ハンナ講座 やさしい社会問題
第46回講座(2024年4月13日)まとめ
「格差の問題から今の社会や人間のあり方について考える」
今年は桜の開花が遅く、少し残っている花もあり、春の風情と陽気が漂う中、講座を開催しました。
●Mさん
二つの新聞記事と済州4・3事件の集会の案内を紹介。
① 「帝国の慰安婦」などの著作で知られる朴裕河(パクユハ)さんへの「日韓 未来に向けて」と題したインタビュー記事。朴さんは、「帝国の慰安婦」で、植民地支配下にあった朝鮮人慰安婦の構造的な問題を指摘し、「性奴隷」や「売春婦」という一元的な見方ではなく、日本の植民地支配の構造の中で犠牲となった多様な慰安婦の声に耳を傾けるべきだと言う。そして、慰安婦問題を日韓両政府の単なる合意で終わらせず、国民同士が互いに相手のことを知る努力をし、互いをより深く理解し、過去に謙虚に向き合うことで、より明るい未来が見えてくると言う。今後の日韓関係を考えていく上で、朴さんの主張は示唆に富むものだと言える。Mさんは、慰安婦問題を改めて考えるため、慰安婦問題関連年表の資料を提供。
② 「ガザとジェノサイド」をテーマに国際司法裁判所(IJC)の暫定措置命令に関する3人の日米の国際法学者の意見を聞いた記事。米国のオーナ・ハサウエイさんは「IJCの判断は、法の支配という観点から歴史的に価値がああり、革命的な進歩だ」と言う。竹内進一さんは「国際法上のジェノサイドの定義は曖昧で、その対象から政治的集団が抜けるなど妥協の産物。ガザで起きているのは疑いなく大量殺人であり、IJCの判断にとらわれず、国際社会は人道上の被害を抑制するために行動すべきだ」と言う。また、根岸陽太さんは「IJCの暫定措置命令によってすぐにガザの人々の苦しみが終わることはないが、国際法の果たしうる役割を伝え、国際的連帯を促した点で今後への希望を示す命令だった」と言う。IJCの暫定措置命令が出たあとも続く戦闘は、国際社会の連帯によって止められるのか。日本政府の外交努力も問われている。
③ 「在日本済州4・3犠牲者慰霊祭(4月21日、於和気山統国寺」)の集会案内。1948年に済州島で起きた数万人もの人が犠牲となった虐殺事件から76年。韓国政府の謝罪を経たあとも、済州島・韓国本国と並行して日本での鎮魂の祈りは途切れることなく続いている。
●Uさん
映画「〇月〇日、区長になる女」を紹介。東京杉並区に住むベヤンヌマキさんが、市民選挙の裏側を「自分ごと」として、カメラでとらえた草の根ドキュメンタリー映画。住民57万人が暮らす緑豊かな杉並区の街で住民無視の再開発、道路拡張、施設再編計画が進んでいた。そんな状況の中迎えた2022年の区長選に住民たちは、ヨーロッパで「公共の再生」を調査してきた岸本聡子さんを擁立する。岸本さんは住民の主体的参加に基づく自治的民主主義である「地域主権主義(ミュニシバリズム)をヨーロッパで学び、杉並で実践すべく、選挙戦では、「対話型の街宣」をおこない、聴衆と議論し、住民の意見を反映した政策を提唱して当選した。ミュニシバリズムは、新自由主義に意義申し立てをし、鉄道や住宅など公共サービスの再生を目指し、また、トップダウン型の組織となった既成のリベラル政党に対して、地域住民の意志を汲み上げるボトムアップの地域・住民主体のリベラリズムの運動となっている。テレビ朝日報道ステーションの元コメンテイターで東京工業大学教授の中島岳志さんは、世界や日本で、ミュニシバリズムの運動が広がっていくことを期待している。
●SEさん
みんぱく映画会「水俣一揆 一生を問う人々」を紹介。
みんぱく創設50周年記念企画展「水俣病を伝える」の関連企画として、1973年に制作された土本典明監督の記録映画「水俣一揆 一生を問う人々」が6月8日、みんぱくインテリジェントホールで上映される。上映後、なぜ彼らは一揆をしなければならなかったのか、その背景について、水俣病を語り継ぐ会理事の吉永利夫さんが解説する。
●SIさん
二つの新聞記事を紹介。
① 「介護報酬改定・訪問サービス減額は疑問だ」の記事。
厚生労働省が2024年度から介護事業所に支払う介護報酬をプラス改定して介護職員の賃上げを促し、介護職の担い手確保を進めようとしている。しかし、一方で、高齢者が住み慣れた地域で生活することを支える訪問介護サービス報酬が減額されるのは理解に苦しむ。訪問介護サービスは介護サービスの中では利益率が高いのが理由だというが、離職による人件費比率の低下や管理職の兼務など現場の負担によるものだという声も強く、丁寧な議論と見直しを求めたい。
② 「訪問介護報酬引き下げ 人手不足や撤退に拍車も」の記事。
訪問介護は高齢者の在宅生活維持のための最も重要な介護サービスのひとつである。訪問介護員は高齢者の自宅を日々訪問し、身体的な介護や家事の支援を行い暮らしに寄り添う。その事業者への報酬が減ることは、介護員のなり手が減り、事業者も閉業・倒産に追い込まれ、高齢者が自宅で生活をすることが難しくなる。訪問介護は社会インフラと言ってよいが、介護保険制度自体も厳しい状況にある中、政府・自治体は、叡智を結集して、国民の立場にたった政策を実行していってほしい。
今回も、記事などの内容をもとに活発に意見交流がされましたが、特に、ミュニシバリズムの考えや住民自治、市民参加、公共の再生などについて関心が高く、様々な意見が出されました。今後とも、意見交流していきたいテーマです。
次回は5月11日(土)開催予定です。
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