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01 作業手順 02 適正配置 03 指導/教育 04 監督/指示 05 危険性/有害性調査 06 調査結果に基づく措置
07 設備/作業改善 08 異常時の措置 09 災害発生時の措置 10 保守管理 11 関心の保持/創意工夫 12 号外



2011年8月25日
異常時・災害発生時の措置
大規模災害から会社を守る   
§4.組織的思い込みが想定外をつくる


上野さん、M製菓の課長。
大井さん、工作機械・自動機メーカーの課長。
神田さん、電機部品製造T社勤務係長。
一同5年前に、清瀬の安全衛生教育センターでRST講習を受けた仲間


先輩 「前回で一旦打ち切り、別テーマを考えていましたが、是非、もう少し深く掘り下げて欲しいと電話を頂き続ける事にしました。お集まり頂いて有難う」
神田 「今回はさすがの私もお手上げでした。他山の石を勉強すると言っても石が大きくて、手に余ります」
大井 「それに1,2,3,4号機と並列に問題点が進行して行くので頭が混乱してしまう」
上野 「私も出来るだけ読んで来ましたが、一言で言うと当時の新聞記事と較べて『中身が濃い』てすね。でも大井さんが言われた問題点が並列進行で焦点が定まらないというのは私も同じなんですが、どうしたらいいですか?」
先輩 「どれから着手するか? どれに重点を置いてやるかは、我々若い頃に習ったABC分析の手法がいいです」
大井 「すいません。完全に忘れています。ABC分析ってなんでしたっけ」
先輩 「昔、品質管理で勉強しましたよね。簡単ですよ。現場に問題点がいろいろあった時に、個々の問題の金額とか、数量とかでヒストグラムを作ります。そしてその柱の大きい順にA,B,C,と割り付けて、一番大きいAから着手します」
大井 「あっ、そうそう思い出しました。私は特に一番爆発の程度の大きかった3号機について無意識的に注目し調べました。爆発した3機の中で最も被害が大きく、爆発は1回ではなく、数回あったようです。しかもその中の1回は水素爆発ではなく、小規模の核爆発だったようです。これについては東電、政府いずれも正式な発表がありません」
神田 「私、時系列記録を詳細に見ました。読売新聞(3月11日〜3月31日・サンデー毎日緊急増刊3「メルトダウン福島第1原発」・エコノミスト紙7/11号参照)と3紙を見較べましたら3月13日午前11時1分に3号機が爆発しています。そして2号機の水位低下があり、2時間半空焚き状態。その夜(時間不明)東電から官邸に電話があり−−“全員退去したい”と緊急事態の報告。これを受けた。枝野官房長官、海江田経産相ともに認めず。ただちに首相に連絡。首相は翌日14日の早朝4時に東電清水社長を官邸に呼び出し“撤退はありえない。合同で対策本部をつくる”と通告。後刻更に『東電が潰れる』と言う事でなく、日本がどうなるかという問題だ−−と語るとあったんですよ。これは何かあるなと直感、大井さんに電話して応援を頼みました
大井 「頼まれましたが、帰宅後何をどう調べたらよいか困りました。兎に角『東電ニュース・プレスリリース』を見れば何か判るだろうとサーチしました。ところが“全員撤退……”なんていう自社に都合の悪い事は書いてありません。これはどこの企業も同じかもしれませんが……。しかしですね……」」
神田 「しかし、どうしました?」
大井 「プレスリリースの中に『原子力災害対策特別措置法第10条第1項に基づく通報』というのがありまして放射線等が基準値を超えた等の場合ただちに国に報告するように定められています。もう一つあります。東電では放射線測定車があり、第1、第2の各発電所周辺のγ線強度を測っています。これは原子力規制法15条によるもので、基準値を超える場合はただちに国へ報告が義務づけられています。ここにその一部を持参しましたが、このデータを見るのも大変な作業でした。MPと言うのはモニタリングポストの番号です」
神田 「なる程これは凄いですね」

 (13日午前 3号機爆発前 正門の数値に着目)

東京電力発表資料より 
福島第一原子力発電所モニタリングカーによる計測状況(PDF 33.1KB)
大井 「その測定回数が13日は8回も行われ、いずれも高線量。そのうちに午後2時1分、今度は3号機が大爆発。もうこの世の終わりの様相だったと思います。また正体不明の白い煙「モヤ」については4回もリリースを発行。また注水しても温度は一向に下がらず、もうお手上げだ。逃げるしかない。恐怖心に全員がとらわれパニック状態になった。そこで13日夜中の電話となった。と、思います」
神田 「大胆な推理ですが、同感です」
大井 「しかし、まだあるんです。12日、死亡災害を出しています。これは新聞もテレビも報道のなかったところです。タワークレーンの運転手が運転席で倒れていました。ただちに病院に搬送しましたが後に亡くなっています。これは大変な(表2.3号機爆発後の数値正門で見較べる)ことです」 
福島第2原発で協力会社の作業員が死亡
神田 「まさか放射線障害では無いでしょうね」
大井 「監督署が入って調査済みと思いますが……。」
大井 「更にあるんです。東電社員が2名所在不明になっています」
上野 「それは初日の11日、地震があった際で爆発前ですね。ご家族はさぞ心配しているでしょう」 
福島原発行方不明社員2人の遺体発見
先輩 「大井さん、皆さんよく調べて呉れました。ありがとう。原子炉の爆発原因も大事ですがなんと言っても人間第一、安全第一ですね」
大井 「組織全体で原発は絶対安全だ。と思い込み.その上、スリーマイルでは水素爆発があったが、うちは『原子炉の構造が違うから水素爆発は無い。』という組織ぐるみの思い込みと行動が根本原因でした」(続く)
*さて、読者の皆さんは、どうお考えでしょうか? どうあるべきでしょうか?
福島原発事故を外から見て、しかも従来の我々のRST12の鍵から見て指摘して行きます。
異常時の措置と災害発生時の措置の間に新しく緊急時の措置が必要という視点です。

参 考


東京電力
・「プレスリリース一覧」
・「東日本大震災後の福島第一・第二原子力発電所の状況」
・「ふくいちライブカメラ」
  福島第一原子力発電所1号機〜4号機の映像/リアルタイム配信
・「プレスリリースと不適合事象の公表」
・「原子力発電所における不適合事象発生時の公表について」




厚生労働省
・「東日本大震災関連情報」
・「原子力発電所等で放射線作業を行う皆様へ」リーフレット

スポーツニッポン新聞社では復旧作業現場での過酷な労働の様子を報道しています。



スポニチ
・下請け会社に重くのしかかる過酷な“被曝労働”

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