ハンナ講座 やさしい社会問題 

第32回(2022年12月10日)まとめ

「格差の問題から今の社会や人間のあり方について考える」

今年最後の講座となりました。今年は、コロナの影響などもあり、合計6回の開催でした。今回も、マスクや換気などの感染防止策を継続しつつ、講座を開催しました。

 

●Uさん

朝日新聞特別版・グローブの記事を2つ紹介。

 「伝えるより、伝わる 諦めない先にあるものは」

島根県にある電子部品の工場で、「無言語コミュニケーション」なる研修が行われた。言葉を使わず、身振りなどで相手とコミュニケーションをとることを試みる研修だ。講師によると、コミュニケーションには伝わるまで諦めない「スタミナ」も大事な要素の一つだという。参加者は、相手に伝わるまで諦めずに試行錯誤し、伝わったときや共感できたときの喜びを感じることができたと語る。

無言語コミュニケーション研修を企業向けなどに実施しているサイレントボイス(株)の創業者は、聴覚障がい者の両親のもとで育ち、両親と手話などでコミュニケーションを重ねてきた経験から、「伝える」ではなく、「伝わる」が大切だと気づいた。「伝える」は一方的な行為で、プロセスの一部でしかない。それに対して、「伝わる」というのは結果。コミュニケーションで求められているのは「伝わる」ことであり、粘り強く諦めず、内省したり、気づきを重ねたりすることで、コミュニケーションが成長するという。

 「フランス難民支援プロジェクト 絵文字で超える言葉の壁」

パリで難民支援をしているNGOなどが中心となって、様々な言語を話す難民たちに、絵文字で情報を伝える「絵文字プロジェクト」をはじめた。難民でも多くの人が持っているスマホのアプリを使って、絵で、シャワーや食堂、病院などの支援施設を紹介する取り組みだ。「情報へのアクセスは基本的人権である」という考えからこのNGOは作られた。異なる言語の話し手でも、理解し共感しあえるという点で絵文字の可能性は大きい。「助けを求めている難民と接する上で、言葉の壁を越えて共感できるというのはとても基本的なことです。絵文字プロジェクトとはまさに共感についてのプロジェクトなのです」とこのNGOのコーディネーターは話す。

●Uさん

言葉や文化が違う中で、どういうふうにコミュニケーションをとっていくかということは大事なことだと思う。言葉でなくても相手に伝わる、共感するということが大切だと思うが、難しさも感じる。この前の宮台真司さんが襲われた事件でも、コミュニケーションが弱くなっていて、暴力に訴えるようなことが起きているのかなと思う。相手とコミュニケーションする力、共感する力を高めていかなければと思う。

●Sさん

先日、ヨーロッパのモンブランの山岳地帯を縦走する競技があって、日本人も参加したが、途中の休憩所で「塩(salt)」がほしいと訴えたが係員に伝わらなかったということを聞いた。言葉でのコミュニケーションのむずかしさを感じた。Uさんの紹介記事の「情報へのアクセスは基本的人権」というのはまさにその通りだと思った。

 

●Sさん

「宗教と政治 問うべきは政治と倫理 キリスト教徒・作家 佐藤優」の記事を紹介。

憲法が定める政教分離は国家が特定の宗教を優遇もしくは忌避することを禁止している。その一方で、宗教団体が自らの判断で政治活動をしたり、特定の政党を推したりすることは認めている。旧統一教会問題の本質は「政治と宗教」ではなく、「政治と倫理」だ。公人である政治家は社会通念から著しく逸脱するような団体と支持・協力関係を持つことに慎重であるべきだ。今回の問題でも、場当たり的な調査などでなく、「霊感商法で教団に貢献した人を顕彰する集会に参加した」など倫理的に問題がある具体的な事例を特定し検証すべきだ。宗教の教団全体に反社会的とのレッテルを貼り疎外するのはフェアではない。信仰の自由と自由な社会を守るためにも、政治と倫理の問題について考えていく必要がある。

 「新興宗教と女性 信仰通し搾取 社会の縮図 東京大学大学院教授 林香里」の記事を紹介。

親のカルト信仰や宗教活動を強制されて生きる「宗教2世」たちが声を上げ始めた。宗教活動への強制はほとんど母親からなされる場合が多い。その背景として、一部の新興宗教団体が、日本の女性たちの生きづらさの受け皿になりながら、彼女たちを巧妙に利用していることがあると感じる。教団の勧誘のターゲットは圧倒的に女性で、女性は人生の中で我慢を強いられていることが多く、我慢からの解放の期待が入会の動機となっている場合が多い。社会の中で困難な状況に置かれて救いを求める女性を入会させ、布教活動や集金などの「奉仕」に駆り出して搾取する教団の様子は、日本社会の縮図ともいえる。

一方で、組織や団体に所属せずに個人にある程度の宗教に近い世界観を提供してくれる「スピリチュアリティ」とよばれる運動や文化もある。代替医療、自然崇拝やパワースポット訪問、癒しやヒーリング、ヨガ、占いなど、多様な「スピリチュアル市場」が用意されている。妊娠・出産をめぐるスピリチュアリティもその一つで、妊娠・出産をめぐる女性の不安を背景にジェンダーバイアスを肯定し強化する側面がある。日本社会ではいまだに女性に家庭内無償労働が偏り、構造的な不平等思想によって女性の貧困と孤立、女性への偏見が存在し、一部の新興宗教やスピリチュアリティの運動は、そうしたジェンダー不平等状態の中で、弱い対場の女性への搾取を続けて勢力を拡大してきた。女性への宗教的な搾取からの救済は現代の社会の大きな課題だといえる。

 朝日新聞社説「国を守る」を考える 」国民第一」に総合力を磨け

他国との軍事的緊張を増幅する軍事力の増強ではなく、真に国民を守る力とは何かを考え、経済力、外交力、情報力、科学技術力、自国の価値観や文化によって相手を味方につけるソフトパワーこそ大切で、それぞれの分野の特質を踏まえた調和のとれた総合力を磨くことに力を注ぐべきだ。

 

●Fさん

旧統一教会と自民党議員との癒着は、安倍元首相が、ああいう形で亡くならないとわからなかった問題なのかなと疑問に思う。政治家は皆、(自民党議員が旧統一教会と関係していると)知っていたのではないか? 

あと、一部の新興宗教とその信者のことだが、社会の中でいろいろと厳しい状態にある人が宗教に救いを求める。そういう意味で、新興宗教などの問題は、個人の問題ではなく社会の問題だと思う。

また、Uさん紹介のコミュニケーションについての記事だが、私自身の経験でも、人とのコミュニケーションというのはても難しいと思う。お店の接客などでも、こちらの意図しているところが伝わらなかったり、その反対のこともある。相手に正しく「伝わる」にはどうすればいいか、考えていきたいと思う。

 

このあと、コミュニケーションの問題、宗教と政治の問題、女性と宗教などについて、いくつか意見が出されましたが、記録が不十分なので、割愛します。

 

●Mさん

三つの新聞記事を紹介。

 詩人・金時鐘さんがアジア文学賞を受賞 「私の日本語」で紡ぐ歴史の証言

戦前、朝鮮で皇民化教育を受けた金さんは、済州島4・3事件の弾圧から逃れ、日本の大阪猪飼野に来て、在日コリアンの詩人・作家として生きてきた。東アジアの激動の時代を生きてきた歴史の証言者として、金さんは、これからも「ごつごつとした日本語」での創作を続けていく決意だ。

 沖縄から「人間に光あれ」水平社宣言100年 彫刻家、琉球語で「読み上げる会」

沖縄県出身の金城実さんが、約1年かけて水平社宣言を琉球語に翻訳し、奈良や京都で朗読会が開かれる。琉球の方言や文化を差別された経験を持つ金さんは、沖縄の問題を、部落問題と同じ、差別と人権の問題として訴えていくべきだと言う。

 「防衛費5年間で43兆円、規模ありき1.5倍超に」「敵基地攻撃能力 揺れる漁師町 不安抱え操業、反撃すればエスカレート」

 

●Mさん

Sさんの紹介した朝日新聞の社説とも重なるが、武器の増強で国民は守れないと思う。増強すれば相手も増強して、戦争の危険が高まる。そういうことに国民の税金を使うのでなく、外交官を増やすなど、外交にもっとお金を使うべきだ。他国との対話を深め、友好関係を築くことによって、結果的に国民を守ることになる。友好国を攻めようという国はない。軍事費増額というのは、いまさらながら憲法の非武装の精神をまったく無視した政策であり、容認できない。

 

 

社会問題の講座終了後、鉄道研究家のKさんによる「小さな鉄道があった頃 〜ある軽便鉄道のおはなし〜」というミニ講演会を、ハンナの1階売店の、Kさん制作の鉄道模型や写真などの展示コーナーでおこないました。

日本の軽便鉄道の概略・歴史や石川県の尾小屋鉄道を訪れた時の思い出などを、Kさん自身が作られた鉄道模型を実際に操作してもらったり、撮られた写真などを見ながら、楽しく、興味深く聴くことができました。話を聴いて、尾小屋鉄道に行ってみたいという参加者もいました。そのあと、12月ということで、簡単な茶話会をしてお開きとしました。

次回は、2月25日(土)の予定です。