平和資料館 草の家だより No.86 発行 2005.4.10 |
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平和の意思表示を続けよう! |
2003年3月、米・英軍のイラク侵攻直前から高知市内で有志が始めた反戦アピール、ピースアクションと呼ぶささやかな、しかししつこい活動がある。繁華街で通行人に呼びかけて、米軍や自衛隊のイラク駐留の是非を問う、模造紙に意見を書いてもらう、チラシを配る、自衛隊撤退を要請する署名を募る、時にはミュージシャンの参加もある、週に一度のそんな活動である。集めた市民の、平和を求める声を首相官邸や在日アメリカ大使館に送ること十数回。 有事法制やイラク特措法が問題になり、街行く人の反対の声も署名も、アンケートに応じる人の反応も、ある時期は大きく多く熱く強かった。「イラクは実際は戦地、行ってほしくない、私たちも反対なんです」と自衛隊員の家族がアクションのメンバーに訴えていたこともあった。メッセージがあっという間に集まった時期もあったのだ。 それから2年、街頭で感じる変化は大きい。人々の無関心、無力感、諦めの空気、というのだろうか。確かに有事法制もイラク特措法も簡単に(?)通ってしまった。世論が反映されたとはとても言えないのだが、国会では圧倒的多数で決まってしまったのだ。あとはアメリカの戦争に加担する既成事実が積み上げられていく。イラクに大量破壊兵器はなかったと正式に発表されたのは昨年10月。「戦争の大義」も支持する日本の正当性も破綻していたのに…。12月の派兵期限延長すら止めることはできなかった。 イラクで毎日人が死んでいく現実は変わらないのに、新聞記事は小さい。自衛隊関連の報道も極端に減った。莫大な税金でどんな働きをしているのか具体的な説明も検証もされないまま、自衛隊は今や日常業務のように次々と(粛々と?!)イラクへ出発していく。しかももはやそれは小さな記事でしかない。先日の新聞には「イラク派遣に賛成でも反対でも、とにかく関心を持ってほしい」という元イラク先遣隊長の訴えが載っていた。自衛隊当事者ですら国民の関心の低さを嘆いている現実がある。 イラクは遠い、自分には関係ないこと、なのだろうか。そんな中、高知市で開いた「イラク写真展・侵略と占領」(3月12日〜19日)。新聞では伝えられないイラク市民(爆弾を落とされる側)の姿と私たちの関わりを再確認する意味もあった。劣化ウラン弾の影響で白血病を発症した子ども、米軍の掃討作戦(虐殺!)で傷ついた市民、地雷化したクラスター爆弾の不発弾、昨夏の沖縄国際大学への米軍ヘリ墜落事故(米軍海兵隊部隊は沖縄からイラクへ飛んでいる)のパネル…。イラク侵攻を始めたアメリカをいち早く支持した日本。強引に特措法を成立させて自衛隊を送り、戦闘には関与しないはずが、武装する米軍を輸送していた日本。つまり、侵攻に加担してイラクの市民を死に追いやり傷つけているのは私たちなのだった。イラクの子どもたちを殺したのは自分でもあるのだと思い至ったとき、私たちは何をすべきなのか。 黙ったまま加害者にならないために意思表示をすること、声をあげること。街頭アピール、署名、メール抗議。また「自衛隊イラク派兵差止訴訟」の原告になる方法もある。2004年2月に名古屋地方裁判所に提訴されたのが最初で、自衛隊のイラク派兵は、@武力行使と交戦権を否定した憲法9条に違反する、A憲法前文の「平和的生存権(武力行使をしない日本に生きる権利)」に違反する、B否応なく侵略行為の加害者にさせられている、として原告になるのである。その後同様の訴訟が全国各地で起こされている。先日の写真展でも名古屋から駆けつけた訴訟弁護団事務局長・川口創弁護士の講演があった。 自衛隊のイラク派兵だけが今の問題なのではない。今後起こりうることは何なのか。自衛隊の海外派兵のハードルがどんどん低くなる、現実は軍隊なのだからと改憲、そして徴兵制? 自分の子どもや孫が戦場へ行くと誰が想像したいだろうか。しかし現に9条を変える動きは強いのだ。自民党の新憲法起草委員会の試案では、自衛隊を「軍」とはっきり位置づけて「国際の平和と安定に寄与するため、自衛軍を用いる」と、自衛隊での国際貢献を憲法に規定するという。武力と暴力による国際貢献! 憤りも大きいが、アクションのメンバーも毎回悲壮感に満ちているわけではない。傷ついたイラクの子どもの写真に足を止め、真剣に考えてくれる小中学生も多いのだ。希望はある。せめて次世代に恥ずかしくないよう、ささやかでも声をあげ続けよう。 |
江崎(玉木)瑞枝 |
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土佐弁日本国憲法前文(一部) 西森茂夫 |
あたしらあ おじいもおばあも おとこもおなごも 孫子の代まで平和を願うちゅうがやき いのちの道 人の道をしっかり心にとめて生きるぞね 肌の色や言葉がちごうちょっても どの国の人間も おんなじように 平和を愛しちゅうがやき その根本を信頼して生きるがが あたしらあの 安全と生存を守ることになるがよね こりゃあたりまえのことじゃろうがね 戦争国家じゃった日本は 朝鮮人や中国人を差別して げにまっことむごいことしたもんよ どの国も対等平等 敵をつくったらいかん これが歴史の教訓というものぞね あたしらあもこじゃんとつらい思いをしたけんど 目がさめたぞね 人間の尊厳が花開く社会を求め続けゆう世界の人々が 日本は戦争をせん道義ある国じゃいうて尊敬する そんな国に日本は生まれ変わりたいと思いゆうがやき あたしらあは 世界のすべての人が幸せになること 平和のうちに生きる権利があるということを しっかり心に刻んでおこうじゃいか これからは相手の立場を考え 何事も話し合いで解決するぞね 貧しいひとや子どものことをいつも思うて 慈しみの心をもって生きるぞね 一九九九・一一・二○ |
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活動報告 「イラク写真展・侵略と占領」 |
2003年3月に始まった米英の侵略攻撃から2年、イラクでは10万人以上の人々が殺されました。いまも戦闘の続くイラクの実相を伝えようと街頭で戦争反対、自衛隊撤退を訴え続けてきた会員が中心となり、「イラク写真展・侵略と占領」を3月12日から19日まで高知市民図書館で開催しました。 特別展示として「Days
Japan」の広河隆一さんの写真展を、安田純平さんの講演会を開いた「サロン金曜日」の協力で沖縄国際大学米軍ヘリ墜落事故の抗議パネル展を同時に行いました。また、「自衛隊イラク派兵差し止め訴訟」弁護団の川口創弁護士を名古屋から招いて特別講演を開催しました。来場した多くの市民から感想やカンパが寄せられました。写真展に協力して下さった皆様に心から感謝を申し上げます。写真展の感想を紹介します。 |
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会期:3月12日(土)〜19日(土) l
会場:高知市民図書館 l
参観者:600余名 l
特別展示:広河隆一イラク写真展 l
同時展示:イラク戦争犠牲者とわたしたち、沖縄国際大学米軍ヘリ墜落事故抗議パネル展(サロン金曜日提供) l
主催:平和を願う市民有志、サロン金曜日、平和資料館・草の家、ピースライブインこうち、高知大学平和サークルFOP、イラク自衛隊派兵差し止め訴訟高知原告の会 記念講演 “ストップ!自衛隊イラク派兵” ―黙って加害者にならないためにー l
日時:3月13日(日)1時30分〜4時30分 l
会場:高知市民図書館視聴覚ホール l
ビデオ上映:「イラク市民レジスタンス」 l
講師:川口創弁護士(自衛隊イラク派兵差し止め訴訟弁護団事務局長) l
参加者:31名 u けがをしている人が多かった。だから、けがをしている人を少しでもなおしてあげたい。自衛隊はイラクからすぐに出ていってほしいと思った。イラクの人も自由にしてあげればいいと思った。(高知市、小学生、10才、女) u
高知市の施設がこうした企画を許可したことに驚きました。私が住んでいる富山県では考えられないことです。自衛隊派兵には反対、米の同盟国である限り、9条改正は危険です。(富山市、52才、男) u
ふだんのニュース、新聞などメディアが伝えない残虐な事実。余りにショッキングだったが、事実なので目にしなくてはいけない。現実なのだから。私たちに何かできることは?(40才、女) u
いつも思うのだけれど、写真のもつ力に感心します。それとともに、このような危険な地域で真実をもとめるジャーナリストには頭が下がります。このような活動をする人々を支援する輪が広がるような活動が望まれます。(高知市、66才、男) u
戦場時、そして今のイラクをニュースとして知っているものの“対岸の火事”、“他国の事”として受け止めてしまいがちで、日本としての戦争・平和意識がずっと薄れていると思います。一日も早い平和に向け、私ができる事を実行したいと強く思いました。(26才、女) u すごい写真を見ただけでそこの場所がわかる。こんなことになるのなら、さいしょからやめといたほうがいいと思った。見てるだけでしんどくなったりしそう。とてもかわいそうでした。やっぱりこうなてるから自衛隊は、イラクにはいかなくていいと思いました。 (高知市、小学生、10才、男) u
TVで報道されている事とはあまりに違いがありすぎて驚いた。新聞やニュースでよく見ていて、世界で起きている事とはいっても、日本・日本人に全く関係ないとはいえないのではと思う。いろんな方法で、私もこういう関係と積極的に触れていきたいと思う。 (高知市、16才、女) |
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「許すな!憲法改悪・市民運動全国交流集会」に参加して |
竹内綾(高知大学卒業生) |
2月11・12日の両日、東京で様々な運動団体が集まって憲法を考える集会がありました。草の家からということで、金英丸オッパ(兄)と高知大卒業生の吉岡稔くんと私の三人が参加しました。カンパを下さったり、応援してくださった皆さんの力添えのもと参加したこの集会では、思いのほかたくさんのことを学ぶことが出来ました。いろいろな人に会い、憲法改悪に対抗する力をたくわえることができた、貴重な体験になったと感じています。 一日目に行われた全体集会では、様々な立場の人からあいさつと提起がありました。それぞれの憲法への想いを知ることができ、市民連帯集会ならではの多様性をみることができました。中でも、WORLD PEACE NOWの高田健さんのお話に感銘を受けました。特に心に残ったのは、国民投票についての指摘です。高田さんは、もし憲法改正の国民投票が実施されたとして、本当に民意が反映されるのかという疑問を徹底して持つことの必要性を訴えていました。確かに、負け試合を挑んでくるような相手に私たちは対抗しているとは思えない!私ははっとしました。誰がどのように投票を行うのか、私たち一人一人の声を利用されることなく届けられるのか。「よしっ!国民投票かかってこい!!」ではなく、国民投票まで持ち込ませずに、むしろ政府が国民投票なんてごめんだと恐れるくらいまで、私たちの声を大きくしていかなければいけないなと思いました。 もうひとつは「同円多心」型の運動です。これは高田さんの造語らしいのですが、その字の通り同じ円のなかに心がたくさんあるということだそうです。私たちには平和憲法を守ろうという大きな目標があります。その目標のもと、色々な顔と心、一人一人の想いでそれを支えていかなければならないと再確認しました。 最近草の家に集まる仲間たちと一緒に、方言で憲法9条を読んでいます。それぞれが生まれたところの言葉に9条の条文を直して、それぞれの想いで読んでいます。平和憲法は守らなければいけないものだから憲法改悪に反対しようというのは、ただの理屈でしかないと思います。もちろん、じゃあ守らなくてもいいということではなくて、自分にとって平和憲法とは何なのか、どうして必要なのかを考えることこそが憲法を真に守るということではないでしょうか。ただ平和憲法があるということでなく、それを守り大切にする「わたしたち」がいることが大事なこと。そのことを、草の家を通じての活動で感じました。 草の家のみなさん、今まで本当にありがとうございました。ちょっと高知を離れて勉強してきます。 もっと大きくなって帰ってくるその日まで、みんな変わらずお元気で。いってきます!!! 「卒業に際して」 竹内綾 草の家で学んだこと わたしたちには 人生を豊かに生きる権利があるのだということ 忙しさを押し付けられて 自分の生き方を省みることを忘れてはいけない あれやれ、これやれと押し付けられて 物事の意味を考えることを忘れてはいけない 既存の価値観を押し付けられて 「自分」を忘れてはいけない 歪められた情報を押し付けられて 真理を追究する目を忘れてはいけない 草の家で学んだこと わたしたちには 人生を豊かに生きる義務があるのだということ 「いま」を生きやすくするために 過去の過ちを無視してはいけない 「いま」を正当化するために 過去の教訓を忘れてはいけない 「いま」を楽しむために 未来に負の歴史を残してはいけない わたしたちの「いま」が「これから」になることを 忘れてはいけない |
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草の家定期総会のご案内 |
会員のみなさん!桜の季節になりましたが、お元気でお過ごしでしょうか?皆様のおかげで草の家の活動も今年16年目に入ります。今年は戦後60年を迎えると同時に、憲法九条を守る重大な年になります。次の日程で、今年度の総会を開きますので、ぜひご参加下さい。 5月14日(土) 午後2時〜5時 草の家ホール |
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草の家日誌 |
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1/6〜9 韓国釜山の高校生来高、幡多高校生平和ゼミナールと交流・調査:ビキニ調査、柏島の強制連行犠牲者朴二東さんのお墓に日韓共同で石の記念物をつくる。金英丸通訳・案内 l
1/9 高知市桜井町南耕一会員一行見学 l
1/10 平和美術会新年会 l
1/15 草の家新年交流会:お国言葉で読む日本国憲法―若者による朗読、草の家起工式のビデオ上映、ピースライブ l
1/20 「Days Japanの世界を視る会」発足 l
1/24 事務局会議 l
1/26 政治的圧力によるNHK場組の改ざん問題に対してNHK高知放送局へ抗議訪問。岡村副館長、玉置副館長の他6人。担当者に申し入れ書を読み上げ、一時間にわたって面談。 l
2/5〜6 第4回市立名寄短期大学国際シンポジウム「東アジアの平和・人権・歴史を考える」で金英丸基調講演:“東アジアで平和をつくる市民として生きること:あなたとわたしの連帯そして平和” l
2/9 理事会 l
2/10 第六小学校3年生26名来館 l
2/11〜12 「許すな!憲法改悪・市民運動全国交流集会」(東京)に代表派遣:竹内綾、吉岡稔、金英丸 l
2/15 韓国晋州産業大学高知短大訪問団来館 l
2/18〜20 東アジア共同ワークショップ(北海道・朱鞠内):8名参加(竹内綾、吉岡稔、植田二郎、渡辺鈴予、杉村直哉、中村麻由子、藤澤誉文、金英丸)。2/20 第3回 強制連行・強制労働犠牲者を考える北海道フォーラム:金英丸パネル討論、韓国「日帝強占下強制動員被害真相糾明委員会」代表の講演、犠牲者の遺族も参加 l
2/28 「Days Japanの世界を視る会」 l
3/1 第六小学校子どもたち来館:「第六ふれあいアドベンチャー」、1〜6年生 l
3/4〜6 スウェーデンの平和博物館研究家・ジャーナリストGunilla Cedrenius(ギュニラ・セドレニウス)さん来館、会員との交流会(5日) l
3/10 高知・空襲と戦災を記録する会:高知の戦後60周年記念誌企画会議 l
3/11 イラク反戦写真展実行委員会 l
3/12〜19 イラク写真展「侵略と占領」、高知市民図書館、600余名参観 l
3/13 イラク写真展記念講演―“ストップ!自衛隊イラク派兵”:黙って加害者にならないために、川口創弁護士(自衛隊イラク派兵差し止め訴訟弁護団事務局長)、ビデオ上映:「イラク市民レジスタンス」、高知市民図書館視聴覚ホール l
3/18 第58回解放運動無名戦士合葬追悼会(東京日本青年館):西森茂夫館長、山原健二郎さんが合葬される。西森遼子さん、娘の佐藤さとさん、孫の山海、かやちゃんが参加。平和と民主主義を守り、社会進歩のために活動された方々を追悼する会に、今回あらたに1144名が合葬され、合葬者総数は3万2170名となった。式典後、参列者は遺影を胸に、日本青年館から解放運動無名戦士墓のある青山霊園まで行進。合葬者のお名前、略歴などが刻まれたプレートを無名戦士墓に収めたあと、参列者は一人ひとり菊を献花し、墓前に手を合わせた。 l
3/19 「ピースフェスタ幡多2005春:戦後60年!戦争の歴史と憲法、教育基本法を考える集い」(中村)、戦時中に柏島で軍用道路建設中に事故死した韓国人労働者朴二東さんの長女・朴孝辰さん、孫・趙承勲さんが参加、金英丸(パネルリスト)・吉岡稔・竹内綾・安道幹・杉村直哉参加 l
3/21 広島の教員久保薫さん一行(15名)来館 l
3/24 朝倉九条の会:お国言葉で日本国憲法朗読―植田二郎(土佐弁)、竹内綾(愛知県知多半島)、吉岡稔(京都府丹後)、杉村直哉(大阪弁)、西村多津子(土佐弁) l
3/25 「Days Japanの世界を視る会」 l
3/30 高知九条の会講演会:小田実さん講演、県民文化ホール(オレンジ)、1400余名参加、お国言葉で日本国憲法朗読―植田二郎(土佐弁)、竹内綾(愛知県知多半島)、中村麻由子(広島弁)、渡辺鈴予(大分県)、西村多津子(土佐弁) l
第1〜3週金曜日(5時〜7時)、第4週日曜日(2〜4時)、帯屋町で米英のイラク侵略反対、自衛隊撤退を訴え市民行動、ピースライブを続けている。 |