ハンナ講座 やさしい社会問題 

第42回講座(2023年12月9日)まとめ

「格差の問題から今の社会や人間のあり方について考える」

今年最後の講座になりましたが、年末で用事のある人も多く、少人数での開催となりました。

 

●Fさん

最初にFさんが、ウクレレの伴奏で、エレファントカシマシの「風と共に」を歌ってくれました。Fさんにとって、エレファントカシマシの曲は、コロナ禍の中で、大変勇気づけられた曲で、これから全曲歌えるようになりたいとのことでした。Fさんの心に染みる熱唱に、少人数でしたが、みんな大きな拍手を送りました。

あと、Fさんから、みんなに「JIM-NET」の冬季限定募金キャンペーンの「チョコ募金」のチョコ缶のプレゼントがありました。イラクやシリアの子どもたちが描いた素敵な絵がプリントされているチョコに心が和む思いでしたが、子どもたちの厳しい現状に思いを馳せる機会ともなりました。

●Mさん

Mさんから、石井裕也監督の映画「月」を見ての感想とパンフレットから抜粋した資料の紹介がありました。「月」は2016年に神奈川県相模原市で起こった障がい者殺傷事件を題材にした辺見庸さんの小説をもとに、スターサンズがプロデュースし、石井監督が脚本・演出をして制作・上映されました。

この映画は、障がい者の殺傷事件が、特定の思想を持った犯人だけの問題ではなく、障がい者の隔離・差別を容認し、問題を直視してこなかった私たちすべての人間の問題として突きつけるものです。石井監督も、出演者も、みんながそのことを意識して、一定の覚悟をもって制作にあたりました。したがって、他人ごとのように犯人像を描くのではなく、この社会の中で生きる私たちの本音と建て前、現実と隠蔽、苦悩と希望など、私たちの自身の意識と生き方を問うものとなっており、逃れられない緊張感と切実感に満ちています。

ハンナでは、この社会問題の講座の第一回目にこの相模原の事件を取り上げており、社会における障がい者差別の問題を真摯に考えるきっかけとなりました。

今回の映画は、この問題を映画という媒体を通して改めて問い直すもので、多くの人に見てもらいたいと思います。そして、こうした困難ともいえる題材に挑戦した石井監督をはじめスタッフの方々に敬意を表したいと思います。

あと、Mさんからは、引き続き、ガリー・キーン及びアンドリュー・マコーネル監督の映画「ガザ・素顔の日常」の紹介がありました。現在報道されているように、ガザは現在、非常に厳しい現状がありますが、この映画は、他人ごとのような報道という視点ではなく、ガザの人たちを私たちと同じようにこの地球で当たり前に生きている仲間として寄り添い、そこで当たり前に日々生活している人々の姿や思いを描いています。イスラエルによる監視や爆撃の中でも、生活を楽しみたい、生きがいと目的のある人生を送りたいという思いは一緒であり、理不尽な現状への怒りや平和への願いは切実で、同じ人間として見る者の心を打ちます。現実を私たち自身の問題として突きつけている点では、「月」と同じようなメッセージ性を有しています。ガザ地区に深く入り込み、人々と同じ目線で撮影を行ったキーン監督たちにも拍手を送りたい思いです。

あと、Mさんからは「狭山事件 語られていないもの」という新聞記事と「被差別部落に生まれて」(黒川みどり著・岩波書店)という本の紹介がありました。狭山事件で、えん罪によっていまだ「見えない手錠」をかけられている石川一雄さんと妻の早智子さんからの聞き取りを中心に、部落差別とえん罪について検証しています。石川さんの生の語り口が、えん罪への怒りと共に、人間の尊厳への共感を呼んで心を打ちます。

 

今回は、少人数ということもあり、FさんとMさんによる歌や本の紹介が主になりましたが、次回からは、また、様々な社会問題について交流していきたいと思います。

次回は1月27日(土)の予定です。

 

次回は12月9日(土)です。講座のあと、年忘れのプチ茶話会をします。