バルフレアは、風呂場の扉を足で閉め、濡れた頭を拭きながら、ベッドに腰を下ろした。 そこに、静かなノックの音。目の端で時計を見、随分早いなと思いながら、バルフレアは扉を開けた。 「ノォア」 バルフレアの目の前には、きっちり上下とも寝巻きを着ているノア。 「………こんばんわ」 バルフレアの声音に全ての意識を奪われたノアは、何と言って答えたらいいか、真っ白な頭の中を検索中。そして、ようやく思いついたは、無難な挨拶。 その姿に笑みを浮かべながら、バルフレアはノアを部屋に招きいれた。 「好きな所に座りな」 部屋の中には、双子の部屋より広い分その大半を占めた巨大なベッドと、同じ机と本棚、クロゼット。ノアやバッシュの部屋とおおまかには、変わらない。 ノアは、椅子は、バルフレアが座るだろうと考え、直ぐにベッドの上に座る。 バルフレアは、それの意味する事を分かってないだろうなと思いながら、椅子を逆向きに座り、背もたれに腕を乗せた。 「そんなに早く俺と寝たかったのか?」 言葉のような色気を一切感じさせないノアに、意地悪くバルフレアは言う。 ノアは、頬を赤く染め、うろたえる。 「ち、ちがっ……、あ、あれがある部屋に、居たくなくて……」 「あ、あぁ、そりゃぁ……そうだな」 あまりのノアの、情けない表情に、バルフレアは、己の言葉を撤回する。確かに、あのブツがある部屋にノアが居るのは、可哀相すぎた。 「分かった。あれは、俺が適当な所から、送り返してやる。その方が、あいつと接触が減って安全だろ? お前の部下になんか頼んだら、違うモノを押し付けられるぞ」 その可能性は、おおいに在り得ると納得したノアは、手間をかける事をすまないと思いながらも、その素晴らしい案に頷く。 「明日、お前が、動けるようになったら、ここにでも運んでおいてくれ」 「動けなくなる?」 バルフレアの言葉に、ノアの眉間に皺が寄る。現在、風邪気味でもなければ、怪我もない。これから病気になる予定も無い。そんな心の声がそのまま不思議そうな表情に現われる。 「ノォア……、お前は、この部屋に何しに来たんだ?まさか、あれから逃げる為だけか?」 バルフレアは、言葉に笑みを含みながらノアを見つめている。 「あ………あ、いや、その……、………」 ノアは、首筋まで真っ赤になる。言葉が続かない。 決して、忘れていた訳ではない。ちゃんと風呂場で、それなりの処理もした。だが、風呂場から部屋に戻った時、視界に入ってしまったダンボール箱。その瞬間から、それを見ないよう、必死になって寝巻きに着替え、逃げるように部屋から出ていた。結局、最後に残った意識は、逃げる事。それだけ、あのダンボール箱の威力はノアにとって凄まじすぎだった。 バルフレアは、立ち上がる。 「随分とつれないな」 バルフレアの掌が、ノアの頬に触れる。 「き、麗…」 二人の唇が重なろうとするその時、ノックの音が部屋に響いた。 「残念」 バルフレアはノアの頬に小さなキスを落としてから、離れた。 「っ!」 ノアは、もうこれ以上、どこを赤くしていいか分からない状態。バルフレアは笑いながら、部屋の扉を開けた。 「……バァッシュ」 「遅かったか?」 バッシュは、部屋の中のノアを見つけ、小首を傾げる。 「いいや」 バルフレアは、一歩横に退きバッシュを中へ入れた。その表情は、非常に微妙。 「に、……兄さん………」 バッシュを見たノアは、絶句。そして、強制的に思い出される過去の記憶。『そうだった……兄さんは、こういう人だった……』ノアは、心の中で肩を落とした。 バルフレアは、ある程度想像していた事なので、ノアほど衝撃は無い。実際、旅の間、宿の部屋の中では、こんなものだった。 そして、バッシュは、全裸でスタスタと部屋を横切り、にこにこしながらノアの横に座った。 折角今まで築いた甘いムードとピンク色の空気は、一気に消滅。 もし今ここにブリズが居たら、「おっさん、やり直しっ!」と叫んで、頭抱えながらも退場を命じただろう。 今、エロい空気は、皆無である。 「ノア?」 「兄さん?」 「何で、寝巻きを着ているんだ?」 ノアには、返答不可能。既に、バルフレアに説明しただけで、十分に精神力を消費した。 だが、バッシュにそんな事が分かるはずもない。「必要ないだろ?」と言いながら、バッシュは手を伸ばし、ノアの寝巻きのボタンを外し始めた。 「にっ、…」 ノアが展開についていけなくて硬直しても、バッシュは知らん顔。というより、そんなノアに気づいていない。 そしてバルフレアは、再び座った椅子から、のんびりと楽しい光景を堪能している。 「ちょっ、に、兄さんっ!!」 既に、ノアの上半身は脱がされている。必死になって声帯を操っても、時既に遅し。 「ノアっ!」 そこに、今までの雰囲気を払拭するかのようなバッシュの声。 「何だ、これは?」 バッシュの指が、ノアの体を辿る。 ノアは、それで、バッシュが何を問いていたのかを理解し、苦笑を浮かべた。 「帝国に捕まった時に、兄さんの体にもあっただろう?」 バッシュの指が辿っていたのは、ノアの体に刻まれた傷。それは、剣の跡だけでは無かった。 「っ…」 捕らえたバッシュを検分し、鳥かごに閉じ込めたのは、ノア。その時に、バッシュの体に刻まれた幾多の傷も見ていた。 「あれを見た時、ダルマスカも、アルケイディアと変わらんのだなと思った」 「……あぁ、余所者に親切な軍は無いな」 ノアは、滅ぼされた国の者のクセにと。バッシュは、国を捨て逃げてきた者のクセにと。二人共、剣の腕が良かっただけに、そのやっかみは、酷いものだった。 「だが、お前らは、強かった。だから、そんなものは、気にするものでもなかったはずだろ?」 バルフレアは立ち上がり、ノアの前に行く。 二人は、不思議そうにバルフレアを見上げた。 「俺の場合、銃は、試射するのに必要だったから、かなりの時間をかけてきたんだが、剣は、貴族が嗜みとして習う最低限のモノだったんでな」 バルフレアの腕がノアの胸に伸び、軽く押す。ノアは、抵抗を一切せずに、そのままベッドに倒れた。 「しかも途中入隊だ」 バルフレアは、ノアの足をすくい、手際よく下半身に纏っていたものを剥ぐ。 「加えて、お貴族様で世間知らずのボンボンときちゃぁなぁ。面白い環境だったぜ」 ノアは、自分の状況よりも、バルフレアの言葉の意味に、声が出なくなる。バッシュは、別に何の感慨も無い声音で伝えられた内容に、動揺する。 二人は、軍というものが、どういうものか、嫌というほど知っていた。力の無い、親の七光りの貴族が入隊したら、どういう扱いを受けるかも想像が付く。 「なんつー顔をしてんだよ」 バルフレアの指が、ノアの額と、バッシュの口元を弾く。 「一応お貴族様だからな。自分に力が無くても、親には力がある。あからさまにバレるような、酷い目にはあわなかったぜ」 バルフレアは、指を自分に伸ばしてきたノアの手首を取り、横向きにした。 「俺には、お前達みたいに、しっかりと分かるような傷は無い。だからな、俺が服を脱いでも気にするなよ」 バルフレアは、ベッドに備えてある引き出しを開け、瓶を取り出す。 そんなバルフレアを見ながら二人は、それが一緒に風呂に入らなかった理由だったのかと、ようやく理解していた。子供の頃、決してバルフレアは、一緒に風呂へ入ろうとはしなかった。風呂ぐらいゆっくりさせろと、彼は必ず一人で入った。旅の間、あれだけ一緒に過していたバッシュでさえも、彼の素肌を知らない。 それは、二人に気を遣わせまいとした彼からの配慮。 「ま、軍に居たやつなんて、どんな立場でも似た様なもんだ」 ノアの腕が伸び、バルフレアの首にしがみ付く。バッシュの腕が伸び、バルフレアの背後から首にしがみ付く。 「おいおい」 「俺達は、もう子供じゃないから」 「あぁ、綺麗がここに居るだけで、いいから」 真ん中に居るバルフレアは、自分の両肩にある頭をポンポンと同じように叩き、優しく腕を解いた。その後、ノアを元の場所に横たえる。 「ありがとうな」 ノアとバッシュに触れる手も視線も、全てが一層優しく甘やかに。そのバルフレアの手はバッシュの首に腕を絡め、ノアとは頭を逆向きに横たえた。 向かい合っている視線の先は、お互いの下肢。ノアは、うろたえてバルフレアに視線を移し、バッシュは、不思議そうにバルフレアを見上げていた。 「さて、と、残念な事に、俺は一人しか居ない。だから、剣の練習していた時と同じな」 双子は、にっこりと、ほっこりと笑い頷く。 剣の練習は、気配と流れを読む事を重点として行われた。視線だけで教師の意図を汲む。相手の気の流れで、剣の動きを読む。それを徹底的に仕込まれた。 「強いヤツが前に立つと、ゾクゾクしないか?相手の技を全て晒してやりたいと思わないか?その為に、自分の持っている全てを曝け出し挑発する。 抱き合うのも同じだ」 二人の前に、艶やかに色を含んだ笑みと小粋なウィンク一つ。それに見惚れる。 「楽しもうな」 バルフレアは、手に取った瓶の蓋を開け、バッシュの掌に中身を零し、目配せをした。 「ノォア」 バルフレアだけを見ていたノアの視界は、近づいてくる像を結べなくなってきた。声を受け入れた鼓膜の震えが、体全体にまわってくる。 「き……」 呼びかけは、最後まで音に出来ない。 ノアは、ねっとりと絡み付いてきたバルフレアの舌が与えてくる熱に酔った。必死になって自分の舌を伸ばし、その熱を貪る。 「ん、んんっ?!」 下肢に最近知った冷たさと、滑りを持った液体が流れる感触。口の中で、一層情熱的に動くバルフレアの舌。一瞬散らされたノアの意識は、再びバルフレアに向かう。 「………っ」 ノアの体が、小さく跳ねた。兄弟にさえ晒す事の無い場所が、その兄によって無造作に開けられ、指が入り込んできていた。 だが、その間もバルフレアの口付けは、止まない。唇が離れようとすると、追いかけてきて、再び甘苦しい味でいっぱいにされる。 二人から与えられるものに、ノアは動揺しながらも溺れかけていた。 一人で処理を行った時、それは、処理でしか無かった。確かに、本に書いてあったとおり、体が痺れるような場所が自分の中にあった。だが、今、自分が受けているような甘いものではなく、それは単なる刺激。そして、そんなものは、処理には必要無かったから、意識して触ろうともしなかった。 なのに、今自分の中にあるバッシュの指が、あからさまな快楽を自分に与えている。そのあまりの違いに、構える間も余裕も一切無く受け入れるはめになった。 その時、唇が開放された。 「はああああっ……んっ……………」 開放された口が寂しくて、ノアの手と舌がバルフレアに伸びる。その伸びた舌を軽くあま噛みされ、口の中で、「順番な」と甘い声が響く。 未だ下肢から広がってくる熱は、止まない。体の中で、バッシュの指が動いている。なのに、バルフレアが離れた、その事だけで、最初に受けた衝撃のような快楽は去っていってしまった。今、ノアの体の中に残っているのは、あました熱と、じくじくとした甘い痺れ。だが、それは決して無視出来るものではなく、ノアの口から甘い吐息が漏れる。 「ふっ……くぅっ……」 その吐息に、バッシュの甘い声が重なった。彼の中には、バルフレアの長い指。 バッシュは、最初、自分の手に落ちたジェルの匂いが、ブリズに渡されたものと同じ匂いだという事に気づいていた。媚薬入りのジェル。それは、バルフレアが、初めて受け入れる自分達を思いやって用意したのだろうと思い、笑みを漏らす。 そして、バルフレアの目配せの意味を正しく受け取ったバッシュは、ノアに手を伸ばした。 まさか、自分の弟とこんな状態になるとは思いもよらなかったが、バッシュにとってノアは、敵対していた時でさえ、手を伸ばしたかった大切な弟。子供の頃、ずっと一緒に居る事が当たり前だった相手。生きていた事を捕らえられて初めて知り、どれだけ安堵し、幸せだと思った事か。もし、拘束されてなかったら、間違いなく抱きしめていた。たとえ、自分を罠にかけた相手だったとしても、そんな事は、バッシュにとって関係無かった。 だからこそ、嫌悪感など一切無く、ただ、ノアが怖がらないように、バッシュにしては慎重に丁寧に解していた。 そこに突然、自分の指が与えているものが、自分の中に現われる。驚いて振り向いた先に、バルフレアが居て甘い笑みを浮かべていた。それだけで、ズクリと下半身に熱が集まり重くなる。 「バァッシュ」 バッシュは、その声音に笑みに魅了され動けなくなる。バルフレアの掌が頬に触れた時、そこから激しい熱が生まれる。その、あまりの熱さに、火傷するのかと思った。それでも、その先の口付けに比べたら、比較出来るものではなく。バッシュは、熱の感じ方の狂いに、動揺する。口の中で蠢く熱と、体の中に入り込んだ熱が、暴走を始めた。 僅かに残った意識が必死になってノアの中に入っている指を動かそうとするが、それは、今までと違い、酷く乱れた。その指が、不用意にノアの激しい快楽を生む場所に強く当たり、ノアの口から甘い声があがる。だが、バッシュは、それにさえも気づけないほど、声にならない吐息をバルフレアの口の中に漏らしていた。 乱れたバッシュの指の動きに、ノアの意識が少し周りに移る。滲んだ視界には、バルフレアの横顔とバッシュの赤くなった頬。そして、少し下に視線を移すと蜜を滴らせているバッシュの熱い塊。ノアは、バルフレアをもう一度見る。その小さな動きを気づくとは思わなかったのに、バルフレアの目がうっすら開き、ノアに視線を流した。 そう、剣の稽古の時と同じ、彼は、どんな些細な動きも見逃さなかったほど、気配を読む事に長けていた。そして、自分に視線だけで指示を出す。今も。 自然とノアの舌がバッシュの熱に伸びる。何の感情も無しに、固まった熱に舌を絡める。ノアの意識は、今や全てバルフレアに向かっていた。他に何も無かった。 ゆっくりと口を開く。そして、それを飲み込んだ。 「ふっ……んんっ……」 バルフレアの口の中で、くぐもったバッシュの声が漏れる。 「ん、んんっ……」 ノアは、下肢で動いている指も、舌に絡んでいる熱も、バッシュの声も、バルフレアの視線が加わっただけで、全て熱に変え、甘い息を漏らす。目は閉じない。バルフレアだけを見る。熱があがる。重くなる。 それは、知らない快楽。ノアは、素直にそれに浸った。 「ふ…ぁ………」 バッシュの吐息が開放され、声が漏れた。 無意識に伸びたバッシュの手を掴み、バルフレアは指先にキスをする。それだけでゾクリとする指先に、バッシュは、また少し吐息を漏らす。真っ直ぐに見上げた先に、酷く甘い笑み。指先の痺れが治まらない。 「いくらでも時間はあるだろ?」 バルフレアの指が、ゆっくりとバッシュの中から抜けていく。その刺激に、バッシュが小さく呻いた。 ずっとバルフレアを見ていたノアは、チラリと自分を視界に入れた彼の意図を受け、口を開放し、指をバッシュの体の中へ伸ばす。ジェルで濡れそぼり、うっすらと赤くなったそこは、つぷりと簡単にノアの指を受け入れた。バッシュの口から、吐息が漏れる。 「あんまり、俺を煽るなよ」 バルフレアは立ち上がり、ベッド脇を残して全ての明かりを消す。その中で、二人を眺めながら、ゆっくりと寝巻きを脱いだ。 その姿を見ただけで、ノアのバッシュの口から吐息が漏れる。逆光の中で浮かび上がる姿態に、視線が離れない。同じように、バルフレアも二人を見つめていたのには、気づかない。ただ、無意識に二人の喉が鳴った。 「俺は、好きなように、お前達を堪能するから、お前達も好きにしな」 ノアは小さく頷き。バッシュは、「あぁ」と小さく答えた。 そして、まるで剣の稽古と同じように、だが、酷く甘い空気を湛えて、バルフレアが二人の快楽の一つ一つを引き出していった。 首筋を甘噛みされて、ノアの声が漏れる。 胸の小さく尖った実をつままれ、こすられ、舐められて、バッシュの体が跳ねる。 背中を辿る舌に、ノアの体が弓なりになる。 耳の中を犯す甘い吐息と舌にバッシュの声があがる。 集まった熱に舌を這わせると、くぐもった声がノアの口元から漏れる。 膨れ固くなった袋を口に含むと、バッシュは一層切ない声をあげた。 二人は、一つ一つ覚えた事を、お互いの体にも加えていく。そして、バルフレアにも。 暗い部屋でも、バルフレアの背中に刻まれた多くの古い傷は、見失いようが無い。ノアの舌が、バッシュの指が、癒すようにバルフレアの背中を辿った。 弾けた熱と口から漏れた雫と、涙で、シーツは濡れそぼっている。 快楽に溺れ淫らに動く体で、ベッドの上は、酷く乱れている。 すえた匂いと、止まらない嬌声と甘い声で、部屋が満たされていく。 一段と高いバッシュの声があがった。 バッシュの視界は、真っ白に染まる。 呼吸をしているかどうかも分からない。 体の中に入ろうとする、指とは比較にならないほどの質量を持った熱い塊に、全てが持って行かれた。 バッシュは、バルフレアから離れようとする体を必死に抑え、彼にしがみ付く。だが、それによって角度が変わった熱は、体の深い場所を貫いた。 バルフレアの膝の上で、バッシュの手が空を泳ぎ背中が弓なりになる。 「ああああっ………っ」 バッシュの口から零れたのは、苦痛ではなく甘い嬌声。執拗にジェルを塗りこめられた場所は、痛みを全て快楽に変換した。 そして、背後にまわったノアは、バッシュの体を抱きしめ、ぼたぼたと蜜を零している熱に触れていた。 二人の与えてくる愉悦にバッシュは、素直に溺れる。 最初から、声を抑える事もしなかった。 ブリズの時と違い、抑える必要など一切無い二人。突き進むように、与えられた快楽に溺れ、声をあげ、体を揺らす。バッシュは、気持ちが良くて、気持ちが良すぎて、酷く幸せだった。 「バァッシュ」 「ふ、あっ……、き、れい…」 「あんまり、突っ走るな、よ」 バッシュの首が横に揺れる。 「綺麗、仕方がな、い。やっと、手に入れたのだか、ら」 バッシュの代わりにノアが、甘い声で答える。 「俺をか?違うだ、ろ?俺が、お前達を、手に、入れたん、だ。空賊は、奪われる訳には、いかないんで、ね」 「それでも、俺達が、手に、入れた」 「そうだ、…な」 ノアとバッシュの言葉にバルフレアは、一瞬動きを止め、笑みを浮かべた。 「お前達、だからな。仕方が、ないか」 バルフレアは、バッシュの背後に居るノアの顔を引き寄せ、小さな音をたて、口付ける。子供に与えるようなキスは、直ぐに離れバッシュにも同じように口付けた。 「俺は、お前達のものだよ」 その言葉に、バッシュの体は、バルフレアの熱を締め付ける。 「っ……お強請りか、よ?」 「あ、あぁ……もっと、だ…き、麗………俺、達は、欲張り、だ、から、な……」 バルフレアは口の端をあげ、繋がったまま、バッシュの体をベッドに倒した。 その動きに、バッシュの口から、高い声があがる。そして、その声が止まらなくなった。叩きつけるように、快楽を送られてくる。その行為を妨げないよう、ノアの手が、バッシュの集まりすぎて膨張した熱をこすりあげる。 「ああああっ…はっ…も、っと……っあ…」 バッシュの抱えられた膝の内側に力が入り、足の指が折り畳まれた。 「きっ…ああっ……き、麗……っ……」 「達きたいか?達な」 熱をこすりあげていたノアの手にバルフレアの手が重なる。自分の熱をバッシュの奥深くまで打ちつけながら、バッシュの蜜を吐き続けている口に親指の腹で強く擦った。 バッシュの口から声にならない嬌声と雫がぼたぼたと垂れる。あまりの快楽に、目を開いているのにも関わらず、視界は何も映さない。頭が快楽以外のものを受け入れない。 その真っ白な視界に、二つのヘーゼルグリーンの光を見つける。滲んだ視界に、一番欲しかった宝物。シーツに絡んでいた指を解き、宝物に手を伸ばす。そのまましがみ付いた。 「はぁっ…、あ、あ、ああぁっ!!」 バッシュの熱が弾けた。 腕の中にバルフレアの熱を、背中にノアの熱を感じながら、快楽より幸せに酔いながら、バッシュは蜜をダラダラと流した。 「っ……俺を、置いて、いく、なよ」 あまりの締め付けに、バルフレアは呻く。 だが、動きは止めない。達ったばかりのバッシュを抱え、一心に同じ場所へと向かう。 再びあがる、バッシュの淫らな声。達ったばかりの体に過度の快楽が全身に回る。既にしがみつく力も腕になく、震える手で必死になってバルフレアの腕の掴んだ。 「はっ…、あ、あ、あ、あ、ああああっ」 「くっ……ぅ……」 バッシュは、繋がってから二度目の。バルフレアは、初めての熱をバッシュの中へ吐き出した。 達ったばかりの、けだるい体をおこし、バルフレアは、バッシュの顔を覗き込む。 「バァッシュ」 熱い吐息しか出ない口元を笑みに変え、バッシュはのろのろとバルフレアを見上げた。 「将軍様なんだから、これしきの事何でもないだろ?」 ほんの少しだけバッシュの首が傾く。 「ノアが待っているぞ」 ぼんやりしていた目が、しっかりと開いた。 「い、いや……、お、俺は……」 自分のしていた事をバッシュにやられては、どうなってしまうか分からない。 ノアは、真っ赤になってバッシュを抑える。 「だめだ、ノォア。お母様が言ってただろ?平等に、だ」 ノアは、声も出ずに首を横に振る。空気に呑まれ、自分としては、かなり大胆な事をしたと思う。思うが、今、見ていた事を自分が出来るほどじゃない。 こんな時は、平等じゃなくていいと必死になって思う。薬と同じじゃないかと心の中で叫ぶ。人にはそれぞれ、適量というのがあるんだ!と、声にならない声が必死になって訴えた。 だが、そんなノアの体は、今まで焦らされていたと訴えるように、胸には真っ赤に尖った二つの実がゆれ、下半身は熱を集め、蜜をだらだらと滴らせている。 バルフレアは、そんなノアを見ながら、ゆっくりとバッシュから離れた。 「ふっ…ぅ……」 バッシュの口から甘い吐息が漏れる。バルフレアは、その口元に小さなキスを落とし、ノアに向き直った。 「ノォア」 「綺……麗」 その声を聞いただけで、ノアの胸にある二つの赤い尖りは、一層立ち上がり、下肢に集まった熱は、ぼたりと蜜をシーツに零す。 ノアは、ずっとバルフレアを見ていた。バルフレアも、バッシュと繋がりながら何度もノアに視線を送った。それだけで、ノアの体中の熱が自然と下肢に溜まる。既に重いと感じるほど。 「俺は、お前に全部見せているぜ。お前は、嫌なのか?」 そんな風に甘い声音で囁かれたら、ノアは反論の一つも出来ない。 「全部、俺に明け渡せ」 まるでその言葉を待っていたかのようにノアは、自然と頷いた。 「さっきみたいに、声を抑えるなよ」 「分かった…」 「三人で、気持ちよくなろうな」 バルフレアの唇が、ノアの返事を受け止める。続く甘い吐息も。 それだけで、ノアの熱が弾けた。体が震える。閉じた視界が眩暈のように揺れる。バッシュと同じように、ノアも幸せを快楽と共に噛み締めていた。 「は………ぁ…」 「これからだぞ」 「あ、あぁ……」 バルフレアの掌がゆっくりとノアの顔を辿る。それにうっとりと体重を預ける。 「ゆっくりと息を吐くんだ」 まるで操られているかのように、ノアは耳に入る言葉に従う。 「くっ………ぅ………」 ずっと煽られていた体に、待っていた熱い熱を受け止める。ノアは、もっと深く受け入れたくて、足をバルフレアの腰に絡めた。 「はっ…あ、あ、ああああああっ!」 ジェルで濡れそぼった蕾は、楽にバルフレアの熱を受け入れる。奥まで入って来ただけで、ノアは、また熱を弾けそうになった。 「くぅっ……ふっ、あ、ああああぁっ……」 それを、バッシュの伸ばした掌が押し留める。指が熱の付け根を握り、口が熱を飲み込んだ。 バルフレアは、バッシュが動きやすいように、ノアの腿を抱え、更に奥へと熱を進ませる。 ノアの思考は、千切れ千切れの断片になり、二人が与えてくる快楽だけを追っていた。 「はぁっ、…あ……」 声を抑える理性など、もう無い。 ノアの目が捕らえるのは、バルフレアの熱い瞳だけ。それが繋がった場所に刺激を与えるかのように、熱い痺れを送り、バルフレアを締め付ける。 「動くぞ」 その言葉に、ノアは答えようとしたが、それは、嬌声でしかなかった。 立て続けに与えられる快楽。自分で制御出来ない体。それでも、必死になって、バルフレアの瞳を滲んだ視界で見続けていた。 ノアにとって、直接的ではないが、最高の快楽。バルフレアが自分を見ている事が、体を震わせ、声を出させる。 バルフレアの瞳を近くで見たかった。必死になって手を伸ばす。力をかき集めて、バルフレアにしがみ付く。 その勢いで、バッシュの口から、ノアの熱が離れた。バッシュは、ノアが自分の時にやっていたように、塞き止めるのを止め、熱を吐き出させるように掌を動かす事に方針を変える。 溢れてくる、白濁した蜜。既に何度も吐き出した熱は、勢いがない。それでも、蜜を吐き出し続ける。バルフレアがノアを貫く度に、ごぼりと音をたてるかのように、蜜が溢れ出る。 それが、ノアの口から、甘い声を止む事なく零れさせていた。 「ノォア」 「き……はぁ、あ、…れ、い……キ、ス……ふああっ……」 ノアの望みどおり、バルフレアはノアの唇をふさぐ。 「そん、なに、しがみ、付く、な」 口をあけると嬌声しか出ないノアは、首を横に振って意思を伝える。 「仕方が、無い、な」 バルフレアは、ノアを抱えて起き上がり、繋がったまま、自分の上に乗せる。 「これ、なら、いい、だろ?」 ノアは、答えたくても答えられなかった。一層深く貫かれた体は、弓なりに反り、止まらなくなった蜜は、だらだらと流れ続けた。 「ノォア、協力しろ、よ」 バルフレアの手がノアの腰を掴み揺らす。 ノアは、必死になって体を動かそうとするが、止まない快楽に跳ねるだけ。 バッシュが背後からノアを抱きしめた。バッシュの手は、ノアの胸の尖りをつまみながら、ノアの動きをサポートする。 「ああっ、あ、……ふ、はあああああっ…」 ノアは、二人が与えてくるものに、全てを委ねた。 「ノォア」 ノアは、滲んだバルフレアを見続ける。 「一緒に、達こう、な」 まるで今までのものが、凪だと思えるような激しい快楽の波に襲われる。 ノアは、二人に揺らされるまま、残った蜜を全部吐き出し、体の中にバルフレアの熱を全て受け入れた。 ・・・‥‥……━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━……‥‥・・・ あれからバルフレアは、一人づつ風呂に入れ、新しいシーツに取り替えたベッドで、三人固まって寝た。 数時間は、寝たのだろう。 カーテン越しでも分かる、明るい日差し。 バルフレアは、ゆっくりと起き上がり、両脇に寝ている二人の恋人を見た。 (いけいけな恋人が一人) バッシュが、突き進むのは、分かっていた。だが、バルフレアは、もっと健康的なものだろうと思っていた。それが良い意味で覆される。淫蕩で快楽に溺れる表情は、酷く淫らでそそられた。 (清楚な恋人が一人) バルフレアは、最後までノアが声を抑えると思っていた。それが、素直に自分の言う事に従い、繋がってからは、徐々に乱れていく。その過程にゾクリと背中が震えた。 (随分と贅沢だな) バルフレアは、バッシュの口元に小さくキスを落とした。 「ん……?」 「おはよう、バッシュ」 ノアの口元にも、同じように小さなキス。 ゆっくりとノアの瞳が開く。 「おはよう、ノア」 バッシュは、ほんわかと笑みを顔に乗せ、ノアは、眩しげにバルフレアを見上げた。 「おはよう、綺麗」 「おはよ……っ?!」 挨拶をしながら起き上がろうとしたノアの体が、硬直する。全身のだるさと、あり得ない所からの痛み。 「止めておけ。昨日、どれだけしたと思ってるんだ?そう簡単に、動ける訳ないだろう?」 その言葉を聞いて、バッシュは自分も身じろぎをしてみる。なるほどと納得する。動けないとまではいかないが、体にかなりの苦痛を強いられる。 「食事は、ここで取ろう。持ってくるから待ってな」 バルフレアは、まるで昔に戻ったようだと、口元に笑みを浮かべる。バッシュとノアが子供の頃、一回だけ二人揃って風邪をひいた事があった。その時バルフレアは、薬を与え、食事を一人づつ食べさせた。 「食べさせてやろうか?」 その言葉に、バッシュは嬉しそうに頷き、ノアは真っ赤になって首を横に振る。 「ノアは、口移しの方がいいのか?」 「き、っ………」 絶句したノアの横で、「俺もそれがいい」とバッシュは主張する。 バルフレアが楽しそうに笑う。 「あぁ、分かった。なら、口移ししやすいものを物色してくる。お前らは、大人しく寝ているんだぞ」 バルフレアは、笑いながら部屋を出て行った。 二人は、その背中が消えるのをずっと見ていた。 「ノア」 「……兄さん」 「俺達のものだな」 「あぁ」 二人は、お互いを見て、まるで子供のように笑う。 「なら、約束内容を変えて誓いなおすか?」 「変える?」 「二度としがみ付いて離れないじゃ、違うだろう?」 バッシュは、バルフレアの背中が消えた扉を再び見る。 ノアは、一時目を閉じて、その背中の幻影を見る。 「手に入れたものは、絶対に離さないで、どうだろうか?」 目を開き、真っ直ぐバッシュを見たノアは、少し照れながら言った。 「それはいいな。ならば、それで誓い直そう」 「あぁ」 お互い、寝たまま片手を伸ばし、掌を重ねる。 「手に入れたものは」 「絶対に離さない」 「バッシュ・フォン・ローゼンバーグは誓う」 「ノア・フォン・ローゼンバーグは誓う」 子供の頃は、お互いの剣を重ね、同じように誓った。だが、今は動けない。少し自由になる掌で誓う。お互い剣を持つ手。剣で生きてきた二人にとって大切な利き手。 それを、強く握った。 End
09.10.18 砂海
どなたかエロい台詞の語録集をご存知ないでしょうか? 二人分のエロは、かなりきつぅございました…orz語彙力なさすぎ。なんか、同じような言葉ばっかりに見えてきた……いやいや、もう修正を止めないと一生アップ出来ない。そんな日々でした。 ということで、終わりました。 日記に書いた通り、「あれ?この回で終わりにしなくちゃいけないじゃん」という馬鹿者が、慌ててエンディングに持ち込んだブツです。あぁっ、すみません^^^^ さて、これから三人は、ずっとずっと蜜月だといいと思います。 今後は、バルバシュの回とバルノアの回と別々に書きたい所存です。三人は無理です。あまりにハードルが高すぎました…orz さぁ自分にとって、プロローグが終わりました!(かなり長かった…) これから、存分に三人をいちゃこらさせようと思います!