ハンナ講座 やさしい社会問題 

第27回(2022年5月14日)まとめ

「格差の問題から今の社会や人間のあり方について考える」

コロナ感染が少し落ち着き、ウイズコロナ的な風潮もありますが、まだまだ安心できる状況ではなく、これまで同様、マスクや換気などの感染対策をして行いました。新聞・雑誌の記事や本の紹介をして意見交流しました。

●SIさん

◆沖縄本土復帰50年の京都新聞の特集記事を紹介。

沖縄戦で戦死した各都道府県の兵士の慰霊塔は、1960年代に次々と建立されたが、その多くは沖縄本島南部に集中している。しかし、京都の塔だけは、宜野湾市嘉数にある。沖縄戦で京都出身者の多かった第62師団石部隊(京都部隊)は嘉数に滞在し、住民の援助を受けながら、米軍との激戦によって2536人が命を落とした。しかし、部隊を支援した嘉数の住民も戦闘に巻き込まれ、全人口の半数を占める約340人が命を落とした。京都の塔は、1964年に、京都の将兵と共に犠牲となった沖縄の人々に寄り添うため嘉数に建立され、その碑文には沖縄に対する思いが含まれている。他の都道府県の碑文にはそのような文言はない。また、京都の塔は、京都市民が一世帯10円の募金をして約600万円の建設費用を捻出したもので、遺族以外の一般市民も慰霊の念を強く持っていたことがわかる。そして、1975年、塔を建設した沖縄京都の塔奉賛会は、嘉数の塔を京都の塔の横に建立した。その碑文には、「嘉数の人々は京都部隊を援助し、時に乏しき食糧をさき、また傷病兵を助け、或いは輸送の任につき、ついに軍務に服する者もあり、戦死者続出す」と刻まれている。その後、沖縄の平和祈念公園や慰霊塔が観光コースとなるにつれて、京都の塔も他の慰霊塔がある南部に移転しようという動きもあったが、奉賛会の役員だった野中広務氏の「京都の方々は宜野湾で多く亡くなった。慰霊塔はその場所にあるべきではないか」のひと言で塔は修復をして嘉数に残された。本土復帰50年の今、沖縄にはなお米軍基地が残され、日本の負担を全部沖縄が押し付けられている。「捨て石」となって多くの犠牲を払った沖縄戦と厳しい基地負担を引き受けさせられている現状は同じで、沖縄の苦難は変わっていない。戦後も続く沖縄の痛みを知り、どう沖縄と向き合うべきかを、嘉数の京都の塔は物語っている。

◆「日本は果たして祖国か?沖縄独立論はいま」の新聞記事を紹介。

「琉球民族独立総合研究会」など、若手の学者が中心となった沖縄独立論がいま活発に議論されている。

非現実的とも言える議論だが、そこには沖縄独自の歴史や文化、日本への同化や基地の押し付けへの抵抗、差別への憤りなど、複雑で深い思いがあり、沖縄の主体性の獲得と魂の救済を求める道筋を模索する議論となっている。

●Mさん

◆スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチ「戦争は女の顔をしていない」(岩波現代文庫)と、その漫画化作品(小梅けいと作画)と、NHKEテレ「100分de名著 戦争は女の顔をしていない」の3冊の本を紹介。

アレクシエーヴィチは2015年にノーベル文学賞を受賞したベラルーシのノンフィクション作家で、この本が作家としてのデビュー作。他に「チェルノブイリの祈り」「アフガン帰還兵の証言」などのノンフィクションの作品がある。この本をはじめすべての著作で、当事者からの聞き取りをもとに、聞き取りした人々の苛酷な体験とリアルな感情を丹念に拾い上げ「生きている文学」に昇華させた手法は高く評価されている。この本で取り上げられた独ソ戦は、人類史上最大の犠牲者を出した苛酷な戦争であり、旧ソ連政府の祖国防衛のスローガンのもと、男性だけでなく、100万人とも言われる女性たちも戦場に赴いた。中には10代半ばの少女たちもいた。傷病兵の看護や炊事・洗濯などの後方支援のみならず、狙撃兵や砲兵など最前線で武器をとって戦った女性たちも多くいた。目の前に迫る死と戦争の悲惨な現実を体験した女性たちの、生々しく痛ましい証言は深く胸を打つ。戦後も英雄として賞賛されるよりは、女の身で戦争に参加したことを非難されることのほうが多かったという。

日本では、第二次世界大戦は、日本の戦争(日中戦争、太平洋戦争、沖縄戦など)が取り上げられることが多いが、ヨーロッパでの戦争の実態、特に独ソ戦の実態はあまり知られてないのではないかと思う。その中で、さらに、戦争に直接参加した旧ソ連の女性の歴史は知られてないように思う。

旧ソ連は兵士だけでなく一般人の犠牲も多かったが、しかし、犠牲の歴史だけでなく、ポーランドやフィンランドなどを侵略した歴史もあり、客観的に歴史を見る視点が大切だと思う。

◆「ロシア的価値と侵略」(朝日新聞オピニオン&フォーラム、佐伯啓思)の新聞記事を紹介。

今回のロシアによるウクライナ侵略は非道で国際法にも反し許しがたいが、その暴挙の背後には、独自の価値を重んじるロシアの精神的風土がある。西欧的近代主義と一線を画す精神風土はロシア以外にもあり、日本を含め、今後の世界の政治社会状況を考える上での一つの大事な視点ではないかと思う。 

SIさんとMさんによる、新聞記事や本の紹介のあと、感想を含めて意見交流しました

沖縄については、「京都の塔のことは知らなかった。沖縄のことは知っているようで知らないことが多くある」「米軍基地がある中で日々生活している沖縄の人たちの気持ちをもっと考えなければ、、」「安全なところで生活している(本土の)我々に対して、沖縄の人たちは強い憤りを持っていると思う」「沖縄への差別的意識が政治家にもあるし、多くの人々や私の中にもある。なくしていかなければ、、」などの意見が出されました。

「戦争は女の、、、」の本については、マスコミでも取り上げられたので関心があるが、若い女性兵士たちの悲惨な歴史については胸が痛んで言葉にできないという意見が大半でした。

 

今回、本土復帰50年となる沖縄とウクライナ侵略で関心の高まったロシア(旧ソ連)のあまり知られざる歴史について知ることができたのは良かったと思います。今後も、戦争の歴史についてさらに深く知り、平和の大切さについて考えていければと思います。

次回は、6月25日(土)の予定です。