだよぉ〜、俺だぞぉ〜」 「煩い」 「お前って、どうしてそうなのぉ?」 アーサーの背中が、物凄く熱いものに覆われた。 「お前…いつから、ここにいるんだ?今日は、寒いだろ」 「寒くなんかない」 寒くないと言っているのに、背中を抱くフランシスの腕が強くアーサーを抱え込む。 体が温かくなってくる。でも、目の前の亡霊は消えない。 「お前さぁ、不健康だよ。分かってるんだろ?俺達に歴史を動かす事は出来ない……そして、あれはもう終わった。過去なんだ」 「フランシス…」 アーサーは、背後のフランシスに向かって体を捻る。いつもにやけている表情は、そこに無く。代わりに、酷く優しいものがあった。 「それにな、お前がそんな顔をしてたら、俺、もんのすっごく妬けちゃうんだけど?」 一瞬、まん丸になったアーサーの目が、物凄い勢いで逸らされた。 「ほんと、お前って可愛いよなぁ」 「っ……」 首筋に温かい吐息と、柔らかいものを感じた。体が、驚いただけじゃないもので跳ねる。 「俺の方が、ずっといい男だろ?」 甘い声が出てしまいそうで、アーサーは返事が出来ない。 「それに、料理上手だし。お前、俺の料理、好きだろ?」 「そ、そこでっ……っ…しゃべるなっ!」 「いいじゃない?なぁ、アーサー」 「っ……」 「言ってよ」 「な、何をっ!」 真っ白だったアーサーの肌は、既にほんのりとピンクがかり、フランシスと混じった体温は、温かいというよりは、熱くなっていた。 「俺の事が好きって」 「なっ……」 「ねぇ、俺だけしか見えなくなってよ。亡霊を見るなら、俺のにして」 「フランシス……」 自分が見ていたものを、正確に言い当てられ、フランシスから見えないアーサーの表情は酷く歪む。 「外へ行くか?」 「あ、雨が降ってる」 「その中でやろう。そうしたら、雨の思い出は、俺との思い出になってくれない?」 「っ……か、風邪をひく、ぞ」 「大丈夫。ずっと俺が暖めてやるからさ」 アーサーは、窓の外を見る。今だ見える亡霊の数々。 胸の前で交差されたフランシスの腕にしがみ付く。小さく頷いた。 「お、お前が、変えられるなら。い、行ってやっても…いい」 「そっかぁ」 嬉しそうなフランシスの声にアーサーは、少しむっとする。 「変えられなかったら、ぜ、絶交だからな」 「んじゃ、もっんのすごいやつ、やっちゃおっかなぁ〜」 「…な、何だそっ……フランシスっ!」 アーサーは、フランシスの腕に抱きかかえられていた。 「さぁ〜、俺の愛で、お前の全てを埋め尽くしちゃうぞぉ〜」 やけに楽しげな笑い声が部屋の中に響く。それに安心したのにも関わらず、庭に出る扉が開いた瞬間、雨の音に包まれ心が萎縮する。 「俺を見て」 その言葉に、アーサーの顔があがり、のろのろと両腕があがる。まるで、フランシスが幽霊かのように、そっと、腕がフランシスの首に絡まる。 「見てる」 「キスをして」 ぎこちなくフランシスを引き寄せて、アーサーが口付ける。 「好きって言って」 「す…きだ」 フランシスは、小さく微笑んで、ゆっくりと木陰にアーサーを下ろした。 雨は、降り続いている。木陰は、雨をさえぎっているけれども、溜まった雨の雫が、絶え間なく落ちてくる。 「俺の前で脱いで」 「っ……」 「ものすっごいので、忘れさせてあげるから」 「わ、分かった…」 羞恥で真っ赤に染まった肌が、ゆっくりと現れてくる。その体に、雫がいくつも落ちてくる。 「こ、これで、いいだろ」 「あぁ。お前って、すげぇ綺麗」 未だ服を着たままのフランシスが、ゆっくりとアーサーの姿態を眺めている。 その視線が、落ちてくる雫が、体を粟立たせ震わせる。 ほんの少しだけ兆していた熱が、ゆっくりと増やしていく。 「フランシス……っ?!」 閉じられていた足が、大きく広げられ、自分でさえ見た事の無い場所が、あられもなく晒された。 「自分で解してごらん」 「なっ……」 「全部見ていてあげるから 俺を誘って」 見開かれた瞳が揺れて、フランシスから逸れる。 「ちゃ、ちゃんと見てろよ!」 負けず嫌いの意地っ張りは、真っ赤になりながらも、彼の熱を受ける場所に自分の指をゆっくりと入れた。 「く……」 潤滑されていないそこは、自分の指によって少しひきつれる。かすかな痛み。それさえも、熱に変換される。吐息が漏れる。 直ぐにでも、快楽を得たいと、せわしげに指が動く。だが、足を広げたままの不自然な姿勢は、自由に動く事も出来ず、ただ悪戯に熱を貯め続けていく。 「フランシス……」 「お前って、綺麗すぎ」 フランシスの爪が、真っ赤に尖った赤い実を引っ掛けた。 「あっ…、んんっ……」 こぽりと音をたて、立ちあがった熱の先から雫が零れた。 「欲しい?」 その言葉に、アーサーの頭が、こくこくと動く。 「なら、強請って。俺、すっげぇ誘われてるから」 「い………入れ…、ろ」 嬉しそうに笑ったフランシスの唇が、そっとアーサーのそれに重なる。その可愛いキスに物足りなさを感じたアーサーは、舌を伸ばし、口の中に入ろうとするが、それよりも一瞬早くフランシスが引いた。 「な、んで?」 「俺も服を脱がないとダメだろ?その間も、ちゃんと弄ってな。見ているから」 楽しそうにアーサーを見つめながら、フランシスは服を脱いでいく。 アーサーは、言われたとおりに指を動かそうとして、その指が止まった。 同じ性を持つ相手のストリップが、こんなに欲望をかきたてられるとは思わなかった。 ごくりと喉が鳴る。 震える指が、期待するように動く、体の内側に締め付けられる。 そのふしだらな動きに、一層自分の熱が集まった。 「俺の上に乗っかる?」 いやらしい言葉に誘われる。ふらふらと体が動いて、フランシスの体を押さえこみ跨る。 「ふ、…あぁっ……」 その熱さが自分に触れただけで、声があがる。ずぶりとフランシスの熱が体の中に侵食していく。 震える足で体を支え、ゆっくりと入れていくつもりだったのに、あまりの熱さに、あまりの快楽に、その力が抜け、最奥まで一気に貫かれた。 「ひゃああぁぁぁぁぁっ……」 「くっ…」 フランシスの腹に、熱が飛び散った。快楽の頂点にあったアーサーの顔に、フランシスも熱を放ちそうになる。 上気した頬、溢れた涙で濡れた瞳、だらしなく開いた涎で汚れた唇。どれも、自分を煽るに相応しい痴態。 フランシスは、ゆっくり攻めるつもりだったが、そんな姿態を見せられて、大人しくしている性に無い。 細い腰を掴み、体を浮かせる。そのまま、激しく下から突き上げた。 「あ、……あぁっ、そ、…だ、め………ひゃぁっ……あ…あ、あ、あ、あぁぁぁっ」 「もっと可愛い声を聞かせて。いっぱい強請って。嫌だなんて、言うなよ」 体を引き寄せ、耳に口付けながら囁く。 「あぁっ……、お、かしく……な、る……」 「なっていいよ」 「くぅっ……」 「強請って」 首筋に食らい付くように口付ける。 「も…っと……触って……弄って………い、っぱい……」 「J'aime tout le temps oui」……(*1) フランシスは、アーサーの言葉に、叶うよう動き出す。 木々の多い庭の奥。 雨音よりも、アーサーの嬌声だけでいっぱいになった。 ・・・‥‥……━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━……‥‥・・・ 今日も雨。 顔が真っ赤になっているのが、分かる。 途中から記憶がすっ飛んでいるが、それまでは克明に覚えている。 自分から進んで腰を揺らした。 離れるのが嫌で、「もっと」と幾度と無く強請った。 思い出してたら顔から間違いなく火が出るような、淫らな言葉を沢山言った。 恥ずかしげもなく、受け入れる場所を開き、見せ付けるように動いた。 「っ………」 記憶は塗り替えられた。 だが、こんな恥ずかしい記憶で塗り替えられるとは思わなかった。 どっちがマシか分からない。 あの日と同じような雨。 無条件に、自分の体に熱が篭るようになったのが、もっと恥ずかしい。 「前の方が、マシだったぞ」 「なぁにがぁ?」 「っ…フランシスっ!何で、ここにいやがるっ!!」 「だってぇ〜、お前、俺を呼んだでしょ?」 「呼んでないっ!!」 「んでも、体は呼んでるよ〜」 「っ………」 あの日と同じように背後から抱きしめられた。それだけで、体が粟立ち、その先を期待する。 「ちっ……」 「何、その舌打ち」 「う、煩いっ!は、離れろっ!」 その言葉に従うように、フランシスが体一つ分離れる。 「…なんて、顔してんだよ」 離れた瞬間、捨てられた子犬のように、アーサーは、フランシスを見上げていた。 フランシスは、そんなアーサーににっこり笑って、再び抱きしめる。 「雨は、俺の日になっただろ?」 「…………………なった」 そっぽを向いたアーサーがぼそりと言った。 −End−
09.06.08 砂海
くっそ、仏の話し方がいまいち分からん。 目に浮かぶは、まっぱで股間薔薇、腰を振ってるにぃちゃん……。話し方が分からねぇっ!! なぜか、英は、大丈夫(・o・)bツンデレ、これにつきるから。 ニコ動のmagnetの歌ってみたジャンルカッコ腐対応?を聞いたおかげで、どんどん、やばい方向に……ここまで気合入れて書く予定は、カケラも無かったのに……((((*。。) えっと、フランスとフランシス。イギリスとアーサー、どっちの呼び方にしようか悩んで、後者にしました。この世界、まだ小説サイト様に行って無いんで、どっちが主流か全然分かっていないf(^-^;)ま、いっか? *1:「うん、ずっと愛してあげる」を翻訳サイトで翻訳したらこうなった。あっているかは不明なり。