知らないままでいれば、このまま道が離れるはずだった X  

  「まぁ、いいだろ」    バルフレアの口の端があがる。  バッシュは、安心した笑みを浮かべている。  あれから一月が経った。ここは、ソーヘン地下宮殿にあと一歩の所。  ここまでは、アーシェとヴァンが前衛を勤め、パンネロとフランがサポート役をしてきた。一番後ろからついてきたバルフレアとバッシュは、見定める為に何もしていない。背後からの敵が来た時でさえも、邪魔にならぬよう、一歩ひいていた。   「なら、この先は、俺とバッシュが前衛。ヴァンとアーシェは、補助魔法と武器を使い分けてくれ。パンネロは、黒魔法だ。補助魔法使うなよ。それは、ヴァンとアーシェに任せるんだ。  フラン、悪ぃ」 「えぇ、分かったわ」    バルフレアが示したのは、ヴァンとアーシェのもう一段階のレベルアップ。魔法と、武器による戦いは、全体を、今まで以上把握しないとこなせない。だがバルフレアは、この二人なら、十分にこなせるだろうと判断した。  そして、フランへの役割は、全て。全体を見て、戦う、補助、黒魔法、全てをこなしてくれと、バルフレアは言っていた。まだまだ、未熟な二人に、その役割は必要。だが、フランの技量であるなら、容易い事だ。   「この先の広間へ行くまでは、この陣形で行く。依頼があった場所の手前で陣形を組みなおすからな」 「何でですか?」    パンネロが不思議そうに首を傾げる。その横でヴァンもコクコク頷きながら、同意している。   「あの…凄い絵から想像するに、敵は、5体だろ?このまんまじゃ、戦いづらい。二手に分かれるのが無難だ」 「分かりました」    にっこり笑って、パンネロが頷く。   「それにな、いいもん持っているからもしれないだろ?  ヴァン、お前、頑張れよ」 「うしっ!任せておけ!」    ヴァンは、朗らかに宣言した。     ・・・‥‥……━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━……‥‥・・・    「こっちも盗ったぜ」バルフレアは、手にした「しあわせの四葉」を急いで腰に下げたバッグにしまい、走り出す。手には既に銃を持っていた。  心の中で、相棒のような舌打ちをしているのは、フラン。弓を狙うにも、直ぐに射程範囲外に逃げる敵、走りながら射るのは、かなり高度な技術を要した。仕方が無いので、もう少し楽に狙いをつけられるボウガンに持ち替えていた。  「ちょ、ちょっと待ちなさい!」待ちなさいと言って、止まる敵もいないが、誰もがアーシェの言った言葉に心の中で頷いていた。    ソーヘン地下宮殿。明るき闇と対する広間。パーティは、バルフレア、フラン、アーシェの組と、ヴァン、パンネロ、バッシュの組に分かれ、それぞれが、全速力で走っていた。  敵は、ちょこまか走り回るマンドラーズ。それだけではなく、花粉を使い、ステータス異常で、立ち止まらざるえない状況に陥る。そんな事が、繰り返される戦闘。ちびっこい変な敵5体に、二組は翻弄されていた。    「取った!」ヴァンの言葉に、ヴァンと組んでいたパンネロとバッシュが、頷きあう。  「ファイア!……んもぉ〜!!」走りながら唱えていた魔法が具現した先には、もう敵の姿は無い。パンネロは、足を止めずに、もう一度唱えなおす。  バッシュは、走りながら矢を放っていた。自分の走る揺れなど、チョコボに乗っている時と変わらないとばかりに、次々矢をつがえる。   「これで、最後だ!」 「おしまいよ!」    ヴァンとアーシェの声が重なる。  全ての敵が倒れた。  個人的に頼まれた変なモブは、最後まで、変なご陽気さで、空へ向かっていった。   「あーーー疲れた〜!」    そんな変な光景をついつい見てしまったとばかりに、ヴァンは、大声をあげて座り込む。それが合図だったかのように、次々と立っていた場所に、それぞれが座り込んだ。  そのままでいたのは、二人。バルフレアとバッシュ。二人共、荒い息を吐いてはいるが、未だ立っていた。   「仕方が無い。俺が、報告に行って来る。それまで、ここで休んでろ」 「ここなら、安全だろう。私も行こう」    そう言ったバッシュは、弓を持ち直す。   「いや、あんたも、ここで休んでな」 「バルフレア、私は、疲れていない。今は、鈍っている体を動かさせてくれ」    バッシュは、やけにゆっくりと、言葉を区切り、強調しながら言う。  バルフレアは、一瞬眉をしかめた後、仕方が無いと肩を竦め、歩き出した。それが了承だと判断したバッシュは、後に続く。   「フラン、頼んだぞ」 「えぇ」    振り返りもせずに言うバルフレアに、フランは、少し口元を和らげ、将軍は、馬鹿どころでは無いわよと心の中で一言呟いていた。    ・・・‥‥……━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━……‥‥・・・    往生していた帝国からの旅行者から、報酬を受け取り別れる。旅行者は、用は済んだとばかりに、さっさと背を向け、歩き出した。  バルフレアは、立ち止まったまま、視界の隅に居るバッシュを見ていた。彼が付いてきたのは、言葉通りの意味と、もう一つ、何か言いたい事があるのだろうと推測していた。その内容も、想像は付いている。   「バルフレア」    片眉をあげるだけで答える。   「聞きたい事があるのだが……いや、確認というか……」    いつもならはっきりと言うバッシュが、躊躇っている。  バルフレアは、一つため息をついて、地面に座り、背後の木に寄りかかった。   「あんたも座りな」 「あ、…あぁ」    バッシュは、酷く躊躇いながら、バルフレアの横に座り、そして彼を真っ直ぐに見つめた。   「バルフレア、私は、普通に動いているだろう?」    見返すバルフレアの目が、細くなる。   「普通に起きて、食事をして、戦って、普通に寝ている」    視線が強くなる。   「何も問題は無い」    ため息が漏れた。   「手」 「………?」 「手を出しな」    バッシュは、不思議そうに、右手をバルフレアに差し出した。  その掌を握りしめ、再びバルフレアは、ため息をついた。ここまで、休む事なく戦闘をしている。マンドラーズを倒して、そのまま、止む事なく弓を引いていた掌。それなのに、その掌は、ひんやりとした体温をバルフレアに伝える。自然と首が横に動いた。   「あんた、気づいているよな?」    バルフレアは、バッシュの掌を返す。   「あんたの体は、投獄されてた後遺症がまだ残っている」 「だが……」 「ハンターズキャンプに来た時が、限界だった」    バッシュは、広げたままの掌を握り締め、ゆっくりと視線を逸らした。  そこまで、バルフレアに見抜かれているとは思っていなかった。体の不調は、バルハイム地下道を出て直ぐに気づいた。慣れ親しんだ砂漠、その風が心地よいと思った後、不安に襲われる。いつもなら、痛いぐらいの日差し、まとわりつく焼け付くような熱、そして流れる汗があった。それが、いつまで経っても訪れない。  直ぐに思いついたのは、ほんの少し前まで拘束され、拷問を受けていた事。  だが、自分には、やらねばならない事がある。その程度の不調で、歩みを止めるつもりもなかった。  そして、そのまま、状況が幾転も変化するにあわせ、自分のやるべき事、剣を持ち、戦う事を続けていた。  だが、それには限界があった。何も伝えないはずの体が、眩暈と吐き気という別の方法で伝えてきた。それでも、先を急いでいるアーシェに対し、何も言えなかった。言うつもりも無かった。だから、表面上、何一つ変化を見せずに戦ってきた。そう、自分を誰にも見せてないはずだった。   「あんたなぁ…、あれだけ剣の切れ味が鈍れば、俺だって分かる。フランは、もっと前に気づいていたみたいだぜ」    バッシュは、心の中で、安堵の息を吐いた。剣で見抜いたのであれば、他のメンバーに分かるはずもない。   「安心するのは、早いぜ。パンネロも気づいてた」 「っ…?!」    心の中を見透かされた事よりも、パンネロに見抜かれた事にショックを受け、抑える事なく声が漏れた。   「お嬢ちゃんは、いつだって全員の状況を判断してサポートをしてるだろ?随分と気配に敏感になってきた。  お嬢ちゃんはな、心配してフランに、相談をしにきたらしいぜ」    バッシュの弱り方が、尋常じゃなかったという事。   「そこまで……」 「あぁ。だから、足を止めさせてもらった。アーシェの事も確かにあったが、問題は、あんただ。  はっきり言って、俺やフラン、お嬢ちゃん、ヴァンには、あんたほど、アーシェを引っ張る理由が無い。だから、あんたが倒れたら、このパーティは、終わりだ。一歩も進まないだろう」 「……そ……」    バッシュは、言いかけた言葉を飲み込む。目の前の優しい男なら、間違いなく、最後までアーシェを引っ張っていくだろう。だが、そんな優しさに付け込むような事は言いたくなかった。   「勘違いするなよ。俺は、俺の都合で、今ここに居るんであって、決してアーシェの都合じゃない」 「いや…、私は、勘違いなど、していない。もし、私が君に頼めば、対面上文句は言うだろうが、間違いなく君は、私の望みを叶えてくれるだろう」 「俺は、そんなおめでたく出来てないぜ」    バッシュは、口元に笑みを浮かべながら、首を横に振った。   「ならば、なぜ、私にベッドと、食事と、軽い運動を与えた?どうでもいいのなら、放っておけば良かっただろう?」    最初は、気づかなかった。彼の言葉の表面だけで、納得していた。  だが、彼の戦う姿勢は、自分の模倣というよりは、自分を働かせないように動いているよう感じられた。そして、鍛錬しているのにも関わらず、決してやりすぎず、夕方になると帰る。この一月、自分とバルフレアの生活は、とても健康的と言っていいぐらい、きっちりと時間通り動いていた。  その上宿屋で出てくる食事は、他の宿泊客と違う。料理について、詳しくは無いが、こういう宿屋にありがちな、肉料理に偏ったものでなく、適度に野菜が盛り込まれていた。食後に、宿の者にそれを尋ねたら、「病気の人が居るんだって?ヴィエラの人が、色々野菜を指定してったんだよ。それを入れて料理してくれってね」と、心配そうに言われた。「病気の人は、どんな様子だい?元気になったかい?」と聞かれ、困ったように、頷いた。これが決定的だった。   「俺は、アルケイディアに用がある。その為には、あんたが必要だ。それだけだ」    バッシュの心に少し歪みが生まれる。その理由は、分からない。   「ならば、少しは信頼してくれ。もう私は大丈夫だ」 「安心をする理由は無いな。だが、留まっているのも、もう限界だろう。だから今日、出発しただろ」    バルフレアは、フランからの報告で、アーシェ達が十分に仕上がっている事を聞いていた。だが、バッシュの体調は、ここに着いた時のような、分かりやすい不調は無くなってしまった。だが、目に見える部分では無い所に、バッシュは爆弾を抱えている。分かるのは、本人と、彼に触れた相手にだけ。バルフレアは、理由も無く彼に触れる事は、酷く躊躇われた。   「フランがハンターズ・キャンプの医者に聞いた所によると、第一の原因は、長期間戒められていたせいだそうだ。だが、開放されたからと言って、直るものでもないらしい。相手は心だからな、他にも色々な原因が絡み合って症状が出るんだそうだ。当然、心が疲弊しているのだから、なるべく穏やかな生活させた方がいいらしい。だが、あんたには、それは出来ない。だろ?  その方が、よほど体調を壊しそうだしな」 「………全てが、終われば…な」 「さぁ、それはどうかね?  あんたは、また新しい国を見つけるんだろ?今と変わらない生活が、待っているだけだ」 「見つけるまで、シュトラールの中で、静養させてくれ」    バッシュは、目の前に居る優しい男に、心からの笑みを向ける。  バルフレアは顔を顰め、ため息を一つ吐き立ち上がった。   「レアもんは、見つかったのかよ?」    慌ててバッシュも立ち上がる。   「す、すまない。まだ……」 「さっさと、拾えよ。ったく、俺が、ずっとここに居るとは限らないからな」    バッシュは、バルフレアの背中に困ったような笑みを向ける。かすかな歪みが広がっていく。   「バルフレア…」    バルフレアの足が止まった。   「もし、君が離れるのならば、私が落ち着いた頃に迎に来てくれないだろうか?その為のレア物も探しておく」 「どこに?」    落ち着いた頃がいつとは聞かない。アーシェがダルマスカの頂点に立つか、誰も知らず死んでいるかの二つの道しかない。   「地図を持っているか?」    バルフレアは、苦笑を浮かべながら、ポシェットから地図を取り出し、振り返った。   「ほいよ」    バッシュは、受け取った地図を広げ、一点を指差す。   「この辺りを飛んだ事は?」 「あるぜ」 「もう新しい街が出来ているのだろうか?」 「いや…、帝国が攻撃したままの状態で放置だ。今や、廃墟だな」    バッシュが指した場所は、ランディス。バッシュの故郷。  バルフレアの言葉に、一瞬歪んだ表情は、その次に浮かべた笑みで、綺麗に隠れた。   「この連なる山の裾野に、それなりの街があった。山から下りると突然森が切れ、街が現われるような感じの場所だ。その森を背後にした家で待っている」 「ちゃんと残っているのかよ?」 「砲撃よりも、木の侵食の方が、脅威だな。家と分かるかどうか……」 「上からは、判別しずらい家なんだな?」 「あぁ。だから、それほど壊れてはいないと思うのだが……見てみんと分からんな…」 「あとは、地上の奴らがどれだけ、手をかけたかだが……」    空からの襲撃が無くとも、地上に散った敵は、十分な数が居たはず。侵略者の常として、略奪、破壊、放火は、お決まりの作業だろう。どこまで、家が元の形を残しているかは、分からない。   「その方が、隠れるには、都合がいいだろう」 「分かった。あんたの用意したレアもんに期待して、迎に行ってやる」    バッシュは、「よろしく頼む」と言って頭を下げた後、心からの笑みを浮かべる。  バルフレアの腕が伸びた。  まるで自分の視界から、その表情を消すかのように、その手は、バッシュの体を抱きしめた。   「バっ、バルフレア??」 「……もう一つ条件だ」 「な、何っ……?」 「この冷たい体を、もう少しどうにかしろ。故障持ちじゃ、次の国で出世は見込めないぜ」 「……冷たいのか…」 「あぁ」    冷静に見えるよう会話を繋げながらも、バルフレアは、勝手に動いてしまった手をどうしていいか分からず混乱していた。思った事は、あの笑みを見ていたく無かった、それだけのはず。それならば顔を背ければいい。だが、体はそうしなかった。あの時、モスフォーラ山地の時と同じ。  心の中で舌打ちをする。自分がこんなにも鈍いとは思ってもみなかった。フランに、あからさまな指摘をされた時でさえ、まだ笑えていた。笑う事が出来た。だが、今はどうだ?とても出来そうに無い。  あの笑みを疎んでいた理由に思い当たったてしまった。  惹かれているから。  彼の体の状態を知っているから。  彼の立場を知っているから。  だから、穏やかに微笑む事を疎んだ。  その根底にあるもの。バルフレアは、それを見つけてしまった。   「君の体は、暖かいのだろうか?」    その体に響いてくる声に魅かれて、体が勝手に動かないよう、必死になって抑えた。   「汗かいてるだろ。暑いんだよ」    必死になって取り繕った声。   「なら、表面は、冷たいのだな。その君が、冷たいと感じているか………」    バッシュの額が、バルフレアの肩の上に落ちた。  バルフレアは、掌をきつく握り締めた。   「あそこから出られただけで、叶えたい望みに向かえているだけで、十分なんだがな……私の心の底は、他にも何か思うところがあるのだろうか?」    問いでは無い問い。バッシュは答えなど期待していないし、答えられる問いでも無い事も分かっている。   「そのうち落ち着くだろう。私と似て、私の体も頑固なのだろう」 「早々に、和解しろよ」    そう言って、バルフレアは、バッシュの肩を叩き、するりと離れていった。   「ほら、帰るぞ」    既にバッシュから背を向け、歩き出している。   「あ………」    バッシュの中の歪みが、声高に叫び始めた。  外気温をあまり感じなくなった体が、寒いと感じる。  バッシュは、困惑しながらも、歩き出す。視界を釘付けしているものは、彼の背中。他のものが入らない。体は、勝手に足を前に出し、敵がくれば、勝手に動く。それに任せ、心の中に反響している違和感の声を聞く。   「どうした?」    怪訝そうな表情が振り返った。  その声に、その姿に、歪みが反応する。   「いや…、少し考え事をしてしまった…すまない」 「珍しいな。なら、ゆっくり考えてな。後は俺が全部やる」 「いや、大丈夫だ」    バッシュは、そう言って、バルフレアに向かってきていた敵を射抜く。バルフレアは、慌てて背を向け、剣を敵に向けた。    バッシュは、戦いながら、呼吸を合わせながら、歪みが全身に広がっていくのを感じていた。  目を奪ったもの。  耳を奪ったもの。  感じない体温を奪ったもの。  それが、何を意味するかようやく理解した。  バッシュの顔が心をそのまま映したように歪む。  歪みは、欲という名前を持っていた。                  二人は、仲間と合流し、そのまま続けて戦いながら、アルケイディア一歩手前のクリスタルまで進んだ。そこで一夜を過す事になる。  クリスタルの周辺に散らばった人影は、それぞれ寝息をたてていた。二人を除いて……        バルフレアは、必死になって、明日、会うであろう父親の事を考える。必死にならないと、心が違うものを頭の中に描こうとする。   (同情だったはずだっただろ……)    だが、バルフレアは、薄々気づいていた。二人で穴に落ちた時、逃げる為に手を繋いだ瞬間から、いや、その前に、彼の浮かべる笑みを見た時から、自分は、彼に惹かれていたのだろう。   (己の掟に従う以外の道を歩む気は無い男だ……)    絶対、手に触れてはいけない宝が、この世にはある。手を伸ばせば、その代償は計り知れないほどのものを要求される。それは、大抵命、もしくはそれと同等のもの。  バルフレアは、バッシュも、それと同じだと、知っていた。   (俺にも掟があったはずだろ…)    重い鎧は、大嫌いだ。自由な空を、自由な心で飛ぶ事が、己の掟。それを阻害するのは、全て排除してきた。今、ここに居るのも、己の心の自由を取り戻す為。ようやく過去に向かい合う事を決意出来た、自分の無様さを払拭する為。  ここで、彼に手を伸ばそうとしたら、再び心の自由が無くなる。一層空が遠くなる。バルフレアにとって、彼への気持ちは、それ以外の何ものでも無かった。いや、そう言い聞かせていた。        バッシュは、自分の弱さに打ちのめされていた。彼によって開放されてから、今まで、何度も手を伸ばしてくれた。そして、それに救われていた自分。まるで護符を求めるかのように、心がバルフレアを求めていた。  今まで前だけを見つめてきた。アーシェを、ダルマスカを支える事だけを考えて旅をしてきた。その意思は、己一人で抱き続けていたはずだった。それが、騎士として当たり前の心構えだったはず。  なのに、自分は、それ以外の意思を育てていた。  なのに、自分は、他人に寄りかかって、意思を貫いていると思っていた。   (なんて……無様な……)    握り締められた拳が、あまりに強く力が入りすぎて、白くなる。   (彼の優しさに対して……俺はなんて想いを……)    バッシュは、彼から受けた恩に対し、あまりにも無礼な欲を持った自分は、彼の横で戦う資格は無いと自分自身に言い聞かせた。己の内に生まれた歪みが叫び始める。  だが、バッシュは、それを一切無視する事にした。            次の日から、二人の纏う空気が一変した。    

 

10.02.03 砂海
まぁた、天然かぁ?なるべく、そこから逃げようとしているのにぃ??(--;) という文章の流れを全削除しました。 この先、馬鹿に間違ってピンクな世界に行った時に不幸になりますから、えぇ私が。 ここのバッシュだけは、天然オーラを払拭させてあげたいものです(--;)^^^   という事で、ようやっと、ちゃんと、気づいたようです。ですが、ラブからは、どんどん遠ざかって行っています…この先、大丈夫だろうか?