設備投資の償還年数が1〜3年と経済的合理性の高い省エネシステムでも普及しない
なぜ? バリアがある
1.発注者の専門性の限界。地域毎に配置された役所の担当技術者は融雪を担当することは少なくて人事異動で,条件によってことなる最適システムを選定する専門性は十分でない。融雪は、放熱管、舗装や橋杭の構造、地盤、地下水、熱解析、制御などが関わり,設置費と維持費のトータルの比較が難しいから最適設計が分かりにくい。
2.設計コンサルと施工者の利益と相反。設計コンサルタントも融雪受註の頻度が少なく,専門性を高めても受註に繋がらない。そこで、システムの比較選択も含め施工業者や資材メーカーに設計を無料で下請けに出す.下請けの施工者や資材メーカーは,自社製品や特殊工法がを設計に織り込めば,無料で設計を請け負っても採算があう。ヒートポンプやヒートパイプの製造メーカーではないが,当該工事での販売をメーカーと独占契約することで,工事の受注者からマージンを得て,設計費を得る事例が少なくない。発注者は,技術力がないので,システム比較表に他に優れたシステムがあっても見抜かない。最終利用者や地球環境の利点でなくて,設計コンサルタントや施工者やメーカー,システム決定権者の利益優先で選択される。国土交通省のボーリング工法での地中熱融雪を受注した施工者とで,熱源杭を短くし本数を数倍にし間隔を狭めて熱干渉の群杭効果での季節間蓄熱を施工受注者提案した。総杭長は半減化し,数億円のコスト削減であったが,当時査読付き論文も公表されてなくて,提案の信頼性が十分でないとして採択されなかった。その後群杭効果は,土木学会や寒地技術シンポジウムで受賞したが,福井県内以外のボーリング工法の代替となることはなかった。施工者にとっては,施工者提案で1回だけコストが下がってその半分を得ても以後は新技術で費用削減で利潤は下がる。コスト減で施工数が増えれば良いが,そうはならないからである。コスト減は国や県の利益にはなるが,コンサルや施工の受注者にとっては利益にならないから普及しない。国や市の担当者に,私の開発した新システムなぜ使って頂けないのですかと質問すると,コンサルからは,あれは気温の高い福井でできるシステムだと言われたという。数値シミュレーションで検討して欲しいとの依頼は県外事例では2件と少ない。1件は黒川紀章事務所からの青森での基礎杭兼用利用融雪をプロポーザルに使いたいという依頼。このプロポーザルでは,新技術提案は利害が一致する。もう一つは岐阜での鋼床版橋での潜熱蓄熱材での凍結を地盤部並みにまでにするという役場とコンサルからの依頼。そもそも,筆者らが県で研究所をつくり,開発を進めたのは,この分野では民間では競争原理が機能していないことにある。基礎杭メーカーにとっては,この施工は,配管が関わり手離れが悪い。配管や空調融雪と分野が異なり,営業先も違い説明の大変。それで他社杭メーカーから杭の受注を奪って初めて利益となるから営業展開が難しい。
東京都が2025年から導入を条例で決めた大手住宅メーカーへの太陽光発電導入も,6年で償還できお施主には悪くない。メーカーには,それが大きな利益にならなくて普及しない。未達成住宅メーカー名の公表というペナルティーを与えないと進まない。冷暖房も設計時には,容量不足のリスク回避で過大容量となる。設備更新1年前に,IOTで,最大負荷を調べて最適化すれば,設置費も低負荷運転解消で省エネとなる。しかし,これは空調業界の利益には反する。エネルギーマネジメント業界にとっても,大きな容量のまま環境省の補助金を得た方が補助金額に応じた成功報酬額となっていることで利益にならない。類似して,原発も,コストやリスク,廃棄処理などで問題があっても,巨大利権で政治もマスコミも研究者も地元も歪んで進めれる。技術の問題ではなくて,市場の限界である。
3.量産化されないとコストも性能も向上しない。 地中熱利用での空調では,かつては水熱源量HPの熱交換器が空気熱源に比べて安価であった。その後,空気熱源HPが量産を背景に性能のアップと価格低下となった。最大手のD社では水熱源HPは需要が少ないから15年ほどバージョンアップしてない。一方で空気熱源は価格ダウンとならないように,毎年バージョンアップで,コストパフォーマンスを積み重ねている。C社にも,制御などでパフォーマンスを上げる提案をしても売れていないから費用が出せないという。原発のコストアップと太陽光発電の価格低下と同じで,量産の差は大きい。
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