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(1)安全第一はもう古い

(2)されど整理整頓

(3)安全は身のまわりから

(4)フォークリフトに関心を

(5)爆発は、忘れた頃に
   やってくる
安全作業の基礎講座
(6)“鴨カモ”“鱈タラ”でパトロール
   
−君にもできる 職場巡視−


 職場の安全パトロール(巡回.巡視)を行い、不安全状態や不安全行動を発見し、是正、改善をすることは安全の先取りであり、いわば職場の健康診断です。
 職場巡視は職場の管理監督者や、安全スタッフが行う重要な仕事ですが、それらの人々以外のだれでも安全巡視ができるようになっていただきたいのです。なぜなら職場巡視をすることによって、安全について本 当の理解が得られるからです。
 


だれが、何を、どのように

 安全巡視はいつ、だれがどんな方法で実施すればよいでしょうか。
 
 
いつ
 一般的に職場は仕事の進行と共に、整理整頓に乱れが生じたり、時間の経過と共に機械設備が劣化してきたりします。つまり、職場は自然のままに放っておく と各所が危険な状態に変化するものなのです。従って、適当な周期で安全パトロールをして、整理整頓の不具合や機械の不安全状態を発見して改善する必要があります。

 周期は事業場によって異なりますが.毎月一回の巡視が適当と考えます。

 
だれが
 通常、安全管理者や管理監督者.安全衛生委員会の人々が巡視にあたっていますが、これらの人々と一緒に、または作業者でグループをつくってパトロールしてください。

 
何を
 機械設備等の物の管理状態と作業方法・行動等、人間の状態について指摘します。
   
              
 
 
 
  
どのように

 パトロールの時間は40分から1時間が適当です。そしてパトロール後、15分間程度のまとめの時間をとります。巡視結果は職長、係長に報告して、全員に周知徹底しましょう。そして不具合な点について分担と期間を決めて改善しましょう。
 なお、パトロールはその職場の責任者と一緒に巡回するのが普通です。



パトロールの準備と心構え ]

 まず、服装を正しましょう。ヘルメット、衿、袖口、ボタン、靴ひも等を自己点検あるいは相互点検をして、腕章をつけます。服装が整うと、自然と心も整います。相手の職場を訪問するのですから失礼のないよう、それなりの態度、服装が必要です。

 パトロールは、相手の弱点や悪い点を指摘してやるという気持ちではなく、科学的で常識的な第三者の眼で不安全状態・行動を発見してあげるという気持ちで行います。
 なれないうちは、不安全状態など自分では発見できないのではないかと不安になります。また、重大な見逃しはないかと心配したりします。

 まず、チェックシートを2〜3回繰り返し読み返して頭に入れます。次に必要な心構えは『見る気になって見る』ということです。心ここにあらざれば見れども見えずです。どんなパトロールの名人でも、その気にならなければ問題点を見つけ出すことはできません。そして、危険予知の服でみるということを忘れてはいけません。

 「最近パトロールをしてもマンネリ化して何もチェックできなくなりました。」という声をよく聞きます。『見る気で見ても』見えなくなったというわけです。同じ職場を繰り返しているとだれでもそうなりがちです。こういうとき、「滑って転ぶカモ・・・」、「倒れて人に当たるカモ・・・」、「もし手を入れタラ・・・」、「スイッチを無意識に入れタラ・・・」などとカモ(鴨)、タラ(鱈)で先を見通しながら職場を見直すと、新しい発見が次々と出てきます。



チェックシートは進歩する

 パトロールに不可欠なものは、「腕章」に「シート」だと言われています。チェックシートは絶対に必要で、項目は10〜15ぐらいが適当でしょう。巡回して全部の項目が、○印になった時はチェックシートを改訂する必要があります。

  よく「パトロールをやっても最近マンネリでね。」とか「全部○ですよ.何とかシートを新しくしたいのだが・・・。」という声を聞きますが、チェックシートを改訂、更新することは難しいことではありません。

 改善された状態が、定着した項目は外して、代わりに「こうありたい、こうしよう」という項目を入れます。

 例えば「吸殻は落ちていないか」が定着すれば「ウエス、軍手が落ちていないか」、そして次の段階は「材料屑、紙類、ひもなどが落ちていないか」となります。



声をかけると危険なことも

 自分の職場の問題点は、なかなか自分では気が付きにくいものです。そこで、お互いに職場を見てもらう相互パトロールが効果的です。

 2〜3人でグループをつくり、一人は記録係としてチェックシートを持ち、ほかの人は巡視にあたります。パトロール中、作業者にやたらと声を掛けることは、危険な場合もありますから注意してください。しかし、作業者のほうから声を掛けられた場合は、「何か困っていることは?」などとたずねてみてください。これは大事なことです。作業者の声を聞くことによって昨日の出来事なども把握できるからです。

 相互パトロールによって全員の安全意識の向上と安全に対する真の理解が体得できます。


 参考チェックシート(クリックするとpdfファイルをダウンロードできます。)
      相互安全パトロールチェックシート
      5S・安全チェックシート
安全作業の基礎講座
(5)「爆発は、忘れた頃にやってくる」
   
−溶剤は少しの量でも爆発する−
このページには計算式が記載さております。
式の表示がずれる場合はブラウザの文字の表示設定をなるべく小さくしてご覧下さい。
 


お酒も爆発する!?

 有機溶剤を使用する職場が増えております。自分の職場では使用していないから安心だと考えていても、塗装をするとき、機械のメンテナンスで洗浄するときなど、一.時的に少量を使う機会は意外と多いものです。
 冬季は、締め切った部屋での作業とか、暖房機がありますので、少量の使用でも十二分の注意が必要です。不燃性の溶剤を除き.どんな溶剤でも蒸気となり空気と混合して爆発性の気体となります。そこに裸火、電気火花、グラインダー火花などの着火源があればただちに引火し、爆発、火災となります。特に恐ろしいのは、密室状態で、溶剤蒸気がいつの間にか部屋いっぱいにたまってしまったときです。大爆発となり、工場一棟ぐらいは破壊してしまいます。

 有機溶剤ときくと何か難しい化学式をイメージする方もいるかと思いますが、ガソリンと同じ仲間であり身近なものです。毎晩飲んでいる人もいると思いますが、エチルアルコールも同じ仲間なのです(法規では有機溶剤から除かれています)。つまり、お酒も条件さえそろえば大爆発を起こす可能性を持っているのです。



 
厳寒の屋外でも引火するガソリン

 どんな危険物でもその性質をしっかりと把握していれば、恐れることはありません。そこで、職場でよく使用される有機溶剤について調べてみましょう。
 溶剤は蒸発して空気と混合したとき、その割合によって爆発したり、単に燃焼したりします。自分の使用している溶剤類の爆発濃度と引火点は覚えておきましょう。
 メチルアルコールは、爆発濃度範囲が広いので注意が必要です。灯油、トルエン、ガソリンは1%台の低濃度で爆発しますから蒸発、蒸散させないよう容器の密封に注意して下さい。またガソリンは引火点がマイナス43℃と低く、厳寒の屋外でも引火する可能性があります。

 灯油は安全と思う人がいるかもしれませんが、灯油も爆発します。以上、いずれも「火気厳禁」 の取扱いが必要です。
品 名 引 火 点 爆発範囲(容積比%)
灯油  43〜72 ゚C      1.2〜6.0%
エチルアルコール  13゚C    3.3〜19%
イソプロピルアルコール  12゚C    2.0〜12.7%
メチルアルコール  11゚C    7.3〜36%
トルエン   4゚C    1.4〜6.7%
アセトン  −20゚C    2.1〜13.0%
ガソリン  −43゚C    1.3〜7.6%

 
             









 
どんなときが危険か

 大量の溶剤が蒸発して、部屋等に充満しているときがいちばん危険なのですが、どのくらいの量から大量と言えるのでしょう。
 床面積9.9u(約六畳)の部屋で、メチルアルコール容器のフタのすき間から蒸発して、床上50pの高さに蒸気がたまったとします。最低爆発限界濃度の7.3%になるには、わずか618_gです。
 式は簡単ですから、自分の使用している溶剤ではどうなるか計算してみましょう。
 (計算式参照)


  滞留溶剤蒸気気積(リットル)×爆発下限度  = 溶剤量(リットル)
     24,000÷(分子量÷比重)
 メチルアルコールの概算式
    5,000×0.073     ≒ 0.616
   24,000÷(32÷0.79)
   






     
(保管場所を決めて、しっかりフタをして保管)

                             
 また、密閉、充満した場合以外でも.爆発濃度範囲をもった溶剤空気混合蒸気はできます。
 例えばタンクのフタをあけたとき(図1)、または、溶剤・塗料を床面にこぼしたとき(図2)などは眼には見えませんが、確実に爆発濃度の蒸気層ができているので、できるだけ早くフタを締めたり.こぼれた溶剤をウエスなどでふき取る必要があります。ふき取ったウエスは後刻、少量ずつ焼却場などで処理してください。

 
                           











 
災害の事例

 災害の発生した光学関係の精密機械を製造している工場では、夕方仕事が終了すると、旋盤や工作機械をきれいに掃除し、翌日の作業に支障のないよう手入れをすることを日常的に行っていました。
 このとき、ホワイトガソリンを使って機械にこびりついた細かい切り粉等をブラシで掃除していました。この作業は、もう7〜8年も続いているので、だれもガソリンの危険性を気にしていませんでした。
 冬の日の夕方、窓を締め切った工場内で一斉に機械の洗浄が始まりました。ところが、この日はどうしたことかドーンという大きな音と共に爆発が起こり、部屋中がたちまち火の海となり、一瞬のうちに8名の死亡者を出す大災害となりました。
 調査の結果、部屋中にガソリン蒸気が立ちこめ、窓が締めてあったことも手伝い、爆発濃度となっていたこと、着火源として瞬間湯沸し器の火種が点火されたままになっていたこと、そして、この火種に引火したことが分かりました。
 8年間も引火しなかったからといって安心してはいけません。
 もしあなたの職場で、ガソリンを洗浄等に使用していましたら、軽油や洗い油、あるいはミネラルスピリット等に替えてください。また.着火源等の火気管理を十分に行ってください。

 このような溶剤流出防止セットを 
 備えた工場もあります。
 備えあれば憂いなし。
 (東京ホールセール梶j













東京工業大学環境保全センター
 健康安全と危険物質の関係

富士常葉大学環境防災学部 木原 寛 教授 のホームページ
 身の回りの化学「発火と引火」


安全作業の基礎講座
(4)「フォークリフトに関心を」

 フォークリフトは力持ちで.小回りのきく働きものです。もし突然故障したら工場の生産はストップ、たちまち製品や仕掛品の山となってしまうでしょう。
 フォークリフトはだれでも気軽に運転して使用することはできません。資格が必要です。これはどなたもよく知っていることですが、「自分は資格がないからフォークリフトのことはどうでもいい、知らなくても別に困らない」 ではなく.自分の周囲を毎日走りまわる機械に対して理解を深めておくことは災害防止の上でも重要です。
 フォークリフトの名称と構造について予備知識穏便の勉強をしておきましよう。

リーチ型って何?
 自分の職場のフォークリフトは何型か? フォークリフトにはいろいろなタイプがありますが、一般的なものとしてカウンターバランス型とリーチ型があると覚えて下さい。
 名称の由来は重心の支え方から来ています。重い荷物の運搬、そしてその荷揚げ作業には車体の強度とバランスが重要です。そこで後部に重い重り付けてカバのお尻のような形をしたカウンターバランス型と前輪をフォークの前まで延した構造を採用したリーチ型があります。
 
         
   カウンターバランス型               リーチ型
 







フォークリフトの構造は自動車と同じ?

 「フォークリフトは自動車と同じだよ。簡単さ」と言う人がいます。これはちよっと言い過ぎの言葉のようです。カウンター型(カウンターバランス型を略して以下こう呼びます)はハンドル、アクセル、ブレーキ、クラッチペダル、座席等、確かに自動車と同じ位置にあり.構造も似ています。しかしリーチ型は全く異なります。       

リーチ型はブレーキペダルを踏みながら走る?

 その通りです。ペダルを踏むとブレーキが解放され、足を外すと制動がかかります。普通の自動車と反対です。しかも、多くのリーチ型は後輪の左側のタイヤ一輪のみで駆動と方向転換をやっており、九〇度の方向転換ができます。
 だれかが「遊園地の子供自動車とそっくりだな」と言っていましたが、確かに似ている点もあります。

 自動車と一番異なる点はどこか?
 フォークリフトと自動車の異なる点は、フォークリフトという荷揚げ用の長い二本の爪とそのリフト装置があることです。そのため自動車と比較して倒れやすい欠点を持っています。 また、方向転換を後輪で行うために左折、右折の際に大きく後部を外側に振ることも自動車と異なる点です。

フォークリフトに搭乗する場合、ヘルメットは絶対必要か?
 フォークリフト搭乗し、運転を行う際には必ずヘルメットと安全靴を着用して下さい。
 ある会社に安全指導に出掛けたときのことです。フォークリフト運転者が数人で激論をとばしておりました。
 「A社ではヘルメットを着用して運転していたが、わが社でも着用すべきではないか?」「いやその必要はないだろう、それにヘルメットをかぶると首を動かしにくいし、天井部(ヘッドガード)とぶつかって困る」
「でも万一の場合を考えるとかぶるべきではないかな」「万一ってフォークリフトが倒れて放出されたときのことかい?、うちの職場では、そんな危険な路面はないね。それに法律でかぶれと決められているのかい。そんな法律があったら見せてもらいたいね。」
 
 まさに喧々ごうごうと言いましようか、熱のこもった討論でした。
 結論から先に申しあげましょう。ヘルメットトは絶対必要です。法律に準ずる通達で、このことを指示されています。
 (昭和五十年基発第二一八号)

事例に学ぼう

 事例を紹介しましょう。従業員は五〇〇人くらいの工場で運転資格をとったばかりのA君は十九歳、.とても明るい青年です。昼休み直前フォークリフト(カウンターー型)で荷物を運び終わり、フォークリフトを定位置の置場に戻すべく運転中でした。この日はすべて順調に運び心配していた昼前の運搬作業も時間どおり終了して、後は食堂に行くだけでした。
 確かに気は緩んでいました。やや長い距離を走ってきて左折、これで駐車場も近いという地点で、A君はややカッコイイ運転ぶりを見せようとしてコーナーを左へ曲がった途端、横転してしまい、フォークリフトから投げ出されて路面に頭部を激突させました。しかし、幸いなことにフォークリフトはやや前方で倒れ、下敷になるのをまぬがれ、さらに、ヘルメットを着用していたので頭部も無傷で肩に打撲を受けただけで一命を取りとめました。
 後日、A君は「あの時、ややうわついていました。コーナーで減速せず、時速25〜30qで曲がっただけで簡単に倒れるもので.すね」と述懐していました。
 フォークリフトは、その場の路面状況(傾斜や凹凸)で倒れることがあります。もちろん荷物をフォークリフトで高く揚げた状態では重心が高くなりますので、そのままでの走行は危険です。
 ところで、ヘルメットにはそのほか、荷崩れの際の頭部保護という役目もあります。フォークリフトに関心をもたれる方はぜひ先輩から「フォークリフト運転士テキスト」を借りて勉強されることをお薦めします。
 そして運転資格試験に挑戦して下さい。

※写真資料は小松フォークリフト潟zームページより ※http://www.lift.co.jp/eindex.htm



株式会社 シスコップ
 エリア・アラーム:作業者とフォークリフトが接近すると警報が鳴る装置

これまでの掲載分*画像は省略しております。
 安全作業の基礎講座(1)「安全第一」はもう古い!?

一九〇六年、米国最大の鉄鋼会社、USスチール社は、過去に例を見ない新工場(ゲーリー工場)を完成させました。
 かねてから、工場には腕や足を大災害でなくした従業員が数多くいて、その多くは黒人やメキシカンのブルーカラーの人たちでした。
 敬度(ケイケイン) なるクリスチャンである副社長のエルバート・ジャッジ・ゲーリーは 「彼らも同じ神の子である。神の子にけがや災害による死亡などあってはならない。新工場はけがのない絶対安全な工場を作ろう」 と考え、先頭に立って 「安全第一、品質第二、生産第三」 をスローガンとして、設計の段階から、建設施工、設備搬入、レイアウト、据付運転にいたるまで安全第一主義を貫き通し、工場を完成させました。操業を始めたところ、大変働きやすい工場であり、災害は激減しました。一年を経過すると、なんと今までより生産効率が上がり利益も大幅に増加したのでした。
 この話が大評判となってアメリカ中に伝わり、各地から多くの経営者や技術者が毎日のように見学に押しかけました。さらに、当時産業面での先進国である英国からも、続々と見学者が数年にわたり訪れました。
 わが国では大正の初め、古河鉱業の小田川全之が採鉱・製錬技術とともに、セーフティファーストの理念をアメリカから持ち帰り、 「安全専一」 と訳した標示を足尾鉱業所に掲げ、安全専一運動が始まったのです。そして、一九一六年 (大正五年) 前逓信省管理局長の内田嘉吉が訪米、つぶさにゲーリー工場の安全活動を見学、その経営方針に目を見張りました。
赤信号みんなで渡れば
 次に、企業を構成する個々人に目を向けてみましょう。
 どうもわれわれ日本人は、仲間と一緒なら少々のルール違反をしてもいい。と考える甘さがあるようです。
 これが災害の大きな原因になっています。つまり、不安全行動の多くはこのような安全管理の甘い企業にみられます。 フォークリフト運転でヘルメットを着用していない職場がそれで、 「赤信号、みんなで渡れば恐くない」 を実践しているのです。
 この言葉をこのまま肯定していては、いつまでたってもルール違反はなくならないと思います。どうでしょう、この言葉を否定する標語を作って下さい。考えてみて下さい。
 若い女性の職場で、この話をしたら、手を上げる人がいて 「できました!赤信号みん なで渡れば恐くない。だけど私は渡らない!」
 素晴しい言葉です。
 私も負けずにいろいろと考えてみました。言いたいことを短くまとめるのは難しいものです。しかし、ついにできました。 「赤信号みんなで渡れば一人死ぬ!」
 いつも事故やけがもなく渡っていたが、ある日突然最後に渡った一人が車にひかれた。よく見ると、その人は老人だった、幼児だった。弱者が犠牲になった。
 これが災害の現実です。弱者がみんなを代表してけがをしてしまうものです。
 職場でも、全く同じことです。大多数の安全感覚の甘さ (ヘルメットをかぶらなくてもマァ大丈夫だ、今まで無事にやってきたから…) が、一人の犠牲をつくってしまうのです。
 一人ひとりが安全について真剣に考え、ルール違反を見たら、 「やめよう」 と言う勇気を持っていただきたいものです。
  「赤信号みんなで渡るな!止め男」 になって下さい。



 安全作業の基礎講座(2)「されど整理整頓」

 職場に入りたての頃、整理・整頓という文字を見て、何かおもはゆいような気がしたことがありませんか?更には清掃・清潔・躾等という言葉も付け加えられている職場もあります。どこか小学生の頃の夏休みの生活目標のような、いい年の大人が今更躾といわれてもかえって困惑してまうということがなかったですか。
              
  どうも目的と手段が入れ違って、整理整頓の定義とか難しい言葉が出てきてな おさらでした。急いでいるのにスパナが見つからない、台車の角に足をぶつけて しまったなどの経験はありませんか。時間の無駄を省き、安全確保の為に行うのが整理整頓の目的です。例えば従業員50人の職場で1日を通して1人10分間捜し物をすれば年間二千時間を越えます。

 
『整理整頓の第一歩 表示標識』                                            
 職場の組織だった活動として整理整頓を進めるには計画を立てたり、要不要の判断がしにくくかったりで準備が大変です。本格的に進める前にまずは自分の身の回りの工具類や材料、備品置き場などを分かりやすくする為の表示標識作りから始めましょう。(これは整頓にあたります。この際整理は少し後回しにします。)

  @名前表示−部・職場・工程名など
  A番号表示−機械・台車・リフトなどの
  Bスイッチ−スイッチと機械・照明器具などとの対応
  C棚表示−棚の上下どちらにあるか
  D内容表示−ロッカーなどの内容物

  等々の5項目くらいについて、初めてこの職場に配属された新入社員のつもりで見回して下さい。表示標識が整備されると、何がどこにあるか、どこにしまうかが判るようになり、次第に日常使わない物が隅に追いやられます。後回しにしていた整理をしましょう。

 『表示標識は自分で作ろう』

 自分で作ると言ってもマジックや筆で文字を書くのではありません。ちゃんと活字で作ります。難しくはありません。
 作成方法@−テープテイターを使う最近ではだいぶ普及しているので特に説
          明はいらないでしょう。幅数ミリから2センチほどのカラーテープ
          にワープロ感覚で印字できます。
       A−カットレタリング粘着性のある塩ビのカラーシートを使って文字
          を切り抜いて作ります。はじめはちょっと大変ですが数時間の
          練習で誰でも作れるようになります。
          ショーウィンドーのディスプレーや公共施設のカラフルな表示を
          指で触ってみてください。ほとんどがカットレタリング手法によるものです。

 この際、文字だけではなく色も活用ししょう。
   @一般表示−青
   A注意禁止−赤
   B安全衛生−緑
   C品種銘柄−@AB以外の色
  文字を読まなくても色を見ただけでわかるようになります。

 
『表示標識のポイント』
  @5m離れて判読できる
  A文字数は少なく、一目でわかる
  B外国人も含め、誰にでも分かりやすいよう二カ国語表示、シンボルマーク化
 必要以上に大きく表示することはありませんがいちいち近づかないと読めないようでは整頓の意味がありません。また機械のナンバー表示に「bR」のように「avという文字をつける必要はありません。「3」と表示されていれば番号だということは分かります。また、外国人労働者も増えてますので外国語表示も必要でしょう。

 
『手作り表示標識の効果』
 @環境改善−みやすく、きれいな表示
 A災害減少−自分達で表示をするので危険箇所が分かる。
 B応用無限−QC・TPM活動の推進技法として活用することで、品質向上、コストダウンなどに役立つ。

 しかし、一番の効果は自分達の職場を自分達で整理整頓し、快適で働き易い職場が実現したという参画意識が生まれ、職場の皆さんが生き生きとしてくることです。



 安全作業の基礎講座(3)「安全は身のまわりから」

 毎朝、職場でのTBM(ツール・ボックス・ミーティング)を実施されていると思いますが、今回はそのツールボックスあるいは、写真のような工具整理棚を点検しみましよう。

 1、ドライバーは安全診断のバロメーター
   どこの家庭にもある「ネジ回し」、一番気軽によく使う工具です。従って一番数多く備えられているもの
   ですが、それだけに管理もややずさんになりがちです。

   すべてのドライバーを取り出して、点検してみましょう。
 
 @マイナスドライバーの先端が摩耗していないか?
   もし左図のようなドライバーが一本でもあったら、自分の職場は、まだまだ安全意識低い、と考えて
   下さい。
   私が工場診断で真っ先に見るものが、実はこのマイナスドライバーの先端なのです。いつも購入時と
   同じように研がれているか、この先端まで管理の目が届いていれば、その工場全体は安全管理も
   相当なものと判断しております。

 A柄の部分が割れていたり、テープを巻いて補修をして使っていませんか?
   これは時々見掛ける現象なのですが、ドライバーをタガネやクサビの代わりに使用したりして、
   柄の頭をたたき割ってしまったケースが多いのです。このようなドライバーは思いきって廃棄しましょう。

 B ドライバーの途中を曲げていないか?
    狭い場所のビスを緩めるために、やむを得ずドライバーの途中を万力等で曲げて使用しそのままに
   している。イヤ、いつかまた使うからと考えて大事にとっておく。

  AとBは明らかに工具の使用方法を誤っています。不安全行動をやっている証拠ですから廃棄すると
  ともに、掲示等で呼びかけましょう。狭い所で使用するドライバーとしてはフレキシブル軸の付いたドライ
  バーがありますから、それを使用して下さい。

  プラスドライバーも同様ですが再研磨が難しいので、摩耗したドライバは工務課に依頼するか、再購
  入しましょう。

 2、プロはモンキーを使わない
   次によく使用する工具がスパナです。特にモンキーレンチ(モンキースパナ)はいろいろな大きさのボ
  ルトに使用出来るので、こればかり使っている職場もありまわが、プロは専用のソケットレンチ(ボックス
  レンチ)等を使います。

   ポイント
  @スパナをハンマーの代わりに使用していないでしょうか?
  A相当古いスパナでガタのきているもの、モンキーレンチで調整用ナットの回転が固いものなど
    ないでしょうか?
    調整用ナットの回転が固いと、つい間隔をピッタリ合わすことが出来ず、ボルトの間に隙間が出来て、
    使用の際、滑ったりしてけがのもとになります。
    錆びているボルトをモンキーレンチを使って体重を掛けて押す姿勢で緩める(または、締める)。
    この組み合わせでよく災害が発生しています。
    たかがボルト締め付け作業と思ってはいませんか。高所や、回転体の付近では「命取り」になる
    こともあります

 3、命取りになりかねないハンマーとタガネ
   東北地方のある工場で十九歳の青年がハンマーとタガネで、ドラム缶の天井部の切断開口作業を
    していました。
   四本済ませて、小休止の後、五本目に掛かった時、突然眼に何かが飛び込んだ感じがしました。
   その時はあまり痛みを感じなかったので、医務室にも行かなかったのですが、夜中に痛み出し、
   眼科に駆けつけました。眼球の奥に異物が入ったらしく、どうしても取り出せず、翌日、仙台の
   大学病院に入院することになりました。
   ここで鉄片が原因だと分かりましたが、強力な磁石でも取り出せず、とうとう一週間後手術で片目を
   摘出することになりました。放って置くと両眼失明になるということです。
   タガネの頭部のカエリが折れて眼に飛び込んだものでした。

   このほかにも、ハンマーの柄が抜けて、相手の頭に当たり大けがをした事例は大変多いので、
  ハンマーとタガネは特に使用前点検を行って下さい。
   @ハンマーの柄がガタついていないか。クサビ゙が抜けていないか。また、柄が割れていないか?
   Aタガネの頭部のカカエリが無いか。刃の部が丸く摩耗していないか?
 
  最後にクイズを出しましょう。
   ビス締め、ナット締め、タガネとハンマーで切断作業、これらの作業では、それぞれどんな保護具を
  必要としますか?

 (回答)ドライバーとハンマーは素手で取り扱い、スパナは手袋を着用しましょう。
  タガネのハツリ作業ではタガネを持つ左手だけ手袋をし、右手は素手でハンマーを、
  そして保護眼鏡と保護帽が必要ですね。