今日、ドラクロア研究所から届いたダンボール箱一個。その隙間のあちこちから、どす黒い何かが沸いているように見えた。その、あまりの怖さに自分の執務室では開けられなかったブツ。 なにせ、前例がある。先週届いた箱を執務室で開けた時の衝撃は、コラプスを直撃した時の比じゃなかった。例の本を見てしまった時と同じぐらい、いやいや、それ以上の衝撃を自分に与えた。 だからこそ、開けられなかった。まるで爆薬が入っているかのように怯えながら、家に持って帰った。 そして今、ノアは、目の前にある、開けてしまったダンボール箱を見て硬直。心の底のほんの少し冷静な部分が、「執務室で開けなくて良かった〜〜っ」と、涙流している。残りの心の大半は、「嫌ぁぁぁぁぁぁ〜〜〜〜っ!!!!」と滝涙状態で叫んでいた。 先週届いた箱の中身は、市販されているジェル10種と、シドが開発したもの3種。感想を書くための提出用レポート用紙付き。その一枚目には、「感想を詳細に書いて送り返せ シド」と一言。 そして、今日届いた箱の中身は、男性用下半身の一部を模倣した大人のおもちゃ、いわゆるディルドと呼ばれるモノ。その市販品が5種と、シドが開発したもの2種。当然提出用レポート用紙も入っている。その一枚目に何か書いてあるが、それを読む元気、皆無。 ノアは、そんなものが自分の部屋にある事が酷く情けなく、涙が浮かびかけていた。 ◆一夜を過ごす為の長い道のり 「ノア、居るか?」 ノックの音と共に、バッシュの声。 涙は瞬時に引っ込んだ。 「ノア?」 「あ、あ、あ、ちょ、ちょ、ちょっと、待ってくれっ」 ノアは、鍵をかけていて良かったと、これほど思った事は無い。慌てて目の前の忌まわしき箱を閉じ、部屋の片隅に追いやる。本は、既に全部カバーを付けているから安心。数週間前の自分に、ノアは心の中で拍手していた。 「す、すまない……兄さん、お帰り」 やたら憔悴している様子のノアに、心配をしながら、それでも、笑顔で迎えてくれる事に、バッシュは、にっこり笑い「ただいま」と答える。 「入っていいか?」 「あ、あ、あぁ」 「どうした?戦後処理が忙しいのか?それとも、俺の事で何か言われているのか?」 「それは、問題ない」 ノアは、バッシュに椅子を譲り、端にあるダンボール箱を隠すようにベッドの上に座る。 「戦後処理など、普段の業務とさしてかわらんし、兄さんの事も、綺麗の事も、一応俺からは何も引き出せない事は、分かっているようだから……今の所、何も言われてない」 「そうか。それならば良いのだが……酷く顔色が悪い。寝た方がいいぞ」 「い…や……」 「ノアに聞きたい事があったのだが、明日の方が良さそうだな」 バッシュは、「おやすみ」と言いながら立ち上がる。 「兄さん」 「何だ?」 「俺は、別に体調が悪い訳では無い。 ロザリアか?俺の知っている事が、必要なら……」 ノアは、言葉を続けようとしたが、目の前に出されたバッシュの手に遮られる。 「ロザリアは、俺の仕事だろう?お前に頼る訳にはいかんな。 あっちは、奇妙な縁のおかげで順調だから、安心してくれ」 ノアは、安心して、小さく微笑む。バッシュがそう言うのであるなら、間違いは無い。元々それがバッシュの仕事だという事の意味を、ノアは最初から理解していた。だからこそ、今まで、この事について一切口にしかなった。 だが、それ以外で自分に改まって尋ねたいと思う内容が思いつかないノアは、バッシュを不思議そうに見返す。 「本当に元気か?」 「あぁ、今から兄さんと剣の練習をしてもいいぐらい、元気だ」 「それは、いいな。今のお前が、どんな剣を振るのか知りたいし、明日あたりはどうだ?」 「あぁ、俺も、兄さんの剣が見たい。明日は早めに帰ってくるよ」 子供の頃、毎日剣を重ね、その動きでお互いの心の動きを理解していたと言っていい。それぐらい、始終剣を重ねていた。 だが、別れてしまった時は、とっくに剣を合わせていた時間を上回っている。 早く剣を合わせたいと、お互い顔を合わせ笑った。 「なぁ、ノア」 「何だ?」 「ノアの事だから、男同士のセックスの情報は、仕入れているよな?もう、前処理は試してみたか?」 ノアの笑顔が、凍りついた。 「に、兄さん?」 声が、裏返った。 「実は、ロザリアで知り合ったヤツの趣味が、そっちでな。丁度押し倒される側だったものだから、色々教えてもらったぞ。 なぁ、ノア、お前はどうやった?やはり、自分の指か?ジェルは、どんなのを使った?」 ノアの表情が、どんどん沈んでいく。 ノアは、目の前の兄は、こういう人だったと、はっきり思い出していた。自分と違い、羞恥心とは縁遠い性格だった。そして、黙っていても、どんどん突き進んでいく兄を退けないだろうという事も知っている。 ノアは、心の中で泣きながら、本棚を指差した。 「ん?本か?」 「その…一番右端にあるのが、お勧めだそうだ…」 バッシュは、指定された本を手に取り、ページをめくリ始める。 そんな様子をノアは、眺めていた。そして、流石兄さんだ!と思う。顔色一切変化なし。動揺皆無。興味深げに、どんどん読み進めている。 「ノアは、もう読んだのだろう?借りていいか?」 どうか、全部持っていってくれと言いたかったが、言葉にする元気一切無し。ノアは、とりあえず頷いた。 「それで、誰の勧めなんだ?」 「………シド殿」 「何でシドが?」 「………息子の状況を見て、興味を持ったらしい。その本棚にあるのは、全部シド殿から貰ったものだ。それを一週間弱で読み切ったそうだ」 「それは……流石研究者と言えばいいのか?」 「………その言葉に合うのは……」 躊躇いながらもノアは、ベッドの端に追いやったダンボール箱を指差した。あの本の中身を知られたなら、ダンボール箱の中身もたいして変わらない。 「っ………す、凄いな」 一つ目の箱を開け、その中に所狭しと並んでいるジェルとレポート用紙を見て、流石のバッシュも呆然とする。だが、確かに、流石研究者というのは、こういうものだと納得する。そして、二つ目を開けた。 「あ……これ、まずくないか?」 目の前に広がる、大量のディルド。バッシュは、ブリズに注意された事を速攻思い出した。 「ノア、これ、もう使ったか?」 目を見開いたノアは、速攻首を横に振る。声が出ない。「そんなもの使うかぁぁぁぁっ!!」という悲鳴は、心の中でだけ反響。 「これを使うのは、綺麗に確認をした後の方が、いいらしいぞ」 今だ声の出ないノアは、「なぜ?」という言葉を視線に乗せる。 「綺麗が、俺達を抱きたいかどうかも分からんのだが……もし、そういう欲があるなら、これに嫉妬するかもしれないという事だったと思う」 バッシュは、半分快楽に沈んだ理性でブリズの言葉を聞いていた。その中で、あの言葉は、こういう事だと、バッシュは理解している。 「今日、綺麗は、帰ってくる予定なのか?」 「……たぶん。最近は遅いから、もう少し時間がかかるだろう」 なんとか精神を立て直したノアは、この内容なら声が出るとばかりに、ほっとした顔で答えた。 「なら、食事でもして待ってよう。ノアは、もう食べたのか?」 「いや…」 ノアは、情けない顔で、「食べてない」と続ける。 帰ってからやった事は、開けたダンボール箱の中身による精神攻撃で、魂を飛ばしていただけ。 「ロザリアで、美味い食堂を教えてもらってな。いくつか、包んでもらった。 ノアは、好き嫌いは無かったな?」 「あぁ。楽しみだ」 ノアは、あまり中身を見ないようにしながら、ダンボール箱を閉め、ベッドの端に寄せる。とりあえず、食事だけに意識を向け、必死になって体を動かした。 ・・・‥‥……━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━……‥‥・・・ 久しぶりに明るいダイニングルーム。昨日までは、帰ってくる時間がまちまちな二人の家主のせいで、この部屋を使う事が無かった。 今、テーブルの上には、バッシュの持ってきた数々の料理が所狭しと並んでいる。その中で唯一湯気をあげているスープは、ノアが作ったもの。二人は、それを囲みながら、たわいも無い事を話していた。 会話が、唐突に途切れた。二人は、同じ方に視線を一瞬向ける。 「帰ってきたようだな」 「そうだな」 二人は、微かに響く音と揺れでシュトラールの帰還を知り、それぞれ笑みを浮かべる。そして何事も無かったように並べられた料理に視線を戻し、食事を再開した。 そして、その数分後に、ダイニングルームの扉が開いた。 「よぉ、随分と豪勢な食卓だな」 「綺麗、おかえり」 「おかえりなさい」 バルフレアは、それぞれの挨拶に片手をあげて答える。本当ならば、教育上正しい挨拶をすべきなのだが、双子を子供扱いしないと決めてから、元の空賊らしい行動に戻っている。 「ロザリアで、美味しいと勧められた食堂のだ。3人分だと言ったのだが、なぜかこの量になってしまってな。綺麗も、気合入れて食べてくれると助かる」 バルフレアは、一つ一つ確認するかのように皿の上のものを物色する。その手が、皿のいくつかを、端に置きなおした。 「あれは、保存が利く。後は、食べるしかないな」 バルフレアは、双子を前にした椅子を引き、優雅に座る。 「食べた事が、あるのか?」 「ロザリアには、美味い酒があるだろ?」 バルフレアは、楽しそうにウィンクを双子に投げてから、「懐かしいな」と言って食べ始めた。そんなバルフレアには、双子が、ほんの少々赤くなっているのも、少し動きがぎこちなくなったのも気づかない。 一応双子の方も、なんとか、ほんの少しは免疫が出来てきているおかげで、顔色以外は、少々の挙動不審だけで、元の動作に戻れるようになってきている。 だけど、ほんの少し。バッシュは、『いい加減、慣れてもいいのだがな…』と一生懸命食べ、ノアは、『一生慣れないかもしれん…』と、小さく息を吐いた。 「あ」 突然、バッシュが声をあげた。 「ん?」 「綺麗」 バルフレアは、何だとばかりに、バッシュ顔を見て言葉の続きを待つ。 ノアは、フォークを持ったまま、兄の方に視線を向ける。 「俺達とセックスをしたいか?」 ガチャンと派手な音を立て、ノアの手からフォークが落ちた。 バルフレアは、面白そうに口の端をあげた。 「そうだな」 答えるバルフレアの声音は、酷く甘く、艶を含んでいる。だが、目の奥の光は、慎重に二人を見ていた。 「俺は、お前達を抱きたいと思っているが、お前達は、どうしたい?」 その率直な返答に、バッシュはニッコリ笑って返答し、ノアは落ち着こうとして飲んだスープにむせていた。 「俺もノアも、事前準備万端だ。そんなに手間をかけなくても済むと思う」 「なんだ、お前ら、勉強済みかよ」 「綺麗は、俺達を一から仕込みたかったか?」 「剣や勉強の時みたいに、楽しい時間を過ごせるだろ?」 バルフレアとバッシュの会話のBGMに、ノアの咳き。 ノアは、到底この会話に加われる訳もなく、だが、心の中では、『どうして、こんなに、明け透けな会話が出来るっっ〜〜〜!!』と叫んでいる。当然涙付き。 バッシュは、元来こういう率直すぎる性格。年とともに、それに磨きがかかっている。 そしてバルフレアは、小さな二人に対して、分かりやすく話すよう心がけていた後遺症。心の中で、『あー、ノアには、レベルが高い会話だったか?』と一応視界の隅の分かりやすすぎる反応を見て、反省していたりもする。 だが、そんな事を一切気にしない。いや、気づかない男は、どんどん突っ走る。 「余計な事をしたか?」 「いや、別の楽しみを考えるさ」 「そうか」 バルフレアは、満面の笑みのバッシュの横で、気づかれないようため息を吐いているノアを確認している。その表情は俯いて見えないが、耳が真っ赤に染まっていた。 バルフレアは、反応や行動は違うが、意思は同じ様子のノアを見て、昔を思い出す。 無理やりバッシュの意思につき合わされ、唐突に突きつけられた意思に対し、ノアはいつも怒っていた。その理由は、「なぜ、事前説明をしないのか」、「どうして、そういうもっていき方をするのか」のだいたい二つ。バッシュのやる事、意思に対して怒った事は、一切無かった。まるで、言わなくても意思を通わせる方法を知っているかのごとく、二人のそれは一致していた。 「それで、お前らは、どうやって学習した?」 「先輩に教わってな」 ニッコリ笑って即答したのは、当然バッシュ。ノアは、シドから押し付けられた大量のブツを思い出し、嫌な汗をだらだらと流している。はっきり言って、あれの説明をしたくない。 「お前、何の情報収集をしてたんだ?」 「あぁ。ついでがあったんでな」 「ついでねぇ……。どうやって知り合った?」 戦争の絶えない時代。どこへ行っても、子孫を残す方が優先とばかりに、不毛な愛を排除する方向にある。そんな中、先輩と名のつく知り合いが簡単に出来るとは思えない。 「ナンパされた」 バルフレアは、椅子の背にことさらゆっくりともたれかけ、それに肘を置いて、面白そうにバッシュを見る。 「抱いてくれという申し出を断るついでに、教えてもらった。随分と勉強になったな」 ノアは、顔をあげられなくなった。 会話が進むに従い、バルフレアの雰囲気が微妙な変化している。ダラダラと流れる嫌な汗が増している。あのダンボール箱の中身を見られたら最後、絶対に、この微妙な変化が激変する予感点灯。いや、間違いなくする。あれは、バッシュが言っていたように、まずいブツに違いないと確信。 バルフレアが、「へぇ〜」と相槌をうつ。その声音が、非常に嫌っ!そして、視線がこっちへ移ったのを感じたノアは、なけなしの覚悟をした。 「綺麗」 「何だ?」 「綺麗は、俺達がディルドを使うのは、嫌か?」 視線は、自分から離れた。だが、ノアは、はっきりいって泣きそうだった。そう、兄は、こういう兄だった。さっき、自分の部屋で聞こうと間違いなく言っていた。バッシュは、有言実行の人。あの時止めておけばよかったと、現在激しく後悔中。 「却下だ」 「そうか」 屈託一切無しで、バッシュは頷く。 「なぁ、バッシュ」 その声にノアは、もう一度ビクリとし、バッシュは、何だとばかりに、小首を傾げる。 「お前に、そんな知恵をつけたやつは、さっきの先輩って野郎か?」 「あぁ」 実は、バッシュも、それなりにバルフレアの変化に気づいてはいた。だが、ブリズから、くれぐれも真実を告げないよう懇願されていた為、その方向で貫き通す方向にまい進中。 「今度、会わせな」 「そうしたい所だが、綺麗に惚れられたら、俺が困る。なにせ、あの国の人間だ」 「大丈夫さ。俺は、お前達だけで手一杯だからな」 だから、会わせろというバルフレアに、ブリズと事前打ち合わせをしていて良かったと、バッシュは心の中で、聡いブリズに感謝する。 「ある意味、綺麗と同業者だからな。それで戦いになったら、折角手に入れた情報源が無くなる」 「なるほどな………まぁ、とりあえず、そうしておくか」 バルフレアは、二人を視界に治めながら、慎重に観察していた。 双子は、めったに嘘をつかない。それだけに、隠し事が二人して不得意だった。態度に、雰囲気に、それがあからさまに現われる。確かに、大人になった分、よほど注意していなければ分からない程度にはなっているが、保護者から恋人という立場になったバルフレアは、今まで以上に観察眼のレベルが高くなっていた。 「んで、ノアは?」 「っ………そ、のっ……………………………………………………………………………………シド殿からっ」 ノアの視線は、変わらず下。背中は、大量に流れていった嫌な汗でびっしょり。そして、人の気配や声音、雰囲気で、相手が何を考えているか情報を得るよう訓練してきてしまった諜報部の長は、バルフレア方面からくる空気圧を拒めなかった。それでも、一応、逡巡している間は抵抗していた。結果、負けたけど。 「はぁ?親父ぃ?」 「あ……、あぁ」 「あいつ、何をしやがった?」 「…………興味を持ったとかで………20冊弱ほどの本を手に入れ…………」 のろのろと顔を上げたノアは、半泣き状態。 「もしかして、それ関連の本か?」 もう、声を出すのも辛くて、ノアは頷くだけ。 「読んだのか?」 「一、応……全部……」 どんどん弱々しくなっていくノアの声を聞きながら、バルフレアは、彼にかける言葉を捜す。「勉強になって良かったな」は、違う。だが、「すまなかったな」と言うのは、一応縁を切ったはずの親に代わって言う事じゃない。というか、言いたくない。 そんな事を考えながら、昔、己の父親だった男の性格を思い出す。あの馬鹿親父の事、勉強したついでに、実践をしかねない。なにせ、研究結果を体に埋め込んだ実績がある。 「ノア。それだけで、済んだのか?」 ノアの体が、ビクンと大きく揺れる。 バルフレアの額に青筋が浮いた。 「綺麗………」 ようやく口にした言葉は、ここまでが限界。ノアは、何を続けて言えばいいか分からない。加えて、バルフレアから怒気を感じる。声帯が動かない。 「ノア、見せた方が早くないか?」 兄の言葉に、ノアは眩暈する。自分でさえも二度とみたくないアレ。あの箱を開けて、どれだけ後悔したことか。その二の舞は絶対に踏みたくない。だが、アレを言葉にする勇気も無い。 ノアは、諦めた。少しよろけながら、立ち上がる。ここまできたら、覚悟をするしかない。まるで絞首刑に向かう罪人のように、階段へ向かった。 「綺麗、ノアの部屋へ行こう」 バルフレアは、バッシュの言葉を理解しそこねていた。ただ、親父が余計な手を出していないらしいという事だけは分かり、少し安心をする。 「何だ?」 「行けば、分かる」 バッシュは、変わらない様子でにっこり笑いながら、箱を開けた。 ノアは、そちらへは一切視線を寄越さない。バルフレアに向けた背中が泣いている。 そして、バルフレアは、視界に入っているダンボール箱二つの中身を見て、頭を抱えた。 一つ一つ付けられた付箋を見、同封されたレポート用紙の中身を確認する。 「ノア…」 「は、はい」 「律儀に感想を書くな」 几帳面な字で、使っただろうジェル(市販品)の感想が書かれている。その内容は、一生懸命、恥ずかしくないだろう言葉を選んで書いた苦労が滲み出ていた。 「ノア、本は読み返すか?」 ノアは、ブンブンを背中を向けたまま、首を横に振る。読み返すなんて、とんでもない。何度気を失うかと思った、命の危機を感じさせる本。二度と、見たくない。 「バッシュ、本を全部取ってくれ」 「分かった」 バッシュは、借りようと思っていた本を諦めて、バルフレアに渡した。 バルフレアは、それをダンボールの隙間に突っ込む。その後、ノアの書いたレポートを、ゴミ箱に捨て、蓋をした。 「ノア、テープ」 ノアは、慌てて、ガムテープをバルフレアに渡す。 バルフレアは、荒々しくテープを伸ばし、厳重に二つのダンボール箱を封印する。 「マジック」 受け取ったマジックで「二度と送るな!!」とデカデカと書いた。 「ノア…、あの馬鹿親父に付き合うな。あいつは、危険人物だ。だろ?」 「……だ、だが……あ、あの、だな………、相談にのってもらった…から…」 「はぁ?あいつに?何の相談だ?」 ノアの顔が、真っ赤に染まる。 「あ、あの………その………だな………男同士の行為について……」 ノアは、なんとか、直接的な言葉を回避しながら、終わりまで言う。 「あいつは、ノーマルだろ」 「そ、それは、分かっていたのだが……分かりやすい、助言を、もらえ、たので…………」 「へぇ〜、あいつが…ねぇ」 バルフレアは、その助言内容を聞きたかったが、ノアが、未だに視線を合わせない事で、聞かれて欲しくない、もしくは、あまりに明け透けな内容で言えないのだろうと、諦める。 「これ、研究所に送り返しとけ。お前は、届けに行くな。別のものを押し付けられるぞ」 「わ、分かった…」 ノアは、別のモノとは何だろうと一瞬思うが、頭を振って、その考えを散らす。間違いなく、もっと恥ずかしいモノに違いない。そんなモノを見たら、自分は、確実に一日使い物にならなくなる。 ノアは、部下に頼もうと決意した。 「さて、と、バッシュは、いつまでここに居る予定だ?」 「あぁ、あっちは、ひと段落ついたからな。二三日は、ここにいる予定だ」 「ノアは、いつも道りか……なら、明日の夜は、ゆっくり出来るな」 そう言ってバルフレアが、二人を眺める。口元には、小さな笑み。目元は、酷く甘い。 バッシュは、その表情に目を奪われながらも、「楽しみだな」と子供のように笑い、ノアは、真っ赤になって、小さく頷いた。 to be continued…
09.09.14 砂海
大変申し訳ないっ!m(__;)m アクロバティックな体勢が想像される、クンズホグレズは、次回にm(__;)m^^^^ や、もう、シドパパの向上心だけで、行数埋まっちゃったからねf(^-^;パパッタラ…。 あと、今まで書いた事の無い単語が、シドパパと、バッシュのせいで、書くはめになりました(T^T) 意思を持って避けていたのですが………orz二人には、勝てないですよ…はい。 それから、書いていて、もーノア総受けでいいやぁ〜ヽ( ´ー`)丿とか思ったり……いやいや、バッシュを攻めには、できかねますんで…前回可愛く書いたからねと、自分に言い聞かせ、必死になって、受け子二人という、非常に不都合な合体シーンを考えております。……頭ん中で展開されているソレが、ちゃんと文字になるよう、皆さん祈っておいて下さいませm(__)m必死