ハンナ講座 やさしい社会問題 

第58回講座(2025年5月10日)まとめ

「格差の問題から今の社会や人間のあり方について考える」

今回の講座は、前回のホームレスに関する意見交流を受けて、参加者のOさんが、ホームレスや日雇い労働者、季節労働者、識字学級で学ぶ人、韓国朝鮮の人々などに関する歌をその背景ととともに紹介し、ギター伴奏で歌ってくれました。参加者は、歌の背景にある様々な状況に置かれた人の思いやその歴史に思いをはせながら、Oさんの歌声に耳を傾け、歌の後で感想交流をしました。Oさんが紹介・説明してくれた歌の背景についての文を載せておきます。

 

1、「ホーボーの子守歌」

アメリカ民謡。すずききよし歌詞。「ホーボー」とは、19世紀末から20世紀初頭の世界的な不況下の時代に、仕事を求めて方々をさまよった貧しい労働者のことである。1939年、アメリカの世界恐慌を背景に「怒りの葡萄」が刊行されている。

2、「山谷ブルース」

1969年、岡林信康作詞作曲。東京の下町の日雇い労働者の街(寄せ場)を舞台にしている。

3、「俺らの空は鉄板だ」

1965年、すずききよし作詞作曲。1970年に開催された大阪万博に向けた地下鉄工事での工事現場やそこで働く労働者の飯場で作られた歌。

4、「鉱夫の祈り」

1967年、高田渡作詞作曲。炭鉱で働く労働者が自らの生活感情や子どもに寄せる思いを歌っている。

5、「生活の柄」

1967年、沖縄出身の詩人山ノ口漠の詩に高田渡が曲をつけて歌っている。仕事を求めて沖縄から東京に出てきた山ノ口が一旗揚げて故郷に錦を飾ろうと、もがきながら生活する悲哀を歌っている。

6、「解放の夕焼け」

1986年、部落解放運動の中での大事な取り組みである識字運動の中で作られた歌である。高知県の識字教室で学ぶおばあさんが、「あかい」という字を習った日、帰路につく途中で見た夕日が本当に美しいと感じたというエピソードに基づいて作られた歌。

7、「満月の夕べ」

1995年、ソウルフラワーユニオン作詞作曲。阪神淡路大震災が起きたときの炊き出しなどの救援活動の中で作られ、被災の現場で歌われた。

8、「イムジン河」

1957年、朴世永作詞、高宗漢作曲。1945年、日本の植民地支配からの解放後、米ソの対立を背景に朝鮮半島が南北に分断される。分断を嘆くとともに統一を願って作られた歌である。

9、「他郷(タヒャン)サリ」(他郷暮らし)

日本の植民地支配の中で、土地を奪われた朝鮮の民衆(農民)が故郷を離れ、仕事を求めて中国東北地方、サハリン、日本などへの流浪を余儀なくされる。「他郷」=「日本という異国」で生きる悲哀を歌っている。

10、「恨五百年」(ハンオベンニョン)

朝鮮近畿道民謡。李朝時代からさらには日帝支配による権力者の圧政と抑圧の中で、作られた民謡である。「恨(ハン)」は朝鮮民衆の心性を表す言葉である。やられたらやりかえすといった日本での「怨」とは全く違う。

11、「すべての人の心に花を」

喜納昌吉作詞作曲。喜納昌吉とチャンプルズが歌う名曲である。日本だけでなく、アジアの国々でも広く歌われている。

 

この11曲以外にも、Oさんは「なごり雪」や「ミリャンアリラン」なども歌ってくれ、歌える曲目の多さに感心させられました。できれば、秋に、今度は、沖縄などを中心とした歌を。沖縄にルーツを待つ友人とともに披露できたらということでした。

 

次回は614日(土)です。