交差する記憶 Y  

  ◆交差する記憶 Y   「兄さん、騎士団に入るって…」 「お前も、じゃないのか?」   大国に囲まれた、小さな国。 今、大国に大きな動きは無いが、それが突然豹変してもおかしくない世情。 多くの子供が騎士団に入団し、戦う為に己の体を鍛える。 それが悲しい事だとも思わず、自分の愛する家族を守る為に日々剣を振るうのが、ランティスに生まれた子供として当たり前の生活だった。   「うん…そうだけど……」 「他にやりたい事があるのか?」 「母さんが……」   父親は、もう居ない。他国との小さな小競り合いの時に、命を亡くしてしまった。 その事が母親の弱い心臓を、一層弱める。今、彼らの母親は、ほとんどベッドの上で生活していた。   「もし、僕達が、父さんと同じように……」   バッシュは、弟、ノアが危惧している事が、ようやく分かった。 自分が剣を持つ決意を促したものは、ほんの十歳にも満たない自分の小さな世界を蹂躙された怒りから。 騎士だった父親は、戦死してしまった。 遊び場だった、花畑は踏みにじられ、血に染まっていた。 仲の良かった友達が、殺された。 綺麗だった街並みは、未だ戦闘の跡を残している。 国境近くにある、バッシュとノアを育てた街。それは、どんなに平和でいても、暗い影が消える事は無かった。   「ノア」   その静かな声に、ノアは顔をあげる。   「俺は、強くなる。どんな敵が来ても、負けないぐらい強くなる。絶対に、死なない。  ノアの為に。  母さんの為に。  俺は、強くなる」   真っ直ぐに突き刺さるような視線が、ノアに注がれる。   「だから、俺は、騎士団に入る」 「兄…さん」 「ノアは、ノアの好きにしていい。でも、俺は、このままじゃ嫌なんだ」   バッシュを見ていたノアは、泣きそうな顔をしていた。                  ◆◇◆                 あの時、弟に言った言葉は、誓いだった。決して、破ってはならない誓い。 なのに、目の前に広がるのは、多くの血、動かない体、瓦礫になった建物、そして未だに攻撃を続ける駆逐艦、チョコボに跨り攻撃を続ける兵士。 見習いから少年騎士になっていたバッシュは、もう何時間戦っているのか、分からなくなるぐらい剣を振っていた。 また、一人、自分の横で味方が倒れる。 背筋が寒くなる。 自分は、知っている。 これは勝ち目の無い戦。戦力の差は、どう戦術を操っても埋められない。   「バッシュ」 「はい」 「行け」   上官が指差したのは、敵とは反対の方角。   「お前なら、生き延びられる。死なしたら、お前の弟に俺が怒られるだろ?」 「そんなの関係ありませんっ!」   悲鳴のような声が、あがる。   「戦って死ぬ事が最善だと思うなって、俺はいつも言っていたはずだな?」   バッシュは、必死になって首を横に振る。   「お前の事だから、恥辱だとか、言いそうだがな。生きてりゃぁ、次の戦いがあるんだ」 「嫌ですっ!」 「その恥辱ごと、生きろ。これは命令だ」 「嫌だっ!!」 「もうこの国は終わる。お前も分かっているだろ?  帝国は進み続ける。この国はダメだったが、お前が居れば助かる国があるかもしれない。  だから行け、バッシュ!」   近くに居る敵を切り伏せながら、バッシュは泣いていた。   「泣いたら、剣が鈍るだろうが」 「最後まで…ここに…」 「だめだ」 「俺は……弟を……家族を……守るって……」 「お前の弟なら、大丈夫だ。あいつの上官も、いいやつだからな」   バッシュは、声が出ない分、必死になって、上官を見つめる。   「この国を出るんだ」   いくら首を横に振っても、状況が変わらない。   「上官命令は、絶対だな」   上官が、バッシュの周りに居る敵を、片っ端から切り捨てていく。   「元気でな」 「………は…い」   バッシュは、剣をかかげ、真っ直ぐに上官を見上げる。   「行け!」 「はいっ!!」   バッシュは、最後に上官に一礼をして、走り出す。 もう二度と会えない事は、分かっている。涙が止まらない。 国境だけが、このような状態じゃない事をバッシュは知っていた。 ノアは、中心地に近い所で戦っているはず。そこも、ここと変わらないだろう。   「ノア…」   走りながら、弟の無事を祈る。   「ごめん……」   この時、バッシュの所属していた一隊は、バッシュを除き、全滅した。 バッシュの上官が言った事は、誰にも伝わる事なく、終戦を迎える。 ノアは、立っていた。 バッシュは、ただ走っていた。 二人の道は、別れてしまった。                  ◆◇◆                 国が支給してくれたものは、剣を残し全て無くなった。   「はいよ」 「あぁ」   必要な金を手に入れる為に全て売り払われ、今はその辺で見かけるトレジャーハンターのような格好に、バッシュはなっていた。   「何か情報は?」 「ランティスは、アルケイディアに吸収されたらしいぜ。  二つの大国は、相変わらず睨み合いだ。だが、当分戦争は無いだろう」 「……そうか」 「間に挟まれた小国は、つかの間の平和を謳歌しているって所だな」 「ダルマスカとナブラディア…だったか?」 「あぁ。そのうち、どっちかに吸収されて、名前なんか無くなるだろうがな」   バッシュは、情報料として追加のギルをカウンターに置き、店を出る。   (ここからなら、ラバナスタが近い…)   目が開いている時は、胸が締め付けられ、叫びだしそうになる。 目が閉じている時は、壊れた街、倒れていった人、自分の仲間、家族が浮かび、全てが自分を責める。   (貴方が言った事は……)   あれから、水とほんの少しの食料だけで、ここまで来た。 体は痩せ、病人のような外見にも関わらず、目だけがギラギラと暗い光を湛えている。   (俺には……無理……です…)   体が勝手に動いて、道を塞ぐモンスターを倒す。 バッシュの体の中には、上官に言われた言葉しか残っていない。   『お前が居れば助かる国があるかもしれない。』   それだけが、バッシュを支えた。 恨みのこもった瞳の中に囲まれて、唯一暖かい瞳で毎回自分を送り出してくれる。 夢を見るのを恐れ、夢を見て歩き出す。   「あれ…か」   砂漠の向こうに、日差しに揺らめく城が見えた。                  ◆◇◆                 「お前」   振り向かないでも分かる。何度となく自分にからんで来る声。   「何ですか?」   煩いと思いながらも、相手はこの国の貴族。仕方が無いという思いを隠さず、振り向いた。   「そんな状態で生きていて、何が楽しい?」 「貴方こそ、そんなに弱くて、何が楽しい?」   相手の言葉の意図など、知りたくもなかった。 初めて会ったのは、自分と同じぐらいの子供が集まった新人騎士見習いの場。 バッシュを除く、どの子供も自分の将来に胸をときめかせ、瞳を輝かせていた。 戦争を知らない、無垢な子供。 そう遠くない未来に踏みにじられる事が予想されているのにも関わらず、実感を一切持たない。 今話しかけて来た相手も、その一人。 弱いくせに、プライドだけは高い。そんなものは、戦争に一切意味が無い。見る度に、笑いたくなる。   「それとも、少しは強くなったのか?」 「難民のくせにっ!」 「弱いと大変だな。貴方には、貴族という親から貰った肩書きしかない」   バッシュの瞳に浮かんでいるのは、間違いようも無い侮蔑。   「貴様っ!」 「貴族なら、自覚を持ってもらいたいものだな。ここは、平和じゃないという自覚が、足りなさすぎだ」 「っ…それは…」 「ほぉ、あるとでも?平和ボケしたダルマスカでは、珍しい。  ならば、こんな所で油売ってる暇は、ないんじゃないのか?」   貴族の子供は、唇を噛み締めた後、踵を返し、足音高く訓練場の方へ消えていった。 バッシュは、この、平和な国が嫌いだった。 子供だった自分にでさえ、想像がつく未来を見ようともしない。 心に残るのは、上官に言われた言葉だけ。   (嫌いな国を守らなければ、ならないのですか?) 「バッシュ」   今度の呼びかけには、ちゃんと反応しなくてはいけない。それが面倒で、ため息が漏れる。 声の主は、自分の隊の小隊長だった。   「この後、何か用事はあるか?」 「ありません」 「なら、俺についてこい。子供が迷子になった。探しに行くぞ」   言われた言葉に、バッシュの眉根が寄る。   「何だ?」 「なぜ、そんな事をしなければいけないのですか…」   この国の軍は、戦争以外にも、街の人間を守っていた。 多くの煩わしい揉め事に、軍の人間が借り出される。   「いい加減に慣れろ」 「……そう…ですね」 「焦っても何も変わらない。お前の危惧している事は想像つくが、今守る者を無くして、何の意味がある?」 「しかしっ」   感情が弾けそうになった時、バッシュの服が引っ張られた。それに驚き、振り向く。   「お兄ちゃん…」   銀髪の青い瞳の子供。   「弟が…居ないの」 「…どうし…て?」 「僕が、僕が、ガルバナの花を……見たいなんて……言った…から」 「ガルバナ…?」 「砂漠に咲く花だ。  坊主、大丈夫だ。おっちゃんと、この兄ちゃんが、ちゃんとお前の弟を見つけて来てやるからな」   小隊長のごつい手が、子供の頭を撫でる。   「……一緒に行くか?」 「おいっ!」 「うん!」   子供の嬉しそうな笑みと、慌てた小隊長の声が重なる。   「ここに待っているのも、心配でしょうから」 「だが…」 「私が、守ります」   小隊長は、初めて見たバッシュの真っ直ぐな瞳に、言葉を無くす。今までも、その視線は確かに真っ直ぐに伸びていたが、それは暗く、何も見ていなかった。   「分かった。責任もって、お前が守れ」 「はい」   バッシュは、子供の前でしゃがみこみ、「私の後ろから離れてはダメだ」と、言い聞かせている。その瞳は、柔らかい。 小隊長は、今度は子供ではなく、バッシュの頭を撫でた。   「な、何ですかっ?」 「や、お前、可愛いな」 「私は、20を超えました」 「俺から見れば、可愛い歳だ」   こんなバッシュは、見た事が無い。難民として受け入れられ、直ぐに騎士団に入隊を申し出たと聞いている。その始めから自分の部下として見てきたが、その瞳はいつも悲しみに沈んでいた。 こんなバッシュを見たのは、初めてだった。   「よし、行くとするか」   バッシュは、子供を抱き上げ、歩き出す。   「お、お兄さん…」 「南門までだ。この方が早い」 「ありがとう」   子供は、泣き止み、嬉しそうにバッシュしがみ付いた。 バッシュは、それを泣きそうな目で見つめながら、ゆっくりと歩く。   「弟を探しに行こう」 「うん」             たった一人の子供を捜すには、あまりにも広い砂漠。 一つ一つのエリアを、モンスターを倒しながら、しらみつぶしに歩く。 ようやく見つけた子供の弟は、東ダルマスカ砂漠、砂段の丘、ダルマスカからの道からは影になっている場所に蹲っていた。   「にいたん…」   子供の大きな目から、涙がぼたぼた零れていく。   「ヴァン!」   バッシュの影から、走り出した子供は、一直線に子供に向かって行った。 バッシュは、小さな子供をじっと見ていた。 ヴァンと呼ばれた子供は、金髪、碧眼。それが、強くノアを思い出させる。   「顔は似ていないのにな…」   涙を浮かべた青い瞳は、凄く綺麗だと、一緒に居る時いつも思っていた。   「お前も、弟が居るのか?」   突然話しかけられて、バッシュの体がビクリとはねる。   「本当に今日は、珍しいものが見れるな」 「何が…ですか?」 「今まで、お前は、まるで敵地に一人で居るみたいに、始終緊張していて、こんな風に話しかけても、驚く事なんか無かっただろ?」 「……敵地」 「だろ?」 「ダルマスカは、敵地じゃない…」 「敵は、アルケイディアか?」   バッシュの瞳が翳る。   「お前の出身は、ランティスだったな?」 「……はい」 「お前の性格からして、あの戦いを逃げ出すようなヤツには、見えないんだが…」 「上官命令でした」   バッシュは、二人の子供を掬い上げた。   「行きましょう」   小隊長は、小さなため息をついて、バッシュの前を歩く。 死にたかっただろうに、死ねなかった子供は、空ろな瞳を持ってしまった。   「あい…がとう」 「お兄さん、ありがとう」   抱き上げられた二人の子供は、両脇からバッシュの首にぎゅっと抱きつく。 振り向いた小隊長が見たものは、バッシュの呆然とした顔。   「お…にいたん、おれい。これ、あげる」   小さな子供が、赤い花をバッシュの鎧の隙間に入れる。   「お兄さんに、似合うね」 「そ…うか?」 「うん」   子供達は、嬉しそうに笑い声をあげながら、もう一度バッシュにしがみ付く。   「どう…したの?」 「いらない…?」   子供達は、自分の顔にかかる雫に驚いて見上げ、視界に入ったものに驚いた。 小さな手が、バッシュの頬を触る。   「はな、いや?」 「い…いや」   もう一人の子供が、慌ててポケットを探し、小さな布で、バッシュの顔を拭く。   「どこか痛いの?」 「痛く…ない」   バッシュの瞳から、涙が溢れ、頬を濡らしていく。   「こわいの?」 「悲しいの?」   二人の子供が、必死になって、バッシュの頬を撫でる。   「いいや…いいや…」   バッシュの顔に、笑みが浮かんでいた。   「嬉し…かったんだ」 「そっか」 「はな、すき」 「あぁ…」 「もっと、いる?」   小さな子供が、にっこり笑って言う。   「いや、これがいい。もう、こんな所に一人で来てはダメだぞ」 「うん、ヴァン、すっごく心配したんだから」 「ご…めんなさい」 「もうしないな?」 「うん!」   バッシュは、二人の子供をぎゅっと抱きしめた。 再び、子供の笑い声があがる。   「バッシュ、行くぞ」 「は…い」   小隊長は、楽しそうに笑って、バッシュを促す。   「しょ、小隊長!」 「やっぱり、お前は可愛いな」   小隊長は、ぐりぐりとバッシュの頭を撫でた後、再び歩き出す。   「わっ」 「いいこ、いいこ」   小さな手が、バッシュの髪の毛を撫でる。   「バッシュは、いい子だなぁ」   小隊長の笑いは止まらない。   「お兄さん」   小さな唇が、バッシュの頬にチュと音をたてキスをする。   「あー、ぼくもぉ」 「え?あ…こ、…こら……」 「俺も、チューしてやろうか?」 「小隊長!」   怒鳴った後、バッシュは走り出す。 子供達は、嬉しそうに「きゃー」と叫んで、バッシュにしがみつく。 バッシュの涙は止まっていた。   (守ります…今度こそ…絶対…)   心の中で逝ってしまっただろう上官に、心から誓った。                  ◆◇◆                 ゆっくりと瞼を上げる。 視界に入るのは、見慣れた天井のはずが、違う。 右手が暖かい。 背中が暖かい 目の前には、穏やかに呼吸している胸。   (……確かに手を繋いで寝たが……何で?)   バッシュの体は、バルフレアの手によって抱きこまれていた。   (バルフレア?)   この間見た夢と、今朝見た夢で、バッシュの心は変化していた。 二日間で見た35年分の夢。 自分と、夢の中の自分の境界が、酷く薄くなったように感じる。 今、自分が彼を見て思う感情が、今の自分自身の感情のように感じて戸惑う。   (う……まずい…)   朝だからという事を考慮しても、免れそうにない体の変化。   「………ん」 (やばいっ!)   必死になって目を閉じる。 一生懸命、呼吸をゆっくりにする。 なのに、顔に感じる強い視線が、心臓を煩くさせ、呼吸が苦しい。   「おい」   怖くて、目があけられない。   「バッシュ」   その声に心臓が跳ねる。   「起きろよ」   彼に触れている体全てが、発火しそうぐらい、熱い。   「……バル…フレア」   体を揺らされては、起きざるえない。 恐る恐る目を開いたら、目の前がバルフレアになっていた。   「バッ…」 「おはよう」 「お、おはよう」 「あのよ、何で、こんな状況なんだ?」   バッシュは、もう一度状況を確認する。目の前にバルフレアの顔。背中に回っているのは、彼の腕と手のひら。もう一つの彼の手と自分の手は繋いだまま。そして、絡み合っている互いの足。   「お、お前……だ、抱き癖が……あるのか?」   そんな台詞を言うのが精一杯。   「いや……」   バルフレアの視線は、バッシュから外れ、記憶を探っている様子。   「…無いはずだが」 「さ、寒かったのか?」 「……そうだったか?」   バッシュは、出来れば離れて欲しいと願っていた。心の底では、ずっとこのままで居たいと思っていたが、今のバルフレアに、自分の体の変化を知られたくない。朝だと言って誤魔化しきれるか、自信がまったく無い。   「あ…あの……」   バルフレアが、まじまじとバッシュと繋いでいる自分の左手を見て、そしてそれを持ち上げる。   「これ、凄いな」 「は?」 「夢を見る暇も無かったみたいだ」 「それは、良かった」   彼を最初に見た、普通の顔色に戻っている事に気づき、バッシュはにっこり笑う。   「お、おう…」 「また、夢見が悪かったら、いつでも言ってくれ。無料で貸し出しをするぞ」 「あ、あぁ……、あ、シャワーを借りていいか?」   その言葉にバッシュは、慌てて部屋の時計を見る。出社2時間前。これなら、自分をシャワーを浴びれると、ほっとする。   「時間は十分にあるな。途中で朝食も食べれる」 「いや、俺は一端家に帰らせてもらう。流石に二日も同じ服を着ていたくない」 「そうか…だが、お前もちゃんと朝食を食べるんだぞ。折角、顔色が良くなったんだからな」 「あぁ、分かったよ」   そう言ってバルフレアは立ち上がり、「シャワーは、台所にある扉の中だ」という声を背中で聞きながら、部屋を出て行った。   (何だ……?)   体から離れる温もり。引き戻す為に手が伸びそうになった。   (これは……俺の感情か?)   バッシュは、体を起こし、自分の夢を振り返る。   (あの将軍と呼ばれた自分の人生)   バッシュは、ため息をつく。 今まで、自分の直感を信じて生きてきた。 綺麗に消えてしまった焦燥感。 バルフレアという存在を知ってから、現れた夢。 そして、今、彼を手に入れたいと願っている心。   「ここまできて、自分の直感を信じなかったら、今の自分を否定するようなもんだ……」   立ち上がり、慌ててズボンだけ履く。上はパジャマを着たまま。これで、やばい下半身をなんとか隠せるだろうと、鏡で確認してから、台所へ向かう。 歯ブラシを咥え、磨きながら予備の歯ブラシを出した。   「バッシュ」   風呂場の扉が開いて、バルフレアが顔を出す。 それを見て、慌てて傍にある扉を開き、取り出したバスタオルを渡す。   「悪い」 「もご…」   口の中が泡だらけで、言葉にならない。   「ふぁららも、ふぃれいらんらな」 「何言ってんだ?」   分かったら、殴られるだろうなと思いながら、バッシュはバルフレアの体を見ていた。顔も綺麗だったが、彼は全部が綺麗だと思いながら、眺め続ける。   「……お前、変態か?」 「もご?」   にっこりと穏やかに微笑むバッシュを見て、バルフレアは脱力する。最初に会った時に、変なヤツというレッテルを貼った事を思い出した。   「ひょれ」   バルフレアの前に現れる歯ブラシ。   「いいのか?家に帰ってから歯を磨くから、構わないぞ」 「ふぃふぃから」 「……分かった」   ついでに、歯磨き粉も渡してから、バッシュはうがいをする。下半身、前面部分が、激しくやばい。見続けていたかったけど、危険すぎる。   「脱いだ下着をもう一度着るのがなぁ……」 「俺のを着るか?」 「サイズが合わないだろ」 「下着だけなら、大丈夫だ」   口をゆすいだバッシュは、部屋に戻り、タンスから下着を取り出す。   「これも、封を切ってない」 「構わない。気が向いたら、同じようなのを買ってきてくれ」   バルフレアは、自分の脱いだ下着と、パッケージに包まれた下着を暫し見比べて、「分かった」言った後、梱包をはがす。   「だから、一緒に朝食を取ろう」 「は?」 「お前が、ちゃんと食べたのを見ないと心配だ」   バルフレアの眉間に皺が寄る。   「………安心しな。今日は夢も見ずに、ちゃんと寝れたって言っただろ?」 「だが…」 「服も着替えたいんだよ」   流石に自分のを貸すとは言えない。バッシュとバルフレアの体型は、違いすぎた。   「とりあえず、下着と、歯ブラシを貰っておく」 「あぁ」   バルフレアは、てきぱきと服に着替え、歯磨きをする。   「さてと」   それを同じ台所で、ずっと見ていたバッシュは、彼のカバンを渡す。   「サンキュ」   そのまま、玄関で靴を履いたバルフレアは、「また、あとでな」と言って、出て行った。   「やばかった…」   バッシュは、ドアを閉めた後、そのまま座り込んで、体の中に溜まった空気を一気に吐き出した。 閉じられたドアを見る。寂しいと思っている自分に、苦笑した。     to be continued…     08.05.23 砂海
あははぁ〜ん。バッシュへの愛がバルフレアに比べて少ない為、書くのが面倒に<おいおい 最初あれだけ好きだったのにねぇ。や、今でも好きだけど。あれか?中の人のへたれさ加減を聞きすぎたか?   ついでに、暗くなるのをどうにかして……あぁ、全部書き直そうかと思っちゃったヨ…(T^T) 子供達を書くとき、上官やら、小隊長やらも、名前をどうしようか、毎回悩む(--;) オリジナルなら、無条件で名前をつけるんですけど、流石に二次で、名前を付けるのは、嫌だったんでー、結局子供達は、……適当というか、ヴァンとレックス?<?を付けたり。 大人は、肩書きで通しましたf(^-^;)書きづらかったわー。