第6回やさしい社会問題 「環境問題について考える」

 

●今回の講座は、近年、世界的に大きな関心事となっている「地球環境問題」について考えようというものでした。初めに3人の参加者が新聞記事などをもとに報告・提言を行い、そのあと、参加者の自由討論を行いました。

●最初に、コーディネーターのMさんから、資料に基づいて、「パリ協定」の概要についての簡単な説明、国際環境NGOグリーンピースの活動紹介(石炭火力の増大への取り組みや福島の放射能汚染の調査など)、福井県年縞博物館の「水月湖年縞」の紹介などがありました。水月湖年縞は、7万年の間に湖底にたまった微生物などが縞のように積み重なったもので自然環境(気温、水温、植生など)や自然災害(地震、津波、洪水、火山活動)などの地球の歴史と気候変動を考える上で貴重な資料になるとのことでした。

●次にFさんが、新聞記事などにもとづいていくつかの話をされました。

・世界の平均気温は現在のままだと2053年頃に3.2℃の上昇が予測される。パリ協定で各国の温暖化ガス排出削減案が決められたが、米のトランプ大統領はパリ協定離脱を通告している。米国内では反発もあるが、、、。

・西日本豪雨や各国で起こっている森林火災や熱波なども温暖化が一因との指摘もあり、温暖化のもたらす影響は世界的に広がりつつあると感じる。

・環境問題に熱心なフランシスコローマ教皇が来日した。今や環境問題は、国家や宗派を超えた共通の価値観となりつつあり、環境問題(地球の存在)が、分断された世界を統合するシンボルになる可能性がある。

・トランプ大統領のグリーンランド買収が話題になったが、グリーンランドの地元紙は、荒唐無稽な話ではなく、温暖化で開発が進むと予測される北極圏への進出を加速させる中国とロシアへの警戒感が背景にあると指摘する。

・グリーンランドの地元から見ると、地球温暖化は、危機の面だけでなく、地元に恩恵をもたらすという側面もある。海水温の上昇でマグロ・サバなどの漁獲量が増して漁業従事者が増えたり、融解が進む氷河目当てに観光客が来て、氷解した氷河の氷を販売するなどの観光業が盛んになったりして、失業率が下がる。また、溶けた氷河の水で安全な水力発電が盛んになるということもある。こうして、経済的に自立できれば、国家として独立できるという期待も地元民にはある。一方、温暖化で伝統的な生活が脅かされたり、環境が変わることによる動植物への影響を懸念するイヌイットの人たちもいる。

●Sさん

日本で石炭火力の比重が大きくなっているのはなぜだろうと思う。(福島の事故で)原発が使えないからだろうが、自然エネルギーへの取り組みも他国に比べて進んでおらず、日本の取り組みは遅れていると思う。小泉環境相も、他国から指摘されても(日本の取り組みを)ちゃんと答えられていない。自分の国の利益しか考えてない姿勢が問題だと思う。グリーンランドの話も、地元の生活や利益と環境問題をどう両立させていくのか、考えさせられる。

新聞に「SDGs(持続可能な社会の目標)」の記事が載っていた。17の項目があげられているが、少しでもやっていければと思う。CO2を吸収しているのは主に海と森林なので、

海や森林を守る取り組みが大切だと思う。

●続いてSさんは、いくつかの新聞記事をもとに話をされました。

・南太平洋の島国ツバルでの環境NGOの活動をきっかけに、環境問題に取り組み、鹿児島県の山あいの村で、自然農と自給自足の生活をする遠藤秀一さん。お金に依存せず、自然の力だけで生活するツバル流のエコライフを実践することで、低炭素社会の実現を目指す。

・著書で、「海洋プラスチック汚染」について警鐘を鳴らす中嶋亮太さん。海に投棄されたプラスチックゴミを魚などが食べ、人間の口にも入る。海に浮くマイクロプラスチックは5兆個以上、銀河の星の数より多い。さらに、ゆくえがわからないプラごみは全体の99%以上。使い捨てプラスチックを減らし「プラなし生活」をすることで、未来へのツケをなくしていかなくてはならないと中嶋さんは訴えている。

・全国で初めて「ゴミをゼロにする」という宣言をした徳島県上勝町。ゴミを45分別してリサイクルし、リユース(再使用)やリデュース(発生抑制)も併せてゴミゼロの取り組みを進めている。ゴミゼロ宣言の取り組みは、上勝町に続き、福岡や熊本などいくつかの市町村で行われているが、単一自治体だけでは限界があり、国全体の取り組みが必要だ。

・プラゴミの大半は中国で処理されているが、最近は東南アジアの山中でも処理されているらしい。日本は大量のプラゴミを出しているが、自国で処理することを考えていかないといけない。

●SKさん

この前、SDGsの研修を受けた。17の項目のうち、項目を5つ上げて、自分の気になる点や取り組みなどを書いて、発表しあう。それぞれ、人によって、ついている仕事などによって、関心のある項目や着目点が違うように思った。SDGsのビラは、公共機関の掲示板などに貼られたり、配られたりしているが、まだ周知は弱い。私は、温暖化の問題や原発の問題などに関心があるので、それに対する行動を考えたい。SDGsは国連の取り組みなので公共性があり、みんなで取り組みやすい。17の項目はそれぞれ関連していると思うが、持続可能な社会の実現という共通点を持ちながら、自分の関心のある項目から取り組んだらいいかなと思う。

●Uさん

自分にとって身近な環境問題は、やっぱりゴミの問題だ。例えば、商品の「包装」の問題。買物の時、2重、3重に包装するのを見ても、「(包装は)いらない」とか、積極的に声をかけられずにいる。旅行で泊まった旅館のトイレに、「環境のことを考えて、トイレットペーパーは使い切るようにしましょう」という表示がしてあった。小さなことかもしれないが、少しでも、(無駄をなくすように)自分たちの意識を変えていかないといけないと思う。ゴミ問題は、(商品などを)買う時から考えていく必要がある。

アマゾンの森林破壊のことが話題になったが、その地域の人にしたら、生活のためにやむなく(破壊してしまっている)ということもあるだろうし、経済の発展と環境保護との両立を考えないといけない。

一人ひとりの力は小さいけど、やれることからやらないといけないと思う。ネットで原発反対などと言うと、じゃあクーラー使うなとか極端な反応があったりするが、言うからには、自分の便利さをある程度犠牲にしても、実行していく必要がある。今の便利な生活が環境問題を生んでいると思うので、便利さを我慢することも考えていかないといけない。

●Nさん

アマゾンの森林の話だが、いらない木を切って、油がとれる木を植えていると聞いた。私たちが日常使っている化粧品に入っている油は、アマゾンの森林を破壊して作られている。また、韓国からのプラゴミなどの漂着物がひどいと知人が言っていたが、日本のゴミの漂着物だって多くあるのに、そこだけ言っている。人の国のせいにせず、自分たちの日常も見直す必要がある。食べ物を粗末にせず、食べ残しなども考えないと。

あと、牛のゲップも温暖化に影響していると聞いた。人間のも、、。ヨーロッパでは、肉のかわりに虫を食べるという、環境を考えた取り組みもあると聞いたが、、、、。

温暖化は、私たちが生きている間は関係ないと思っていたが、徐々に自分ごとになってきている。(平均気温が)2℃以上になったら解決不可能になる?

●Uさん

私は城めぐりが趣味で、例えは悪いかもしれないが、廃城になった城は、以前のような姿には二度と戻れない。それと同じように、一度失われたもの(地球という環境)は二度と戻ってこないと思う。どうしたらいいか、真剣に考えないといけない。

●Nさん

身近な、小さなことから始めるしかないと思う。買物で、袋や包装いらないと言うとか、、。

●SKさん

自分ができることからやっていくしかないと思う。私は、以前から、プラスチックの物は「まがまがしい」って思って、できるだけ使わないようにしている。衣類は天然繊維のものを買うし、お弁当もプラ容器に入っているものは買わない。ペットボトルも買っていない。

こうしたことは、人に強制するとか、えらそうに言うのではなく、「自分はこうしてる」っていうことを自然に言えればいいかなと思う。

●Sさん

この前、スーパーホテルに泊まった。そのホテルはエコに対する考えがあった。例えば、スリッパは使い捨てのものではなく継続して使えるしっかりしたものだったし、お風呂グッズも長く使えるものを置いていた。歯ブラシも、「使わなかった場合はフロントへお持ちください、お菓子と交換します」と書いてあった(笑)。旅行などで泊まるホテルを選ぶ時も、エコに配慮して選ぶというのも、一つの(環境保全)行動かなと思う。社会も、少しずつは変わってきてる部分もある。

●Fさん

私は、商売をするものとして、(包装など)過剰にはしたくないが、お客さんに求められてる部分もあるので、難しい面もある。でも、全部は無理でも、自分でできるところは(環境問題に)配慮しながらできればいいなと思う。

知人から聞いた話だが、中には「環境問題なんかどうでもいい」とか何でも自分には関係ないと切り捨ててしまう人もいるようだが、そうではなく、自分たちのこととして、少しでもできることからやっていかないといけないと思う。

●最後にコーディネーターのMさんから、「身近なことで、自分たちにできることからやっていくのはとても大事だと思うが、物を大量生産・大量消費している現在の社会の在り方にも目を向け、持続可能などんな社会を作っていくのかという、ビジョンや価値観も大切だと思うので、また、考えていけたらと思います」という話で、今回の講座はお開きとなりました。次回は「エネルギーについて考える」です。