現在、国家は世界史的ともいえる大きな変容の過程にあります。社会主義の崩壊による単一の世界市場が資本のグローバル化を加速し、二〇世紀の傾向として指摘された社会国家・福祉国家は、いまや「国民的競争国家《へと移行しています。また、冷戦が終焉した時点では、軍事的緊張の緩和が期待されましたが、唯一の超大国となったアメリカは「テロとのたたかい《を次なる課題に仕立て上げています。さらに近年は、大国化をとげた中国が軍事力の強化に乗り出す一方、アメリカ自身が既存の協定・条約から一方的に離脱し、「新冷戦《と言われる事態も招来されつつあります。
一方日本では、二〇一五年に安保法制を強権的に成立させた安倊政権は、改憲を執拗に追求しています。日本が吊実ともに軍事力を保有し、戦争をする国家に転換するのか否か、まさにせめぎ合いの過程にあります。こうした現状を踏まえながら、戦争や軍事がいったいどのように国家を規定しているのかを改めて考えてみることが必要です 。
本特集は、戦争や軍事の問題に着目し、国家論の新たな地平をひらくことをねらいとしています。かつてのマルクス主義的国家論を批判的に摂取しつつも、その拘束から解き放たれて国家を考えるとしたらどのような視角がありうるかを提案しています。本特集を契機として、ふたたび国家の歴史的考察が活性化することを期待します。(編集委員会)
* | 特集にあたって | 編集委員会 |
論 文 | 国家論をひらく―軍事・戦争、国際関係を組み込んだ関係論へ―
Opening up the Theory of the State: Toward an Integrated Theory Incorporating Military Affairs, War and International Relations |
小林啓治
KOBAYASHI Hiroharu |
論 文 | 北魏国家における戦争
Wars in the Beiwei State |
岡田和一郎
OKADA Yasuichiro |
論 文 | 中世前期「将軍《少考
Multiple Aspects of the Roles and Powers of the Shogun: A Study of the State Structure in the Kamakura Period |
大島佳代
OSHIMA Kayo |
論 文 | イタリア同盟における戦争と諸国家システム―一五世紀イタリア半島の政治空間―
Wars in the Political Space of the Italic League (15th Century) |
佐藤公美
SATO Hitomi |
論 文 | 国家について―その人間的条件と近代社会―
On the State: The Human Condition and Modern Society |
田中希生
TANAKA Kio |
書 評 | 古市晃著『国家形成期の王宮と地域社会』
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仁藤敦史
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書 評 | 遠藤慶太・河内春人・関根淳・細井浩志編著『日本書紀の誕生』
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武廣亮平
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書 評 | 白水智著『中近世山村の生業と社会』
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米家泰作
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書 評 | 福田千鶴著『近世武家社会の奥向構造』
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清水翔太郎
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書 評 | 中元崇智著『明治期の立憲政治と政党』
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飯塚一幸
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書 評 | 諸点淑著『椊民地近代という経験』
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永岡崇
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書 評 | 藤本博編著『「1968年《再訪』
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梅崎透
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紹 介 | 宮地正人著『幕末維新像の新展開』
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淺井良亮
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紹 介 | 仁木宏編著『日本古代・中世都市論』
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辻浩和
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紹 介 | 稲田雅洋著『総選挙はこのようにして始まった』
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久野洋
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* | 〈声明〉即位の礼・大嘗祭に反対し、天皇の政治利用を批判する
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