隠されたもの2  

  「バルフレア!」 「あ〜?」   少し遅れた朝食。 仲間全員が揃い、これからの予定を確認をする。 今日は、武器、防具、消耗品の補給と、先の情報を収集する事で落ち着いた。 一人一人と席を立ち、それぞれが散っていく。 一瞬出遅れたバッシュは、先に街中へ消えていった姿を追いかけ、その背中を呼び止めた。   「あぁ、丁度いいか。ちょっと付き合え」   バッシュは、今朝、それもついさっき聞いた言葉が嬉しくて、だが信じられず、それを確認しようと彼の姿を求めていた。   「バルフレア?」 「いいから、来いよ」   彼に用があったはずのバッシュが、まるで用があるのは彼のような状態になっている。 バルフレアがバッシュを連れてきたのは、狭い路地。人通りの一切無い、うす暗い場所だった。   「さて…と」   突然バッシュの体が壁に繋ぎ止められる。 目の前には、立ちの悪い笑み。   「バルフレア?」 「あんたのおかげで、男の抱き方を十分に勉強させてもらった」   バルフレアの言っている意味が、理解できない。   「まさか、あんたに教わるとは思わなかったがな」   バッシュの唇を、真っ赤な舌が舐めていく。   「バッ?!!」 「動くなよ」   そう言われても動きようがない。 バルフレアの手は、バッシュの急所を掴んでいた。   「っ……バッバルフっ?!」   開いた口に舌が進入し、ねっとりと自分の舌を舐めてくる。 バッシュは、それに応じようとする体を無理やり意思で抑えつけた。彼の意図が、読めない。   「んんっ…」   驚愕に固まっている暇は無かった。彼の手は胸元から入り、小さい粒を擦っていた。 今までそんな所を触られた事の無かったバッシュは、勝手に声が洩れそうになった事に、体が震えた事に動揺する。 意識が胸に集中してしまい、その他が疎かになる。 勝手に自分の舌が、彼の動きに応えていた。   「む…んんんんっ!!」   口の中で文句を言っても言葉にならない。 いつの間にかバッシュ自身が空気に晒され、巧みに弄られていた。   ◆隠されていたもの U   「はっ……くぅっ………」   バッシュの体が震え、バルフレアの手が白く汚れた。   「……バル…フレア…」   睨んだ瞳が、バルフレアを見上げている。 だが、真っ赤に染まった頬、唾液で濡れた唇が、その瞳の鋭さを鈍くしている事をバッシュは気づかない。   「やっぱり、あんたは色っぽいな」 「君は…」 「昨日の言葉を訂正しとく。  俺は男を脱がす趣味はまったくないが、あんただけは例外のようだ」   バルフレアの手が、バッシュの顔の輪郭をゆっくりと撫で上げる。   「頂いた」 「バル…フレア?」 「あぁ、あんたにははっきり言った方がいいな。  あんたは、俺のもんだ。分かったな?」   それは、確認の作業であって、願いじゃない。 バッシュは、しっかりと地面を踏みしめ、口を拭い、彼を見返した。   「それは、どういう意味だ?」   バルフレアは、ニンマリ笑う。   「あんたは、俺が許さない限り、俺には手を出さないだろう?」   バッシュは、何の疑問も持たずに当然だと肯く。   「俺は、空賊だからな。勝手に手を出させてもらうぜ」 「なっ?!」 「あんたは、俺のもんだって言っただろ?勝手に、喰う権利があるって言ってるんだよ」 「……なぜだ?」 「はぁ〜?」   バルフレアは、呆れた顔のまま、まじまじとバッシュを見る。   「あんたなぁ……どこまで鈍いんだ?」 「何がだ?」   これ見よがしのため息。頭を抱え、嘆いている様子を見せつけ。最後には、空まで見上げて見せてみた。   「あんたは、男を抱いた事がはあっても、抱かれた事は無いんだよな?」 「あぁ…」 「もし、そのあんたが処女を提供する気になるってのは、どういう状況だ?」   生真面目な男は、言われた質問に全身の毛を逆立てながらも、真剣に考えようとする。その姿さえも、バルフレアに頭痛をもたらしている。なんて鈍いんだと、心の中で罵倒している。 だが、ここにフランが居たら、『決定的な事を言わない貴方も、どうかと思うわ』と、間違いなく冷静につっこんでいてくれただろう。 しかしバルフレアは、今までの自分を全否定してくれる存在に激しく頭を掻き毟り、自分の感情に罵倒し続け、何とか元に戻ろうと足掻いていた少し前の自分が可哀想で、素直に言葉を告げるという選択肢がカケラも残されていない。 はっきり言えば、八つ当たりという言葉で締め括られていた。 だいたい、彼のどこに魅かれたのかさえも、未だ自分は分かっていない。ただ、自分の目は、彼以外を見る事を許してくれない。 それが、まるで恋をしているようだという事さえ、未だ納得していない。 それでも、思考を無視して欲しいという欲が日々募っていく。バルフレアは、これは恋じゃない。欲だと一生懸命自分を説得している最中だった。 説得は、意味のないものだとうすうすじゃなく分かっていたが……。   「君は、女性が好きだろう?」 「そうだな」 「男が好きだった事は、一回も無いように見えたのだが…」 「そうだぜ」 「どうしたのだ?」   この状況で、心配そうに見つめてくる視線に腹が立った。 腕を掴んで、彼を引きずるように歩き出す。とりあえず、これが欲しい。その欲を満たす事を最優先事項にした。                 ◇◆◇                 元の宿に戻り、部屋の鍵を閉める。 バルフレアは、現状把握が一切出来ていないバッシュを無視して、彼の服を脱がし押し倒した。 そのまま、昨日自分に実践された事を一つ一つなぞるように、バッシュに施していく。 さすがに呆けていたバッシュも、バルフレアが何をしようとしているのか、遅まきながらもはっきりと認識した。   「バルフレア…」 「あん?」   認識せざる得ない状況。既にバルフレアの指は、バッシュの体の中に深く入り込んでいる。   「私を…抱きたいのか?」 「俺は、そう言わなかったか?」 「そう聞いた覚えは無いが…」 「そうか?ま、気にせず大人しくし抱かれとけ」 「私を抱いて楽しいとは思えないのだが…」   どんどん色っぽい方向から離れていく。 バルフレアは、無理やりそっちへ行こうとしたかったのだが、自分の腕を押さえている手がまったく動かない。 ため息をついて、諦めた。   「俺だって、自分を抱いて楽しむやつが居るとは思わなかったぜ」 「君は、変態よけだと言ってただろう?そういう輩が多かったのではないのか?」 「そんなの知らねーよ。俺は、女しか見てないんだぜ。そんな奴等が目に入ると思ってんのか?」   気が付くと感情に流され、勝手に手が動き出しそうになるのを、辛うじて抑えていた状況。 ただ、女しか手にしなかった自分は、男の扱い方を知らない。どこに突っ込めばいいかは知っていたが、女のように濡れるとは思えない排泄器官。無理やり行使したら、間違いなく流血沙汰。 強姦まがいの暴力をする気はなかったバルフレアは、真剣に逃げ出す算段を考えていた。その逃げる切欠が一切見つからない現状だったが、どうしても強姦を避けるなら、それが妥当だろうと、逃げる瞬間を必死になって探していた。 そんな中、自棄を起こした言葉に乗ったのは、自分が欲をもった相手。まさか自分が組み敷かれる側になるとは思わなかったが、これはチャンスだと、存分に自分の体で勉強をする事にした。 根性で、相手を煽った。女じゃない自分が女と同じような事をして、相手を煽る事が出来るかは分からなかったが、バッシュは簡単に乗った。適当に言った言葉なんか一切覚えていない。 バルフレアは、そんな安い言葉の一つに引っかかっているバッシュに苦笑していた。   「君は…」 「言っただろう?男の抱き方の勉強したって」   納得のいかなげな表情。   「あんたを抱いて楽しいかは、これから確かめるさ。  分かったか?」 「私は、君に惚れているが……」 「へ〜」   バルフレアは、まじまじとバッシュを見返す。   「何でそうなった?」 「時間感覚が一切無くなった場所に居て、最初に君が動かしてくれたからかな。ヴァンから私を庇った、君の背中が忘れられなくなった」   こんな事を堂々を言って恥かしくないのか?というのが、率直な感想。   「君は、何でこんな事をしてくる?」   余計な事まで聞いてくる。   「欲しいからだと言ったはずだぜ」 「だが、君は私に好意を持っていないだろう?」   泣きそうになった。一応欲だと自分を説得中だったのにも関わらず、『好意を持ってない相手に自分のケツを掘らせるかぁぁぁぁぁっ!!!』と心の中で叫んでしまった。『勉強だけの為に、そんな事する訳ないだろぉぉぉぉがぁぁぁぁっ!!』と追加の絶叫まで。だが、声にはならず。   「俺は、言ったはずだぜ」   その代わり、重低音の声が出た。目がすわっている。   「もう一回聞く。もし、あんたが処女を提供する気になるってのは、どういう状況だ?  ほら、さっさと答えろ」   さっさと答えろと言われても、何度問われても、バッシュにとって想像外の仮定。自然頭が拒絶反応を起こして、回答を出すことが出来ない。   「あーもういいっ!体験しろっ!終わった後に聞いてやるっ!!」   無理やりバッシュの手を腕から離し、気力を奪われないよう口を封じながら押し倒す。 そして、未だ固まってるバッシュの手を、ベルトを使ってベッドに拘束した。   「バルフレアっ!」 「うるせぇっ!あんたに発言権なんかねーよ」   バッシュの上に馬乗りになったまま、ポーチから取り出したジェルで両手を濡らす。 そこから漏れ落ちる雫にバッシュの体があわ立った。中途半端に高められた体。少しの刺激が欲に繋がる。それを、歯をかみ締める事で無理やり抑えた。 バッシュは、バルフレアの意図がまったく分からなかった。昨晩とは違う言葉。無理やり繋がれ事に及ぼうとしている行動。 好意という言葉一つで全て解決するのだが(そこで体を提供するかどうかは、別途相談)、バッシュは、それを除外していた。結果、自分の意思を無視して体を繋げようとしている事実しか残らない。   「は…くっぅ……」   あがりそうになる声を、唇をかみ締め口の中で消す。 しかし、バルフレアの勉強の成果は、確実にバッシュを追い上げていた。 既に体の中の違和感は、快楽として捉えてしまっている。 盛り上がった腹筋の上に落ちてくるものは、自分の熱が漏らした雫なのも分かっている。   「はっ、ああああぁぁぁっ!!」   今までじらすように動いていた指が、快楽の源を強く刺激した。 声を抑えられなかった。 施す側に居た時は知らなかった、激しい波と共に全身にわたる快楽。頭が痺れてくる。   「あんた……すっげぇ色っぽいのな」   その声音に誘われるように彼を見た。 雄そのものの顔をしたバルフレア。背筋がぞくりとする。   「昨日のあんたも悪かなかったが、今の方がずっといいぜ」   色気のある声が、湿った音が、直に触れている体温が、目の前の光景が、直接与えられる快楽が、全てがバッシュを追い詰めていく。   「な…ぜ……」 「まだ言ってんのかよ…」   食いしばる口元に顔を寄せ、血の滲んでいる唇に舌を這わした。   「バーッシュ…」   キスは、勉強する必要が無かった唯一の項目。そして勉強した結果、男も女もそう大して変わらないと結論付けていたバルフレアは、自分の持っている相手を煽る術を総動員した。 舌が歯列に沿って、ゆっくりと動く。 それに合わせて、体の中を増やした指でかき回す。 声を抑える事なんか出来ないほどの快楽。それがどんなものか、たった一回の行為だけで十分に学習した。 自然と開いた口を喘ぎ声ごと唇で塞ぎ舌を絡め、歯を食いしばる事をさせない。抑えなんか取り払い快楽に溺れてしまえと、丁寧にバッシュの逃げ道を塞いで行った。   「ふっ…ぁ…」   ゆっくりと舌が離れ、唾液が糸をひいていく。 バッシュの瞳がゆっくりと開かれ、バルフレアを見上げた。自分の視界にはいったものに、バッシュの体がビクリと震える。   「バル…フレア……」   唇から唾液が毀れる。   「手を…」   繋がれた手を動かす。   「逃げないか?」 「…………あぁ」   バルフレアはクスリと笑った後、バッシュの手を開放した。   「あんたの爪の跡ってのが、欲しいねぇ」   返事は聞かない。両足を無造作に抱え、自分の熱を少し赤くなった蕾に添える。   「息を吐いてな」   熱い蕾に捻じ込んだ。                 ◇◆◇                 「おーい」 「バッシュ」 「起きろよ」 「ったく、そんな無茶した覚えはないぞ」   バッシュの頬をペチペチ叩きながら、ぼやいている。   「昨日のあんたよりは、よっぽど親切だっただろうが」 「お〜い」   鼻をつまんでみた。   「バ〜ッシュ」 「…な…に……っ?!!」 「やっと気づいたか」   バッシュの前に、バルフレアのアップ。   「俺は楽しかったぜ。あんたは?」   バッシュの腕がバルフレアの首筋にまわる。   「君は……」 「ん?」 「私が好きなのか?」   ようやくたどり着いた結論。与えてくる口付けが、自分を見つめる視線が、瞳が、排除していた結論を拾わずにいられないほど、雄弁に語っていた。   「本気で鈍いな。まだ疑問形かよ」 「いや…思いもしなかった」 「ちっ……んで?あんたは楽しかったか?」 「凄かったな…」 「はぁ?」 「こんな事に慣れたら、まずいと思ったというのが、正直な感想だ」   バルフレアが、ニンマリ笑う。   「慣れてもらう」 「君が、慣れても良いだろう?」 「俺は、許可しないぜ」   バッシュは、バルフレアをまじまじと見る。   「君は、私が好きなんだな?」 「そうだな」 「ならば、許可はいらんだろう?」 「へぇ〜、やれるもんならやってみな。俺は将軍様と違って、薬だろうが、闇討ちだろうが、お手のもんだぜ」   まるで戦闘のように、お互いが睨みあう。   「あんなにいい声で鳴いていたのにか?」 「あ〜?『もっと』って言いながら、腰を摺り寄せてきたのは誰だったかねぇ?」   外はまだ暗い。夜は続いている。 ゆらりと、バルフレアが立ち上がる。   「あんた、立てんのかよ」   バッシュが、ぎこちなく立ち上がる。   「丁度いいハンデだろう?」   ガツッと音がしそうな勢いで、二人の両手が相手の両手を掴む。 普段であるなら、バッシュが一方的に勝ったかもしれない。だが、受け入れた体の消耗は、本人が思った以上に蓄積していた。バッシュは、睨みながら額に汗を浮かべる。 だが、バルフレアも心の中で舌打ちをしていた。力が拮抗していて押し倒せない。     そして、夜が更けていった。                 その後、どちらが主導権を握ったかは、フランだけが知っていた。   「ふふふ…、毎回毎回ヒュムというのは、面白いわね」   だそうだ。       -End-  

 

08.01.10 砂海 あれだな、エロ書いていると、どうしても最後まで書く気力がなく…なっちゃダメか?だらだら感いっぱいなんですが、世間はどうなんでせう?もっと必要でせうか?   バッシュ…バルフレアが最初に俺のもんだって言うてるやんか……(校正していて気づいた馬鹿者…) 私とバッシュのどっちが、バルフレアに対して酷いんでしょうかねぇ?