山車人形「関羽」は、中国後漢末期に劉備(りゅうび)に仕えた武将で、青龍偃月刀(せいりゅうえんげつとう)を脇に構え、「美髯公」(びぜんこう)と言われる髭を左手に持ち、勇壮な姿を表しています。

 作人札には「法橋 原 舟月作」とあり三代目 原 舟月によって制作されたことがわかります。

 肩や腰につけられた獅子の装飾品「獅噛み(しかみ)」は、原 舟月独特の装飾で木製の彫物に漆塗りの特殊な技法・白檀塗り(びゃくだんぬり)が施され、眼にはガラスが使用されています。

 脇に構えている青龍偃月刀龍頭にも精細な彫刻が施されていて眼はここにもガラスが使用されています。

 衣装の生地はビロードで、牡丹の模様が織られていて、その上に龍と雲が衣装全面に刺繍され、袖口には金糸の雨龍(あまりょう)が刺繍されています。

 人形を入れる長持には「明治十二年九月 関羽人形之長持 仲町」と墨書きがあり明治12年に購入したと思われます。

山車    三層せり出し構造の江戸型山車
山車制作年 不明
山車購入年 明治12年(1879)



山車人形  関羽
人形制作年 不明
人形作者  三代目 原 舟月(はら しゅうげつ)
人形購入年 明治12年(1879

 中段は、お囃子台欄間とそれに続く幕板という構成ではなく、白木(しらき)の鳳凰の彫刻がはめ込まれた三味線胴が依代空間の四隅に立てた親柱に付いていて、囃子台は独立し、三十菱(さんじゅうびし)の格子模様の欄間という構成になっています。

 下段幕と囃子台の水引幕は、5色の縦縞で牡丹の模様が織られています。

仲町(なかまち) 関羽(かんう)人形山車
山車人形 三代目 原 舟月作「関羽」
三層せり出しの構造

 仲町の山車は原舟月が制作した山車特有のせり出し構造と同様の構造をしています。

 囃子台後方の依代空間の四隅に立てた親柱の内側を櫓行灯(やぐらあんどん)が上下し、上段三味線胴と四方幕をせり出します。

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上段四方幕 「応龍」
 櫓行灯が上がった時に依代空間を覆うための下段幕はこの櫓行灯が親柱の内側を上下するため、親柱の外側に取り付けられています。
 櫓行灯と人形は、いずれも滑車と縄を利用してせり出させる構造になっていますが、縄を巻きとる「おだまき」は井桁台後方にあります。左右にある穴に棒を差し込み回転させて縄を巻き上げ、櫓行灯をせり出すようになっています。
井桁台後方の櫓行灯をせり出す「おだまき」
櫓行灯の内側に組まれた十文字の人形台
依代空間四隅の親柱(下丸)の内側に櫓行灯(上丸)が設置されている

上段四方幕 後面「玉亀縫」
仲町「関羽人形山車」
 山車人形
  山 車

 上段四方幕三面には緋羅紗地(ひらしゃじ・赤い生地)に応龍(おうりゅう)の刺繍が施されており、後ろの一面には町名「仲町」と刺繍され、玉亀(ぎょっき)縫・樵山(しょうざん)書と制作者の名があり、仲町が山車を購入した時に制作されたのではないかと考えられます。

 上段三味線胴には、金箔押しの龍彫刻がはめ込まれその周囲には同じく金箔押しの稲妻菱(いなずまびし)をあしらった模様が施されています。
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 人形をせり出す構造は、依代空間に立てた親柱ではなく、上段三味線胴と四方幕をせり出す櫓行灯に取り付けられています。櫓行灯の各辺中央にある柱の内側を、十文字に組んだ枠が上下します。枠中央の柱に人形を固定し、枠と人形が一体になりせり出します。

①依代空間四隅の親柱
②上段三味線胴と四方幕をせり出す櫓行灯
③人形をせり出す人形台
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