ハンナ講座 第7回やさしい社会問題(2020年1月25日) 

「エネルギー問題について考える」

 

●今回の講座は、前回の「地球環境問題」を受けて、私たちの生活に欠かせないエネルギーについて考えようというものでした。今回は、レポーターのUさんが、多くの資料をもとに、「日本や世界のエネルギー事情」「エネルギーをめぐる様々な課題」「今後のエネルギーについて」などを丁寧に説明してくれ、そのあと、簡単に意見交換をしました。

●Uさん

(主要国のエネルギー自給率比較とエネルギー構成の図表を示して)日本はエネルギーの自給率が他国と比べて9.6%と極端に低い。ノルウェーなどは自給率が700%とけた違いに高い。フランスや韓国は原子力の比率が高い。フランスの原子力比率が高いのは、他国に頼らず自立の精神が強い国民性や研究者が多いことなどが要因だと思うが、特徴的なのは、政府と国民の間に「リスクコミュニケーション(危険に対する共通合意)」ができていることだと思う。でも、やはり、原子力発電は事故や放射性廃棄物などのリスクや課題が大きく、メインのエネルギーとしては問題がある。

日本の自給率はずっと下がり続けているが、福島の事故以降は、原子力の比率が下がって、石炭・石油などの化石燃料の比率が増えている。それに伴って温室効果ガスの排出も増えている。日本の石油はほとんどが中東から、石炭はオーストラリアから多く輸入している。

世界のエネルギー選択の流れは脱炭素化で、自然エネルギーへの志向が高まっている。

(岩波ブックレット自然エネルギーQ&Aからの抜粋資料を読む)

日本は水資源が豊富なので水力、砂漠地帯の国は太陽光など、その国の自然環境に応じて自然エネルギーの種類も違ってくる。

(自然エネルギー財団のトーマス・コーベリエルさんの記事を紹介して)

自然エネルギーへの志向は世界的に高まっている。ドイツやデンマークは自然エネルギーを促進する先駆者で、自然エネルギー産業の発展に力を入れ、全エネルギーを自然エネルギーに変えていく取り組みを進めている。日本も、化石燃料や原子力に頼らず、自然エネルギーへの取り組みを進めていく必要があると思う。

(新聞記事を示しながら)自然エネルギーは二酸化炭素の排出を減らす取り組みだが、二酸化炭素を吸収する素材(コンクリートや化学製品、藻のジェット燃料など)を作る技術を開発するなどの取り組みも進んでいる。二酸化炭素をどのようにうまく循環させていくのか、今後の課題だと思う。

(新聞記事を示しながら)

昨年の千葉での台風による大規模停電の時に、停電しなかった地域がある。地元産の天然ガスを使う発電設備と送電線を持っていた睦沢町だ。こうした地域分散型独自電源とエネルギーの地産地消の取り組みは重要だと思う。雪解け水など「包蔵水力」を使った小水力発電は、岐阜や富山・長野・新潟・北海道などで増えており、日本の気候や地形の特徴を生かした分散型独自電源の取り組みとして注目される。しかし、小水力発電は、河川や土地に関する法律などの法的規制が多く、簡単に取り組むにはハードルが高く、なかなか一般化していない。

(新聞記事を示しながら)アメリカの投資会社ブラックロックが温暖化対策を重視する企業に優先席に投資するということが話題になった。

中国は、意外に自然エネルギー大国だが、活用できる自然環境が多いからだろう。日本も自然環境には恵まれており、低いコストで原発などのリスクを減らす自然エネルギーへの志向を高める必要があると思う。

私も、電気はスイッチを押したらつくということで、与えられぶちのものと思っていて、選んで買うという意識はなかった。自然エネルギーで発電している会社や地域の小規模発電事業者から買うという選択肢も今後出てくると思う。

●SIさん

自然エネルギーだけで電気を生産販売している「自然電力」代表の磯野謙さんの新聞記事を紹介。磯野さんの会社は、自然エネルギー100%にこだわる経営をしているが、農業振興など、地域への貢献が高く評価されている。こういう人や会社もある。これからのエネルギーは、地産地消を基本に小希望で小回りがきく形で取り組んでいくことが大切だと思った。

●Nさん

福島でも、あの事故の時、自家発電をしていたところがあったと聞いた。やはり、エネルギーの地産地消という考えは大切と思う。

●SEさん

小さな世界で、太陽光発電など自家発電をして、大企業などに縛られず、地域で交換・交流していくことが大切と思う。政治をする人は、そういうことをしようとしても何か(大企業などから)横やりが入ったり、何らかの力が働いて、自立型のエネルギーの取り組みに消極的だと思う。

●Fさん

Uさんに資料をたくさん提供してもらって、知らないことが多くてとても良かった。地産地消のこと、包蔵エネルギーのこと、千葉の停電でのことなど、いい話を紹介してもらった。

以前、何かの会で、ソーラーシェアリングの取り組みのことを聞いたが、役所の許可をもらうのが大変とか、電気の買い取りでも高く買ってはもらえないとか、課題が多くて、なかなか取り組みが進まない現状があるように思う。

 

その後、メディアによって、エネルギー問題の取り上げ方が違うことや、政府や大企業に配慮した記事が多かったりするなどの意見が複数の人から出され、東京新聞のM記者のように、権力におもねず、一人ひとりが声をあげていくことが、エネルギー問題でも大切ではないか、一人ひとりの生き方にもかかわる問題ではないか、ということで、今回の講座は修了しました。