人形の御紹介
日本の人形の伝統的な素材の木や和紙、絹布、胡粉(貝の粉末を膠で練り上げたもの)と細部の成型に石粉粘土を使っています。
布は明治、大正、昭和時代の初期の時代裂を使い、先人のすばらしい色彩感覚やデザインを現代に蘇らせるとともに、年月を加味して落ち着いた風合いの裂が持つ魅力を引きだします。
胡粉について
胡粉は貝殻を焼いて作った白色の顔料で、主に日本画に使われています。胡粉を練り上げるときに使う膠は動物性のたんぱく質が原料で、精製されたものがゼラチンです。古代より木材の接合などに使われました。「日本人形の美はこの胡粉の持つ白色の美である」とまで言われてきました。
「可愛い、可愛い、だけの人形は創りたくないの。」友達になりたての頃、可愛らしいふさ子さんの口から、ふと洩れた言葉に驚きました。人形とは美しく愛らしくあるべきもの、と思っていましたから・・。 それから幾歳か、やさしい中にも意志的で表情豊かに、人間と対等の人格を主張しているふさ子さんの人形達に鼓舞され、真の愛らしさを教えられました。創り手のふさ子さんに似て、温かく奥床しい輝きを湛えた神秘的な人形達は人形芸術の理想を追求した独特の造形美で観る人を魅了することでしょう。 ~1995年 Mさんより 個展によせて~