第40回講座(2023年10月14日)まとめ

「格差の問題から今の社会や人間のあり方について考える」

やっと暑さが少しやわらぎ、秋らしくなってきた中、いつも通り講座を開催しました。

 

SIさん

最初にSIさんが、Kさん企画の「岡山は軽便鉄道王国!ツアー」の案内をしてくれました。岡山の西大寺鉄道や下津井鉄道、井笠鉄道などを巡り、「夢二郷土美術館」や「鞆の浦」などにも足を伸ばす、盛りだくさんで魅力的な内容なので、ぜひ多くの人に参加してほしいということでした。(12月実施の予定でしたが、諸般の事情で実施は来年春に延期ということになりました)

 

●Mさん

大阪・鶴橋の「大阪コリアタウン歴史資料館」に先日行ったので、その報告。以前にHさんからも紹介があった施設ですが、猪飼野の歴史や日本と韓国・朝鮮の関係の歴史、共生の理念などを丁寧に展示してあり、ぜひ多くの人に行ってほしい施設です。在日詩人の金時鐘(キムシジョン)さんの献詩が施設の入り口の石碑ひ刻まれており、詩全文を読み合わせしました。また、猪飼野に長らく住んでいた佐賀県出身の在日2世・宗秋月(チョンチュオル)さんの詩集「猪飼野・女・愛・うた」の紹介もあり、代表的な詩を読み合わせしました。日本と韓国・朝鮮との関係の歴史についてはこの講座でも何回か取り上げてきましたが、鶴橋のコリアタウンが盛況な今、文化的な交流のみならず、いろいろな面で共生の理念が広がっていけばよいと思います。あと、金時鐘さんの「朝鮮と日本に生きる」(岩波新書)も、日本での在日としての生き方や歴史を知る上でとても参考になる一冊ということで紹介がありました。

 

●SEさん

「義務教育での格差にメスを」という新聞記事を紹介。

今年は子ども貧困対策推進法が成立してから10年目の節目だ。この間、国や地方の支援策が強化され、子どもの貧困率も低下している。ただ、この分野の専門家である阿部彩東京都立大教授は、貧困に対する自己責任論の広がりを懸念し、社会を変えていくためには同情ではない連帯の力が必要だと訴える。

高校無償化や給食費の無償化、奨学金の充実など教育支援が進んでおり、親の就労率も改善していることなどが、子どもの貧困率の低下につながっている。ただ、義務教育段階での学力格差はなくなっておらず、格差の根本的な解決には至っていない。親がまっとうに働いてるのに子どもを養えない社会はおかしいとみんなが考え、連帯の力で社会全体を変えていこうという風潮が生まれて初めて貧困や格差の解決が目指せると思う。

 

●Mさん

「格差という虚構」(小坂井敏晶著・ちくま新書)という書籍の紹介。以前、「神の亡霊」(小坂井敏晶著・東京大学出版会)を扱った入試問題についての新聞記事をSIさんが紹介してくれたが、その関連で、小坂井さんの考えをよく示している本書を紹介する。

簡潔にいえば、小坂井さんの主張は、「人生の成功や達成は、遺伝と環境という外因によるものであり、個人の努力などの内因によるものではないのに、あたかも個人の責任であるかのように捏造・隠蔽されている」というものである。格差も近代の主体幻想(成功・不成功は個人が主体的に選びとった結果である)によるものであり、すべて虚構である。そして、そうした虚構は、主体という近代的思想に基づいており、なくすことはできず、遺伝や環境に恵まれなかった人が成功などを得るには「偶然」しかないと結論づける。小坂井さんの論は、いささか運命論的・決定論的な様相を帯びており、構造主義的でもあるが、しかし、近代的な主体という思想や近代資本主義社会のもつ矛盾、欺瞞や隠蔽、捏造などを階級闘争的観点から鋭く突くもので、賛否は別にして一考に値するものと言える。「神の亡霊」も含め、小坂井さんの著書は様々な専門家の知見や興味深いエピソードなどに満ちており、知的好奇心を刺激する読み物としても面白いものになっていると思う。

 

●Fさん

格差の問題に関連して、改めて斉藤幸平さんの「人新世の資本論」「ゼロからの資本論」を読んで、納得することが多い。今の若い人は資本主義をよく思っておらず、新たな社会の形を希求しているように感じる。

労働者協働組合やアソシエーションというような社会的な協働の形が、ヨーロッパなどで模索されており、興味深い取り組みだと感じている。

 

その他、格差や現在の社会的問題について、いろいろと意見が出ましたが、割愛します。

 

 

次回は11月11日(土)。にほんちゃギャラリーおかむら店主の岡村友章さんのお話を聞く予定です。岡村さんがお茶に魅せられ農家さんと出会い関わる中で見えてきた思いをお話ししていただきます。