ハンナ講座 やさしい社会問題 

第29回(2022年9月10日)まとめ

「格差の問題から今の社会や人間のあり方について考える」

コロナ感染もいまだ収まらず、残暑も厳しい中でしたが、6月以来2カ月ぶりに開催しました。今回も、新聞記事や本の紹介をもとに交流をしました。

 

●Mさん

いくつかの新聞記事と本の紹介。

 「水平社宣言1世紀 差別は人がつくる 戦争や非正規労働 人権の犠牲いまも」部落解放同盟前委員長・組坂繁之さんへのインタビュー記事。

 「瞳で語る差別と再生」島崎藤村の部落差別をテーマにした小説「破戒」の映画化にあたり、主役の瀬川丑松を演じた間宮祥太朗さんへのインタビュー記事。「今も至る所に様々な差別があるという普遍性。そして丑松が自分のアイデンティティを見つめ、父の戒めを破り、再生していくこと。これは現代にも起こることだなと」「生まれ直したかのような丑松の表情を鏡として、自分と向きあう。見てくれた人にもそんな時間を届けたい」と間宮さんは語る。

 「あらゆる差別禁止 法律化求める動き」の記事。被差別部落出身者や障がい者など社会的少数者(マイノリティー)に対する、あらゆる差別を禁じる包括的な差別禁止法の試案を研究団体がまとめた。人間の平等を求めた全国水平社の創立から100年。しかし、差別は根強く残り、インターネットなどによる新たな形の人権侵害も深刻だ。当事者らは「新たな一歩になってほしい」と訴えている。

 「Humankind 希望の歴史 人類が善き未来をつくるための18章 ルトガー・ブレグマン著 文藝春秋刊」の紹介。これまでの歴史の中で、人間の善性が顕著にあらわれた事例を紹介し、人類の危機が迫る困難な現代において、人間への信頼と未来への希望を説く。

 

●Hさん

「森達也監督初の劇映画 100年前の負の歴史今に伝える」という新聞記事を紹介。

オウム真理教をテーマにした「A」などのドキュメンタリー映画で知られる森達也監督が、初めての劇映画となる「福田村事件(仮題)」のメガホンを取っている。関東大震災後の流言飛語が原因で行商団9人が殺された実際の事件を描く。井村新さん、田中麗奈さんらが出演。震災から100年となる来年の公開が予定されている。森監督は「A」でオウム真理教の信者らにカメラを向け、加害者側からサリン事件を見つめた。森監督は言う。「衝撃だったのは彼らが皆、善良で穏やかな人だったこと。人間は冷酷だから残虐なことをするわけではないということを伝えたい」と。もう一つは、日本の負の歴史をきちんと描かなければならないという思いがあったという。

Hさんは、ホームページで、群衆のエキストラを募集していると知り、協力したいという熱い思いで応募したが、残念ながら落選した。映画出演はならなかったが、差別の問題や日本の負の歴史をきちんと知っていかなければならないと強く思ったという。

 

●Fさん

森監督のドキュメンタリー映画「A」は以前、見に行った。森さんの講演会に参加した時に「部落差別は知らなかったが、こんな理不尽な差別が日本にあるのかと怒りを持った。なくしていかなければ、、」と話された。その時、「寝た子をおこすなというような言葉もあるが、正しく判断できる人はいつ知ってもそれがわかるのだ」と森さんに感動し、本も読んだ。

 

●Sさん

いくつかの新聞記事を紹介。

 「ウクライナ侵攻の伝え方、日本と関連させた授業を」の記事。今のウクライナの問題を入り口にして、日本の近現代史を顧みる。いま国際社会が直面する課題に関する学びと日本の歩みを検証する学習との間に橋を架けるような意欲的な授業が展開されることを期待したい。

 「大量死が生む黙祷と一体感。災禍から立ち直る「我々」。国家動員にも使われた歴史」の記事。

黙祷は現在様々な場所で犠牲者の追悼を目的に行われているが、参加者全員が同じ気持ちで死者を悼んでいるかのような画(え)を作る。国葬についても「国民で悼んだ」という外形的な事実が記憶される一方、無感心も含めた死者への多様な思いがあったことは忘却されていく恐れがある。集団的な黙祷の意味や弔意の表し方などについて考えさせられる記事である。

 「レコンキスタの時代」京都新聞に、10回にわたって連載された、ロシアを中心とした現在の国際情勢の意味について、著名な学者にインタビュー形式で聞いた記事。

国際社会が「100年に一度」の巨大な変化に揺れている。冷戦に勝利した後、長い対テロ戦争を経て、「世界の警察官」の重荷に耐え切れなくなった米国。ソ連崩壊後、雌伏の時を経たロシアがその隙を突き、中国と組んで第二次世界大戦後の国際秩序や民主的価値に挑みかかる。攻守反転した「レコンキスタ(失地回復)の時代」ウクライナ侵攻に至る歴史の逆流はいつどのようにはじまったのか。近年の重要事を取り上げ、今に連なる意味を海外の識者と読み解くことで、世界の「現在地」を探り、日本の進む道を考える。以下、10回の内容の主題を簡単に紹介する。

 歴史の始まり「逆流する歴史・空位の10年」現在は世界のリーダーが不在(Gゼロ)の時代?

 ノーマンズランド 「主なき荒れ野・秩序再編成も」現在のパワーバランスを反映した新秩序も?

 「皇帝」復活 「小国は従属物・ソ連的世界観」ロ・中による大国中心の新たな国際秩序が誕生?

 復讐心の起源 愛憎20年「米は末期」と誤解。プーチンの米国への期待と幻滅・憎しみ?

 自由からの逃走 中・ロ「民主主義は敵」で共闘。民主主義は普遍的価値ではなく相対的価値?

 「難民戦」の影 欧州分断工作・極右とも連携。難民を作ることで、欧米の弱体化を狙うロシア?

 ツアーリの黙示録 大ロシア再興・野望の国家像。大国主義の考えでウクライナ侵略を正当化?

 シリア不問の大罪 米退却が中ロの誘い水に。米国の指導力の低下が中ロの侵略を促した?

 ブカレストの春 見逃した警告・ロ侵攻許す。プーチンの大ロシア主義思想に欧米は気づかず?

 現代史の教訓 宥和策もたらした大戦。専制国家への宥和策は第二次大戦と同じ結果をもたらす?

 

このあと、Sさんの紹介してくれた新聞記事をもとに、少し意見交換をしました。今現在の、誰もが関心を持っている国際情勢の話題ですが、様々な背景もあり、考えるのが難しい問題だが、歴史のことも含め、今後とも学習したり考えていったりする必要があるという点で一致しました。

次回は、10月22日(土)の予定です。