秘め事  

  ◆秘め事   「ふざけんなよっ!」そう、言った声だけが頭に残った。苦笑が浮かぶ。ふざけてなければ、呑まれそうだった。 相手は子供。あまりにも世間を知らない、人生経験が無さ過ぎる子供…それでも、きっといつか気づいてしまう。狭い世間じゃない世間。まわりにいる沢山の綺麗な異性。自分が「可愛い」と思う者を、遠からず見つけてしまうだろう。 それを知っていたから、卑怯な大人は、逃げ道を作った。「嫌いじゃないっつーか……はまるとヤバそうって感じ?…けど……はまってもいいかな〜?なんて〜」と、おどけた言葉でしか言えなかった。 「俺は、結構瀬名が好きだよ」、結構ね……そう一番じゃない。どころか、自分が仕掛けた罠にはまっただけ。言葉巧みに子供を誘導する。汚い大人のやり口。   「煙草がまじぃ〜」   もうすぐ夜が明ける。今日は、来ないらしい。 「たらしこんでやるから。あんたが漫画の事考えられなくなるくらい」、そう挑戦的に言った準の顔が可愛くて、可愛くて、キスをせずにはいられなかった。既にたらしこまれた後だけどなと、心ん中で苦笑しながらも、伸ばす手を止められなかった。   「いつまで、来てくれんのかな〜?」   砂糖抜きのミルクだけコーヒー、そんなの一番最初に覚えた。最初からたらしこまれまくりだ。さすが、アイドル夏川準様だ。   「長くて、卒業まで…か」   先を読んで落ち込む自分が、あまりにらしくなくて情けなくなる。   「そこまで、たらされてる…ってか」   足音が聞こえてきた。この走り方が、誰のものかも覚えてしまった。だから、玄関には行かない。 玄関が開く音。入ってくる足音。そして、声。それを素直に喜んで出迎えたい。だが、大人は大人らしく、彼にも逃げ道を作らなければならない。いつでも、俺なんかを気にせず逃げ出せるよう……。   「瀬名」 「よぉ〜」 「あんたなぁ、鍵ぐらいかけておけよ。物騒だろ」 「盗むもんなんか、ある訳ないだろ」   ちょいちょいと手招きして、不思議そうな顔をして近寄ってきた準を、腕の中に閉じ込める。   「んだよ」   憎まれ口を叩きながらも、嬉しそうに俺に体重を預けてくる。 可愛くてたまらない。   「俺をたらしこむんだろ?しやすくしてやったの。どお?」   俺の言葉に、睨みつけてくる。そんな顔も可愛い。   「それとも、準がたらしこまれっちゃった?」 「そんな訳ないだろっ!」   あぁ、そうだ。そんな訳がない。言わせた言葉に、自分の胸が痛む。   「んで?どうした?もう、明け方だぜ」 「明日…今日、一日休みだから」 「彼岸を、また見たいとか?」 「ち、違うっ!」   真っ赤になって怒鳴る姿も、可愛すぎだ。   「あ、あんたは、まだ忙しいのか?」   いつもアイドル様なのに、言葉のはしはしに育ちの良さが滲み出て、相手を気遣う言葉を零す。そういう時の準は、その辺の高校生と変わらない。その度に、俺は、感情に流されそうになるのを止めるのに必死だ。   「知ってるだろ?修羅場は、昨日終わったぜ」 「うん…」   隠れて、笑みを漏らしているのを知っている。ほんと、アイドル様は素直じゃない。ま、人の事は言えないけどな。   「なぁ、たらしてくれないの?」   真っ赤になって怒った顔が迫ってきて、唇を合わせてきた。合わせるだけで、こんなのキスじゃない。   「あのねぇ。まさかこれで、たらされるって思ってないよなぁ?」   準の頤をすくい、唇を重ねる。ねっとりと舌を唇に這わせて、口の中を侵食する。舌を絡めて、味わいつくす。準の体の力が全て抜けきるまで、続けた。   「こういうのを、キスって言うの」   溢れた涎を指ですくい、いやらしく見えるように舐める。 潤んだ瞳のまわりが、真っ赤に染まった。   「立っちゃった?」 「あ、…あんた、ずるい」 「大人だ・か・ら」 「はっ……んんっ………せ、瀬名ぁ……」   準の細い腕が、俺に絡みついてくる。 薄いTシャツは、着ていないのと変わらない。胸に這った俺の手は、既に硬く尖っているものを教えていた。   「本当にお前って、ここが好きなのな」 「好き……だから………」 「もっとってか?」 「う…ん……もっと…」   欲に溺れた準は、自分の望みを隠さない。全身で、俺を求め、可愛い顔で強請る。 だめだよ準。そんな声で、顔で、腕を伸ばしてきたら、錯覚しちまうだろ?   「瀬…名?」 「ん?」 「俺の事…ちゃんと…見てる…か?……ア…イドル様…前、にして…何…考えて…だ…よ」 「準の事?」 「な…んで、っ………疑問…文っあぁっ…」   ズボンの中で窮屈そうにしていた熱を、服越しで触っただけで、可愛い声があがる。   「直接触った方がいい?それとも、焦らされたい?」 「さ…わって……早くっ…」   絡み付いてくる腕と足、こすり付けてくる熱い熱に、眩暈がしそうだ。だが、そんな素振りは絶対に見せない。ニンマリ笑った俺は、冷静に見えるように、準の服を剥いでいく。   「んじゃぁ、ここなんてどう?」 「はっ……なっ……んんっ…ぁあっ……」   熱は触らない。熱から溢れた蜜で濡れた袋を弄ぶ。思った通り、感度の良い準の体は、無造作に弄んでも、痛みではなく、快楽として受け取っている。漏れる、甘い声が止まらない。   「やっぱり、痛いの好きなんだ。なぁ、もう少し強くしてもいい?」 「い…い、…もっと……強くし……て……っぁああああぁぁっ!!」   希望通りに指先で転がしただで、準の熱から止め処もなく蜜が溢れてくる。   「あっまそ〜」   右手でそれを掬い上げて、準の口の中に指を入れた。   「甘い?」   未だ袋を弄っている手から、ぐちゅぐちゅ卑猥な音が響いている。 準は、もう俺の言葉に答える事も出来ない。赤い舌が自分の指に絡み、欲に溺れた瞳が俺を見ていた。 その光景だけで、俺がいっちまいそうだ。   「準」 「…な…に…あ、あ、ああぁっ!」   蜜と唾液でどろどろに濡れた指は、簡単に準の中に入っていく。   「呼んで」   俺の声なんか聞こえなくなるぐらい、無造作に掻き回す。   「名前、呼んで…」   準の甘い声以外、何も聞こえない。   「ずっと、呼んでてよ」   お前が俺を欲しがる声を、ずっと覚えているから。 だけど、そんな本音を聞かせるつもりは無い。準の中を執拗に掻き回す。そして、指を抜いた瞬間に、自分の熱を無理やり捻じ込んだ。    ・・・‥‥……━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━……‥‥・・・   「ん……?」 「よぉ、起きたか?」 「………夜?」 「そ」 「まじかよ……」   明け方から、ずっとやり続けて、昼近くに気を失ったんだから、夜になってても不思議じゃない。   「コーヒーでも飲むか?それとも、まだヤりたかったりしちゃう?」 「……コーヒー」 「なーんだ、もう、やらなくていいんだ」 「無理に決まってるだろっ!」   飛んできた枕を避けて、笑いながら台所へ行く。寝顔をずっと見ていたかったけれど、やっぱり準は、起きていて、色んな表情を見せている方がいい。   「砂糖抜きのミルクコーヒーだからな」   怒鳴らなくても、聞こえてるし、そんな事は知ってるって。   「…由彦」   カップを落としそうになった。   「準?」 「んだよ、由彦」   恐る恐る台所から顔を出したら、真っ赤になってそっぽを向いている準が見えた。   「………………可っ愛い〜な〜」 「う、煩いっ!コーヒー、早くしろよ!」 「はいはい、アイドル様」   顔がにやける。まさか聞こえていたとは、思わなかった。   (研究不足かなぁ?)   俺の声が全く聞こえなくなるぐらい、溺れさせるには、どうしたもんかと、一瞬考え込んでしまった。   「まだかよっ!」 「はいは〜いっと」   少し膨れてるアイドル様。可愛くて可愛くて、もっと甘やかしたくなる。 コーヒーは、傍にあるテーブルに置いて、準を抱きしめた。   「な、なんだよ」   暴れる準を無視して、キスをする。ほんっとに、体は正直なんだよなぁ〜。もう静かに抱かれてる。   「今夜も頑張ろうな」 「ちょっ……っ」   嫌だなんて言わせない。ほら、キスをすれば俺に身を委ねてくるんだから、いいだろ? 準が他を見るようになるまでに、時間なんてそんなに無い。それまで、目いっぱい堪能させてよ。 そんな、言えない言葉が溢れそうになる時に、準にキスをする。 腕の中の準が可愛くて、可愛くて、離せなくなりそうになった時に、唇を離す。   「準」   真っ赤になって、睨みつけてくる視線中毒?いや、あらゆる準中毒症?やばい、抜けられそうにない。   「まずは、腹ごしらえな」 「う、うん」 「ファミレスでいいだろ?」 「アイドル様が、ファミレスになんて、行けないに決まってるだろ」 「んじゃ、ピザでも持ってきてもらうか」 「俺、薄い生地で、カレー味」 「はいはい」 「由彦っ!」   こんな一言で、幸せになっちゃう俺って、安いなぁ。   「もっと、呼んでよ」 「あーもーっ!早く電話しろよ」   からかい過ぎると、すねちゃうかなぁ?諦めて、受話器を取った。   「由彦、カレー味だからな!」   今夜も、寝かせてやれない。ごめんな、準。   -End-    

 

08.07.24 砂海
初めて聞いた時、まじ惚れました。瀬名さんVvなんて、いい攻め様なんだろう。そして受け子のツンデレぶりが凄くて、うん…可愛いぞ。 という事で、いっぱい聞きすぎて、続きを考えてしまったブツ。