第四回やさしい社会問題  9月28日(内容紹介) 

「日韓の関係について考える・その@」

●今回の講座は、現在、政治的・経済的に大きな問題となっている日韓関係について考えてみようというものでした。今の状況を冷静に見ながら、日韓の関係について、みんなで自然体で考えることを前提に、意見を出し合いました。

●まず最初に、Nさんが、日韓の歴史について、資料をもとに話をされました。

「自分は韓国ドラマが好きで、それがきっかけで日韓の歴史や文化について関心を持つようになった。特にハングルを作った世宗大王はすごい人だなと思う。ハングルは歓迎されたとばかり思っていたが、両班など支配階級の反対などもあったと聞いて、歴史はいろいろな視点で見る必要があると思う。

ハンナの古代史講座や京都の歴史の講座にも参加して、古代から、朝鮮と日本のつながりが深いことがとてもよくわかった。流鏑馬、八咫烏、四神図なども古代の高句麗に起源を持っている。

近現代については、植民地時代、日本が朝鮮に対してしてきたことを日本人はあまり知らないのではないか?土地調査事業、創氏改名、強制連行など、どれをとってもひどいことをしたと思う。1945年のポツダム宣言に<朝鮮の人民の奴隷状態に留意し、、、、。>という文言があるが、国際的にも戦前の朝鮮の人たちが奴隷状態に置かれていたことが認識されていたのだということがわかる。「名家の娘ソヒ(日テレ)というドラマがあるが、その中で、日本統治時代の朝鮮の人たちが置かれていたひどい状況がくわしく描かれている。

(香山リカさんの新聞記事と慰安婦問題の政府対応の歴史一覧を紹介して)、今、歴史否定主義やヘイトスピーチ、安倍政権の韓国への対応など、日韓の歴史を正しく理解しない状況があるなかで、日韓の正しい歴史についてしっかり考えていく必要があると思う」

●続いて、Sさんが、ご近所のつきあいや旅行などで見聞きした韓国にかかわる話についての自分の気持ちや映画「主戦場」を見た感想などを話されました。

「近所でつきあいをしている人に、大学留学で日本に来られた韓国の人と結婚し、子どもも韓国風の名前にして、韓国にも里帰りしたりしている方がおられる。最近の韓国についての状況などを見るにつけ、日本人として胸が痛い。

この前、海外旅行ツアー(クロアチアなど)に行ったが、そのツアーで一緒になった人が、「韓国ドラマってワンパターンだね」とか「文大統領ってひどいね」などと、韓国について否定的な発言をするのを聞いたが、きちんと反論できず黙って聞いていた。そういう時何をいうべきだったのか、今も自分の中で葛藤がある。また、そのツアーでは、ボスニアヘルツェゴビナのボスニア紛争の戦跡にも行ったが、同じ人が「あれは余分だったね」というのを聞いて、歴史をきちんとみようとしない態度にも疑問を持った」

Sさんは、続いて、映画「主戦場」について話をされました。

「見るきっかけは、朝日新聞の池澤夏樹さんの記事で、映画のことを的確に紹介していて、ぜひ見ようと思った。監督のミキ・テザキさんは日系アメリカ人で、彼は今、出演者(右派)の何人かから訴えられている。出演者たちは、大きく慰安婦否定側と肯定側に分かれていて、どちらも、映画では公平に取り上げられ、ディベート風に編集されているが、中でも私は日系アメリカ人の日砂恵ケネディさんの話が印象に残った。ケネディさんは、もともと慰安婦を否定する側の考えだったのが、南京大虐殺についての疑問をきっかけに、自分の考えは間違っていたのではないかと思うようになったということ。以前、自分が慰安婦を否定する考えになっていたのは、自分が所属している日本のことを悪く言われるのが嫌だという感情に基づいていたのではないかと思うと言われていた。私も、感情論ではなく事実をきちんと受け止めていく姿勢が大切だと思った。その意味でも、パク・ユハさんの「帝国の慰安婦」は、事実関係を冷静に書いていて読むべきだと思う。韓国の慰安婦が戦後長い間、声をあげられなかったのは韓国で根強い儒教の考えも影響しているのではないかということや、1965年の日韓条約で日本側が個人補償(個別対応)の話をしたのに韓国政府が断って国家間賠償になったという話など、日本の責任だけでなく、韓国側の問題点も客観的に書いている。現在、韓国で名誉棄損で裁判になっている。この映画で思ったのは、事実の一部分だけ取り上げて全部が嘘のように言う姿勢は間違っていると思った。客観的事実を知り、冷静に考えることが大切だと思う」

Sさんは最後、朝日新聞の文化・文芸欄に連載された金時鐘(キムシジョン)さんの記事を紹介して話を終えられました。(次回の講座はこの金時鐘さんの記事をもとに、もう少し日韓の問題について考えようということになった)

 

●Nさん、Sさんの話を聞いて、参加者がそれぞれ感想や意見を出し合いました。

●Uさん「今回のお二人の話を聞いて、もっと韓国の歴史や文化などを映画や本などで勉強したいと思った。韓国のことをもっと知りたい。知らないことが多い。

阿部首相と文大統領は、どちらも極端な言動をする指導者で、両国の関係を悪化させるばかりで、政治家としての役目をはたしていないと思う。戦争の加害のことで、どこまで謝ればという議論もあるが、戦争で被害を受けた人の思いを深く知らないといけないと思う。加害者の側がこれでいい(これで終わり)というのは、違うのではないかと思う」

●SKさん「Sさんが紹介してくれた『帝国の慰安婦』は以前読んだ記憶があるが、内容を忘れてしまったので、ぜひもう一度読んでみたい。韓国嫌いとかよく聞くが、政治レベルではなく、民間どうしのつきあいがすごく大事だと思う。シベリア抑留された人が、ロシアの民間人に親切にされたという話を聞いて、同じ人間どうし、助け合おうという気持ちは同じだと思うので、そこを大切にしていけたらと思う」

●Fさん「以前、教職についていた時、子どもたちに、戦争時の日韓のことなどを話したことを思い出した。(Nさんの話にあった)八咫烏のことは以前から興味があって、北アメリカのネイティブアメリカンにも同じような伝承があって、面白いなと思う。ハングルのことも、(権力をもつ)両班の人が反対していたのは知らなくて、いつの時代、どの国でも、権力者のそういうこと(抑圧)はあるのだと思った。

記事の中に「若い人は無関心」とあったが、本当に若い人たちが日韓の問題に無関心なのだろうか。問題に関心がないのではなく、今の社会のなかで大切にされておらず(年金問題なども含めて)余裕がないのではないかと思う。もっと中高年の人がそういう事を考えていくべきではないかと思う。

●Nさん、SKさん、Fさんの話を受けて、「今の日本は、一番しんどい思いをしている人のことばを聞くような社会になっていないでのは、、」「今の日本の政治の在り方が、若い人の無関心をつくっている」「今の日本は、戦前の状況とよく似てきている」「常に戦争の被害者の立場にたって考えていく姿勢が大切。ドイツの大統領は、毎年ポーランドの戦争慰霊祭に出席して(加害を)謝り続けている。日本の政治家も見習うべき」などの意見が出されました。

次回は、日韓問題についてさらに、さまざまな意見交流をしたいと思います。