ワイルド・ディスカスの衝撃

魚好き

 小さいころから近くの小川で魚を採集するのが好きで、小川といっても農業用水ですから、秋の終わりには川水の停水があり、タモやバケツを持ってアユ、ウグイ、ドンコ(グズ)、フナ、ナマズ、タモロコ、アブラハヤなどを取ってきましたが、もちろん今のように水槽やフィルターなどの設備はありませんでしたので、バケツに地下水を流す流水飼育でしたが、2,3日で死んでいました。

底面ろ過式水槽
 私の熱帯魚暦は遠くさかのぼれば大変古く、1971年ごろだったと思います。最初に買った魚はもちろんグッピーでした。そのころのレギュラーの60cm水槽は存在したのですが、ステンレス枠でガラスとの目地はパテでした。大磯砂を底面フィルターの上に敷きエアーポンプでのろ過方法です。その後ショップで見かける、購入可能な熱帯魚は多くの種類を飼育しました。ネオンテトラもまだまだ高価な時代で10匹も購入するには中々勇気が要りました。ピラニア・ナッティリー、フラミンゴ・シクリッドを90cm水槽で飼育できたころは大変満足感を覚えたものでした。
 そのころから雑誌やショップで見かけるディスカスが熱帯魚の王様と言われ、いつかは飼って見たいが難しそうという印象で、しかもブラウンのみでそんなに美しいとは思いませんでした。

錦鯉への浮気
 その後、熱帯魚は一時飽きて、当時ブームだった錦鯉を庭で池を掘り飼育しました。地元愛好家で品評会に出品するほど熱を入れたが、お金持ちには勝てず、また当時の庭師の池は景観先行で、鯉の飼育用には向かない浅い池を作ってしまい、冬越し出来ず何匹も殺してしまいました。その後、次第に仕事が忙しくなり、錦鯉も飼えなくなり、長い長いブランクの時期に入りました。

磯釣りに熱中
  仕事の方も辞令による配置転換で時間が取れるようになり、いつかはやってみたかった磯釣りに興じ、全日本磯釣り、投げ釣り団体に所属するなど10年程のめり込みました。

熱帯魚再開
 当時のステンレス枠の90cm水槽はその間も玄関で金魚を買い続けていましたが、新たに金魚を買い求めにショップを訪れ、熱帯魚温室を覗いたら、昔はいなかった多くの魚が泳いでおり、その中でも、アフリカンシクリッドのアーリーやピーコックにやたらと目が向くようになりました。早速90cm水槽を新調し、アーリーを買い始めたのですが、すぐ成長し、あの独特の産卵行動でマウスブリードのメスから稚魚を取り出し何回か繁殖に成功しました。
 あまりにも飼育繁殖が容易だったので、すぐにあきがきてしまい、ふと昔から一度は買いたかった熱帯魚の王様と呼ばれるディスカスを飼ってみたいと思うようになりました。

ターコイズ・ディスカスとの出会い
 熱帯魚雑誌を見るとちょうど当時ブームになっていたターコイズ・ディスカスの有名某ブリーダーがなんと地元にいるではありませんか。さっそく出かけ、下見をしました。全身ブルーターコイズの色彩に目を見張り、昔のやや黒ずんだブラウンとは行ってくるほどの違いでした。しかし当時の感覚ではあまりにも高価だった印象でした。
 欲望には勝てず、ついに7、8センチのターコイズ幼魚を4,5匹買い、60x45x45の水槽で飼育を始めました。1年程順調に成長しすぐにペアができ産卵、稚魚育成に成功しました。地元で繁殖したディスカスですから当地の水に馴染んでおり、飼育は容易でした。
 これで飽き足らず、ショップへ足を運んだとき目にしたものは、ヘッケルやブルーや、グリーンといったワイルド・ディスカスでした。今で言うロイヤル固体ではなかったが、特にブルーディスカスのしりびれの自然の赤地とブルーの縞模様が強烈に印象に残り、憧れが始まりました。

単身赴任中断
 その後平成3年4月に東京へ単身赴任の転勤命令が出、2年間勤めました。当時4本ぐらいの水槽にターコイズディスカスや、アーリーの稚魚を育成中でしたので、稚魚はすべて近くのショップに買い取ってもらい、90cm水槽2本にターコイズや、アーリーの親のみ残し、タイマー給餌で2週間に1度帰郷したときに水替えし、飼育を続けましたが、アーリーはサーモスタットの故障で冬場に死なせ、ディスカスは水質の悪化で死なせと、中断をやむなくしました。

みたび再開
単身赴任が終わり再び、ディスカス飼育をターコイズ系から再開したわけですが、すでにディスカスブームは去り、地元では最先端のディスカスはなかなか手に入りにくい状況でした。単身赴任時は東京周辺のショップを多く見学しました。しかし、これといった印象に乏しく、帰郷してから出張帰りに立ち寄った、大阪のペットバルーンを見たとき、衝撃が走りました。洗練された設備と圧倒的なディスカス水槽群に状態の良いディスカスが豊富に展示・販売されていました。最初に訪れた時の季節はワイルド・ディスカスのいない季節で4月か5月ごろで、たぶん平成5年だったと思います。タンクブリードものが多く、ローウィン・ヤット・サニーやドイツ・ムストフの魚が印象に残っています。

ワイルド・ディスカスの衝撃
 ワイルド・ディスカスも直接買付けで10月以降入荷するということで、その年の秋以降から毎年入荷日に石川から大阪までの通いが始まったわけです。それまでも何匹かのワイルド・ディスカスは地元のショップで購入飼育はしていましたが、タンクブリードと違って飼育・繁殖はまったく同様ではありません。簡単にいかないところがますます探究心に火をつけます。
それでも、購入時10センチ足らずの何の変哲もないアレンカー系が真っ赤なロイヤルアレンカーになったり、当時初産地入荷の純系ヤムンダ・ロイヤル・ブルーが、入荷時とは大化けの真っ赤な地肌に変身し、共にイヤーブックに掲載されるなどますますワイルド・ディスカスの魅力に取りつかれ現在に至っています

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