平和資料館 草の家だより
 
No.78 発行 2003.3.15



変わるために

賢人と馬鹿と奴隷

「中国近代文学の父」と言われる魯迅の作品に『賢人と馬鹿と奴隷』という寓話がある。そのあらすじは次のようなものだ。

奴隷はいつも人を捜しては不平を言っている。「どうか聞いてください。私は朝早くから夜遅くまでご主人に仕えて働きづめ、食事は一日一食、コウリャンがらが一碗きり、・・・部屋は、じめじめ、ナンキンムシだらけ、おまけに窓さえ有りません・・・これではやっていけません。でも他にどんな方法が・・・・」

それを聞いた賢人は同情の涙を浮かべ、「それは気の毒だ、しかしきっといつかよくなるよ」と慰める。奴隷は喜び、心安らかになるが、すぐにまた不平を言い出す。

ある日奴隷が見つけた相手は馬鹿だった。馬鹿は奴隷の愚痴を聞くや怒り出す。「おまえは主人に窓を開けてもらうよう頼めんのか!」奴隷は「そんなことをしたらご主人様にしかられます!」という。馬鹿は奴隷の小屋の壁を壊して窓を開けようとする。奴隷は、「強盗だ!」と叫び、仲間の奴隷と一緒に馬鹿を追い払って主人にほめられる。

やってきた賢人に、奴隷は「今日私は手柄を立ててご主人様にほめられました。あなたがいつかよくなると言われたとおり、本当に先見の明がおありで・・・」とうれしそうに告げ、賢人も「そうだねえ・・・」とよろこばしげだった。

アメリカのウソを見抜く国際世論

この寓話に描かれたた三者のパターンはいつの時代にもどこにでも存在する人間の有り様を象徴していて考えさせられる。

私たちの多くは現状を変えたい、もっと良くしたい、人々が平和で幸福になってほしいとねがっているはずだ。しかし、今日本では何も変わらないようにみえるし、ますます悪くなっていくばかりのようだ。

現在世界ではアメリカのイラク攻撃を許すかどうかの熾烈なせめぎ合いが続いている。数次にわたって世界的規模でアメリカのイラク攻撃反対、戦争反対の行動が起こり、回を追うごとに広がりを見せている。それは規模だけではなく、質の面でもかつてないものだ。ベトナム戦争などこれまでの戦争では、戦争が始まってから反戦運動が起こった。現在の世界の動きは戦争が始まる前に止めようという動きがどんどん広がっている。それは国々の政府レベルにも広がり、国連安保理でのフランス外相演説への傍聴国からの異例の拍手となって現れ、トルコ国会での米軍駐留要請否決となり、アラブ連盟首脳会議がイラクに対する攻撃を全面的に拒否するとの声明を出したことなどに現れている。

今や、アメリカのうそ、ダブルスタンダードを見抜き、戦争の目的がなんであるか、戦争で犠牲になるのは誰かを見て取る人々が日を追うごとに増えている。

日本国民の70%がイラク攻撃反対!

なぜ反対デモは少ないか?

その中で、一人日本政府の反動的で姑息な態度が際だっている。

日本政府はこれまで国際協調を重視するとの建前で、アメリカの武力行使支持の本音を隠していたが、国連で米英が提出した新決議案が不採択になりそうな情勢に、あわてて採択前に支持表明する方針を固めたと報道されている。また、アメリカのイラク攻撃が行われた後の復興支援を申し出るーこれは人殺しをした後で、国民の税金を使ってゼネコンや大企業に儲けさせるものだ。実はこれが政府の本当のねらいかもしれないーなど、全く恥知らずとしか言いようがない。

日本はアメリカがイラク攻撃に踏み切れるかどうかの重要な鍵を握っている。基地、資金の提供、自衛隊の参加。「テロ特措法」以来、日本は既になし崩しに現在のアメリカの戦争に参加している。

そして日本政府がアメリカ追随だけでなく、日本自身の要求として再び戦争をしようとしていることをあらわすものが収奪型予算であり、歴史教科書問題であり、教育基本法見直しであり、北朝鮮問題を利用したナショナリズムの形成であり、有事法制なのである。

世論調査によると日本国民の70%以上がイラクへの武力行使反対であるにもかかわらず、政府の姿勢が変わらないのはなぜか。反戦行動参加者がヨーロッパ、アメリカと比べて桁違い(人口比で言えばさらに桁違い)に少ないのはなぜか。アメリカの世論調査ではイラク攻撃反対は30%なのにワシントンなどでは数十万のデモが行われている。

一つには、人々の思考が非常に内向きで、想像力に欠けていることに問題があると思う。たとえば先日、一匹の犬が首輪を食い込ませて苦しんでいたところ、住民たちが助けたというニュースが何日も報道されていた。それはそれでよかったと思う。

しかし、北朝鮮の拉致問題報道が連日紙面におどっていた昨年11月のある日、同じ紙面に、戦時中日本製鉄で強制労働させられた韓国人が、損害賠償と謝罪を求めた訴訟が棄却されたとの記事が小さく載っていた。

また北朝鮮の深刻な飢餓状態が国際機関で報告されているのに、「北朝鮮には一粒の食糧も送るな」と叫ぶ石原都知事が人気だという。

イラクでは、湾岸戦争後の経済制裁で40万人の子供が死亡したといわれ、今度攻撃が起これば何万もの子供や女性の死者が出るだろうと言われている。

私たちは他者の痛みに対する思いをもっと広げるべきではないか。

次には戦争というものの実態を具体的に知ると言うことが必要だと思う。

戦後日本は過去の日中戦争、太平洋戦争の事実を加害の面からきちんととらえてこなかった。その歴史の教訓から学ばなかったがために、再び日本が進もうとしている戦争の実相が曖昧にしかとらえられないのだと考える。

そして最後に大事なことは、理不尽なことに対しては意見表明し行動していくという生き方の問題がある。

自分は“奴隷”になるのか、“賢人”になるのか、あるいは“馬鹿”になるのか、そのことがいつも問われていると思う。

玉置啓子

 

病床にて詠む

テキスト ボックス:  館長2002.12.20より肝性脳症、
肝細胞ガンで入院。
2003.3.20退院予定、以後自宅療養
アメリカのイラク洞喝を憂うー

西森茂夫

館長2002.12.20より肝性脳症、肝細胞ガンで入院。2003.3.20退院予定、以後自宅療養

巨大な武器をふりかざすブッシュに言う

剣を持つもの剣に滅ぶと

 

おごるアメリカ世久しからず

独立宣言の理想リンカーンの国よみがえれ

 

日本はアメリカの属国かとやゆされる

非核憲法の影うすき哀しき国

 

劣化ウラン弾で苦しむ子らの瞳

なぜ報ぜぬかペンタゴン報道に染むテレビ

 

“すべての武器を楽器に”と心をこめて

歌うアーティスト憎しみを愛に変える星たちの群

 

国家テロを許さぬ人民の怒り空前の

反戦デモになりて世界をおおう新しき時代の鼓動

 

今日はストリートパフォーマンスよと

笑顔で街頭にくりだす若者デモは楽しき

 

一票の価値にめざめて国会を

牛耳る政官財の代弁政治屋に痛撃を

 

有事法阻止するために一千万のデモ組織せん

今民衆革命おこすべきとき

 

草の家は戦争のおろかさを知る民衆の家

記憶のダムで未来をつくる

 

草の家けし粒ほどの大きさなれど

学びて思う者たちの群

 

民衆の力、智恵に支えられ

世界を結ぶ草の家あり

戦さ断つ憲法の森は祈りの場

全国に育てて結べ平和の精神(こころ)

 

日本をはみだす精神九条を

守り通して国の宝となさん

 

桜花のように散りし死は犬死にならず

憲法九条となり万国結ぶ平和の長城と化す

 

金英丸は韓国のあかり

友好の絆かたく土佐に根づく

 

澄みわたる英丸の歌ごえ

ボジャギのようなソリの響き

 

人権はたたかいとるもの自由権社会権

平和のうちに生存する権利

 

青年は胸中に未来をもつもの

青竹のようにぐんぐん伸びる

 

我が細胞を打ち鳴らす平和の意志

五十年の歩みで培かわれし力

 

泣き虫弱虫の少年が死ねとおどされても

微動だにせず根っこを張る大木のように

 

 

「チョムスキー9.11Power and Terror」

上映報告

上映会が成功裏に終わりました!

ご協力ありがとうございました。

 何かアクションをおこさなければならないとつくづく思いました。(19才、女)

今回の映画をみてとてもよかったです。この映画を見る機会を与えてくれたことをありがたく思います。イラク攻撃は絶対やめてほしいです。(20才、男)

こうした映画をどんどん発掘して上映してほしい。一般の人々が言葉にできない怒りや思いをチョムスキーのような人間味ある、説得力のある人に語ってもらい広めていきたい!勉強し行動しなければと思いました。上映してくれてありがとう!(32才、女)

実行委員会のみなさへ!! 会場に来てそのエネルギーにびっくり!! とってもまぶしく思えました。とってもステキです。がんばって下さい。(41才、女)

若い学生さんたちがこのような企画をされたこと、日本の将来に大きな希望がもてます。この映画を見て本当によかった。反戦平和の声を政府に対して届け続けましょう。(51才、女)

人間の盾となるため、イラクに旅立った友人

のためにも、また全ての平和を願う人々のためにも、この声が届くことを願っています。(29才、女)

ほんまにおつかれ様でした。若い人らがこれからのことを考えるって大事やと思います。すごく元気ももらいました。これからもがんばって下さい。私もがんばります。(23才、男)

全面的に賛成したい内容だった。「他人に課す基準を自分には適用しない人間のことを僞善者というのだ」という言葉がとても強く印象に残った。もっともっと多くの人がこの映画を観るべきだと思う。(21才、女)

若い大学生達がスタッフで動き回り500名ぐらいは集めている。この平和に対するパワーは凄い。誰からも教えられない、自分の感性を信じる平和運動を是非広げていってください。(47才、男)

  一人ひとりの行動が意味をなす。勇気をもって確信をもって行動しょう。イラク戦争反対!

草の家日誌

l        /13 新年交流会:古屋和子さんのひとり語り「カナダに渡った侍の娘」

l        /15 草の家ブックレットNo.11「人は自然の中でどう生きるか」発行

l        1/18 World Peace Action1.18代表派遣:鳩S

(東京、日比谷公園)

l        1/18 「平和人権歴史」を考える国際シンポジウム(北海道、私立名寄短期大学)で金英丸発表:「あなたと私、連帯のろうそくを灯そう!」

l        1/26 「チョムスキー9.11」上映のプレ企画、野田正彰さん講演会「日本の満州侵略とアメリカのイラク攻撃」:草の家

l        /4 高知空襲犠牲者調査会議:高知市と協力合意

l        /11 建国記念の日、小夏の映画会「馬」上映、講演「朝鮮半島の平和と統一」:金英丸

l        /13 高知新聞論説委員懇談会、「朝鮮半島の政治と社会」:金英丸

l        /13 潮江南小学校で金英丸授業:韓国の歴史と文化

l        /14〜2/16 東アジア共同ワークショップ参加(北海道、朱鞠内):金英丸

l        /15 ピースアクション イン こうち:イラク攻撃反対アピール、ピースライブ、パネル展示、署名(帯屋町)

l        /15 ピースライブ イン こうち:草の家

l        /18 2003年ピースウェイブ第1回実行委員会

l        /22 平和を考える市民セミナー:工藤律子さん講演「ストリートチルドレンを通して考える子どもたちの未来」(高知城ホール)

l        /22 ピースデポ公開シンポジウム「市民がつくる北東アジアの平和」(高槻市)で金英丸発表:「あなたと私は本当に東アジアに暮らしているか?」

l        /25 高知空襲犠牲者名簿400人分を高知市に手渡し(高知市役所)

l        /26 第6小学校で金英丸授業:韓国の文化

l        /5 「こうちミュージアムネットワーク」設立総会参加

l        /7 「チョムスキー9.11 Power and Terror」上映会:イラク攻撃反対署名、パネル展示、平和のメッセージ 等(県民文化ホールグリーン)

l        /8 ピースアクション イン こうち:イラク攻撃反対アピール、ピースライブ、署名、パネル展示、デモ行進(帯屋町)

       3/8 ピースライブ イン こうち、高橋清光

2003年草の家定期総会
4月5日(土) 午後2時〜5時

草の家ホール

1.活動報告 2.会計報告 3.活動計画と予算 4.NPOの資格をとるために 5.役員体制 

6.その他

 会員の皆さん! 是非ご参加を!