第5回やさしい社会問題 「日韓の関係について考える・そのA」

 

●今回の講座は、前回に引き続き、現在、政治的・経済的に大きな問題となっている日韓関係に考えることがテーマでした。新たな参加メンバーも加わって、前回に引き続き、自然体ながら、新たな視点も含めて、いろいろと活発な話ができたと思います。

●最初に、前回Sさんが紹介してくれていた、朝日新聞の文化・文芸欄に2019年7月17日から15回にわたって連載された「語る〜人生の贈りもの 金時鐘さん」の記事(7回分抜粋)をみんなで読み合わせしました。

金時鐘さんは、韓国釜山で生まれ、幼少期を済州島で過し、1948年の4・3事件を契機に日本に渡り、大阪生野で在日朝鮮人として生きてきた人です。若い頃から在日の運動に参加するとともに詩作にはげみ、「地平線」「新潟」「猪飼野詩集」など数多くの詩集で、在日として日本で生きることの意味を問い続けている人です。参加者のだれもが、金さんの生い立ちと日本での在日としての真摯な生き方について、感じるもの、考えさせるものが多くあったように見受けられました。。

新聞記事の読み合わせのあと、コーディネーターのMさんから、金時鐘さんの詩集の紹介と金さんが日本に来るきっかけとなった「済州4・3事件」のことや在日韓国朝鮮人のことなどについて簡単な説明がありました。

最終4・3事件は、日本の植民地からの解放のあと、当時の東西陣営対立を背景に、南北の分断が進みつつあった状況の中で起こった、軍隊・警察・右翼青年団などによる済州島民虐殺事件です。3万人以上とも推定される島民が、共産主義運動組織に協力したという名目で、女性・老人・子どもの区別なく無差別に虐殺された悲惨な事件で、難を逃れようと数万人の島民が日本に密出国したと言われています。長く軍事政権が続いた韓国ではこの事件に触れることはタブーとされてきましたが、2000年に金大中政権のもとで4・3真相究明特別法が制定され、その後、盧武鉉政権の時に島民への公式謝罪や真相究明・名誉回復委員会の設置、4・3平和慰霊公園の建設などが行われ、4・3事件の犠牲者の名誉回復と慰霊、国内外への周知などがされるようになりました。

大阪の在日朝鮮人には済州島の出身者が多く、金さんのように4・3事件を経験した人も多くいて、現在では毎年、犠牲者を慰霊する集会が生野区で行われています。

Mさんの説明のあと、参加者の意見交換がされました。

Sさん

在日や日韓の関係のことなどは、重たい問題だけど考えていかないといけないと思う。テレビやネットなどでも韓国タタキが続いているが、一面的な見方で言っているように思う。それぞれ考えや立場も違うのだから、それぞれを平等に取り上げる必要があると思う。文大統領の支持率が下がったことをことさらに取り上げたりしてるが、安倍政権も似たようなもので大きな顔はできないと思う。日本にとって都合のいいことばかり取り上げたりしてるが、都合の悪いことも平等に取り上げるべき。文大統領の良くない言動ばかり報道してるが、日本も同じようなことがあるのに取り上げない。何かというとすぐバッシング的な報道するのも嫌だ。

朝日新聞の嫌韓についての論評をしている3人の方の記事を紹介。鈴木大介さん「父が嫌韓やネトウヨ的発言をするにいたった経過やそれを諫めることができなかった自分を悔やんでいる」、安倍宏行さん「韓国をめぐる報道のあり方は表層的で、ネタの面白さだけが優先され、本質的なことを扱わない。情報リテラシーが問われている」木村幹さん「叩けば屈するというような韓国への対応は終わり、新たな日韓関係を模索すべきだ」

嫌韓的発言をする人がどういう背景でそうするようになったのか、よく考えていく必要がある。今の嫌韓的状況がなくなって、日韓の関係が良くなってほしいと思う。日韓で歴史認識も違うが、互いが歩みよれるようになってほしい。

Mさん

1965年の日韓基本条約で日本は韓国と国交が成立した。しかし、その条約では、謝罪も賠償のこともまったく触れらていない。そもそも、日本政府は、1910年の日韓併合は、当時の大韓帝国が併合条約に調印した結果であり合法的だったと考えている。歴史認識に大きな違いがある。

Yさん

日韓併合は合法的ではないと思う。当時の日韓の力関係の中で日本が一方的・強制的に併合した。今の韓国と日本との関係だが、例えばアメリカは広島に原爆を落としたことを公式には日本に謝罪していない。しかし、だからと言って、そのことだけで、アメリカとの関係がすべてダメになっているわけではない。韓国も、日本が謝罪していないからということだけで、日本のすべてがダメというように言うのは一部だけで、多くの人はそうは思っていないと思う。この夏、一人で韓国に行ったが、接した人はみんな親切で、日本人だからといって避けるような人はいなかった。韓国の知人が日本で嫌な目にあったと聞いたこともあるが、政府どうしの対立を個人どうしの関係に持ち込むのは間違っている。

自分は韓国で在日によく間違われる。片言の韓国語で、韓国の人と親しくしながら旅行してるからかもしれない。今回、釜山、慶州、大邱に行ったが、日本人はあまりいなかった。

Mさん

自分は40年ほど前に韓国に行ったが、その当時は日本人はまりいなかった。反日的な空気は感じなかった。バスの中で知り合った青年が家に招待してくれて、お母さんの手料理をごちそうになった。お母さんは日本語が流暢でとても親日的だった。戦前、日本の総督府で働いていたそうだが、あまり嫌な思いをしなかったのではないかと思う。(日本人に普通に親切に接する)息子にもその影響があると思った。

Yさん

日本の若者は、韓国の文化を普通に享受している。東京の大久保なんか、日本の若者が韓国語で書かれた韓国グッズを買って喜んで身に着けている。グッズに書いてある韓国語を私が、それは「良い」という意味だよと教えてあげると、(韓国語がわかるというので)すごい尊敬された。文化面では、日韓はすごい近い関係になっている。

Nさん

ネットで見たが、韓国を嫌いと言ってる人が、キムチは好きと言っている。日本人も、政治的なことと文化的なことは別と感じている人が多いのでは?賠償問題や徴用工問題のことももっと知る必要があると思う。知らないで、ネットや報道などだけで、韓国嫌いと言ってる人もいるし。

Sさん

自分の親も中国人や朝鮮人を下に見ていたと思う。差別的な発言もしてたし。昔、中国人や朝鮮人は貧しい人が多く、貧しいというだけで下に見ていたように思う。

Yさん

ヨーロッパでも、以前は、東洋人を下に見ていた。最近は変わってきていると思うが、、。

私の親も中国人を差別的な言葉で呼んでいた。部落差別と同じで、自分と異なる出身や貧しいなどの一面的な状況を見て差別していたと思う。

今の若い人はそのあたりは変わってきてると思う。知人がピアノを習っている先生が韓国人で、その子どもが「韓国の○○先生、かっこいい」と言っているという。韓国人をかっこいいというのは、私たちの親の世代とはまったく違う感覚と思う。

Mさん

韓国のミュージシャンや俳優もかっこいい人が多いし、そいうのは自然な感覚かもしれない。

Sさん

韓国人の反日の激しさが話題になるが、国民性もあると思う。間違っていると思うことへの怒りは激しい。ただ、激しやすく、冷めやすい。

あと、歴史でいうと、韓国は、封建制から近代への移行が日本のようにスムーズにできなかった。それは、一族を何より大事にするという国民性にあるのではないかと思う。日本の明治維新で活躍した大久保利通や坂本龍馬などは、日本という国のためにという気持ちでやっていたのであって、大久保一族のためにとか、そういう気持ちはなかったと思う。韓国の場合は我が一族のためにという考えが強く、政治をめぐっても、李朝時代から一族どうしの権力争いが絶えず、それが近代化を遅らせた一因かもしれない。安東金氏など両班の影響も現代まで残っているし、財閥なども日本より色濃く残っているし、今も封建的な要素が強く残っている面もある。

韓国ドラマを見ていて、「名家の嫁は箸を使わせてもらえない」というのがあった。嫁はスプーンでしか食事できない、つまり、箸を使わなければいけないおかずは食べさせてもらえず、スープとご飯だけしか食べれないということ。女性を下に見てるというか、労働力としか見てない。韓国に行った時、男性は将棋などをしてぶらぶらしてて、女性が一生懸命働いているというのを見聞きした。今でも、女性が家計を支え家事をすべてやっているというのはある。

Mさん

済州島に行った時、同じように女性が仕事や家事をして、男はぶらぶら遊んでいるというのを見聞きした。済州島だけでなく、韓国本土でもそうなんだ。

Yさん

済州島は海女の島なので、余計そういう風潮は強かったと思う。韓国の女性が強いのは、そういう歴史や伝統的なものもあるかもしれない。

Sさん

国会議員や官僚なども日本より女性が多いと思うし、色々と日本との違いは多い。

 

これ以外にも、韓国の歴史や国民性(民族性)や日本との違いなどの話がいろいろと出ましたが、少し雑談的になってまとめきれませんでした。共通する点もあるけど、いろいろと違う面などあり、まだまだ韓国について知らないことも多く、もっともっと知っていく必要があるということで、今回の講座は終わりました。